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掲載日:2022年8月15日
Q 井上将勝 議員(民主フォーラム)
昨年3月、東京都内の区立中学校で行われた性教育の授業が不適切であるとして都議会議員が議会質問をし、それを受けて都の教育委員会が「関係者への調査、指導を進める」という答弁を行いました。不適切とされた授業の内容はどのようなものであったのかと言えば、学校の事前アンケートにおいて、「高校生になったらセックスしてもよい」と答えた生徒が半数近くに上ったことを踏まえ、思いがけない妊娠をしないために、産み育てられる状況になるまで性交を避けることと伝え、高校生になると中絶件数が急増すること、そしてコンドームの避妊への有効性などを教えたものでした。私には何が問題であるのか、全く分かりません。
都の教育委員会は、この授業で性交、避妊、人工妊娠中絶といった言葉が中学校の保健体育の指導内容を定めた国の学習指導要領にはないという理由で、中学生の発達段階に合わないと判断したようです。見ざる、言わざる、聞かざるしていれば物事が解決するといつまで思っているんでしょうか。
インターネットがもはや未成年の生活にとって欠かすことができなくなった現在では、少しインターネットで検索すれば簡単にすぐ性的情報に触れることができます。あえて検索しなくてもSNSを使っていたら、性的な広告に遭遇することも多々あります。そんな時代に学習指導要領にないから教えないなんて姿勢のままでいいはずがありません。
中絶の経験をした女性の避妊状況を調べると、その半数が「避妊をしていた」と答えます。また、その相手の男性も「避妊をしていた」と答えます。つまり避妊をしていたつもりでも、その方法、知識が根本的に間違っているんです。性交、中絶、避妊を教えないまま、インターネットの圧倒的な性情報の世界に子供たちを放り出すことが教育なんでしょうか。テレビゲームで主人公が何の武器、防具も装備しないままラストダンジョンに行くようなもので、文字どおり命取りです。我々大人にはその武器、防具となる知識を子供たちに授ける責任があります。
例えば、秋田県では県教育委員会と医師会が連携し、中学3年生を対象に国の学習指導要領より踏み込んだ性教育講座を14年間続けた結果、10代の若者の中絶件数が324件から71件に大幅に減少いたしました。また、今年の初めには、ある東京都立中学校で避妊方法や緊急避妊薬、性感染症についてにとどまらず、マスターベーションに関する誤解、アダルトビデオと実際の性交渉の違いなどをしっかり教える学習指導要領を超えた発展的な内容を含んだモデル授業が行われ、学校、保護者、生徒から好評を得ました。
こうした発展的な性教育を行うと、必ず寝た子を起こすな理論を持ち出す人間がいますが、ユネスコとWHOが連携して行った調査によれば、適切な性教育は若者の性行動を早めるどころか性行動をより慎重化させるという結果が出ており、科学的にも全く当たりません。間違った避妊法を実践することで望まぬ妊娠をし、その結果、中絶、産み落としなどの不幸な結果を招くことを防ぐためにも、そして増加している性感染症に歯止めを掛けるためにも中学校から避妊、人工妊娠中絶、セックスに対する適切な知識などを教える踏み込んだ性教育をすべきです。
学習指導要領はおおよその教育内容を定めた大綱的基準であり、記載されていない内容を子供たちに教えることが直ちに違法とはならないと最高裁でも確認をされています。あとは埼玉県に子供の未来を守る決定をする気があるか否かにかかっていると思いますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
A 小松弥生 教育長
中学校における「性に関する指導」は、学習指導要領に基づいて、保健体育の授業などで実施しております。
具体的には、中学校1年生で「生殖機能の発達」などを、3年生で「性感染症の予防」などについて学習することとされております。
本県では、学識経験者や教諭、養護教諭などからなる「性に関する指導課題解決検討委員会」というものを設置し、発達の段階に応じた効果的な授業が行えるよう、授業改善に取り組んでおります。
中学生段階では、心身の成長の個人差が大きいことや、保護者の考え方が様々でございますので、授業の中で発展的な内容を扱う際には配慮が必要かと考えております。
また、各中学校では、性行動に課題があるなどきめ細かな指導が必要な生徒に対しては、学級担任や養護教諭、学校医等が連携し、個別の指導を行っております。
本県においても、生徒が性犯罪に巻き込まれるケースがございます。
自分の身を守るためにも、性に関する正しい知識を得ることは大切であるため、今後も、「性に関する指導」の充実に取り組んでまいります。
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