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掲載日:2024年4月2日

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答申第80号 「平成12年度県立高等学校教職員事故報告書」の部分公開決定(平成18年3月30日)

答申第80号(諮問第79号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成12年12月18日付けで行った「平成12年度県立高等学校教職員事故報告書(B2No.6)」(以下「本件文書」という。)についての部分公開決定のうち、「教員の性別」及び「事故の発生した日付」については、開示すべきである。

2 異議申立て及び審査の経緯

(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成12年12月6日付けで、埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号。以下「旧条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、実施機関に対し、「平成9年1月1日から平成12年12月6日までの期間において、埼玉県個人情報保護条例によって、埼玉県行政情報センター及びその他の公務所等にて浦和市内の県立高等学校に関する情報を開示するようにしたことにかかわる全請求書の一切、並びにその請求によって公開・開示された全文書・全情報の一切」の公開請求(以下「本件公開請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、本件公開請求について、個人の氏名、住所、年齢、性別及び学校名並びに個人を特定し得る部分は旧条例第6条第1項第1号に該当するとして、この部分を除いて公開を行うのが適当であると判断し、平成12年12月18日付けの行政情報部分公開決定通知書により、本件文書の部分公開決定(以下、「本件処分」という。)を申立人に通知した。

(3) 申立人は、平成12年12月20日付け異議申立書及び平成12年12月26日付け異議申立補充書により、実施機関に対し、本件処分を取り消して請求文書を全面公開するべきであるとして異議申立て(以下「本件異議申立」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件異議申立について、実施機関から平成16年5月28日付けで埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「新条例」という。)第22条に基づき、諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件に係る審査に際し、平成17年6月14日に実施機関から開示決定等理由説明書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成18年2月22日に実施機関から意見聴取を行った。
なお、審査請求人は反論書の提出をせず、当審査会に対する口頭による意見陳述を求めていない。

3 申立人の主張の要旨

申立人の主張は概ね次のとおりである。

(1) 本件公開請求は、既に特定個人によって行政情報公開または個人情報開示の請求がなされて公開・開示された申立人の情報をしっかりと把握・確認するためになされていることが明確であり、実施機関においても承知しているところである。特定個人が相手方に関する敵対行為に使用する目的で情報の公開・開示を請求していることも明確であり、実施機関においても承知しているところである。しかも、「公開しない情報」とされた特定個人の「個人の氏名、住所、年齢、性別、及び学校名並びに個人を特定し得る部分」については、既に申立人が全てを知り尽くしており、そのことを実施機関においても承知しているところである。本件公開請求によって、これらの情報が明らかになったからといって、申立人の特定個人に関する知識に変化が生じることもなく、状況にいかなる変化や支障が生じることはあり得ない。したがって、本件において旧条例第6条第1項第1号に該当する、と判断することは、同条文をいたずらに拡大解釈し、もって民主主義法治国家における旧条例の趣旨を歪めるものといわざるを得ない。

(2) 旧条例第6条は、該当する情報の公開を禁止するものではなく、「公開しないことができる。」と規定するのであって、一刀両断に旧条例第6条に該当することをもって非公開とするのでは、あまりに拙速・軽率であり、仮にもかような姿勢で情報を非公開とするのであれば、やはり民主主義法治国家における旧条例の趣旨を歪め、社会からの謗りを免れ得ない。

(3) 旧条例は民主主義法治国家におけるその存在意義や成立過程に鑑みて、決して「よらしむべからず、知らしむべからず」というようなお上意識に立つことなく、可能な限り情報の公開・開示を図り、民主主義法治国家の発展に寄与するようにするという姿勢でなければならない。
既に申立人が特定個人についての情報を知っている以上、情報の公開開示に起因して支障・混乱・迷惑等が新たに生じることはあり得ないのだから、「個人の氏名、住所、年齢、性別、及び学校名並びに個人を特定し得る部分」について非公開にする理由は何ら存在しない。

(4) 平成12年12月18日に実際に公開されて申立人が閲覧した文書は、行政情報部分公開決定通知書(教高第577号・12年12月18日)に指定された「個人の氏名、住所、年齢、性別、及び学校名並びに個人を特定し得る部分」以外の部分も、日付等が極めて多数にわたって黒塗りにされ、まるでシマウマやパンダの斑模様を見ているようであり、情報が公開されたとは言い難い状況であった。これでは、文書全体の流れも掴めず、前後関係も把握できない。
情報が公開されたとは言い難い状況を改め、全面公開するよう請求する。

(5) 学校名については、百人にも及ぶ教職員、千人を超える生徒によって構成されている「大所帯」の公務所であって、特定の個人が識別され得ることはまったく可能性がない。したがって、旧条例第6条第1項第1号には決して該当しない。そもそも、学校名は、広くあまねく知られている公開情報であって、いかなる理由をもってしても、これを個人情報と関連させたり、公開・開示を拒んだりというようなことはできない。したがって、この公開を制限・制約するに足る合理的で妥当な理由は存在しない。
それにもかかわらず、あえて「学校」や「学校の図面」等を非公開にするという公権力行使に踏み切ったということは、申立人に対して常に敵意や悪意を抱いて不利益を及ぼそうという意図を持っている特定の学校長の意思によって強く影響されるものであって、断じて容認できない。

(6) 本件情報公開の惨憺たる現状を分析し、情報公開の実務的手続きについての話し合いの内容を考察すると、本件処分の意思決定に当たっては、申立人の上司である学校長の意思が強く反映されていることが明らかである。だからこそ、行政情報部分公開決定通知書(教高第577号)の決定さえ遵守せず、極めて限定的な情報の開示にとどまっている。この、極めて限定的な情報の公開こそが、特定の学校長の恣意的意思によって歪められたことの動かし得ぬ証拠である。
このように歪んだ形で行政情報公開にかかわる意思決定が行われるということは、行政情報の公開が為される際に、アその透明性を確保する、イ誰が情報公開請求をしても同一の基準で情報公開されるという公平性を保持する、という、行政情報公開制度の本旨を蔑ろにするものであって、断じて許されない。

(7) 特定の学校長の今までの言動をつぶさに検討してみれば、いかに整合性や妥当性を欠き、恣意的・感情的で酷いものであるか、手に取るように浮き彫りになり、本件処分の意思決定に当たっての特定の学校長の歪んだ恣意的意思を証明する証拠になる。

(8) 特定の県立高等学校において、平成12年10月11日に管理指導が実施されたが、定時制では同じ日に生徒指導部の主催で、申立人が一人で一手に引き受ける形で防火防災訓練も実施され極めて多忙であった。種々の事情があったにもかかわらず、特定の学校長には、単に「初めに申立人厳罰ありき」という意識だけでなく、差別扱いが顕著である。

(9) 旧条例に基づき特定個人から出された情報公開請求が、個人情報保護の点で受理されないにもかかわらず、それをひた隠しにして、7月3日の勤務時間外に申立人を呼びつけ、管理職3名によるリンチのような吊し上げに遭わせ、勤務状態について根掘り葉掘り詰問し、労働基準法違反を犯した。

(10) 実施機関において、特定個人が埼玉県個人情報保護条例によって行った開示請求を受けた段階で、仮にも特定個人の開示請求にしたがって情報開示に踏み切れば、その公権力行使が、ひとり特定個人のみを利する「利益処分」「利敵行為」になり、しかも、それと同時に申立人に対しては「不利益処分」になるのだという認識を持っていることになる。このような認識のもとに、このような不公平・差別を生ずる公権力行使として、特定個人の情報開示請求に応じたという事実は、まったくもって、腹立たしく、信じがたく、容認できない。

(11) 前項で指摘した差別・不公平は、憲法第14条に規定された「法のもとの平等」の観点からも許しがたい公権力の行使であり、特定個人と申立人との間でバランスがこのように崩れた扱いが為されているということは、憲法違反に他ならない。

(12) 前々項及び前項で指摘した差別・不公平は、憲法第14条に違反しているばかりではなく、埼玉県行政手続条例第1条に規定された目的・趣旨にも反しており、法的効力はない。特定個人に情報を開示するということは、即、申立人にとっての不利益情報であるにもかかわらず、実施機関は申立人に対して事前にも事後にも何らの通知、連絡等をしておらず、申立人が聴聞を受けたり、弁明をする機会も奪われた。
これは、埼玉県行政手続条例第13条に規定された手続を無視しており、公権力の行使による不利益処分として正規の手続きが為されていないのであるからして、特定個人に対する開示が無効なのは明らかである。
無効とはいえ、特定個人に情報開示してしまった以上、差別・不公平のアンバランスを是正する措置が執られなければならないにもかかわらず、実施機関が、申立人に対する2度目の不利益処分として本件公開請求における不当な情報制限を実行するということは、二重の公権力不当行使であって、絶対容認できない。その背後に特定の学校長の意図が働いているとしか断じ得ない。

(13) 実施機関においては、埼玉県行政手続条例第14条に規定された不利益処分の理由の提示もしていない。第21条に規定した陳述書等の提出の機会も与えられていない。公権力の行使による不利益処分として正規の手続きが為されていないのであるから、特定個人に対する開示が無効であるのは明らかである。
無効とはいえ、特定個人に情報開示してしまった以上、差別・不公平のアンバランスを是正する措置が執られなければならないにもかかわらず、実施機関が、申立人に対する2度目の不利益処分として本件公開請求における不当な情報制限を実行するということは、二重の公権力不当行使であって、絶対容認できない。その背後に特定の学校長の意図が働いているとしか断じ得ない。

(14) 本件公開請求は、埼玉県行政手続条例第18条に規定された文書等の閲覧、第37条に規定された写しの交付に該当するものであり、実施機関において既に特定の個人開示したものと同一の情報の文書等の閲覧、写しの交付を拒むものであれば、埼玉県行政手続条例第18条、第37条に抵触する違法な公権力の行使となるものであり、絶対容認できない。

5 審査会の判断

(1) 適用条例について

新条例は平成13年4月1日に施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する不服申立てであるため、当審査会は、旧条例の規定に基づき本件異議申立の検討を行う。

(2) 本件文書について

本件文書は、平成12年6月23日付けで特定の県立高等学校から実施機関に提出された職員事故に関する報告書である。その内容は、当該学校内での教員と当該学校の警備員との間で、当該警備員の主張するところでは暴力行為とされる事件についての記録が記載されたものである。

(3) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について

情報公開制度は、旧条例第1条で規定しているとおり、県民に行政情報の公開を求める権利を保障するとともに、行政情報の公開請求があった場合には、原則として、当該情報を公開しなければならないことを実施機関に義務付けたものである。
旧条例第6条第1項は、この原則の例外として、請求された行政情報が同項各号のいずれかに該当する場合には、公開しないことができることを定めたものであり、同項は旧条例に基づいて行政情報の公開請求があった場合に不特定多数の民に対して公開するかどうかを判断するための基準である。
また、同項第1号は「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」と定めるが、ここで、「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合も含むものである。
次に、本件処分において「公開しない情報」とされた各情報について検討する。

  • ア 個人の氏名、住所、年齢及び性別
    これらの情報は、警備員及び教員についての個人の基本的事項に関する情報であって、これを公開した場合、一般的には、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報である。
    警備員及び教員の各情報については、旧条例第6条第1項第1号ただし書イ、ロ及びハに該当する事実は認められない。
    ただし、本件処分では学校名を公開しておらず、また、次のイで検討するように当審査会としても学校名は公開すべきではないと判断するところである。
    本件文書に記載された事故は学校内で発生したものであり、学校名を公開しないのであれば、当該事故に係る「教員の性別」を公開したとしても、浦和市内の県立高等学校において男性又は女性の教員がただ一人という事態が想定できないことから他の情報と組み合わせても、当該教員について特定の個人が識別され、又は識別され得ることに当たらないと認められる。
    よって、本件文書において「教員の性別」は、旧条例第6条第1項第1号に該当しないので、公開しない情報とすることは不適当であるが、その余の警備員と教員の氏名、住所、年齢及び性別(性別は警備員に限る。)は、旧条例第6条第1項第1号に該当し、公開しない情報とすることが適当である。
  • イ 学校名
    実施機関の説明によると、本件文書に係る学校の夜間警備は警備会社に委託し、警備員は当該警備会社から派遣され、当該学校へ配置された警備員は2人であり、日々の警備はこの2人が交代で行うものであった。そして、当該学校に派遣された警備員は、十年にわたり当該学校に連続して派遣されるのが通例である、とのことである。
    そうであるならば、学校名を公開することは、本件処分で警備員が本件事故の当事者であるという情報を既に公開しているところであることを考慮すれば、警備員について特定の個人が識別され、又は識別され得ることに当たると認められる。
    よって、本件文書において「学校名」は、警備員に関する情報として旧条例第6条第1項第1号に該当し、公開しない情報とすることが適当である。
  • ウ 個人を特定し得る部分
    • 学校の図面
      当審査会で「学校の図面」を見分したところ、図面中に特定の教育施設の形状及び名称が記載されており、これにより当該学校の学校名を容易に特定することができると認められた。
      そうすると、「学校の図面」を公開することは、学校名を容易に特定することができるようにすることになるので、上記イで説明した理由により、本件文書において「学校の図面」は、警備員に関する情報として旧条例第6条第1項第1号に該当し、公開しない情報とすることが適当である。
    • 日付
      当審査会で見分したところ、本件文書に事故の発生した日付が月日及び曜日で記載されている。また、事故の発生については、平成12年度であることは既に公開されている。
      ところで、本件処分では学校名を公開しておらず、また、当審査会としても学校名は公開すべきではないと判断するところである。
      本件文書に記載された事故は学校内で発生したものであり、学校名を公開しないのであれば、事故の発生した日付及び曜日を更に公開したとしても、他の情報と組み合わせても、当該事故の当事者である警備員あるいは教員について特定の個人が識別され、又は識別され得ることに当たらないと認められる。
      よって、本件文書において「日付」は、旧条例第6条第1項第1号に該当しないので、公開しない情報とすることは不適当である。

(4) 自己情報について

申立人は、「本件公開請求は、既に特定個人によって行政情報公開または個人情報開示の請求がなされて公開・開示された申立人の情報」であるとし、そのうえで「「公開しない情報」とされた特定個人の「個人の氏名、住所、年齢、性別、及び学校名並びに個人を特定し得る部分」については、既に申立人が全てを知り尽くしており、そのことを実施機関においても承知しているところである」とし、あたかも自己情報の開示請求であるかのように主張する。
しかし、いわゆる自己情報の開示手続に関しては、本件処分のあった平成12年12月18日の時点では埼玉県個人情報保護条例(平成6年埼玉県条例第5号)に規定されていることから、実施機関が旧条例に基づく本件処分を行うに当たっては、公開請求者である申立人の属性として、当該情報に係る本人であるかあるいは第三者であるかを考慮する必要はないのであって、これに反する申立人の主張を容れることはできない。

(5) 申立人のその他の主張について

申立人は、本件処分の意思決定に学校長の意思が強く反映され、公開の実施に当たって、本件処分と異なる極めて限定的な情報の公開を実施した、と主張する。
当審査会で本件文書を見分し、実施機関が当審査会に提出した本件処分の行政情報部分公開決定通知書と照合したところ、申立人の主張する事実は認められなかった。
また、申立人は、埼玉県個人情報保護条例によって行われた情報開示が不公平や差別を生ずる公権力の行使であり、埼玉県行政手続条例第14条及び同条例第21条に反すると主張し、更に、本件公開請求が埼玉県行政手続条例第18条及び同条例第37条に該当するものであるなどと主張する。
しかし、これらの理由により、本件処分における公開、非公開の判断が左右されるものではない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
城口美恵子、田村泰俊、山口道昭

審議の経過

年月日

内容

平成16年5月28日

実施機関から諮問を受ける(諮問第79号)

平成17年6月13日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成17年12月22日(第二部会第9回審査会)

審議

平成18年1月20日(第二部会第10回審査会)

審議

平成18年2月22日(第二部会第11回審査会)

実施機関から意見聴取及び審議

平成18年3月17日(第二部会第12回審査会)

審議

平成18年3月30日

答申(答申第80号)

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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