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掲載日:2024年3月26日

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答申第79号 「(仮称)社会福祉法人○○会の設立許可について(平成7年1月27日決裁)」の部分開示決定のうち、「寄付申込書」の部分(平成18年3月17日)

答申第79号(諮問第86号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県知事が、平成16年3月17日付けで行った「(仮称)社会福祉法人○○会の設立認可について(平成7年1月27日決裁)」の部分開示決定のうち、寄付申込書(以下「本件文書」という。)について、「住所及び氏名」欄の法人代表者の印影を不開示とした判断は妥当であるが、その余については開示すべきである。

2 異議申立てび審査の経緯

(1) 本件不服申立人(以下「申立人」という。)は、平成16年2月13日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、次の内容で開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
「社会福祉法人○○会(特別養護老人ホーム△△)」平成7年1月27日設立認可の2年前(平成5年1月1日)以後の申請に付随する資料全て」

(2) 実施機関は、本件請求に対する公文書を特定した上で、平成16年3月17日付けで一部の情報について条例第10条第1号及び2号に該当すると判断し、部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、申立人に通知した。なお、本件文書はその全体が条例第10条第2号に該当するとして開示しない情報となっており、また本件文書以外の本件請求に対する公文書に関しての開示しない情報は、異議申立の対象となっていない。

(3) 申立人は、平成16年4月9日付けの異議申立書により、実施機関に対し、部分開示決定の一部である本件文書の開示を求める異議申立を行った。

(4) 当審査会は、本件請求について平成16年7月29日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に際し、実施機関から平成17年5月30日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成17年6月30日付けで請求人から反論書の提出を受けた。

(7) 当審査会は、平成17年8月18日に実施機関の職員から意見聴取を行った。

(8) 当審査会は、平成17年9月22日に申立人から口頭による意見の陳述を受けた。

3 申立人の主張の要旨

申立人が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。

(1) 本件文書が取引内容に関する事項に含まれるとしても、公益を担う法人が適切に成立していることを証明する責任の方が重い。社会福祉法(昭和26年3月29日法律第45号)でも事業経営の透明性の確保が定められている。

(2) 当該寄付申込は、その個人の適格性や財産の確実性につき当該処分機関の厳格な審査を経たものであって、公開することで不名誉や実害があるとは思えない。

(3) 一部黒塗りではなく、一切不開示としたのは納得できない。

(4) 個人の氏名、寄付金額の記載があるはずである。公共の利益優先のため、プライバシーが犠牲にされることがあることもある。

(5) 施設建設費の99%(国県補助金4.7億円)プラス白岡町からの補助金(1.2億円)を受けるのであるから、法人設置者も自己負担分について、適正に寄付を執行し、責任を果たしたことを開示すべきである。

4 実施機関の説明の要旨

実施機関が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。

(1) 公益性の高い事業であるとはいえ、すべての情報を開示すべきとすることにはならない。

(2) 寄付に関する情報が開示されるととになれば、寄付を躊躇するものがあらわれて、社会福祉法人にとっては、以後の寄付を得られなくなるなど、社会福祉法人の正当な利益が損なわれる可能性がある。

(3) 寄付という行為は寄付者の自由な意思に基づいてなされるものであるから、開示するとなれば、寄付者の利益が損なわれることにもなる。

(4) 本件文書を全部不開示としたのは、不開示情報が記載されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、客観的にみて開示しても意味をなさない程度のものであると認められたためである。

(5) 本件文書に係る処分は、寄付を受ける当該社会福祉法人の法人情報として、条例第10条第2号に該当すると判断し不開示としたものであり、寄付者の個人識別情報で非開示としたものではないから、申立人の主張には理由がない。

5 審査会の判断

(1) 本件文書について
本件文書は、(仮称)社会福祉法人○○会(以下、「本件社会福祉法人」という。)を設立するに当たって、設立代表者が実施機関に提出した設立認可申請に係る文書のうち、寄付申込についての文書であり、(1)寄付を申し込む旨の文言、(2)「寄付金額」欄、(3)「申込年月日」欄、(4)「住所及び氏名」欄、(5)寄付を受ける社会福祉法人の設立代表者の氏名で構成されている。

(2) 条例第10条第2号該当性について

  • ア 基本的考え方
    実施機関は、本件文書中の上記(1)から(5)について、いずれも条例第10条第2号に該当するとして本件文書の不開示を主張している。
    条例第10条2号によれば、法人に関する情報について、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」について定め、これを不開示情報として定めている。本規定は、公開原則に対する例外を定めるものであるが、法人が有する法的保護に値する権利、公正な競争関係における地位の他、ノウハウ、信用等法人の運営上の地位を広く含むものとされている。ただし、この法人への不利益を判断するに際しては、法人にもさまざまな種類、性格のものがあることから、当該法人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、また、法人と行政との関係等も考慮して適切に判断する必要がある。また、「おそれ」の判断に当たっては、可能性としてあり得るというにとどまらず、法的保護に値する蓋然性が必要である。
    また、本件文書には、本件社会福祉法人への寄付金額及び寄付者その他寄付に関する事項が記載されており、開示を求められているのは、本件社会福祉法人の認可に際して備えるべき資産に関する情報である。したがって、その判断に当たっては、社会福祉法及びそこで規定される社会福祉法人の性格等について考慮する必要がある。
    社会福祉法人は、社会福祉事業の実施主体であることから、これが社会において果たすべき役割は重要であり、その公益性は極めて高いものである。社会福祉法は、社会福祉法人の所轄庁を都道府県知事とし(30条1項)、その設立認可に都道府県知事の認可を関わらせ(31条、32条)、その認可の要件として、「社会福祉事業を行うに必要な資産を備え」(25条)ることを挙げているのは、社会福祉法人を通じて提供されるサービスが公共性のあるものとして、質的にかつ安定的にそれが供給されることを確保する必要があるからに他ならない。
    また、社会福祉法は、「社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなくてはならない」(24条)と定め、認可を受けた社会福祉法人に対し事業経営の透明性の確保を法律上要請している。事業経営の透明性には、社会福祉法人の設立の要件でもある「資産」の情報にも及ぶことは明らかであり、かかる資産情報の積極的な公開は社会福祉法人にとって不可欠のことである。
  • イ 具体的判断
    本件文書は、寄付申込書であり、本件福祉法人の事業経営の基礎となる資産に関する情報である。既述とおり、社会福祉法人は、事業経営の透明性が求められていることから、当該社会福祉法人の事業経営の基礎となる資産に関する情報としては原則として公開されるべきである。ただし、本件文書には、寄付の申込者の情報も含まれていることから、社会福祉法人の透明性を確保する利益と、開示することによって寄付の申込者が受ける不利益を比較衡量して判断する必要がある。
    • (ア)(1)寄付を申し込む旨の文言及び(3)「申込年月日」欄について
      当該欄には、それぞれ本件社会福祉法人の設立代表者に対して、寄付を行うに当たって、その用途を概括的に指定して寄付を申し込む旨及びその期日の記載がなされている。このことによって寄付の申込みを一定の期日に受けたという事実が明らかになるにすぎず、当該各欄を開示することによって、本件社会福祉法人及び寄付者の正当な利益を害することになるとは言えない。よって、条例第10条第2号に該当するとは認められない。
    • (イ)(2)「寄付金額」欄について
      当該欄には、寄付金額が記載されており、当該情報は本件社会福祉法人の財務情報である。寄付金額は、本件社会福祉法人の事業経営の基礎となる資産に関する情報であって、すでに検討したように公開されるべき情報である。また、寄付金額を明らかにしても、本件社会福祉法人の権利および正当な利益を害することになるとは言えない。よって、条例第10条第2号に該当するとは認められない。
    • (ウ)(4)「住所及び氏名」欄について
      当該欄には、寄付者の住所、寄付者名及びその印影が認められる。これらの情報は誰から寄付を受けたかということを示す情報として、本件社会福祉法人の資産に関する情報であると同時に、寄付者を特定する寄付者の情報でもある。
      実施機関は、当該欄を開示することにより、自由意思でなされた寄付者名及び住所が明らかになり、当該社会福祉法人にとっては、以後の寄付を得られなくなるなど、正当な利益が損なわれるおそれがあることを主張する。確かに、寄付者名が明らかになることにより、寄付者が寄付を躊躇する可能性も考えられないではないが、逆に名前が明らかになることで寄付者が増える可能性も考えられる。いずれにせよ、実施機関は、「おそれ」について、単に法人が受ける不利益の可能性を言うにとどまるのであって、その主張によって法的保護に値する蓋然性があるとまでは言えない。
      また、当該欄は、寄付者の情報でもある。寄付者は、その寄付について、その詳細については公開を義務づけられるものではないことから、事業行為につき公開を義務づけられないことによって保護される利益を害されるとの主張も可能である。しかしながら、かかる利益の内容は保護に値する正当な利益であるとの明確な主張はなく、また、透明性が確保されるべき社会福祉法人への寄付については公開されることによって受ける影響を寄付者は甘受すべきものであることから、条例第10条第2号に該当するとは認められない。
      ところで、当該欄には、寄付者の社印及び代表者印の押印が認められる。このうち、代表者の印影については、法人の対外活動において重要な意義を有するものであって、開示することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、条例第10条第2号に該当することから、代表者の印影を不開示とした実施機関の判断に誤りはない。
    • (エ)(5)寄付を受ける社会福祉法人の設立代表者の氏名について
      当該情報については、既に本件処分によって開示されている。よって、開示すべきである。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
野村武司、馬橋隆紀、渡辺咲子

審議の経過

年月日

内容

平成16年7月29日

諮問を受ける(諮問第86号)

平成17年5月30日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成17年8月18日(第二部会第3回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成17年9月22日(第2部会調査)

異議申立人より意見聴取及び審議

平成17年10月7日(第二部会第4回審査会)

審議

平成17年11月21日(第二部会第5回審査会)

審議

平成17年12月20日(第二部会第6回審査会)

審議

平成18年1月25日(第二部会第7回審査会)

審議

平成18年2月20日(第二部会第8会審査会)

審議

平成18年3月17日

答申

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

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