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掲載日:2024年3月26日

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答申第45号 「警察署が特定個人の住民票等を請求したとみられる公文書」の不開示決定(平成17年5月27日)

答申第45号(諮問第42号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成14年9月5日付けで行った、「平成10年に幸手署が○○市に対して○○○○○方の住所が分かる書類(住民票及び戸籍の附票又は戸籍謄本等)を請求したとみられる公文書と請求したことが記録されているとみられる発出簿、受理簿など」(以下「本件文書」という。)を存否を明らかにしないで不開示とした決定は妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「審査請求人」という。)は、平成14年8月22日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「公開条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、次の内容で開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。「平成10年に、幸手署が○○市に対して私方の住民票及び戸籍の附票又は戸籍謄本等私方の住所地が分かる書類等を請求したとみられる公文書と請求したことが記録されているとみられる発出簿、受理簿など」

(2) これに対して、実施機関は、平成14年9月5日付けで公開条例第13条を適用し、「当該公文書の存否を答えること自体が公開条例第10条第1号の不開示情報を開示することになる。」として、存否を明らかにしないで不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。

(3) 審査請求人は、平成14年10月31日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消して、公文書の開示を求める審査請求を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について平成15年1月29日付けで審査庁から公開条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に際し、審査庁から平成16年9月22日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けたが、審査請求人から当該説明書に対する反論書の提出は受けていない。

(6) 当審査会は、平成17年3月15日に、実施機関の職員から事情聴取を行った。なお、審査請求人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

(7) 当審査会の本件審査に対し、審査庁から平成17年4月12日付けの「補充説明書」の提出を受けた。

3 審査請求人の主張の要旨

審査請求人が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。

(1) 私本人の開示請求なので私の権利・利益を侵害することはない。

(2) 存否応答拒否の処分を取り消して、公文書の開示を求める。

4 実施機関の主張の要旨

審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 情報公開制度と個人情報保護制度

  • ア 公開条例は、「県民の知る権利」を保障するとともに、県の諸活動を「県民に説明する責務」が全うされるようにすることを目的とし、情報公開制度は、特定人に対してのみならず、広く県民等に等しく情報の公開をすべきものである。
  • イ 一方、埼玉県個人情報保護条例(以下「保護条例」という。)は、県の機関に対する「個人情報の開示及び訂正を請求する権利」を明らかにするとともに、「個人の権利利益を保護」することを目的としたものであり、情報公開制度と個人
    情報保護制度は、その趣旨、目的が明らかに異なるものである。

(2) 自己の個人情報の開示請求について

  • ア 自己情報の開示請求は、保護条例第12条第1項で、「何人も、実施機関に対し、公文書に記録された自己の個人情報であって、当該実施機関の権限に属する事務に係るものの開示を請求することができる。」と定められている。
    さらに、保護条例第15条第2項は、「開示請求をしようとする者は、自己が当該開示請求に係る個人情報の本人又はその法定代理人であることを確認するために必要な書類で実施機関が定めるものを提出し、又は提示しなければならない。」と規定し、本人等の確認手続きが定められている。
  • イ 埼玉県行政情報公開条例第7条に規定されていた、自己情報の開示請求権は、平成6年に保護条例が制定された際に削除され、平成6年10月1日以降の自己情報の開示請求は、すべて保護条例の規定によることとされた。
  • ウ したがって、自己情報の開示を認める場合は、本人等の確認手続の仕組みが措置されていなければならないが、公開条例の開示請求の手続きにおいては、規定されていない。このことから、自己情報の開示請求は全く対象とされていないことは明らかであり、公開条例においては、開示請求者が当該個人本人であるか否かにかかわらず、何人に対しても等しく同様に扱うべきである

(3) 本件審査請求の原処分

  • ア 本件審査請求に係る審査請求人の行った開示請求は、個人を特定して、警察の捜査活動等に係る公文書についての探索的請求である。
  • イ 開示請求に係る文書が具体的にあるかないかにかかわらず、当該公文書の存否を答えるだけで、特定の個人に関する捜査活動等を行っているか否かの事実が明らかとなる。このこと自体が、個人の権利利益を侵害する情報であって、公開条例第10条第1号に該当する不開示とすべき情報を開示することとなる。
  • ウ したがって、公開条例第13条の規定により、開示請求を拒否(存否応答拒否)したものである。

5 審査会の判断

(1) 本件請求について

本件請求は、警察署が審査請求人本人の住民票等を請求した公文書について、審査請求人本人が開示を求めたものである。

(2) 本人による自己情報の開示について

申立人は、自己情報開示請求として本件請求を行っていることが認められるので、まず公開条例に基づいてかかる請求が認められるか否かについて判断する。埼玉県における情報公開制度は、「県民の知る権利」を保障するとともに、県の諸活動を県民に説明する責務を全うし、地方自治の本旨に即した透明な開かれた県政の推進に寄与することを目的とするいわゆる「一般公開制度」である。

公開条例第7条は、公文書の開示を請求できるものについて「次の各号のいずれかに該当するものは、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」とし、第1号から第4号において、県内在住、在勤・在学者を、さらに第5号において、前各号に該当せず公文書の開示を必要とする相当の理由を有する者を請求権者としているが、これら請求権者に当たれば、特に本人の状況、利害内容、請求目的に関わりなく、第10条各号に定める不開示規定に該当しない限り、開示を受けることができるというのが本条例の趣旨である。したがって、逆に、実施機関の開示不開示の判断に当たっては、自己の情報を根拠とした情報の必要性等の請求者の特別の事情は考慮されるものではないことは明らかである。

また、公開条例第10条第1号は、開示義務の例外(いわゆる不開示規定)として「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と規定して、特定個人が識別されれば不開示情報に当たるものとし、ほかに当該個人情報が請求者本人のものであるかどうかについて考慮する規定は置かれていない。

なお、請求者本人の個人情報の開示(自己情報開示)については、別に個人情報保護制度を通じて行われるべきところ、すでに本県においても、保護条例が定められていることが認められる。今回、申立人が公開条例に基づいて自己情報の開示を請求したのには、公安委員会が、公開条例の実施機関とされているのに対し、保護条例の実施機関とはされていないという事情があると推測されるが、公開条例が、いわゆるプライバシー型として「通常他人に知られたくない個人に関する情報」を不開示規定として定めているのであればともかく、本県公開条例は、いわゆる個人識別型として、上記不開示規定を定めるにとどまっているのであるから、請求者が当該個人情報の本人であるかどうかを考慮しなかった実施機関の判断に誤りはない。

(3) 公開条例第13条該当性について

公開条例第13条は「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定している。

開示請求がなされた場合、通常は、請求にかかる公文書が存在していれば、それを対象公文書として特定し、開示又は不開示の決定が行われ、公文書が存在していなければ、不存在の決定がなされる。このように情報公開制度のもとでは、文書の存否が明らかにされた上で決定がなされるというのが原則である。しかしながら、存在自体を明らかにしがたいようなセンシティブな情報への請求や、情報の探索的な請求など、開示請求に係る公文書が存在することを認めること自体が、不開示規定が保護する利益を損なうような場合があることから、例外的に、公開条例第13条は、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定を認めている。

本件請求は、警察署が特定個人の住民票等を請求した公文書の公開を求めるものであるが、本件文書の存否を明らかにして開示不開示を判断することは、警察署が特定個人に関する捜査活動等を行っているか否かの事実を明らかにすることとなる。特定の個人が捜査活動等の対象になったか否かという事実はそれ自体個人情報であり、その公開は、個人の情報を公開するものとして、個人の利益を害するものと認められる。したがって、同条に基づき本件請求を拒否した決定には、相当の理由があると認められる。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
野村武司、藤田由紀子、馬橋隆紀

審議の経過

年月日

内容

平成15年1月29日

諮問を受ける(諮問第42号)

平成16年9月22日

審査庁より開示決定等理由説明書を受理

平成17年3月15日(第49回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成17年4月12日

審査庁より補充説明書を受理

平成17年4月15日(第二部会第1回審査会)

審議

平成17年5月19日(第二部会第2回審査会)

審議

平成17年5月27日

答申

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

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