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掲載日:2020年4月9日

埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その23

創エネ、省エネで削減

下水道の消費エネルギー

地球温暖化を緩和すべく家庭や製造業界、運輸業界などさまざまな部門で消費エネルギーの削減に向けた動きが盛んになっている。

本稿で取り上げる下水道は、人々が使用して汚れた水をきれいにしてから河川や湖沼へ放流するいわば環境に優しい施設だが、実は膨大なエネルギーを消費している施設でもある。電力消費量をみてみると、下水処理場では日本の電力総消費量の0.7%(約68億キロワット・2003年度)が消費されている。68億キロワットの電力消費量とは出力100万キロワットの原子力発電所2機が1年間に供給できる電力に匹敵するのだ。

あらゆる部門で消費エネルギーの削減が求められる中、下水道で消費されるエネルギーを削減するにはどうしたらよいだろうか。正味の消費エネルギーを削減させる手法は大きく二つに分けられる。一つは創エネ、もう一つは省エネである。

創エネの代表的なものは、下水処理の過程で発生する汚泥からメタンガスを発生させ、メタンガスを用いて発電を行なう「消化ガス利用」と、汚泥から炭を作り、発電所で使用する石炭に混ぜてエネルギーを得る「炭化汚泥の発電利用」や、広大な面積を有する下水処理場に太陽光パネルを設置し、発電を行なう「太陽光発電」、下水処理場と下水処理水の放流先との水位差を利用した「小水力発電」などである。

山形県では消化ガスのコジェネレーション(注1)利用により、処理場内消費電力の48%をまかなっているほか、発電廃熱を場内利用するなどして、エネルギー使用量を大幅に削減させている。東京都では年間汚泥発生量の10%を炭化-発電利用する事業を2007年から実施しており、炭化燃料から年間970万キロワットの発電が可能であると推算されている。小水力発電はいくつかの下水処理場に実際に導入されており、場内消費電力のうち0.7%を供給している(東京都森ヶ崎水再生センター)。太陽光発電は、下水処理場の屋根に太陽光パネルを設置した場合、下水処理場のエネルギー消費量のうち約5%を供給できると試算されている。省エネの取組は主に効率の悪い装置を高効率の装置へ付け替えることや、処理施設の運転条件を最適化することが中心である。

下水処理施設で消費されているエネルギーの内訳(グラフ)をみてみると、下水処理と下水汚泥(注2)の処理工程で、下水道施設全体で消費されるエネルギーの約半分が消費されている。水処理ではブロア(水中に酸素を供給するための装置)が、多量のエネルギーを消費しており、ブロアを効率の良いものに付け替えた場合には処理場全体の消費電力を5%削減できると試算されている。

汚泥処理では汚泥の焼却が最もエネルギーを消費しているとされ、(財)埼玉県下水道公社では、間欠運転されていた焼却炉を連続運転が可能になるようにシステムの調整を図ったことなどにより、燃料の使用量を改善前と比べて約25%削減させることに成功した。この取組が2007年度の省エネルギー優秀事例全国大会の資源エネルギー庁長官賞を受賞した。

創エネ・省エネには上述のとおり様々な手法が存在している。これら個々の技術を適切に組み合わせることにより、消費エネルギー量の少ない下水道が構築されることを期待したい。

(注1)発電機で発電を行ない、またそのときに生じる廃熱を回収して利用するシステム
(注2)下水処理場では水中の汚れ(有機物など)を微生物に摂取させることにより水を浄化しているが、汚れを摂取した微生物は増殖するため、下水処理場では適宜微生物を取り除かなければならない。この微生物の固まりを汚泥と呼ぶ。

下水処理施設で消費されているエネルギーの内訳の表

下水処理施設で消費されているエネルギーの内訳

埼玉県環境科学国際センター 水環境担当 柿本貴志

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