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掲載日:2018年4月17日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その30

地盤沈下観測網を利用した環境調査

地下を探るのぞき窓

地盤沈下は地下水の過剰な汲み上げが原因であることはよく知られているが、地下水の状態はどのような施設によって監視されているのだろうか?埼玉県は地盤沈下観測のため、群馬県や茨城県などとともに世界でも有数の地下水の観測網を作ってきた(図)。個々の観測所には地下水が流れている地層まで掘られた井戸が設置されており、最も深い井戸は六百メートルにも及ぶ。県はこれらの井戸において地下水位を継続して観測している。

地下水の観測において最近注目されているものに地下温度がある。地下温度は地下環境を理解する指標の一つと言われており、地下水の流動方向をはじめ涵養域(地下水が地中深く浸透してゆく地域)や湧出域(深部の地下水が地上に向かって上昇している地域)などの地下水環境の地域区分、さらには流速の算出にも利用される。また、ヒートアイランドによる地下温度の上昇など地下環境の変化をも記録している。地上の温度が地下に伝わっていくのには時間差があるため、現在の地下温度を正確に観測することで過去における温度変化の歴史を紐解くことができる。

一般の井戸と違って、地盤沈下観測用の井戸は地下水の汲み上げがないため、井戸内の水温が周りの地盤の温度とつり合っており、測定した地下水の温度がそのまま地下の温度と考えられる。そこで、環境科学国際センターと国の産業技術総合研究所は共同で地下水観測所を利用した地下温度のモニタリングを始めた。井戸内には千分の一℃レベルの水温変化が計測できる精密な温度計を設置したので、地下温度の変化が非常に小さい平野部でも十分に計測することができる。地上と地下双方の温度を実測し、理論計算を解くことによって、「何十年前から気温が上昇し始めたのか?」とか、「年平均で何℃ずつ増加しているのか?」など、これまでの人間活動の影響による地表面温度の上昇を再現することもできる。

県東部の地下水は、終戦から高度経済成長期にかけて東京湾に向かって流れていたが、その後は県北部へ向う流れに変化したことを指摘する研究がある。これは、工場や事業場が東京下町から県南部さらに県北部へ拡大したことと一致する。地下水の流れは極めて遅いので、現在実施されている規制の効果や日帰り温泉ブームの影響は数十年後に現れるのかもしれない。地下環境は川や湖のように目にすることもできないし、調査できる場所も限られている。したがって、県全域に及ぶ広域的な地下水流動など高度な環境情報を把握するためには、地下水観測所などを利用して基礎情報を長期にわたって積み重ねていく必要がある。地下水観測網は地盤沈下の観測を目的に整備され、これまでも多くの情報を提供してくれた。今後はこれらの施設をさらに有効に活用し、様々な環境問題の解決に向けた貴重な情報源として利用していきたい。

関東平野に分布する地盤沈下観測網の図

関東平野に分布する地盤沈下観測網(●は地下水観測所を示す。)

観測機器が設置された観測井の様子の写真

観測機器が設置された観測井の様子

地質地盤・騒音担当 八戸 昭一

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環境部 環境科学国際センター 研究推進室 土壌・地下水・地盤担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2055

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