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掲載日:2020年4月9日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その7

空気中に浮遊している見えない粒子

2.5μm以下の微小な粒子に注目

私たちの呼吸する空気中には目に見えない小さな粒子が漂っている。土ぼこりのような大きな粒子は、風で舞い上がっても、すぐに地上に落ちてくるが、大きさが10マイクロメートル(μm)(1mmの100分の1)より小さいと、数時間以上も空気中にとどまっている。この間に呼吸によって、人間の体内に侵入することになる。人間への影響を考慮して、日本では空気中に浮遊する10μm以下の粒子の濃度について環境基準を定めているが、最近では、更に小さな粒子に注目が集まっている。これは、小さい粒子ほど、呼吸によって肺の奥にまで入り込むためだ。アメリカでは、十年前から、大きさが2.5μm以下の微小粒子(写真。PM2.5と呼ぶ)についても環境基準を定めている。

このPM2.5には、燃焼によって最初から粒子として排出されるものと、ガスとガスとが空気中で化学反応を起こして、粒子になるものとがある。前者の代表はディーゼル黒煙だ。黒煙はディーゼル車だけでなく、焼却炉からも排出されるが、最近では規制によって、だいぶ減少してきた。後者は二次粒子と呼ばれ、排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物などが空気中で変化し、アンモニアなどのガスと反応して粒子となったものだ。また、塗料やインクなどに含まれる揮発性有機化合物が、空気中で複雑な化学反応を起こして粒子になる場合もある。このように、二次粒子は非常に多くの成分からなっており、まだよく分からない部分も多い。なお、これは夏の光化学スモッグの発生時に多く生成することが分かってきている。

環境科学国際センターでは、二〇〇〇年九月からPM2.5の濃度とその化学成分を調べている。国内では、このような長期間の観測を行っている事例は少ない。環境基準が定められている10μm以下の粒子は二〇〇三年前後で濃度が低下したが、PM2.5の濃度には大きな変化は見られない(図)。観測地点(騎西町)周辺には、原因物質を排出する大きな工場や幹線道路は無いが、PM2.5の濃度は決して低いとはいえず、特に夏はPM2.5の大部分を二次粒子が占めている。これは、東京湾岸の大規模工業地帯や交通量の多い都心部で排出されたガス状の原因物質が、南風に乗って埼玉県に運ばれながら化学反応を起こすことに加えて、県内で排出された原因物質の影響が上乗せされるためだ。特に、トルエンなどの揮発性有機化合物については、県内の排出量は全国でも有数である。

このように、PM2.5は工業地帯や都心部以外でも存在しており、その濃度を更に下げるためには、二次粒子を減らす必要がある。二次粒子の原因物質は、これまでにも様々な規制によって排出量が減らされてきたが、今後も一層、排出を減らす必要がある。また、揮発性有機化合物の排出を抑制し、光化学スモッグの発生を抑えることも、二次粒子の対策には有効だ。

最近では、更に小さなナノ粒子も話題となっているが、埼玉県内での汚染状況はほとんど分かっていない。人が安心して呼吸できるようにするために、空気中の見えない粒子の実態を明らかにする研究は今後も続けていかなければならない。

微小粒子PM2.5の写真

微小粒子PM2.5の電子顕微鏡写真

空気中を漂う粒子の濃度のグラフ

空気中を漂う粒子の濃度

大気環境担当 米持 真一

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 大気環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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