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掲載日:2018年4月18日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その28

深さ3千メートルの地下世界を見る

揺れやすい“土鍋”の関東平野

上の図は地下の岩盤の立体的な形を示したものだ。その深さは最大で三千四百メートルに達する。場所は埼玉県南部の平野。南北は東京都との境から東松山市-幸手市を結ぶ線まで、東西は千葉県境から関東山地の近くに至る広大な地域だ。しかも、これは想像図ではない。環境科学国際センターが五年の歳月をかけて行った大深度地下構造調査の結果を基に作成したものだ。図を見てどのようなイメージが浮かぶだろうか。中央に広い谷があり、東側に斜面と尾根、西側には小高い山々と小さな湖。どこかの山岳地形を空から眺めている感じがする。そう、地上と似たような風景が実は地下深いところにも存在するのだ。

私たちが暮らす関東平野は、大昔に海底にあったこの岩盤の上に、泥や砂が数百万年の時を経て積もってできた。身近なたとえで言えば、土鍋(岩盤)に、豆腐やこんにゃくなど(泥や砂の地層)を敷き詰めたような感じ。土鍋をガタガタ揺らすと豆腐などがユラユラ揺れる。関東平野が地震の時に揺れやすいことはよく知られているが、その理由はこのような柔らかい地層が分厚くたまっているからだ。また、同じ地震でも地域によって揺れの違いが出るのは、地層の固さや構成、厚みが異なるため。もめんと絹ごし豆腐の違い、こんにゃくが混ざるか否かのイメージ。下の図は、そのような固さや厚みの異なる地層の構成(地下構造)を、東西方向の断面図で例示したものだ。

関東地方に甚大な被害を与えた関東地震(大正十二年)から八十年以上経った今、再び大被害を起こす地震の発生の危険性が指摘されている。地震災害では人や家屋、ライフラインの被害の軽減が最も重要だ。しかし、地震災害を環境の視点で見ると、様々な環境汚染が懸念される。わずかな量ではあるが、新潟中越沖地震での原子力発電所の放射能漏れは記憶に新しい。さらに、下水処理場やごみ焼却施設、化学工場および石油タンクなどの損壊により、河川の汚濁、大気汚染および土壌地下水汚染が広がる危険性がある。すなわち、地震災害は広い意味で(しかも重要な)環境問題の一つなのだ。

このような環境汚染も含めた地震被害の軽減を図るには、地震時の地盤の揺れを正確に予測し、適切な対策を講じることが重要だ。そのためには岩盤までの地下構造を知る必要がある。しかし、これまでの調査は人工地震を発生させる技術が主流で、莫大な費用がかかるほか、騒音や振動を発生するため都市部での実施が困難であった。今回の調査は、海の波が陸地にぶつかって生じた微振動を利用する最新技術(微動探査法)を駆使した。この技術は環境に優しく、少ない費用で実施できるもので、環境科学国際センターがその実用化に大きく寄与した。また、都市部での広域的かつ詳細な大深度構造を明らかにした調査は、これが国内で初めてである。この調査結果は県の行政機関のみならず一般に公開され、地震動予測や構造物の耐震設計・耐震評価などに広く利用されている。

関東平野の岩盤形状(埼玉県南部地域:最大深度3400m)の図

東西方向の地下断面図(日高市-越谷市の例)のグラフ

地質地盤・騒音担当 松岡 達郎

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環境部 環境科学国際センター 研究推進室 土壌・地下水・地盤担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2055

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