トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成17年度情報公開審査会答申 > 答申第67号 「医療保護入院者の入院届の「生活歴及び現病歴」」の不開示決定(平成17年11月15日)
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掲載日:2024年3月26日
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答申第67号(諮問第80号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が、平成16年4月8日付けで行った「医療保護入院者の入院届(以下「本件文書」という。)の「生活歴及び現病歴」欄」の不開示決定は、妥当である。
2 異議申立て及び審査の経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成16年3月24日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、本件文書の開示請求を行い、実施機関は、これを平成16年3月25日に収受した。
(2) 実施機関は、本件開示請求に係る公文書を本件文書と特定した上で、平成16年4月8日付けで不開示決定を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成16年4月10日付けの異議申立書により、実施機関に対し、不開示決定を不服とし、速やかに開示することを求める異議申立てを行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成16年6月25日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会の本件審査に際し、実施機関から平成17年5月25日付けの開示決定等理由説明書(以下「説明書」という。)の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成17年6月6日に申立人から反論書の提出を受けた。
(7) 当審査会は、平成17年7月8日に実施機関からの意見聴取を行った。
(8) 当審査会は、平成17年7月22日に申立人からの口頭意見陳述を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人が開示を求める主張は、開示請求部分が申立人の記述署名した部分であり、不開示にする理由が存在せず、申立人自身が記述部分を読んで何ら不都合は存在しない。
また、本件文書を開示したとて一方的な受け身の埼玉県が何ら迷惑するはずがなく、医療保護入院者の身の安全と権利、利益のために開示することを求める。
4 実施機関の主張の要旨
異議申立てに対する実施機関の主張の要旨は、次のとおりである。
(1) 本件文書中「生活歴及び現病歴」欄は、健康状態、容姿、病歴、障害の有無及び程度、その他個人の心身に関する情報を含み、条例第10条第1号の「個人に関する情報」に該当する。
(2) 本件文書は、精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律に基づき、精神病院の管理者が精神保健指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院が必要と認めた者について、知事に届け出の義務を課したものである。本件文書は、本人に開示することを前提とした書類ではなく、本人の判断力の低下を根拠とした強制的な入院という側面があるため、精神医療審査会において適正かどうか審査を通してその妥当性を担保するものである。
したがって、一般的に入院届に記載されている情報は、精神障害者に対する適正な医療や保護のための診断や判定に必要な情報に該当するものであり、精神保健指定医の診断の結果である「生活歴及び現病歴」欄を開示することになると、この入院形態が本人の同意を得ないで行われるという特殊な事情を考慮すれば、本人の病感や病識との違いから、病状に悪影響を与えたり、医師や医療機関に不信感が生じるおそれがある。
(3) 本件文書が開示される場合、記録作成者が正確な情報を記録できなくなることも懸念され、埼玉県精神医療審査会の審査に影響を及ぼし、ひいては患者の処遇が不適切になるおそれがある。
5 審査会の判断
(1)医療保護入院者の入院届について
医療保護入院届(以下「入院届」という。)は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条第4項の規定により医療保護入院者の症状等について精神病院の管理者が保健所長を経て知事に届け出るものであり、医療保護入院とは、指定医による診断の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院の必要がある者であって本人の同意に基づいて入院が行われる状態にないと判定されたもので、保護者の同意があるときに、本人の同意なく入院させるものである。
入院届には、医療保護入院者(以下「入院者」という。)が入院した病院の名称、所在地並びに管理者の氏名及び印影、入院者の氏名、性別、生年月日及び住所、入院年月日、病名、生活歴及び現病歴、これまでの入院期間及び入院回数、現在の病状又は状態像、医療保護入院の必要性、診断した指定医の氏名及び印影並びに保護者の氏名、続柄、生年月日及び住所が記載されている。
(2)条例第10条第1号(個人に関する情報)該当性について
実施機関は、本件文書を条例第10条第1号に該当するとして不開示を主張するので、この点について判断する。
条例第10情第1号は「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」を不開示情報として規定している。
ところで、本件文書は、入院の際、医療保護入院が適当かどうかを判断する上で、入院者の疾病、健康状態について、指定医師が陳述者(申立人)の意見を参考に精神医学的な見地から記載したもので、入院者の心身に関する情報であって、個人の人格と密接に関連し、一般的に「他人に知られたくない」、「他人に公開されたくない」という、感受性を基準として、本人が公開されないことを欲するであろうと考えられる情報として、個人に関する情報であると認めることができる。よって、条例第10条第1号により不開示とした実施機関の判断に誤りはない。
なお、入院届は、本人の同意なく入院させることができることから、入院者はこの診断に納得しない場合があることも容易に想定され、この情報が公にされると、病状及び今後の治療に悪影響を及ぼすことも十分考えられる。
(3)自己情報の開示請求について
申立人が開示を求めている本件文書の「生活歴及び現病歴」欄は、申立人本人が記述署名した部分であり、不開示にする理由が存在しないと主張するので、この点について判断する。
本件文書中の申立人が開示を求めている部分は、指定医師が陳述者(申立人)の意見を参考に精神医学的な見地から記載した情報であるため、申立人が記述したとする主張は認められない。
なお、情報公開制度は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず開示請求を認める制度であることから、開示・不開示の判断に当たっては、本人からの自己情報についての開示請求である場合も含め、開示請求者が誰であるかは考慮されないものである。このことは、特定の個人を識別することができる個人に関する情報については、条例第10条第1号ただし書イからハまでに該当するものを除き、これを不開示情報とするのみで、本人から開示請求のあった場合について特段の規定を設けていないことからも明らかであり、申立人の主張は認められない。
以上のことから、前記(2)、(3)の判断により不開示情報と認められるため「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、礒野弥生、大橋豊彦
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成16年5月12日 |
諮問を受ける(諮問第80号) |
平成17年5月25日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成17年7月8日 |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成17年7月22日 |
不服申立人より口頭意見陳述及び審議 |
平成17年10月3日 |
審議 |
平成17年10月19日 |
審議 |
平成17年11月15日 |
答申(答申第67号) |
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