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掲載日:2024年3月26日

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答申第56号 「平成14から15年にかけて狭山署構内において発生したストーカー事件についての逮捕事件に関する県警に提出した報告書」の不開示決定(平成17年10月19日)

答申第56号(諮問第56号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成15年5月26日付けで行った「平成14年から15年にかけて狭山署構内において発生したストーカー事件についての逮捕事件に関する県警に提出した報告書」(以下「本件文書」という。)の不開示決定は、妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「審査請求人」という。)は、平成15年5月9日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「平成14年から15年にかけて狭山署構内において発生したストーカー事件についての逮捕事件に関する県警に提出した報告書」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) これに対して実施機関は、開示請求された公文書については、当該公文書の存否を答えること自体が個人等の権利利益を侵害することとなり、条例第10条第1号に該当する不開示とすべき情報を開示することとなるので、存否を答えることができないとして、平成15年5月26日付けで不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。

(3) 審査請求人は、平成15年5月28日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消して、請求文書を開示するべきであるとして審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について、審査庁から平成15年8月20日付けで条例第22条に基づき、諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件に係る審査に際し、平成16年11月17日付けで審査庁から「開示決定等理由説明書」の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成17年7月15日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
なお、審査請求人は反論書の提出をせず、当審査会に対する口頭による意見陳述を求めていない。

3 審査請求人の主張の要旨

(1) 本件処分を取り消して、請求文書を公開すべきである。

(2) 行政側が文書の存否を不明確にしている理由がわからない。
本件文書の存在は明らかである。新聞紙上に発表された事件である。
本件発生の理由は、被害者側が警察署に対し、数回相談に訪れているが、相談にのらなかったらしい。この辺の事実を知りたいのである。

4 実施機関の主張の要旨

審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 条例第13条は「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定している。
また、条例第10条第1号本文は「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む)又は、特定の個人を識別できないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれのあるもの」を不開示情報のひとつとして規定している。
この規程の趣旨は、個人の尊厳及び基本的人権の保護という憲法原理に立脚し、いわゆるプライバシーに関する情報を原則として不開示として扱うことを定めることにより、個人情報がみだりに公開されることを防ぎ、プライバシーを保護することにある。

(2) 本件開示請求は、公文書開示請求書によると「平成14年から15年」という特定の期間に、しかも審査請求人の意向としては平成14年末から平成15年初という極めて短い特定の期間に、「狭山署構内」という特定の場所において犯罪が発生したということを前提として請求されているものである。

(3) 本件開示請求のように、特定の期間及び特定の場所並びに犯罪の態様を相当程度にまで限定した開示請求に対して、公文書を検索して特定し、当該公文書を開示すべきか否かについて判断し処分を決定するということは、個人である被疑者及び被害者が識別され、また、特定の個人が被害を受け、あるいは特定の個人が検挙されたという事実を明らかにすることとなる。
特に、性犯罪事犯やストーカー事犯のように、被害者の個人情報を保護する必要性の高い場合等については、事件の発生場所等により、被害者が特定され、又は被害者の権利利益を侵害するおそれがあることから、個人に関する情報の要保護性は高い。

(4) 本件処分は、条例の規定に基づく妥当なものである。

5 審査会の判断

(1)本件文書について

本件文書は、仮にこれが存在するとすれば、「平成14年から平成15年」、しかも実施機関の説明によると審査請求人の意向としては平成14年末から平成15年初という極めて短い特定の期間に、「狭山警察署構内」という特定の場所で発生した「ストーカー事件」という態様の犯罪について、実施機関の職員が作成した特定の個人に係る逮捕事件に関する公文書であり、その内容は、一般的に、被害者及び加害者の機微な情報が含まれるものであると思われる。

(2)存否応答拒否について

条例第13条は、開示請求者に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第10条各号の不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる旨規定している。
そして、条例第13条は、開示請求に係る公文書が存在しているかどうかを明らかにすることによって、条例第10条各号の不開示情報の規定により保護しようとしている利益が損なわれる場合に適用することができると解される。

(3)本件文書の存否応答拒否の可否について

仮に、本件文書が存在するとしてその存否を答えることは、本件開示請求にかかる事件について警察官による逮捕があったか否かという情報(以下「本件存否情報」という。)を明らかにすることとなると認められるので、本件存否情報が条例第10条第1号の不開示情報に該当するとすれば、条例第13条により、本件文書の存否を明らかにしないで、不開示決定すべきこととなる。
そこで、本件存否情報が条例第10条第1号の不開示情報に該当するか否かを検討する。

  • ア 条例第10条第1号該当性について
    本件開示請求で開示請求書に記載された「平成14年から15年にかけて狭山署構内において発生したストーカー事件についての逮捕事件に関する県警に提出した報告書」それ自体は、その存否を答えたとしても、本件当事者が誰であるかを直ちに特定することはできないと認められる。
    しかし、本件開示請求は、本件開示請求にかかる事件の発生したとする特定の期間及び特定の場所並びに犯罪の態様を相当程度にまで限定した開示請求であって、一般人には、本件当事者を識別することは困難であると認められたとしても、本件当事者の家族、親族などの関係者には、その内容から一定程度個人の特定が可能である、と考えられる。
    この場合において、本件存否情報を明らかにしたとすれば、これらの関係者には、本件当事者が本件開示請求に係る事件について、警察官により逮捕されたという事実の有無という情報が開示される結果となるものと認められる。
    警察官によって逮捕されたという事実の有無という情報は、本件当事者の一身上の機微に属する類のものであって、このような情報が開示されるとなれば、本件当事者のプライバシーが侵害され、権利利益が害される結果となることは明らかである。
    また、本件のようなストーカー事犯が関連した場合、被害者の個人情報を保護する必要性の高いときは、事件の発生場所等により、被害者が特定され、又は被害者の権利利益を侵害するおそれがあることから、個人に関する情報の要保護性は特に高いものであり、個人の権利利益を害するおそれの判断に当たっては、より慎重な判断が求められるものである。
    よって、条例第10条第1号の「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当すると認められる。
  • イ 条例第10条第1号ただし書該当性について
    刑事事件について犯罪捜査が行われたか否かという情報は、当該事件の規模や社会的影響の大きさ等の諸事情を踏まえて、被疑者等の関係者の氏名等と併せ、報道発表されることは少なくない。しかし、それは、司法手続等を念頭に置きつつ、その信頼を確保すること等の基本的な理念に基づき実施されているものであって、その限度において、当該事件について犯罪捜査が行われたか否かが明らかにされ、その被疑者等はプライバシーを開示されるなど一定の不利益を受けざるを得ないが、それを超えて、関係機関が犯罪捜査を行ったか否かについての情報並びに個人の名誉や信用に直接かかわる個人情報である特定の場所、特定の期間及び特定の犯罪態様の被疑者あるいは被害者であるという事実が、いかなる場面及びいかなる時点においても一般的に公開されるべきものであるということはできない。
    本件について関係機関による報道発表があったか否かについては不明であるが、仮にこのような報道発表があったとしても、これをもって本件存否情報について「法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当することとなると認めることはできず、条例第10条第1号ただし書イに該当しない。
    また、条例第10条第1号ただし書ロ又はハに該当すべきとする事情は認められない。
  • ウ 結論
    上記ア及びイにより、本件存否情報は、本件当事者に関する情報であって、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものに該当すると認められる。
    また、本件存否情報が、条例第10条第1号ただし書きイ、ロ又はハに該当すべきとする事情は認められない。
    よって、本件対象文書について、存否の応答を拒否した本件処分については、これを妥当なものと認める。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
城口美恵子、田村泰俊、山口道昭

審議の経過

年月日

内容

平成15年8月20日

諮問庁(審査庁。以下同じ。)から諮問を受ける。(諮問第56号)

平成16年11月17日

諮問庁から開示決定等理由説明書を受理

平成17年7月15日(第三部会第4回審査会)

実施機関から意見聴取及び審議

平成17年8月9日(第三部会第5回審査会)

審議

平成17年9月26日(第三部会第6回審査会)

審議

平成17年10月11日(第三部会第7回審査会)

審議

平成17年10月19日

答申(答申第56号)

お問い合わせ

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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