トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成17年度情報公開審査会答申 > 答申第46号 「警察署協議会代表者会議における本部長コメントの録音テープ」の不開示決定(平成17年6月16日)
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掲載日:2024年3月26日
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答申第46号(諮問第49号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成15年4月10日付けで行った「平成15年2月13日に開催した警察署協議会代表者会議における本部長コメントの録音テープ」(以下「本件録音テープ」という。)を埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第2条第2項に規定されている公文書でないとして不開示とした決定は、妥当でない。
2 審査請求及び審査の経緯
(1) 本件審査請求人(以下「審査請求人」という。)は、平成15年3月27日付けで、条例第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「平成15年2月13日開催の警察署協議会代表者会議における本部長コメントを録音したテープ」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(2) これに対して実施機関は、平成15年4月10日付けで「本件録音テープは条例第2条第2項に規定されている公文書ではない」として、不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。
(3) 審査請求人は、平成15年4月16日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消すことを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件審査請求について、審査庁から平成15年6月18日付けで条例第22条に基づき、諮問を受けた。
(5) 当審査会の本件に係る審査に際し、平成16年9月22日付けで審査庁から「開示決定等理由説明書」の提出を受けた。
(6)当審査会は、平成16年11月24日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
なお、審査請求人は反論書の提出をせず、当審査会に対する口頭による意見陳述も求めていない。
(7) 審査庁から平成16年12月10日付けで資料の提出を受けた。
3 審査請求人の主張の要旨
審査請求人は、以下のことから本件処分には理由がないとし、本件処分は条例の解釈、運用を誤ったものであり、その取り消しを求めるとしている。
(1) 本件録音テープは、条例第2条第2項記載の、「職員が職務上作成し、又は取得」した、「公文書」である。
(2) 埼玉県作成の「情報公開事務の手引き」(平成14年4月作成)によれば、「『職務上作成し、又は取得した』とは、実施機関の職員が、法律、命令、条令(まま)規則、規程、通達により与えられた任務又は権限の範囲内において作成し、又は取得した場合をいう。」とあり、本件録音テープが「公文書」であることは、明白な事実である。
4 実施機関の主張の要旨
審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
(1) 本件録音テープは、「警察署協議会代表者会議における本部長コメント(要旨)」(以下「本部長コメント(要旨)」という。)を作成するために警察本部総務部総務課(以下「総務課」という。)の担当者が便宜上個人的に録音したものであって、担当者の個人的な検討段階にとどまる資料である。警察本部が組織として利用したのは、各所属長に送付した「本部長コメント(要旨)」であり、個人資料である本件録音テープは組織として活用していない。
(2) 本件録音テープは、警察署協議会代表者会議のために用意されたものでなく、総務課が主管等する会議等において発言内容を録音する必要があると総務課の担当者(以下「事務担当者」という。)が判断した場合、つまり、職務として会議の内容等について公文書を作成する必要があり、当該公文書を作成する補助として担当者が会議内容等をメモに取るのと同様に使用されていたものである。
(3) 事務担当者が専ら、自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないこと、個人的な検討段階にとどまっていること、本件録音テープの利用状況等を総合的に考慮して、条例第2条第2項に規定されている公文書とはいえない。
(4) 以上の理由により本件処分は、条例の規定に基づく妥当なものである。
5 審査会の判断
(1) 判断についての基本的な考え方
条例第7条各号のいずれかに該当するものが、実施機関に対し、開示請求することができる公文書については、条例第2条第2項に「この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。第18条において同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。(以下略)」と規定されている。当審査会は、情報公開条例の趣旨に即した当該条項の厳正な解釈に基づき、本件録音テープが審査請求人の主張のとおり公文書に該当するかどうかについて検討し、本件処分の妥当性について判断する。
(2) 本件請求について
本件請求は、平成15年2月13日開催の警察署協議会代表者会議における本部長コメントを録音した録音テープについての開示請求である。
(3) 本件録音テープの録音及び利用に係る事項について
当審査会の審査の過程における実施機関の職員からの聴取並びに審査庁から当審査会に提出された開示決定等理由説明書及び同じく審査庁から提出を受けた資料により、下記のとおり確認することができる。
(4) 実施機関の主張及び審査庁の見解の整理
本件録音テープが条例第2条第2項の公文書に当たらないとする実施機関の主張及び審査庁の見解について、上記(3)の事実に照らして整理すると次のとおりである。
(5) 結論
上記(3)及び(4)により確認・整理し、これらに基づき、本件録音テープについて検討したところ、当審査会は、次のとおりの結論に至った。なお、本件録音テープが条例第2条第2項の電磁的記録であることについては、明らかである。
実施機関及び審査庁は、本件録音テープの作成及び使用の状況が、上記(4)のアからウの経過をたどり、その過程おける事務担当者による事務処理が、事後における「本部長コメント(要旨)」の作成を想定して行われたものであっても、本件録音テープは、「個人の担当者が便宜上個人的に録音したものであって、担当者の個人的な検討段階にとどまる資料」であり、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」とはいえないとしている。
しかし、この主張は容れることができない。
まず、事務担当者が別室において会議の進行をモニターしていたこと及び本部長コメントの部分について録音を行ったとは、事務担当者が、その職務として、会議の経過を確認しつつ、突発の指示や照会に対応するものであるとともに、会議終了後に行う必要な事務処理への準備を行っていたものであると認めることができる。
このような会議の際のモニター及び録音機器の使用による録音や会議室の使用は、同種又は異種の会議にかかわらず、会議の開催に当たり、これまでも行われてきた担当者の職務であって、個別明示の職務命令の有無にかかわらず、この会議の事務担当者として、その必要性を認識して行ったものと思料する。このような、事務担当者の職務として録音された本件録音テープの内容は、当該会議において、当時現に発せられた本部長のコメントであり、このコメントを情報として、現に録音を行っている事務担当者の主観や意図が本件録音テープの中に入り込む余地は全くなく、コメントの総てをありのままに記録しているものである。
また、このような形で本件録音テープを録音していることは、実施機関の組織内において少なくとも暗黙の了解があったいえる。このようなことからすると、本件録音テープは、4の(3)で実施機関が主張する個人的な検討段階の資料にとどまるものとはいえない。そして、この本部長の発言したコメントは、当該事務担当者のみならず、発言者本人や警察本部職員を含む会議参加者が同時に聴取していることを考えると、本件録音テープは、録音が終了した時点で、組織共用性の実態を備えた状態の公文書であると考えることができる。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、実施機関の説明によると、本件録音テープは既に消去された、とのことである。
(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、礒野弥生、大橋豊彦
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成15年6月18日 |
諮問庁(審査庁。以下同じ。)から諮問を受ける。(諮問第49号) |
平成16年9月22日 |
諮問庁から開示決定等理由説明書を受理 |
平成16年11月24日(第44回審査会) |
実施機関から事情聴取及び審議 |
平成16年12月10日 |
諮問庁から資料の提出を受ける |
平成16年12月15日(第45回審査会) |
審議 |
平成17年3月15日(第49回審査会) |
審議 |
平成17年4月28日(第一部会第1回審査会) |
審議 |
平成17年5月27日(第一部会第2回審査会) |
審議 |
平成17年6月16日 |
答申(答申第46号) |
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