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掲載日:2023年9月25日
Q 木下高志議員(自民)
首都圏中央連絡自動車道いわゆる圏央道が開通することに伴って、本県にも様々な効果が期待されました。特に圏央道と関越道が交差する鶴ヶ島ジャンクションを有する埼玉県の西部地域にあっては、交通結節点として、また、比較的災害に強い地盤を有しているなどの条件も重なり、様々な産業が開花し、企業立地も進むと考えられておりました。しかし、この地域に進出の意向を示す企業は、これまでのところ交通の要衝を生かした物流業や倉庫業が多く、もちろん企業立地が進むのはすばらしいことでありますが、このままでは特定業種が集まる地域になってしまう感があります。今後、本格的にこのような特定業種の企業立地が進むとなると、地域内の雇用や経済循環などに及ぼす課題を多岐にわたって考えなければなりません。
そのような中、埼玉県は、正に交通の要衝である圏央道鶴ヶ島インターチェンジに近接した県有地である農業大学校跡地に対し、農大跡地活用推進事業として、先端産業をはじめとする次世代産業等の集積拠点の一つとして活用を図るとの計画を立てました。これは言葉で言えば勇ましいのですが、簡単に言うと先端産業との条件を付して県有地を売却するということであります。
この売却条件を示しただけの計画では、到底この地域特有の課題を解消することにはつながりませんし、経済効果は極めて限定的です。仮に瞬間的な売却益のみを求める事業となれば、県民からの理解は得られませんし、貴重な地方創生に資する種地とすべき県有地の活用方法としては、更に議論を深める必要があります。
私は、埼玉県西部地域における産業構造の課題を真正面から捉え、それを解消させる計画をきちんと県民に示し、埼玉県西部地域における産業振興のグランドデザインをしっかりと描くことが必要と考えます。単に農大跡地にとどまらず、もっと広範囲なエリアを視野におさめた構想を踏まえた上で、農大跡地活用事業を進めていくべきではないでしょうか。
このような背景の下、自民党県議団では長峰宏芳県議を中心として自民党県西部地域未来産業集積推進懇話会を立ち上げ、検討を重ねました。執行部の原案が、先端産業との条件を付けつつ農業大学校の跡地を売却する計画に対し、自民党県議団の対案は、高速道路ネットワークが地域の産業構造に影響を与える象徴的な地域を、鶴ヶ島ジャンクションを中心とした半径10キロのエリアに該当する市町と定義し、国が定めた第5期科学技術基本計画が目指す超スマート社会を国内に先駆けて実現させる計画であります。また、農大跡地はリーディングプロジェクトとして位置付けます。これらの案は対象エリアを大幅に拡張し、今後、日本が進むべき未来像を大胆に取り入れたものであります。
なお、スマート社会とは、インターネットを媒介して様々な情報が物とつながるIoTや人工知能、ビッグデータなどを活用し、人々の利便性が高められる社会を表します。国では超スマート社会を実現するための一連の取組をSociety5.0と呼んでおりますが、言葉としてのSociety5.0とは5段階目の社会を意味し、狩猟社会が1段目、続いて農耕社会、工業社会、情報社会と続き、5段階目が超スマート社会となります。このSociety5.0の取組を通して社会の様々なニーズにきめ細かく対応し、年齢や性別、地域、言語などの制約を乗り越え、快適に暮らせる社会の実現を目指していこうとする考え方であります。自民党案は、このSociety5.0を支える未来産業を埼玉県西部地域から開花させ、事業の生み出す経済波及効果を最大化することを目的としました。
コンセプトを掲げるならば未来産業ハブであります。なお、未来産業とは、従来の産業の横断的かつ有機的な結合によって成立する幅広い産業と定義いたしました。例えば、第1次産業である農業従事者が第2次産業である製造業が作ったセンサーを活用して、第3次産業である情報サービス業が気温や湿度、農作物の生育状況などを解析し、先進的な農業が行われたとします。この場合、情報を介してそれぞれの産業が有機的に結合しているので未来産業となります。先端産業は一部の産業に過ぎませんが、未来産業は人々の生活に関わりのある幅広い間口を持った産業を指します。このような未来産業を埼玉県西部地域に集積させ、国内に先駆けて超スマート社会を実現するためには、第4次産業革命と称される技術革新が重要となります。
また、国においても第四次産業革命に対応する新たな法律ができました。平成29年7月31日に施行された地域未来投資促進法と、平成29年6月16日に成立した改正国家戦略特別区域法であります。
地域未来投資促進法は、IoTや人工知能、ビッグデータの活用等、第4次産業革命に資する新たな成長分野により地域経済を好循環させることを狙いとしており、正に埼玉県西部地域の計画に当てはまる内容となっております。また、改正国家戦略特別区域法は、第4次産業革命を牽引し、イノベーションの成果をいち早く社会に取り込めるよう日本版レギュラトリー・サンドボックス制度を検討しております。レギュラトリー・サンドボックスとは、日本語で言うと規制の砂場と訳されますが、子供が安全に確保された砂場で思うままに行動できるように、国家戦略特区として企業が規制にとらわれず、自由に新しいサービスを試すことを認める制度であります。
このように地域未来投資促進法と国家戦略特別区域法は、日本の成長戦略である第4次産業革命を推進しようとするものですが、自民党案はこの2つの法律を活用して、戦略特区が1つもない埼玉県に対していち早く特区を取り入れるべきものといたしました。
さて、難解な説明が続きましたが、具体的に2つの法律を埼玉県西部地域に当てはめ、産業のグランドデザインを考えると次のようになります。
その1、地域未来投資促進法に基づき、さきに定義したエリア内の市町と埼玉県でこの地域に未来産業を集積させ、地域経済を活性化するための基本計画を立てます。その計画の中身は、このエリアにIoTを支えるインフラ通信網であるLPWAを先行整備し、次いで次世代通信である5G等の早期整備に取り組み、IoTを利用した新たな産業の創造や未来産業の企業誘致を行います。ちなみにLPWAとは「Low power wide area」の頭文字であり、扱うデータ量は少ないながら、低消費電力で広いエリアをカバーするIoTのインフラ通信網のことであります。既に福岡市や新潟市などでLPWAを用いたIoT構築に向けた実証実験が行われておりますが、今回のような複数市町と県が加わったLPWA通信網の整備は国内初と目されます。
その2、リーディングプロジェクトとしての農大跡地に地域経済を牽引できる進出企業を募ります。その進出企業については、未来産業をはじめとした次世代産業などの研究開発機能を備えた業態とし、地域未来投資促進法による地域経済牽引事業計画を立て、エリア全体にバリューチェーンの構築を行います。なお、エリア内であれば、農大跡地以外に誘致する企業においても地域経済牽引事業計画を立てることが可能となります。
その3、国は、地域未来投資促進法に基づき、人・物・金に代表される支援策を講じます。進出企業にも地域未来投資促進法の定めるところにより、課税の特例や財政・金融面の支援措置が受けられますので、ウィンウィンの関係が構築できます。
その4、埼玉県は、さきのLPWAの先行整備と改正国家戦略特別区域法に基づく日本版レギュラトリー・サンドボックス制度を、このエリア内に適用させるためのスキームを作ります。特区の認定とともに、超スマート社会Society5.0の実現に向けて規制にとらわれない様々な実証実験が可能となります。さらに埼玉県は、農大跡地周辺に対し地方創生の種地として必要な面積を確保し、一連の計画を行うために産業支援施設を整備し、IoTなどの新技術を県西部地内の中小企業の活力向上に活用します。また、この施設は、災害時の利活用を視野に入れるなど周辺と調和のとれた構造といたします。
このような計画を実行するには、埼玉県は技術蓄積が必要となりますが、県下の大学と産学官連携のスキームを構築して対応に当たります。幸い、本県にはIoTなどの先駆的な技術を有する大学が存在し、著名な研究者もおられます。早期に協定を締結し、連携していく計画であります。
このように地域未来投資促進法と改正国家戦略特別区域法を有効活用し、その結果として埼玉県西部地域に日本が目指す超スマート社会Society5.0が先行的に構築でき、併せて未来産業などの第4次産業革命を牽引する企業が全国から集まり、又はIoTを活用した新たな産業を創出し、経済波及効果の最大化を実現するというのが自民党案であります。
言葉で申し上げるのみでは大変分かりにくいので、これらのことをパネルで示すとこのようになります。見えないかもしれませんが、イメージで感じ取っていただきたいと思うわけでありますが、原案との比較であります。原案は、対象エリアは農大跡地のみでありました。しかし、課題といたしましては、このエリアには倉庫業や物流業が増加傾向にありまして、地域内の経済や雇用に対する課題がございました。自民党案は、これは見えると思いますが、かなり違います。農大跡地はリーディングプロジェクトとしての位置付けであり、鶴ヶ島ジャンクションを中心とした半径10キロの市町にかかった円を想定いたしまして、未来産業ハブ、拠点という意味のハブを使って構築するものであります。
それでは、指定したからといって未来産業が来るかといったらそんなことはありませんので、どういう形で仕組みづくりをしたかといいますと、エリア内に未来産業を集積させるためには新たな法律の活用をしようというのが自民党案です。その2つの法律が地域未来投資促進法と改正国家戦略特別区域法であります。そしてもう1つは、民間技術を活用する。先ほど申し上げましたLPWA、これはIoTを支えるインフラ通信網でありますが、そして今後、技術革新が進むと目される5Gの民間技術を活用するというのが自民党案の骨子であります。
続きまして、そのLPWAの仕組みを簡単に御説明いたします。これも見えないかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。LPWAは「low power wide area」の略でありまして、低消費電力、広域通信であります。IoTをするためのネットワークが必要になりますので、このネットワークを先行的に整備しようという案であります。このネットワークはキャリア網を通してクラウドにつながりまして、ここで様々なサービスが可能となります。LPWAを先行整備し、その結果として未来産業、仮にIoTといたしますが、創出、そしてまた地域に向かって企業参入が行われるとこのような案であります。
見えないでしょうが、イメージで感じ取っていただきたいんですが、これは県西部地域未来産業集積のイメージであります。三角形が2つ書いてありますが、上の三角形と下の三角形、上の三角形は地域未来投資促進法としての流れであります。下側の三角形は、その法律に基づいた実事業の流れを表わしております。
まず、その1といたしまして、先ほど申し上げましたように周辺市町と埼玉県で地域未来投資促進法に基づく基本計画を策定して出します。国が承認をいたします。
その2、農大跡地に進出企業を募ります。この農大跡地の進出企業は、事業者により地域経済牽引事業計画を立てます。これが承認された暁には、国によりこの未来法に基づきまして、国が事業のニーズに合わせて人・物・金に代表される支援策が講じられると、こういった仕組みになっております。
それでは、実事業はどうなるかと申しますと、この下側の三角形でありますが、農大跡地、また、このエリアに進出する企業におきましてはバリューチェーンを構築するということが、まず第一義にあります。そして、地域経済牽引事業を地域全体として進めながら、埼玉県は大学と先ほど申し上げましたように産学官の連携をもって先行的にLPWA、IoTのインフラ通信網を構築いたしまして、その結果、その行き先に国家戦略特区の申請を行うと。そして、農大跡地には産業支援施設を設けまして、IoTができるからといってこの技術が一緒くたにこの地域全体に普及することは不可能でありますので、このIoTの技術や活用方法を地域全体に向かって研修、講習を行う、このような計画になっております。
これらの計画は大変壮大でありまして、実行には幾多の困難が生じるかと考えますが、政治でなければできない未来を築いていくべきではないでしょうか。
そこで、上田知事に3点お伺いいたします。
まず1点目として、率直に聞きますが、農大跡地を含めた埼玉県西部地域にIoTのインフラ通信網を先行整備し、地域未来投資促進法と改正国家戦略特別区域法を活用し、地域の産業振興を図るとの自民党案を推進する御意向はあるのかお伺いいたします。
次に、2点目として、改正国家戦略特別区域法による日本版レギュラトリー・サンドボックス制度は、現在策定中ですが、でき上がってからの検討では遅く、特区申請を目指すことを前提として、本県でも制度の研究や国に対する要望を即時に始めなければならないと考えますが、対応をおとりになる御意向があるのかお伺いいたします。
最後に、3点目として、本県にある大学には極めて高度な知識や技術を有している研究者がおられます。このようなチャンスを逃す手はありません。大学と実務ベースの協定を結ぶなどその力を取り込み、知見を県政に最大限生かす方策をとるべきだと考えますが、御見解をお伺いいたします。
A 上田清司 知事
まず、自民党が提案した案を推進する意向があるかについてでございます。
私はこれまで、「稼ぐ力」を持った新しい産業を興すことが県内経済や日本経済にとって極めて重要であるという認識の下、産業振興に努めてきたところです。
具体的には、平成26年度から先端産業創造プロジェクトを開始し、今後の成長が見込まれる医療分野やロボットなどの先端産業分野の企業を支援してまいりました。
平成29年度末までに45件が製品化される見込みでございます。
また、企業誘致では本県経済に寄与し中小企業への波及効果の高い企業にターゲットを絞った誘致を行ってまいりました。
世界のマザー工場であるホンダ寄居工場、本県初の1兆円企業となったカルソニックカンセイの本社・研究所などの誘致を実現しております。
その結果、平成17年1月以降の県内立地件数は934件に達し、新規雇用は3万人を超え、投資総額は約1兆4,000億円に上っています。
近年の産業界を取り巻く環境は、人、モノ、情報の流れが世界規模で加速し、様々な産業分野で競争が激しくなっております。
情報通信技術の発展は目覚ましく、IoT、AI、ロボットなどを活用した技術は加速度的に進歩しています。
こうした変革に対応していくには、成長分野を見定め有望な土地である農業大学校跡地を有効に活用しなければならないと思います。
今回、自民党県西部地域未来産業集積推進懇話会から、農大跡地の活用に当たっては、もっと広いエリアでの構想を踏まえ事業を進めていくべきとの具体的かつ魅力的な御提案をいただきました。
御承知のとおり、農大跡地は圏央鶴ヶ島インターチェンジに隣接する約40ヘクタールの広大な土地でもあります。
また、圏央道は茨城県区間の開通により東名高速道路から東関東自動車道までが直結し、首都圏と西日本、東日本を結ぶ交通の要衝と位置付けられています。
このような貴重な土地であります農大跡地には、経済効果の高い先端産業や次世代産業を誘致し、将来に渡る埼玉県経済牽引の起爆剤にしたいと私は考えております。
農大跡地を含めた周辺の地域に未来産業の集積を図り、経済波及効果の最大化を実現するという考え方は、超スマート社会を目指す県の科学技術基本計画と方向性が完全に一致しています。
御提案いただきました情報通信インフラの整備や地域未来投資促進法、改正国家戦略特別区域法の活用も視野に入れ、まずは地域未来投資促進法の基本計画策定などの取組を進めてまいります。
次に、改正国家戦略特別区域法による日本版レギュラトリー・サンドボックス制度の研究や国への要望についてでございます。
先に成立した改正国家戦略特別区域法では、自動車の自動運転や小型無人機等の実証をより円滑かつ迅速に行えるよう、法施行後1年以内を目途に規制の見直しなどを検討・措置することとされています。
こうした国の動向を注視し、国家戦略特区を提案する場合の課題や内容についてしっかり研究していきたいと思います。
最後に、大学と実務ベースの協定を結ぶなど、研究者の知見を県政に最大限生かす方策を取ることについてでございます。
既に本県においては、ナノカーボン分野で第一人者の研究者をはじめ日本有数の研究所の代表者などから先端産業創造プロジェクトに関する御助言をいただいており、様々な知見を活用しております。
御指摘のように大学は研究者が集う知の宝庫であり、産業に直接結びつく先端技術の種を持っております。
県内の大学には、IoTをはじめ専門的な分野において先駆的な知見を持つ研究者も多数おられます。
こうした大学の知見を最大限に活用するために、議員からも適切なアドバイスをいただき、更に連携して取り組んでいけるよう実効的な方策をしっかり取り組んでまいります。
再Q 木下高志議員(自民)
私は、3点質問させていただきまして、まず1点目、単刀直入に質問申し上げました。自民党案を推進する意向があるかないかということであります。非常に分かりづらく思ったわけでありますが、私の耳には推進するという言葉を心には感じ取ったわけでありますが、明確にはお答えをいただけませんでした。
なぜこんなことを聞くかといいますと、私どもの提案というのは、例えば戦略特区に申請しようということでありまして、古い規制と戦うとか、あと役所の縦割り行政と戦うとか、市町の垣根を越えて進んでいくとか、こういう強い意思がなければ達成できない目的があります。まずやってみようというような形でありますと、その戦いに私は勝てないんじゃないかと思うわけであります。
ここで、私の質問の趣旨のとおりに上田知事に明確にお答えをいただいて、どのように意思を確立しているのかというのをお話しいただければと再度答弁をお願いいたします。
再A 上田清司 知事
物事はできるかできないかという価値判断でいくといろんな課題がでてきて尻込みしたくなる。
問題はやりたいかやりたくないかということかと思いますが、私はやりたいと思います。
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