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掲載日:2024年3月25日

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答申第73号 「平成17年4月25日と5月10日に行われた特定の法人の立入検査で入手した資料」の部分公開決定(平成18年1月27日)

答申第73号(諮問第107号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が、平成17年6月21日付けで行った、平成17年4月25日と5月10日に行われた特定法人の立入検査で入手した資料のうち「2005年度企業別搬入量一覧」、「会社別搬入月報」及び「処分場ごとの搬出数量」(これら3文書を併せて、以下「本件文書」という。)についての部分開示決定は妥当である。

2 異議申立て及び審査の経緯

(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成17年5月12日に埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づいて開示請求のあった本件文書を実施機関に提出した。

(2) 実施機関は、本件文書の開示請求について、金額に関する情報を除いて部分開示決定を行うことが適当であると判断し、条例第17条第1項の規定に基づき、申立人に対し、平成17年5月25日付けの公文書開示決定等に係る意見照会書により意見書提出の機会を与えたところ、平成17年6月2日付けで申立人から開示に反対する旨の「公文書開示決定等に係る意見書」(以下「反対意見書」という。)が提出された。

(3) 実施機関は、申立人から反対意見書の提出を受けてもなお部分開示が適当と判断し、平成17年6月21日付けで、申立人に公文書開示決定に係る通知書を送付した。

(4) 申立人は、平成17年7月4日付け異議申立書及び同日付け異議申立書追加により、実施機関に対し、本件文書を開示すべきではないとして異議申立て(以下「本件異議申立」という。)を行った。

(5) 当審査会は、本件異議申立について、実施機関から平成17年7月28日に、条例第22条に基づき、諮問を受けた。

(6) 当審査会は、本件に係る審査に際し、平成17年8月18日に実施機関から「開示決定等理由説明書」の提出を受け、また、平成17年9月22日に実施機関から意見聴取を行った。

(7) 申立人は、平成17年10月7日に、口頭による意見陳述を行った。

3 申立人の主張の要旨

申立人の主張は概ね次のとおりである。

(1) 本件文書は会社要求書類でもなく、あくまで社員の私的データである。実施機関に提出する際に、該当する会社のみを抜粋すればよいところを、社員のやさしさから全体を渡してしまったようだ。

(2) 実施機関の職員からの依頼ということもあり、協力するという意味で、用意できる可能な限りの書類を提出した。その書類の中には、廃棄物処理フロー上、その処分がまだ完全に終了していないものが含まれており、書類上においても完成していないものがあるのも当然であった。また、顧客名、受入量の他に、財務に係る事項(例えば、売上高、顧客ごとの単価等)が記載された書類もあった。
申立人としては、ただ協力するという概念から提出したものである。

(3) ところが、疑惑の考え方のみをもって報道している方々による製作ということもあるのか、テレビの放送の中ではまだ完成していない整備中の書類だけがクローズアップされたり、インタビューにしても、一部のみをピックアップするようなことをして、あたかも”不良業者”のような報道をされ、申立人に対する誤解が生じるおそれがあることに対し、まことに残念で、遺憾である。

(4) したがって「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」が提出書類の中に含まれているので、開示することを拒否する。

4 実施機関の主張の要旨
本件異議申立に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 本件文書は、実施機関の地域機関である北部環境管理事務所の職員が立入検査の目的を告げ、産業廃棄物処理委託契約書、産業廃棄物管理票等とともに申立人の担当者から廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)の検査の目的に沿った資料として得たものである。

(2) 今までの経緯から申立人は口頭において、本件文書は公開を前提とせず任意に提出したとしており、更に「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」が含まれることを理由に開示することを拒否する意見書を提出している。
条例第10条第6号では「公にしないとの条件で任意に提供された情報」については開示しないこととなっているが、条例の解釈と運用によれば「公にしないとの条件」とは、単に情報提供者からそのような要請があったことだけでは足りず、その要請を実施機関が了解したものでなければならないとされている。
実施機関は、以下の理由から公にしないとの要請を「了解しない」との結論に達し、条例第10条第6号には該当しない=開示しないことはない=開示する、こととした。

  • ア 申立人は反対意見書において、開示することを拒否する理由として開示対象文書の中に「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」が含まれることを挙げている。
    しかしながら、今回請求された公文書を廃棄物処理法第18条の規定により入手した場合、委託金額については「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」に当たるとして非開示とするものの、それ以外の情報(個人の氏名等を除く。)については産業廃棄物処理委託契約書、産業廃棄物管理票等の情報と同様、産業廃棄物の適正処理の推進のために開示する情報であり、利益を害するおそれがある情報には当たらない。
  • イ これまでの実施機関の情報公開の対応実績、廃棄物処理法第19条の立入検査の際に入手した資料の取扱い等を踏まえると、公にしないとの条件を付すことは合理的であるとは判断できない。

(3) 異議申立書において、申立人が開示に反対した理由は、本件文書は会社要求資料ではなく、あくまでも社員の私的データである、とのことであるが、本件文書の内容は産業廃棄物処理委託契約書、産業廃棄物管理票等に基づく該当事業者の取引状況を、取引先業者ごとや月日ごとに数量を取りまとめ整理したものである。
一方、産業廃棄物の適正処理の推進のために産業廃棄物処理委託契約書、産業廃棄物管理票等は一部担当者名等を除き公開されているものである。

(4) 上記(2)及び(3)により、本件文書も特段非公開とされるものではないことから本件については部分開示決定とした。

5 審査会の判断

(1) 本件文書について

本件文書は、実施機関の職員が立入検査の目的を告げ、産業廃棄物処理委託契約書、産業廃棄物管理票等とともに申立人の担当者から検査の目的に沿った資料として得たものである。
本件文書は、「2005年度企業別搬入量一覧」、「会社別搬入月報」及び「処分場ごとの搬出数量」の3件の文書である。
「2005年度企業別搬入量一覧」には、申立人の取引先の会社名、月別の搬入量の合計並びに会社ごとの月別、計及び月平均の搬入量が記載されている。
「会社別搬入月報」には、申立人の取引先の会社名、日別の搬入量の計及び合計並びに会社ごとの単価、日別の搬入量、搬入量の計及び合計金額が記載されている。
「処分場ごとの搬出数量」には、申立人の取引先の会社名、日別の排出総計並びに会社ごとの単価、日別の搬出量、搬出量の計及び合計金額が記載されている。
なお、申立人の説明によると、本件文書は申立人の担当者が自らの資料とするために作成したもので、本件文書に記載されている会社名は、申立人の担当者が適宜簡略化して表記したものであるとのことである。

(2) 条例第10条第2号該当性について

申立人は、本件文書が条例第10条第2号に該当するものと主張するので、この点について以下に検討する。

  • ア 条例第10条第2号は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」については、原則として開示しないと規定している。
    ここでいう「正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、法人等の生産技術、営業、販売上のノウハウ、経営方針、経理、人事等の情報で、公にすることにより、法人等の事業活動等が損なわれると認められるもの及び公にすることにより法人等の名誉が侵害され、又は社会的信用若しくは社会的評価が低下するものを広く含むものと解される。
    そして、「正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するか否かの具体的な判断については、当該法人等の営む事業の性質や社会的影響、当該事業を規律する関係法令の規定等により総合的に判断すべきである。
  • イ 本件文書には、申立人の取引内容として、申立人の取引先の会社名、会社ごとの単価及び合計金額並びに日別、計などの区分に応じた搬入量又は搬出量が記載されている。
    一般には、法人等の営業にかかる情報及び取引先に係る情報は、これが社会的に明らかになった場合、関連する報道など事業に対する社会的な関心の状況によっては、取引先事業者との取引に影響を及ぼすことも想定されることから、事業活動が害されるおそれがある情報であるといえる。
    しかしながら、廃棄物処理法は、廃棄物の処理及び取引に関わる処理の委託に関し、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(廃棄物処理法第3条第1項)と規定し、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、知事の許可を受けた収集運搬業者や処分業者に委託しなければならない(廃棄物処理法第12条第3項)と定めている。更に、産業廃棄物の収集運搬業者及び処分業者について、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行わなければならない(廃棄物処理法第14条第12項)と規定し、委託産業廃棄物について、排出事業者、産業廃棄物の収集運搬業者及び処分業者に対しても適正処理の義務及び責任を定めている。
    また、排出事業者、収集運搬業者、処分業者間の取引に伴う産業廃棄物の不適正な処理による社会的影響は大きく、産業廃棄物の処理に係る各事業者の責任を明確にし、適正処理を推進するためにも産業廃棄物処理に係る情報公開が求められているという事実を看過することはできない。産業廃棄物処理業は、事業の性質上、事業運営方法の如何によっては周辺住民の生活環境や自然環境に悪影響を与えるおそれがある事業であり、その分、周辺住民はもとより社会的な関心も高く、その事業に係る情報には強い透明性が求められる。実施機関もまた、こうした事情を踏まえ、産業廃棄物の処理に係る情報の公開を積極的に進めていることは周知の事実である。
    上記のような産業廃棄物処理業の性質や廃棄物処理法の規定、当該業種を取り巻く現在の社会状況、また、実施機関の事業者情報に対する考え方等から総合的に判断すると、本件事業者情報は一般的な企業の取引先の情報とは異なるものであると考えられる。
  • ウ したがって、本件文書に記載された情報のうち、会社ごとの単価及び合計金額を除いた、申立人の取引先の会社名及び日別、計などの区分に応じた搬入量又は搬出量については、これを開示することにより申立人に不利益が生ずることがあったとしても、それは産業廃棄物処理事業者として受忍すべきものであり、条例第10条第2号本文に規定する「正当な利益」を害するとまでは言えないものと判断する。

(3) 条例第10条第6号該当性について

申立人は、本件文書は公開しないことを前提に任意で提供したとして、条例第10条第6号に該当するものと主張するので、この点について以下に検討する。

  • ア 条例第10条第6号は、「公にしないとの条件で任意に提供された情報であって、個人又は法人等における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」については、原則として開示しないと規定している。
  • イ 実施機関の説明によると、本件文書の入手時に申立人から本件文書について公にしないとの条件が示された事実はないとのことであり、また、申立人からは、本件文書を公にしないとの条件が合意されたとの説明もない。
    これらのことから、申立人と実施機関との間に、本件文書を公にしないとの条件について合意があったとすることはできない。
  • ウ したがって、本件文書については、条例第10条第6号ただし書きを論じるまでもなく、同条同号の不開示情報に該当するとは認められない。

(4) 申立人のその他の主張について

申立人は、本件文書があくまでも社員の私的データであることを主張し、また、本件開示請求に関係のある報道とその報道機関の姿勢などについて意見を述べている。
しかし、これらの理由により、開示・不開示の判断が左右されるべきものとは言えない。

以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
野村武司、馬橋隆紀、渡辺咲子

審議の経過

年月日

内容

平成17年7月28日

実施機関から諮問を受ける(諮問第107号)

平成17年8月18日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成17年9月22日
(第二部会調査)

実施機関から意見聴取及び調査

平成17年10月7日
(第二部会第4回審査会)

申立人から口頭意見陳述及び審議

平成17年11月21日
(第二部会第5回審査会)

審議

平成17年12月20日
(第二部会第6回審査会)

審議

平成18年1月27日

答申(答申第73号)

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