トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 令和3年2月定例会 > 令和3年2月定例会 代表質問・一般質問 質疑質問・答弁全文 > 令和3年2月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(永瀬秀樹議員)
ここから本文です。
ページ番号:195415
掲載日:2024年4月1日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
令和2年11月、地域公共交通活性化再生法が施行されました。広範囲にわたる法改正であり、その背景には我が国の直面する構造的課題である人口減少・少子高齢化があります。それにより、地域公共交通は利用者の減少、担い手の減少、公共交通難民の増加等の問題に直面しています。更には、コロナ禍による生活様式の変容も加わり、公共交通は収益が減少する中で、これまで以上にサービス水準の向上を求められるという厳しい状況にさらされようとしています。
今回の法改正の大きな意義は二つ。
一つは、地域が自らデザインする地域の交通づくりに向け、都道府県も含めた地方自治体に地域公共交通計画の策定を努力義務としたこと。従来の公共交通サービスに加え、自家用有償旅客運送、福祉輸送等、地域の多様な輸送資源を位置付け、地域のニーズにきめ細かく対応。また、定量的な目標設定や毎年度の評価などによりPDCAの実施も求め、交通手段に着目した従来の考え方から、移動全体、人々のモビリティ確保、改善という幅広い観点から見直したものと考えられます。
二つ目は、地域公共交通特定事業のメニューに地域公共交通利便増進事業を創設したことです。既存の公共交通サービスの改善策として、等間隔運行等の利用者目線による路線やダイヤの調整、サブスクリプション(定額運賃制や共通運賃制)など利用者が使いやすい運賃等が挙げられ、更にMaaS(マース)の導入に道を開く新モビリティサービス事業も挙げられています。本県においても人口減少等が日本一速いスピードで進む高齢化の中、地域公共交通ネットワークの劣化は避けられません。
一方、平成28年実施の県政サポーターアンケートによれば、県民利用者からの公共交通網の更なる充実、運行間隔の頻度向上と等間隔化、運賃の低額化など、地域公共交通の充実に対する要求は高く、それらへの対応が課題となっています。
今回の法改正も踏まえ、地域公共交通施策の統合化・広域化による地域公共交通の整備が本県のより良い県土形成に資するべく、以下お伺いいたします。
一点目として、県が地域公共交通計画を策定することについて伺います。
アフターコロナの県土形成を考えたとき、持続可能な都市づくり、まちづくりと連携した全県に渡る広域的な地域公共交通を計画的に整備していくことは重要です。公共交通を普及し持続することにより得られる経済的利益、社会的利益、健康増進などの利益を享受し、カーボンニュートラルや県民の融和、移動の平等性の実現等により、誰一人どの地域も取り残さない持続可能で豊かな未来の埼玉に向け計画的に取り組んでいくことは、広域的かつ専門的課題に対する行政機能として県が本来求められている役割ではないでしょうか。
また、現在検討が進められているあと数マイルプロジェクトの実現には、今後大きな行政負担の発生が予想されることから、県民に理解と判断を求めるためにも、あと数マイルプロジェクトを位置付けた県全体の公共交通に関するマスタープランである地域公共交通計画を策定し、県民に埼玉県のモビリティの目指すべき将来像を示していく必要があると考えます。
さらに、市町村に地域公共交通計画の策定を促すための指針となるものも必要ではないでしょうか。
今回の法改正を踏まえ、ないしは法改正によらずとも、本県としても県全域に渡る地域公共交通に関する計画を策定するべきと考えますが、いかがでしょうか。
二点目として、県が広域地域を関連市町村と連携して計画策定することについてお伺いします。
これまでは、地域の公共交通の計画を立てるのは市町村、しかし、人の生活と市町村の境は必ずしも一致していません。生活圏は隣町が当たり前です。公共交通利用者は市町村間を超えて利用しています。市町村単位で公共交通を計画している限り、市町村を超えての交通ネットワークの最適化はかないません。地域公共交通計画の策定には広域的な視点が必要であり、県も策定主体となるべきではないでしょうか。
事実、本県においては、公共交通空白地帯は市町村境あるいは地域境界周辺で多く発生しており、改善のためには市町村を超えた広域的な地域公共交通政策が必要と考えます。県が主体的に広域地域を関連市町村と連携して地域公共交通計画の策定に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
以上、二点について知事の見解をお聞かせください。
三点目として、県内市町村における地域公共交通計画の策定についてお伺いいたします。
本県の現在の地域公共交通計画の策定状況は17市町村となっています。また、立地適正化計画とリンクしている市町村は五つにとどまるなど、まずは今回の法改正の趣旨に沿い、より多くの市町村に計画の策定を促すべきと考えます。市町村の計画策定目標数を県行政の施策指標とするなど、計画策定の促進により積極的に取り組むことを提案いたしますが、いかがでしょうか。
四点目として、MaaSの導入について伺います。
現在、県内でも和光市や三芳町の事業が国の支援事業に採択され、飯能市ではモバイルチケットを導入した観光版MaaSが実施されるなど、主に民間主導、地域限定で実証実験事業などが行われています。MaaSの実走、導入の目的は、地域の足を移動者目線で地域が自らデザインすることにあります。MaaSはそのための手段です。
本来、何のためのMaaSかを決めるのは、その地域を管理する公的主体たる自治体ではないでしょうか。今後のMaaSの導入については、デベロッパーや鉄道、バスなど地域にコミットしている事業所を交えた組織、会議体により主導されることが想定されます。
高齢者対策、観光振興などに向けて極めて有効な手法であり、実現すれば理想的な地域サービスになり得るMaaSですが、現実は甘くありません。地域内の公共交通やタクシーなど事業者をまとめ、足りないところは新たな移動手段を補い、運用やメンテナンスが継続的になされるようにするなど、地道な取組が求められます。
また、MaaSの円滑な実施に際し作成が求められる新モビリティサービス事業計画は、地域公共交通計画との連動が期待されることからも、市町村が単独ではできない専門的かつ広域的分野の補完をする県行政が導入に向け主体的に関与することが望ましいと考えますが、いかがでしょうか。
以上、二点について企画財政部長の御所見をお聞かせください。
A 大野元裕 知事
県が県全域にわたる地域公共交通に関する計画を策定することについてでございます。
昨年11月、いわゆる地域公共交通活性化再生法が改正をされ、自治体における地域公共交通計画の策定が必ずしも進んでいないことから、その策定が努力義務とされました。
改正法第5条では、「地域公共交通計画は、市町村にあっては単独又は共同して、都道府県にあってはその区域内の市町村と共同して」策定するとされております。
また、改正法に基づき国が定めた基本方針では、この計画区域とは地域住民の日常生活に関して形成される交通圏が基本とされており、県のような圏域全体を想定しているものではないと理解をしております。
県全域にわたる計画は、全ての市町村に影響を及ぼすような基幹路線の維持が困難となる場合などに、策定の必要が生じるものと考えています。
他県において、県が全域にわたる計画を策定している例もありますが、広域的な幹線バス路線の維持・確保といった課題があり、それに特に対応する必要がある場合と承知をしております。
本県におきましては、交通網が比較的充実しており、現時点においては、全域に影響を及ぼす基幹的な路線の維持が困難となるような状況にはないと考えています。
したがって、「あと数マイルプロジェクト」も含めた地域公共交通の充実に関しては、県全域にわたる地域公共交通計画ではなく、5か年計画への位置付けなどにより、しっかりと取り組んでまいります。
あわせて、法によらない計画についても御指摘をいただきました。他県において、各地域の事情に応じて策定している例もございますので、それらを参考に、議員御指摘の県のモビリティを見える化するためにも、策定する意義や効果等について研究をしてまいります。
次に、県が主体的に広域地域を関連市町村と連携して計画策定することについてでございます。
議員お話しのとおり、生活圏と市町村の区域は必ずしも一致しておらず、生活圏が複数市町村にまたがる場合もございます。
こうした場合には、市町村は他の市町村と共同して計画を策定するなど、広域的な視点に立って取り組むことが求められると思います。
今回の法改正により、複数の市町村が共同して、県に対し計画の策定を要請できるとされており、県は必要があると認めるときには共同して計画を策定するとされております。
県といたしましては、まずは、市町村の意向を踏まえ、市町村が中心となった地域公共交通の在り方の検討や取組に対し、必要な情報提供や助言も行ってまいります。
また、市町村から計画策定の要請がある折には、県も調整役として参画するなど、市町村と十分に連携をしながら、地域における最適な公共交通となるよう努めてまいりたいと思います。
A 堀光敦史 企画財政部長
市町村の地域公共交通計画の策定促進についてお答えを申し上げます。
県内の市町村の計画策定は、昨年度末で17市町村、策定率27%と低い状況でございます。
これは、本県の公共交通が比較的充実していることから、計画策定の動機付けにつながりにくいことなどが考えられます。
県ではこれまでも、市町村向け研修会の開催や先進事例等の情報を提供するなど市町村を支援してまいりました。
今後はこれらに加え、個別の市町村ごとに具体的な相談にきめ細かく対応するなど、積極的に支援してまいります。
こうした観点からは、支援による成果の見える化といった進捗管理も重要と考えます。
県といたしましては、市町村の計画策定数を県行政の施策指標とすることも含め、市町村の計画策定促進に向けた取組を進めてまいります。
次に、MaaS(マース)の導入に県が主体的に関与することについてでございます。
議員お話しのとおり、MaaS導入の目的は、地域の足を移動者目線で地域自らがデザインすることにあります。
こうした観点から、第一義的には住民に身近な市町村が主体となって、地域課題解決のためにMaaSを活用していくことが重要と考えます。
一方、市町村域を越える地域課題の場合には、その調整役として県が果たすべき役割もあるかと思います。
「公共交通の利便性検討会議」においても、MaaSの導入促進について議論したところでございます。
県としては、まずは、市町村の取組に協力するとともに、市町村や民間事業者の取組を促進するための枠組みづくりなど、県の担うべき役割を踏まえて対応してまいります。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください