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掲載日:2024年3月26日

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答申第78号 「川口警察署芝中田町交番保管の川口市芝○-○○-○○所在○○号に所在していた○○○○及び○○○○についての巡回連絡票」の不開示決定(平成18年3月17日)

答申第78号(諮問第59号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成15年6月23日付けで行った「川口警察署芝中田町交番保管の川口市芝△-△△-△△所在の○○△△号室に所在していた○○○○及び○○△△についての巡回連絡票」(以下「本件文書」という。)について、その存否を明らかにしないで不開示とした決定は妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「審査請求人」という。)は、平成15年6月9日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「公開条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、本件文書の開示請求を行った。

(2) これに対して、実施機関は、平成15年6月23日付けで、「当該公文書の存否を答えること自体が公開条例第10条第1号及び第5号の不開示情報を開示することになる。」として、存否を明らかにしないで不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。

(3) 審査請求人は、平成15年8月1日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消して、本件文書を公開することを求める審査請求を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について平成15年10月15日付けで審査庁から公開条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に際し、審査庁から平成16年10月13日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成17年3月15日に実施機関の職員から事情聴取を行った。

(7) 審査請求人は、平成18年1月25日に口頭による意見陳述を行った。

3 審査請求人の主張の要旨

審査請求人が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。

(1) 開示請求を求めているものは、審査請求人に関する情報である。請求人が平成7年5月1日より、内縁の夫○○○○と埼玉県川口市芝△-△△-△△所在の○○△△に入居し、同居していたものである。

(2) 本件開示請求によって求める芝中田町交番の保管の巡回連絡票は、上記○○△△に居住する審査請求人及び内縁の夫○○○○に関する事項について、審査請求人が回答したものである。本件連絡票の記載内容は、請求人が回答したものを同人が開示請求するものである。よって、審査請求人の権利利益を侵害することもなく、請求人本人の開示請求によって、今後の住民の協力が得られなくなることもないことは明白である。

(3) 以上のとおり、上記巡回連絡票は、審査請求人が回答した内容が記載されているものであり、何ら公開条例第10条第1号及び第5号にも該当しないものである。

4 実施機関の主張の要旨

審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 巡回連絡の趣旨

巡回連絡は、地域警察運営規則(昭和44年国家公安委員会規則第5号)第20条に規定されている。地域警察は、住民の日常生活の安全と平穏の確保に資するため、すべての警察事象に対応する活動を目的とし、所管区住民の居住実態を把握する必要性があることから、各家庭を個別訪問することとし、その任意的手段により巡回連絡を実施し、その聴取事項を記載したものが、別に様式で定められた「連絡票」となる。

(2) 本件文書の存在を回答すること自体が個人の権利利益を侵害し、又警察業務に支障が生じるおそれがあると認めた理由

  • ア 本件対象文書である連絡票には、聴取した居住者の氏名、年齢、家族構成等が記載される。当該公文書の存否を公にすると、特定の個人の居住事実の有無等が明らかになり、特定の個人が識別され得ることから、個人の権利利益を侵害することとなり、公開条例第10条第1号に該当する。
  • イ 巡回連絡は、地域警察運営規則等の定めにより遂行している地域警察活動であるが、住民の任意の協力を前提としているものであって、作成する連絡票も同様であり、強制力を有してないものである。したがって、これが公になると、今後の住民の協力が得られなくなる蓋然性が極めて高く、以後の巡回連絡業務に支障が生ずるおそれがあり、地域警察業務さらには警察業務全般に支障を及ぼすこととなり、公開条例第10条第5号に該当する。

(3) 情報公開制度と個人情報保護制度

  • ア 埼玉県における情報公開制度は、「県民の知る権利を保障するため開示に関し必要な事項を定める等情報公開を推進することにより、県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民の県政参加を一層進め、もって地方自治の本旨に即した公正で透明な開かれた県政の推進に寄与することを目的とする」(公開条例第1条)とされ、特定人に対してのみならず、広く県民等に等しく情報の公開をすべきものである。
  • イ 一方、埼玉県個人情報保護条例(平成6年条例第5号(平成16年12月廃止)以下「旧保護条例」という。)第1条では、「県の機関に対して個人情報の開示及び訂正を請求する権利を明らかにするとともに、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めることにより、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と定めており、両条例は、その趣旨、目的が明らかに異なるものである。

(4) 自己の個人情報の開示請求について

  • ア 自己情報の開示請求は、旧保護条例第12条第1項で、「何人も、実施機関に対し、公文書に記録された自己の個人情報であって、当該実施機関の権限に属する事務に係るものの開示を請求することができる。」と定められている。
    さらに、旧保護条例第15条第2項は、「開示請求をしようとする者は、自己が当該開示請求に係る個人情報の本人又はその法定代理人であることを確認するために必要な書類で実施機関が定めるものを提出し、又は提示しなければならない。」と規定し、本人等の確認手続きが定められている。
  • イ 埼玉県行政情報公開条例第7条に規定されていた、自己情報の開示請求権は、平成6年に現行の個人情報保護条例が制定された際に削除され、平成6年10月1日以降の自己情報の開示請求は、すべて同保護条例の規定によることとされた。
  • ウ したがって、自己情報の開示を認める場合は、本人の確認手続の仕組み等が措置されていなければならないが、公開条例の開示請求の手続きにおいては、規定されていない。このことから、自己情報の開示請求は全く対象とされていないことは明らかであり、公開条例においては、開示請求者が当該個人本人であるか否かにかかわらず、何人に対しても等しく同様に扱うべきである。

(5) 本件審査請求の原処分

  • ア 開示請求に係る文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合がある。審査請求人の行った開示請求は、個人を特定して、警察の行う実態掌握活動等に係る公文書についての探索的請求であって、本件文書の存否を答えるだけで、特定の個人に関する居住事実の有無等が明らかになる。このこと自体が、個人の権利利益を侵害する情報であって、公開条例第10条第1号に該当する不開示とすべき情報を開示することとなる。また、住民の協力のもとに、任意的手段で実施している巡回連絡業務につき、その実態把握状況が公になると、今後の住民の協力が得られなくなる可能性があるなど警察業務に支障が生ずるおそれがあり、公開条例第10条第5号に該当する不開示とすべき情報を開示することになる。
  • イ 公開条例では、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」(公開条例第13条)と規定されている。
  • ウ したがって、開示請求を拒否(存否応答拒否)したものである。

5 審査会の判断

(1) 本件請求について

本件請求は、特定の場所において審査請求人が回答したとされる巡回連絡票について、審査請求人本人が開示を求めたものである。

(2) 本人による自己情報の開示について

審査請求人は、自己情報開示請求として本件請求を行っていることが認められるので、まず公開条例に基づいてかかる請求が認められるか否かについて判断する。
公開条例第7条は、公文書の開示を請求できるものについて規定しているが、これら請求権者に該当すれば、特に本人の状況、利害内容、請求目的に関わりなく、公開条例第10条各号に定める不開示規定に該当しない限り、開示を受けることができるというのが本条例の趣旨である。したがって、逆に、実施機関の開示不開示の判断に当たっては、自己の情報を根拠とした情報の必要性等の請求者の特別の事情は考慮されるものではないことは明らかである。
また、公開条例第10条第1号は、開示義務の例外(いわゆる不開示規定)として「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と規定して、特定個人が識別されれば不開示情報に当たるものとし、ほかに当該個人情報が請求者本人のものであるかどうかについて考慮する規定は置かれていない。
今回、審査請求人が公開条例に基づいて自己情報の開示を請求したのには、警察本部長が、公開条例の実施機関とされているのに対し、旧保護条例では実施機関とはされていなかったという事情があると推測されるが、公開条例が、いわゆるプライバシー型として「通常他人に知られたくない個人に関する情報」を不開示規定として定めているのであればともかく、本県公開条例は、いわゆる個人識別型として、上記不開示規定を定めるにとどまっている。審査請求人が自己情報を必要とする理由については、心情的には理解できるものではある。しかしながら、前述のとおり公開条例においては自己情報開示請求が規定されていない以上、審査請求人が個人情報の本人であるかどうかを考慮しなかった実施機関の判断に誤りはない。

(3) 公開条例第13条該当性について

次に、実施機関が本件文書を存否応答拒否した理由について判断する。
公開条例第13条は「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定している。
開示請求がなされた場合、通常は、請求にかかる公文書が存在していれば、それを対象公文書として特定し、開示又は不開示の決定が行われ、公文書が存在していなければ、不開示の決定がなされる。このように情報公開制度のもとでは、文書の存否が明らかにされた上で決定がなされるというのが原則である。しかしながら、存在自体を明らかにしがたいようなセンシティブな情報への請求や、情報の探索的な請求など、開示請求に係る公文書が存在することを認めること自体が、不開示規定が保護する利益を損なうような場合があることから、例外的に、公開条例第13条は、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定を認めている。
本件請求は、特定個人が回答したとされる巡回連絡票に関する情報の開示を求めるものであるが、本件文書の存否を明らかにして開示不開示を判断することは、特定個人の居住等の状況を明らかにすることとなる。特定の個人が居住等をしたという状況はそれ自体個人情報であり、その開示は、個人の情報を開示するものとして、個人の利益を害するものと認められる。
よって、実施機関が本件文書を公開条例第10条第1号の不開示情報を開示することになるとして、公開条例第13条の規定に基づき存否応答拒否とした決定は妥当であると認められる。
なお、実施機関は本件文書につき公開条例第10条第5号該当による存否応答拒否も主張しているが、上記のとおり同条第1号該当により存否応答拒否が妥当であることから、このことについて判断するまでもない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
野村武司、馬橋隆紀、渡辺咲子

審議の経過

年月日

内容

平成15年10月15日

諮問を受ける(諮問第59号)

平成16年10月13日

審査庁より開示決定等理由説明書を受理

平成17年3月15日(第49回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成18年1月25日(第二部会第7回審査会)

審査請求人より意見聴取及び審議

平成18年2月20日(第二部会第8回審査会)

審議

平成18年3月17日

答申

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総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

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