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掲載日:2018年4月19日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その7

2008年7月7日掲載

埼玉のヒートアイランド現象

都市化による温度上昇も

昨年八月十六日午後二時四十二分、埼玉県熊谷市で七十四年ぶりに日本の気象官署における最高気温記録が塗り替えられた。その際の気温は四〇.九度にのぼった。同じ日に岐阜県多治見市でも四〇.九度を記録したが、日本で一番暑い場所が埼玉県にあることは間違いない。

気象庁によると、この熊谷市における最高気温の更新は、太平洋高気圧の日本付近への張り出しや山越えの風により気温が上昇するフェーン現象が主な原因であったとしているが、農地や森林から宅地や工業用地への転換といった都市化の進行に伴う土地利用の変化も、気温を押し上げる要因の一つであったと指摘している。つまり、昨年の熊谷市における最高気温の更新は、直接的な原因はフェーン現象と考えられるが、その背景には都市化によるヒートアイランドがあったわけだ。また、地球温暖化の影響を指摘する声もある。

都市化による気温の上昇は人口が集中する地域の多くで発生し、都市部が周辺に比べ極端に高温を示し、等温線が島状となることから「熱の島:ヒートアイランド」と呼ばれている。ヒートアイランド現象は熱中症などの健康被害、冷房使用による二酸化炭素排出量の増加、集中豪雨の増加、生物分布の変化など、私たちの生活や健康、そして自然環境に様々な影響を与えることから、近年大きな問題となっている。特に熱中症では高齢者や子供たちを中心に数多くの人命が失われ、近年増加している。

このようにヒートアイランド現象は単なる気温上昇ではなく、化学物質による大気汚染と同じように、さまざまな発生源から放出される熱による都市の熱大気汚染だと言える。

さて、埼玉県におけるヒートアイランド現象の実態はどうなっているのだろうか。埼玉県では平成十八年度からヒートアイランド現象の実態把握と、緑地・河川によるヒートアイランド緩和効果調査をスタートさせた。現在、県内小学校五十校の百葉箱に温湿度自動記録装置を設置し、データを収集している。その結果、埼玉県の詳細な温度分布が徐々に明らかになってきた。

図1は昨年八月の平均気温を地図にしたものだ。これを見ると、高温となっているのは熊谷市周辺だけではないことが分かる。さいたま市、川口市、戸田市、蕨市といった県南部地域の平均気温は北部より高く二九度を超えている。また、越谷市、春日部市、久喜市などの県東部にも高温の地域が広がっている。

このように、埼玉県のヒートアイランド現象、すなわち熱大気汚染は県北部、南部、東部と広い地域に及んでおり、ヒートアイランド現象が埼玉県全体の問題であることがあらためて確認された。

一方、近年、緑地や河川などが都市を冷やす機能、すなわちクールスポットとしての能力が注目されているが、その能力はどの程度なのであろうか。昨年埼玉県内都市部の緑地四カ所を対象に緑地とその周辺の詳細な温度調査を行った。その結果、緑地内は緑地外に比べ最大7.1度、平均1.6度低くなる現象が確認された。この様に緑地は高い冷却能力を持っていることが確認され、一部ではその冷気が周囲へ流れ出し緑地の周辺を冷やしていることが分かった。(図2)

ヒートアイランド現象は、裸地・樹林地の減少、地表面のアスファルト化やコンクリート化、自動車や空調設備からの人工排熱など、人間が長年にわたり行ってきたさまざまな活動に起因している。従ってその解決には、緑化の推進といった対策も重要ではあるが、地球規模の温暖化対策と同じように化石燃料に依存した社会から、持続可能な社会への移行が鍵となる。

平成19年8月の平均気温の分布の図

図1 平成19年8月の平均気温の分布

宮内庁埼玉鴨場(越谷市)周辺の温度分布の図

図2 宮内庁 埼玉鴨場(越谷市)周辺の温度分布
(平成19年8月14日午後1時30分)

埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 嶋田知英

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