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掲載日:2024年2月29日
Q 田並尚明議員(民進・無所属)
部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例についてお伺いいたします。
「全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」、これは改めて説明するまでもなく、日本国憲法第14条の条文です。戦後、世の中は急速な技術の進歩により、便利過ぎるほど便利で文化的な生活が送れるようになりました。宇宙には有人のステーションが浮かび、手にしたスマホで自宅の風呂のお湯が沸かせ、車は自動運転も夢ではありません。人工知能が発達し、コンピュータに人間の仕事の半分近くが奪われてしまうのではないかと心配されるほど、技術の進歩はすさまじいばかりです。
こんな進んだ世の中なのに、日本にはいまだに江戸時代の名残があります。それを代表するのが部落差別です。部落差別事件を聞くたびに、差別する人間に対し、今の世にあって何て非文化的な動物にも劣る行為なのだろうと強い憤りを感じます。特に、就職や結婚相手に対しての身元調査がいまだに行われているという事実が、この問題の根深さを表わしていると思います。
2011年11月には、一部の司法書士や行政書士が職務上請求書を偽造、印刷して、1万件に及ぶ戸籍や住民票を不正取得し、それを結婚相手の身元調査等に使用していた、いわゆるプライム事件が発生いたしました。また、2013年には中古住宅販売会社が中古住宅を購入する際に、そこが同和地区かどうかを調査していた事件も起こっております。最近では、あるサイトで法務局の指導も無視して全国の同和地区所在地一覧をインターネットに掲載し続けている信じがたい事件も起きております。このような事件が後を絶たないのは、部落差別につながる身元調査を取り締まる法律がないことが挙げられると思います。
そこで、我々会派では他県での取組を調べてみました。すると、大阪府、香川県、徳島県、福岡県、熊本県で部落差別につながる調査等の規制に関する条例を制定しておりました。特に、大阪府では罰則規定がある条例だったため、会派の仲間とみんなで視察にも行ってまいりました。もちろん、法律ができるのが一番良いのですが、法律がないから取り締まれないと手をこまねいていては、差別を容認しているのと同じです。
私は、地元の集会所で子供たちを対象とした七夕、パンづくり、クリスマス会等に毎年参加しております。そのたびに、この子たちに何の責任もない江戸時代の身分制度の名残である部落差別によって、この子供たちの笑顔を奪ってはならない。この子たちの笑顔を守るのが大人たちの役目でもあるし、政治家の一番大事な仕事の一つではないかと強く思えてならないのです。大阪府や他県でできて埼玉県で条例をつくれないということはないと思います。埼玉県でも部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例を制定すべきと考えますが、つくりますという答弁以外に考えられませんが、県民生活部長のお考えをお伺いいたします。
次に、人権教育についてお伺いいたします。
人権教育についても、これまでたくさん質問をしてまいりました。誤解なきよう先に申し上げておきますが、県の取組に関しては一定の評価はしております。担当の職員さんも強い使命感を持ち、仕事に取り組んでいただいている姿を拝見しております。しかし、最近行った身元調査に関する住民の意識調査では、就職や結婚相手の身元調査をするのは良くないが、仕方がないと回答したのが全県的に6割を占め、年代別でいうと20代が一番多いというショッキングな結果となっております。どうしてこうなるんでしょうか。
私は、これは人権教育に問題があったのではないかと考えます。同和問題に関して学校で教えるのは、寝た子を起こすようなものだという間違った意見をよく聞きますが、確かに子供たちの82パーセントが授業で初めて同和問題を知ったという調査結果が出ております。だからこそ、一番最初の情報が大切なのではないでしょうか。私は、この結果を見て、今までの人権教育に間違いはなかったのか、改めて一回立ち止まって見直す必要があると思いますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
いずれにいたしましても、県民生活部長、教育長におかれましては人権は民主主義の根幹であり、その根幹が脅かされているのだということ、そして人権を守るというのは子供たちの未来と笑顔を守ることだということを強く御理解いただいて御答弁をお願いいたします。
A 稲葉尚子 県民生活部長
差別につながる身元調査や土地調査、同和地区の所在地をインターネットに掲載するということは、見過ごすことができない人権問題であり、あってはならないことだと考えております。
差別をなくすためには、県民一人一人が人権尊重の理念について理解を深め、人権意識を高めることが必要です。
県では今国会で制定された「部落差別の解消の推進に関する法律」の趣旨を踏まえ、今後とも啓発活動に取り組んでまいります。
議員お話の条例につきましては、規制する行為をどのように定義するのか、違反行為の要件は明確であるか、違反した場合の認定はどのように行うのか、などの問題が考えられます。
さらに、県民や事業者の経済活動を規制することは、憲法上の営業の自由に深くかかわりがあることから、特に慎重な対応が求められます。
県といたしましては、まずは先行している他の自治体の条例を参考に、その必要性と効果を研究してまいりたいと存じます。
引き続き、部落差別をはじめ、全ての人の人権が尊重される社会の実現に向け、取組をより一層推進してまいります。
A 関根郁夫 教育長
あらゆる差別や偏見は、決して許されないことであり、誰もが安心して暮らすことのできる共生社会を築くためには、県の果たす役割は極めて大きいと考えております。
県では、平成25年2月に「埼玉県人権教育実施方針」を策定し、同和問題についても、解決すべき13の人権課題の一つに位置付け、心理的差別の解消に焦点を当てて、取り組んでいるところでございます。
具体的には、同和問題を学習するに当たって、部落差別を正しく認識し、共感的理解を図るとともに、差別をなくしていくことのできる児童生徒の育成を進めております。
議員御指摘のように、同和問題について多くの子供たちが最初に知る機会となる学校教育の場で、しっかりと学習を積み重ねることは、極めて重要でございます。
各学校では、子供たちが様々な場面や状況下でも豊かな人権感覚に裏付けられた態度や行動がとれるよう、参加体験型の学習を取り入れるなど、主体的な学習に取り組んでおります。
今後も、子供たちの笑顔あふれる未来を実現するため、これまでの取組を踏まえ、同和問題をはじめとする様々な人権課題の解決に向けて、人権教育の充実に努めてまいります。
再Q 田並尚明議員(民進・無所属)
私も、難しいところは重々分かっていますし、ふだんは再質問しないんですけれども、これだけは僕はやっぱり引けないんですよ。
理念、これ確かに法律できました。でも、これは罰則のない理念法なんです。理念法、罰則ないから罰せないんです。こういう地名総鑑をネットに出したりとか、取り締まれない理念法でございます。それで、確かに商売をやる上での自由に抵触するおそれがあるというのも重々分かるんですが、でも人権を無視した、憲法を無視した商売自体、あっちゃいけないことだと僕は思っています。
どういう影響があるのかというのは、でも実際に前例として大阪府では罰則規定の条例を作っているのでですね、研究していただけると言ったので、それを信用したいと思いますが、私はやっぱりちゃんと罰則規定がある法律ができるまでは、条例でしっかりとこれをやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思いますので、もう一度、すぐ作りますと言い換えることはできないとは思いますけれども、もうちょっと踏み込んだ答弁をお願いします。
あと、教育長も今までの教育を踏まえてとおっしゃってくださいました。それに含まれるとは思うんですが、結果こうなんですよ。結果がこの20代が一番、身元調査は当たり前だとかってなっちゃっているんです、今まで。だから、これからもどんどん人権教育やっていただくのは大いにやってほしいんですけれども、どこか間違いがなかったのかというのを一回そこを検証してもらわないと、僕はいけないんじゃないかなというふうに思いますが、それも含めてもう一度答弁をお願いします。
再A 稲葉尚子 県民生活部長
同和問題は他の人権問題と違い、差別されてきた土地との関わり合いによって引き起こされる差別です。
刑罰を科すということになると、例えば同和地区を改めて定める必要があるのかなど、いろいろな課題がございます。
田並議員の熱い思いを踏まえまして、条例制定を前提に進めてまいりたいと思います。
再A 関根郁夫 教育長
まず、部落差別はあってはならないということを前提にこれまで人権教育を進めてまいりました。
その上で、身元調査をすることについては、「よくないが仕方がない」という回答が、20代で最も多いという御指摘でした。
ただ、このアンケートは、部落差別のことを中心として出されたアンケートではございません。若者に身元調査のことだけを聞いたものです。
現代の若者は、インターネット等を通して、いろんな方と、人と繋がったり、そこから恋愛に発展したり、ということがあります。
それに対して、非常に心配であるという声も若者からは聞きます。そういったことが今回のアンケート調査には、反映しているのではないか。
ですから、今回の身元調査のことが、部落差別を意味するものであるという風に若者が捉えているのかどうか、ということはよく分かりません。
そういう状況下の中で、我々が今まで進めてきた部落差別はいけない、ということでやってきた人権教育を検証するということは、今のところ考えてはおりません。
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