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掲載日:2018年4月18日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その15

河川を汚している成分は貴重な資源だった

排水分離による新たな排水処理システムづくりの試み

埼玉県内の河川のBOD濃度(腐敗性の有機物濃度の指標)は以前に比べて改善されているが、都市河川に限定して見てみると十分に改善されているとは言い難い。そのような河川では生活排水由来の窒素(主にアンモニア)やリン(主にリン酸)の濃度も高く、その結果、付着藻類が異常増殖し、本来川が有していた親水空間としての機能を十分に発揮することができていないことがある。このような状況を改善し、県民が親しめるような河川にするべく、埼玉県では「水量豊富で清浄な河川」「豊かな生態系を有する河川」「安心・安全な河川」を目標とした「ふるさとの川再生基本プラン」に基づき、BODのみならず、窒素やリン(これらをあわせて「栄養塩」と呼ぶ)の濃度低減も目指している。

ここで窒素やリンについて少し考えてみよう。水環境中において窒素やリンは藻類の異常増殖であるアオコや赤潮などを発生させるいわば厄介者であるが、肥料や工業原料として現代社会に不可欠な物質でもある。アンモニアは窒素と天然ガスなどの化石燃料を原料として、世界で1年間に約1億トンも生産され、このうち約90%が肥料として利用されている。アンモニア製造のために1年間で約1兆kWhのエネルギーが消費されるが、これがどのくらいのエネルギーか想像できるだろうか。なんと日本の年間エネルギー消費量と同じレベルなのだ。リン酸はリン鉱石から作られるが、リン鉱石は採掘可能年数があと数十年といわれており、枯渇が懸念されている資源だ。実際にアメリカはリン鉱石の輸出制限を行ない資源確保に動き出している。このようにして生産された窒素やリンの多くは食料となって私たちの手元に届き、それらはし尿として体外に排泄され(表)、最終的には水環境を悪化させている。し尿中に排泄される栄養塩を水環境中に排出させないように上手に回収し、再利用できないか。

そのようなシステムの構築が埼玉県の水源域の農村で試みられている。前述の通り、生活排水中の窒素、リンの大半はし尿に含まれているため、一般的には生活雑排水とともに処理されるし尿を分離し、コンポスト型トイレにより処理する方式(図)をここでは採用している(このように排水の水質に応じて排水を分離し処理する方式をここでは排水分離型システムと呼ぶ)。これはこの方法が下水道や浄化槽と異なり、し尿中の成分を河川に排出させないため、水源保全効果が高く、また肥料成分をコンポストとして循環利用ができ、農村において適用性が高いと考えられたためで、使用者によると、悪臭などの問題はなくコンポストも利用されているということである。しかしながらコンポスト化方式が、水質汚濁が問題となっている都市河川流域のどこにでも適用可能であるとはいえず、対象地域の特徴に応じた方式の開発が今後は必要になるであろう。

下水道、浄化槽の整備とともに、排水分離型システムの研究開発を行うことにより、排水処理の方式にも様々な選択肢を用意できるものと考える。県民が親しめる「ふるさとの川」の再生に向けて、更なる研究開発が必要である。

藤村葉子、上治純子 千葉県環境研究センター公開講座資料

水源域に導入された排水処理システムの図

水環境担当 柿本 貴志

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