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掲載日:2024年3月26日

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答申第76号 「教職員の事故について(進達)(平成8年4月19日付け教市第89号)」等の部分公開決定(平成18年3月17日)

答申第76号(諮問第76号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県総務部県政情報センター所長(以下「所長」という。)が平成9年7月17日付けで行った、埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)の保管する別紙1に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)に記録された行政情報の部分公開決定(以下「本件処分」という。)において非公開とした部分のうち、別紙5に掲げる部分を公開すべきである。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人は、平成9年5月27日、埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号。以下「旧条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、所長に対し、「1996年4月1日から1997年5月27日に教育局が収受した小・中・高の体罰の報告書」の公開請求を行った。

(2) これに対して、所長は、本件公開請求に係る行政情報を本件対象文書と特定した上で、平成9年7月17日付け県情第635号により本件処分を行い、審査請求人に通知した。
なお、本件処分において、公開しない行政情報及びその理由は、別紙2に掲げるとおりである。

(3) 審査請求人は、平成9年9月4日付けの審査請求書により、実施機関に対し、本件処分において非公開とされた教諭・校長の学校名、氏名、年齢、性別及び発生日時、場所は旧条例第6条第1項第1号に該当するとはいえず、また、理由付記に瑕疵があるとして、本件処分の取消しを求める審査請求を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について、平成16年3月31日付けで実施機関から埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「新条例」という。)第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に際し、実施機関から平成17年5月10日付けの理由説明書及び同年12月7日付けの補充理由説明書の提出を受けた。
なお、審査請求人から理由説明書に対する反論書の提出を受けていない。

(6) 当審査会は、平成17年6月16日に、実施機関の事務局である教育局の職員から口頭による説明を聴取した。
なお、審査請求人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を申し立てていない。

3 審査請求人の主張の要旨

審査請求人の主張する審査請求の理由は、審査請求書の記載によると、おおむね以下のとおりである。
本件対象文書のうち、公開しない行政情報とされた教諭・校長の「学校名」「氏名」「年齢」「性別」及び「発生日時」「場所」は、公務員が公務執行中に起こした事故に係るものであって、公開しない理由とされた旧条例第6条第1項第1号に該当するとはいえないから、公開されるべきである。
本件処分に係る非公開理由は、漠然的であり、非公開理由付記義務を十分果たしていない。

4 実施機関の説明の要旨

(1) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について

旧条例第6条第1項第1号本文では「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」については、原則として公開しないと規定している。ここでいう「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合も含むものである。また、一般の人にとっては識別できないが、一定の知識・経験を有する者であれば特定の個人を識別できる場合をも含むものである。
本件対象文書に記載されている情報のうち、被害児童生徒の学年、組などは既に公開されており、これらの情報に加え、教諭・校長の「学校名」「氏名」「年齢」「性別」及び「発生日時」「場所」を公開すると、当該体罰事故が発生した学校の児童生徒や教職員など一定の者は、加害教師や被害児童生徒を識別することができることになる。
したがって、教諭・校長の「学校名」「氏名」「年齢」「性別」及び「発生日時」「場所」は、公開することによって、特定の個人が識別され得ることになるので、旧条例第6条第1項第1号に該当する。

(2) 非公開理由付記義務懈怠の瑕疵について

旧条例第10条第4項では「実施機関は、公開請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面により、前項の通知をしなければならない。」と規定している。この規定の趣旨は、公開等の決定について、慎重かつ合理的な判断を確保するとともに、非公開決定等が争訟の対象となり得る処分であることから、処分の内容を明確にし、それを請求者に知らせて争訟の便宜を図るためのものである。
具体的には、公開請求者がその通知だけから了知し得る程度、すなわち、非公開とされた情報が旧条例第6条第1項各号のどれに該当するのか、また、なぜ当該非公開条項に該当するのかを知ることができる程度に記載されていることが必要である。
本件処分について、旧条例第6条第1項第1号に該当する理由として記載している内容は、当該条文とほとんど同じであるが、本件処分が部分公開決定であり、公開しない行政情報が個別具体的に記載されていること及び本件文書が事故報告(体罰)に関するものであり、公開された情報から公開しない部分にどのような情報が記載されているかをおおむね推定することができることから判断すれば、このような概括的な記載であっても、公開請求者は各非公開情報がなぜ旧条例6条1項1号に該当するかを了知し得ると考えられ、本件処分を取り消さなければならない程度に理由付記の不備があるとまではいえない。

(3) 体罰に係る事故報告書の公開に係る対応について

体罰に係る事故報告書の公開請求については、本件処分がなされた当時は、「学校名」を非公開とした処分を行っていたが、平成10年5月に、埼玉県情報公開監察委員(旧条例第13条第1項に規定する救済機関)から実施機関に対して「職員事故報告書の作者名が公開されないことは、公文書の責任性の観点から問題であると考えられるため、「学校名」が公開できるかどうかも含めて、職員事故報告書の公開・非公開についての基準の見直しを検討すべきである。」との意見書が提出された。
この意見書を受け、実施機関において、公文書の責任性の観点から、学校事故報告書全般についての公開等基準のあり方について検討を行った結果、平成12年7月1日以降実施機関が収受する体罰に係る事故報告書については、原則として「学校名」を公開するよう基準を見直したところである。

5 審査会の判断

(1) 答申するに当たっての適用条例について

新条例は平成13年4月1日に施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する不服申立てであるため、当審査会は、旧条例の規定に基づき本件不服申立てについて検討する。

(2) 本件対象文書について

  • ア 本件対象文書は、平成8年4月1日から平成9年5月27日(本件公開請求日)までの間に、埼玉県内の市町村立小学校長又は中学校長から市町村教育委員会、更に県教育事務所を経由して(文書1から文書8まで)、また、埼玉県立高等学校長から直接(文書9から文書17まで)、実施機関に提出された公立学校における職員事故(体罰)に関する別紙1に掲げる文書であり、その内容は、教育職員の児童生徒に対する暴力行為等(体罰)に関する記録が記載されている。
  • イ 文書1から文書8までは、埼玉県内の市町村立小学校又は中学校において発生した職員事故(体罰)に関するもので、県の教育事務所長から実施機関の教育長あての進達文書本体に、市町村教育委員会教育長から実施機関の教育長あての報告文書本体、更に学校長から市町村教育委員会教育長あての職員事故報告書が添付されている。具体的には、文書ごとにおおむね別紙3に掲げる事項が記載されている。
  • ウ 文書9から文書17までは、埼玉県立高等学校において発生した職員事故(体罰)に関するもので、実施機関内部の回覧文書本体(「平成8年度県立高等学校教職員事故報告」と文書名が頭書されているもの)に、学校長から実施機関の教育長あての職員事故報告書が添付されている。具体的には、文書ごとにおおむね別紙4に掲げる事項が記載されている。
  • エ なお、本件対象文書を含む公立学校における職員事故(体罰)に関する報告書等の部分公開決定については、他の審査請求人からも審査請求が行われており、これに関しても、実施機関から当審査会に諮問されている(諮問第7号ないし第12号に係る答申参照)。
    さらに、本件審査請求後において、実施機関は、公文書の責任性の観点から、平成12年7月1日以降実施機関が収受する職員事故(体罰)に関する報告書について、原則として「学校名」を公開するよう情報公開の運用基準を見直している。
    そこで、当審査会としては、その諮問や運用基準見直しをも視野に入れ、慎重に調査審議を行った。

(3) 旧条例第6条第1項第1号該当性について

  • ア 審査請求人は、部分公開とした本件処分に対して、教諭・校長の「学校名」「氏名」「年齢」「性別」及び「発生日時」「場所」については、旧条例第6条第1項第1号に該当しないとして公開を求めていることから、以下、当該部分の公開の可否について検討する。
  • イ 旧条例第6条第1項第1号本文では、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」については、原則として公開しないと規定している。
    本号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人に関する情報の内容のいかんを問わず、特定の個人が識別され又は識別され得る限りにおいて、当該情報を原則として公開しないことができるとするものであるが、ここでいう「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合も含むものと解される。
    また、旧条例第6条第4項は、部分公開について規定するが、個人に関する情報に関しては、公文書に特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名等特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、氏名等の個人識別部分を除いて公開すべきものと解される。
  • ウ 実施機関は、審査請求人から不服のあった部分について、これを公開すると、当該体罰事故の発生した学校の児童生徒や教師など一定の者にとってはその独自に入手した他の情報によって、これら一定の者の間においては、特定個人である加害教師や被害児童生徒などを識別することができるとして、旧条例第6条第1項第1号に該当すると主張する。
    本件のような学校における職員事故(体罰)の場合には、事故が発生した学校の教職員等、警察関係者、児童生徒及びその保護者、近隣住民が関係者として想定されるが、近隣住民以外の関係者は、本来、学校における職員事故の存在に関する情報を有しているものであるから、これらの者の立場から、特定個人の識別性の可否を判断することは適切でない。
    すなわち、これらの者は、特定年度の特定学校における職員事故の発生という情報から既に特定個人を識別することは可能であることから、旧条例第6条第1項第1号の解釈上、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され得る場合の「他の情報」にこれらの者の有する特別の情報を含むとして同号の個人に関する情報の識別性を判断することは相当でない。
    したがって、個人に関する情報の識別性の判断に当たっては、これら特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報と組み合わせることにより、個人を識別できるか否かを判断すべきである。また、近隣住民についても、当該個人に関する情報の性質や内容に応じて個別に判断する必要があるが、地域の一般住民がその情報を知ることによって特定個人を識別し得ることとなる場合は格別、そうでない場合には上記の近隣住民以外の関係者の場合と同様に解するのが相当である。
    以上のように解した上で、当該個人に関する情報を、そのうちの氏名等特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除いて公にすることにより、なお個人の権利利益が害されるおそれがあると認められるときは、当該個人に関する情報は、氏名等の個人識別部分を除いた部分公開をすることができず、非公開とすべきものと解するのが相当である。

以下、上記のような観点から本件対象文書について検討する。

  • (ア)教諭・校長の氏名、年齢及び性別
    加害者である教諭等の性別は、当該教諭等が事故当時所属する学校において男性又は女性の教諭等がただ一人であるという特別の事情が認められない限り、これを公にしても当該個人の権利利益が害されるおそれがある情報とは認められず、公開すべきである。
    本件調査審議において、当審査会は、実施機関に対し、このような特別の事情の存否について説明を求めたが、その存在を首肯させるような説明はなかった。
    上記教諭等の性別以外の加害者である教諭等の氏名及び年齢は、個人識別部分であることから、部分公開の対象とすることはできず、非公開とすることが妥当である。
    なお、審査請求人は、公務員が公務執行中に起こした事故に係るものであって、旧条例第6条第1項第1号に該当するとはいえないと主張するが、公務員が公務執行中に起こした事故に係る情報の公開の可否については、当該情報中に個人に関する情報が含まれているときは、当該個人に関する情報の性質や内容に応じて個別に判断する必要がある。
  • (イ)学校名
    学校名を公開すると、本件において既に公開されている特定の学年・組の特定の授業、特定の部活動及び生徒会活動等の情報(以下、単に「特定学年等情報」という。)とあいまって特定個人を識別することができる可能性がある。
    しかし、本件においては、地域の一般住民が特定学年等情報に加えて学校名を知ることによって直ちに特定個人を識別し得ることになるとは認められない。そこで、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され得る場合の「他の情報」については、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るかどうかを基準として判断すべきである。
    本件対象文書においては、既に公開されている特定学年等情報の状況が文書により異なっているため、上記の観点から、学校名の公開の可否について、以下、本件対象文書を個別に判断する。
    なお、本件対象文書においては被害者の学年及び組が既に公開されているが、この情報のみと学校名が組み合わさって、直ちに特定個人を識別し得ることとなるものとは認められない。したがって、非公開とする場合については、その個人識別の可能性を個別に精査することを要する。
    以下で学校名を公開すべきであると判断した文書における文書記号(文書9、文書11、文書12及び文書16にあっては、文書記号・番号)並びに学校長の氏名及び職印の印影については、個人に関する情報としては学校名に当然付随する情報であることから、旧条例第6条第1項第1号に該当しないこととなる。したがって、これらの部分は、学校名と併せて公開すべきである。
    1. 学校名を非公開とすることが妥当である文書
      文書1については、被害者の属性情報として「ハンドボール部長」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(被害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書2については、加害者の属性情報として「教諭(2年1組担任)」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書3については、加害者の属性情報として「教諭(6年2組学級担任)」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書4については、加害者の属性情報として「校長」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書7については、加害者の属性情報として「教諭(3年3組担任)」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書10については、被害者の属性情報として「生徒会長」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(被害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書13については、加害者の属性情報として「野球部顧問」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書14については、加害者の属性情報として「バレーボール部顧問」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書15については、加害者の属性情報として「野球部顧問」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
      文書17については、加害者の属性情報として「野球部顧問」との部分が既に公開されていることから、新たに公開される学校名と組み合わせると、特定個人(加害者)を識別し得ることになるため、学校名を非公開とすることが妥当である。
    2. 学校名を公開すべきである文書
      文書5については、「3年7組の理科の授業中」との部分が既に公開されているが、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
      文書6については、既に公開されている情報の中に、特段に特定個人の識別性に影響を与えるような情報は見当たらないため、学校名を公開すべきである。
      文書8については、「第2校時の理科の授業中」との部分が既に公開されているが、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
      文書9については、「2年4組、ギター部」との部分が既に公開されているが、部活動であれば複数の部員が在籍しているのが通常であり、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
      文書11については、「体育教師」との部分が既に公開されているが、高校には体育教師が複数在職しているのが通常であり、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
      文書12については、「体育の授業中」「サッカーの授業中」との部分が既に公開されているが、高校には体育教師が複数在職しているのが通常であり、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
      文書16については、「体育の補習中」との部分が既に公開されているが、高校には体育教師が複数在職しているのが通常であり、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るとは認められないため、学校名を公開すべきである。
  • (ウ)事故発生日時及び場所
    事故発生日時及び場所は、加害者及び被害者等の個人識別部分が公にされていないことから、地域の一般住民がこれらの情報を知ることによって特定個人を識別し得る情報とは認められない。
    そこで、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され得る場合の「他の情報」については、特別の情報を有している関係者以外の者からみて、通常入手し得る他の情報により、特定個人を識別し得るかどうかを基準として判断すべきであるが、本件においては、このような識別可能性は認められない。
    さらに、事故発生日時及び場所を公にすることにより、本件においては、特定個人の権利利益が害されるおそれがあるとまでは認められないので、これらの部分は公開すべきである。

(4) その他の審査請求人の主張について

審査請求人は、本件処分における理由の提示につき、漠然的であり、非公開理由付記義務を十分果たしていないことが違法ないし不当であると主張している。
この点については、処分時において、実施機関が公開請求者の便宜のためにできる限り具体的に理由を記載することが望ましいことは言うまでもないが、本件処分においては、概括的な記載ではあるが、非公開とする部分についての根拠条文及びその条文に該当することの根拠を示しており、理由の提示として不備があるとまではいえず、違法ないし不当なものとは認められない。

(5) 本件処分の妥当性

以上のことから、本件処分については、別表5に掲げる部分については、旧条例第6条第1項第1号に該当するとは認められないので、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(6) 本件諮問の時期について

なお、実施機関は、本件諮問を平成16年3月31日に行っているが、本件審査請求は平成9年9月4日付けでなされており、審査請求から諮問まで約6年7か月の期間が経過している。新条例が施行され新条例第22条の規定により実施機関に当審査会への諮問義務が生じた平成13年4月1日以降に限ってみても、諮問まで3年の期間が経過している。
この点について、当審査会から実施機関に説明を求めたところ、実施機関は、他の審査請求人からなされた本件と同様の内容である事故報告書の部分公開決定に対する審査請求を、本件に先立って平成13年9月13日に当審査会に諮問しており(諮問第8号ないし第12号)、その答申が出る平成15年1月16日まで本件の諮問を控えていた。また、平成13年度から平成15年度にかけて特定の者から大量の開示請求が相次ぎ、その処理(毎年度当たり開示又は部分開示決定をした文書数で約1500ないし約2100文書、この3年間で延べ約5300文書)を優先的に行う必要があったためであるとしている。
確かに、実施機関が説明するように、平成13年度から平成15年度にかけて、実施機関に対し相当な量の開示請求があり、担当課所である県立学校課(平成15年度までは高校教育課)においてそれらを優先的に処理すべき必要性があったことは認められる。
しかし、実施機関は、他の同様の諮問案件の答申が出るまで本件諮問を控えていたというが、このこと自体の妥当性については、さておくとして、本件に先立つ同様の諮問案件の答申が出た平成15年1月から本件諮問を行った平成16年3月までについてみても、約1年2か月経過している。
また、平成13年度から平成15年度までに担当課所において他に大量請求を優先的に処理する必要性を認めたとしても、本件諮問の内容についてみると、本件対象文書の量及び記載や非公開理由の内容からして、諮問を行うまでにそれほど長期間を必要とするとは考え難いと言わざるを得ない。
行政不服審査法は「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」(第1条第1項)ことを趣旨としている。この趣旨からしても、実施機関においては、遅滞なく諮問を行うことが求められていることは明らかである。
そうすると、いかに大量の開示請求を他に処理すべきであったとはいえ、また、実施機関におけるその所掌事務の内容やその繁閑、さらには昨今の実施機関を取り巻く諸情勢を前提とするその事務の重要性を十分に勘案したとしても、本件諮問について、実施機関は、事案の難易や複雑さ等に応じて的確に調査及び検討を行い、遅滞なく諮問を行ったとは言えないものと考える。
実施機関の当審査会への本件を含む他の諮問の状況をも併せ考えると、公開決定等に対する不服申立てへの対応として、本件諮問は遅きに失したものと言わざるを得ない。
実施機関においては、今後、開示決定等に対する不服申立てにおける諮問に当たっては、迅速かつ的確な対応をすることを望むものである。

(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、礒野弥生、大橋豊彦

別紙1 本件対象文書

  1. 教職員の事故について(進達)(平成8年4月19日付け教市第89号)(以下「文書1」という。)
  2. 教職員事故について(進達)(平成8年7月25日付け教市第381号)(以下「文書2」という。)
  3. 教職員事故報告について(進達)(平成8年7月25日付け教市第389号)(以下「文書3」という。)
  4. 教職員の事故について(進達)(平成8年11月14日付け教市第698号)(以下「文書4」という。)
  5. 教職員の事故について(進達)(平成8年11月27日付け教市第728号)(以下「文書5」という。)
  6. 教職員の事故について(進達)(平成8年12月19日付け教市第803号)(以下「文書6」という。)
  7. 教職員の事故報告について(進達)(平成9年4月30日付け教市一第135号)(以下「文書7」という。)
  8. 教職員事故について(進達)(平成9年5月27日付け教市一第223号)(以下「文書8」という。)
  9. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成8年5月13日付け教高第3704号)(以下「文書9」という。)
  10. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成8年5月24日付け教高第3705号)(以下「文書10」という。)
  11. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成8年10月18日付け教高第3712号)(以下「文書11」という。)
  12. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成8年12月13日付け教高第3715号)(以下「文書12」という。)
  13. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成9年1月27日付け教高第3716号)(以下「文書13」という。)
  14. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成9年2月17日付け教高第3717号)(以下「文書14」という。)
  15. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成9年2月18日付け教高第3718号)(以下「文書15」という。)
  16. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平成9年2月21日付け教高第3719号)(以下「文書16」という。)
  17. 平成8年度県立高等学校教職員事故報告(平鹿9年3月17日付け教高第3720号)(以下「文書17」という。)

別紙2 本件対象文書の公開しない行政情報及びその理由

1 公開しない行政情報

教諭・校長の学校名、氏名、年齢及び性別並びに児童・生徒の氏名、性別、年齢及び住所並びに保護者の氏名、住所及び電話番号並びに個人を特定し得る部分

2 公開しない理由

個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであり、旧条例第6条第1項第1号に該当するため。

別紙3 文書1から文書8までの記載内容

1 進達文書本体

文書記号・番号及び日付、発信者である県の教育事務所長の機関名(例えば、埼葛教育事務所長)、報告書を提出した市町村教育委員会名、実施機関内部における生涯学習部長、同部次長、市町村教育課長等の同課内の関係職員の職名及び印影

2 添付文書のうちの市町村教育委員会作成の報告文書本体

文書記号・番号及び日付、発信者である市町村教育委員会の名称、教育長の氏名及び職印の印影、事故の種別、学校名、事故者(加害者)である職員の職名、氏名及び年齢、発生日時、発生場所、事故の内容、主たる原因、各市町村教育委員会の所見等

3 添付文書のうちの学校作成の職員事故報告書

文書記号・番号及び日付、発信者である学校長の学校名、氏名及び職印の印影、事故の種別、発生の日時、発生の場所、事故者(加害者)である職員の職名、氏名、性別及び年齢、所属の学校の校長の氏名、事故の相手方当事者(被害者)である児童生徒の氏名、性別、年齢、学年・組及び所属の部活動名(この情報は部活動に伴う事故に関する事故報告書にのみ記載がある。)、住所及び保護者の氏名、事故の内容、事故の主たる原因、事故発生に伴う措置等

別紙4 文書9から文書17までの記載内容

1 回覧文書本体

実施機関内部における教育長、指導部長、同部次長及び高校教育課長等の同課内の関係職員の職名及び印影、事故の種別、発生日時、発生場所、事故の程度、通行形態、事故の状況、事故者(加害者)である教職員の氏名、学校名、課程、職名、年齢、性別、年度、分類、No.

2 添付文書である職員事故報告書

文書記号・番号及び日付、発信者である学校長の学校名、氏名及び職印の印影、事故者(加害者)である職員の職、氏名及び年齢、事故の種別、事故発生日時、事故発生場所、事故の相手方当事者(被害者)である生徒の氏名、課程・学科、学年・組、年齢及び所属の部活動名(この情報は部活動に伴う事故に関する事故報告書にのみ記載がある。)又は生徒会の役職名(この情報は生徒会活動に伴う事故に関する事故報告書にのみ記載がある。)、保護者の氏名及び住所、負傷等の程度(被害の状況)、事故の概要、学校の対応等、その他、事故発生場所を示す概略図等

別紙5 公開すべき部分

  • 文書1 加害者である教諭の性別及び事故発生日時
  • 文書2 加害者である教諭の性別及び事故発生日時
  • 文書3 加害者である教諭の性別及び事故発生日時
  • 文書4 加害者である校長の性別及び事故発生日時
  • 文書5 文書記号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所
  • 文書6 文書記号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所
  • 文書7 加害者である教諭の性別及び事故発生日時
  • 文書8 文書記号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所
  • 文書9 文書記号・番号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図のうち、校舎配置図は全部公開、事故発生場所である体育館内の概略図は個人名の部分を除き公開)
  • 文書10 加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち事故発生場所である生徒会室内の概略図は、個人名の部分を除き公開)
  • 文書11 文書記号・番号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち事故発生場所である体育館内の概略図は、個人名の部分を除き公開)
  • 文書12 文書記号・番号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち校舎配置図は、全部公開)
  • 文書13 加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち「事故発生場所見取図」のうち「別紙その2」及び「別紙その3」は、個人名の部分を除き公開)
  • 文書14 加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち「事故発生場所の概念図」は、全部公開)
  • 文書15 加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図すなわち「事故発生場所見取図」のうち「別紙その2」は、個人名の部分を除き公開)
  • 文書16 文書記号・番号、学校名、学校長の氏名及び職印の印影、加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図のうち、「校内配置図」及び「補習周回コース」は全部公開、「体育館管理室内見取図(体育教官室見取り図)」は個人名の部分を除き公開)
  • 文書17 加害者である教諭の性別、事故発生日時及び場所(事故発生場所を示す概略図のうち、事故発生場所である校庭・野球グランドの「拡大図」は、個人名の部分を除き公開)

注 上記各文書における事故発生場所の記載中に学校名がある場合は、学校名を公開すべきであるとされた文書に限り、当該学校名を公開

調査審議の経過

年月日

内容

平成16年3月31日

諮問の受理(諮問第76号)

平成17年5月10日

実施機関から理由説明書を収受

平成17年6月16日

実施機関の事務局(教育局)の職員からの口頭説明の聴取及び審議(第3回第一部会)

平成17年10月3日

審議(第5回第一部会)

平成17年10月19日

審議(第6回第一部会)

平成17年12月7日

実施機関から補充理由説明書を収受

平成18年1月27日

審議(第9回第一部会)

平成18年2月16日

審議(第10回第一部会)

平成18年3月17日

答申

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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