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掲載日:2020年4月9日

埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その9

遡上できる環境を

官民協働で調査続く

埼玉は海無し県だ。それでも、海からの恵みを受け、その産物を生活の糧にしていた時代があった。荒川水系では昭和20年代まで天然アユが東秩父村に遡上していた。旧菅谷村(現在の嵐山町)では、明治42年にアユ50貫(1貫3750g×50貫=187.5kg/大きさ15cm1尾30gとして約6250尾)の記録が残っている。

村をあげて海からの恵みとなるアユなどを捕獲した。川魚は古くから暮らしと生活に深く関わっていた。その後、農業用の頭首工(取水堰)などの利水により、河川を横断する堰が海からの遡上を拒んだ。

1955年以降の高度経済成長に伴い、東京湾へ注ぐ河川は工場排水や家庭排水で汚濁が進行し、これら海からの恵みが少なくなってしまった。1975年以降、下水処理場の整備や工場等の排水規制により、河川の水質は徐々に改善され、海からの恵みが復活した。しかし、天然アユは、遡上阻害物の堰により、未だに上流へ上ることができない。

東京湾から上ってきた天然アユは、秋ヶ瀬取水堰魚道の難所を乗り越え、さらに、上流へと遡上する。途中の支流入間川へ上った天然アユは、8km先の菅間堰で力尽きる。アユは上流へと遡上する性質が強い魚であることから、この菅間堰を上りきれたとしたら天然アユは、どこまで遡上出来るのだろうか。
この菅間堰上流で分岐する入間川と越辺川へ標識アユ(脂ひれを切除)を放流し、標識アユがどこまで遡上できるのかを、荒川流域で環境保全活動をしているNPO法人荒川流域ネットワークを中心とする団体、個人と協働して調査を行った。

昨年の4月26日に川島町・川越市境の越辺川の河原に約50人の参加者が集まった。志木市秋ヶ瀬取水堰下流の荒川で捕獲された生きた稚アユに麻酔をかけ、小さなハサミで脂ひれを1尾づつ丁寧に切除した。平均全長7cm、魚体重2.2gの標識アユを、数時間かけて越辺川へ4207尾、入間川へ4867尾放流した(写真1)。

標識アユ放流の翌日には、越辺川では放流場所から4km上流の川島町の出丸堰までアユの遡上が目視で観察された。入間川では放流地点から4km上流にある川越市寺山堰の水位調整用の堰板を取り外した。堰上下の落差をなくしアユが上りやすくした。関係漁協のアユ解禁後の6月20日から10月24日までに21か所、延べ16日間、延べ70人の環境保全団体や個人と協働して標識アユの再捕に努めた。

その結果、入間川では、川越市の寺山堰、浅間堰を遡上し、狭山市の上奥富堰下(放流地点から13km)まで遡上が確認された。越辺川では、川島町の角泉床止工、出丸堰を遡上し、中山堰下(放流地点から7.5km)まで遡上が確認された(表2)。

この調査結果に基づき、中山堰、上奥富堰については、関係者へ魚類が遡上できる環境改善に向けた働きかけを行う。また、今年は、更に、上流の遡上環境を把握する目的で、入間川の上奥富堰上流と越辺川中山堰上流に標識アユ放流を行う予定である。

調査参加者の願いは、アユの遡上できる恵み豊かな荒川水系を再現することである。このため、魚が行き交うことのできる河川環境の再生をめざし、環境保全活動のアユ遡上作戦は続く。

標識アユの脂ひれ切除作業の様子
写真1 標識アユの脂ひれ切除作業

標識アユの遡上状況のイラスト
写真2 標識アユの遡上状況(荒川流域ネットワーク提供)

埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 金澤光

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