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掲載日:2018年4月18日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その35

ミヤマスカシユリの保全目指して

絶滅危惧種の大切さを知ろう

ミヤマスカシユリは、秩父地方にある武甲山(写真1)の石灰岩地帯で、一九四〇年代に発見された野生のユリだ。日本固有の多年生植物で、分類学上は、スカシユリの変種として位置づけられている。ミヤマスカシユリは茎が細く、弓のようにしなりながら、その先端に上向きに咲く大きなオレンジ色の花をつける(写真2)。普段私たちがよく見かけるスカシユリからすると、一見奇妙な形に見えるかもしれないが、これがミヤマスカシユリの特徴だ。分布は、武甲山と茨城県の一部で確認されているにすぎず、極めて希少な植物だ。

野外に自生するミヤマスカシユリの個体数は年々減少している。これは、人間活動による開発や、サルなどの野生動物による食害が原因だとされている。現在では、武甲山のミヤマスカシユリは、人や動物が近寄ることができない、ほぼ垂直に近い断崖絶壁でしか確認できない。このような状況を受け、国と埼玉県では、レッドデータブックにおいて、ミヤマスカシユリを「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種(絶滅危惧IA類)」に指定した。さらに、埼玉県では、「希少野生動植物の種の保護に関する条例」に基づいて、「県内希少野生動植物種」のひとつとして指定し、重点的に保護する方針を示している。

環境科学国際センターでは、二〇〇二年から現在に至るまで、ミヤマスカシユリの保全研究を進めてきた。この研究の一部では、当初から、ミヤマスカシユリを絶滅させないために、球根の鱗片を培養して個体を増殖する方法の確立を目指した。その甲斐あって、二〇〇七年には、この方法により増殖した約三百個体のミヤマスカシユリに、花を咲かせることができた。しかも、これらの花からは、多くの種子が採取できた。今後、これらの種子から、花を咲かせる個体が育成できれば、安定的に個体を維持・増殖できるバックアップ体制が整うものと期待される。

一方、自然界には、ミヤマスカシユリのような絶滅危惧種などを含め、一千万種から三千万種の生物が存在すると推測されている。その中で、種の絶滅は、進化の過程にともなって絶えず生じてきた。しかしながら、近年は巨大化した人間活動が原因で、絶滅速度は驚異的に速まっているとされている。国際自然保護連合(IUCN)の調査結果によると、二〇〇六年の段階で、すでに一万六千種以上の生物が絶滅の危機に瀕していることが報告されている。

自然界は、様々な生態系の中で、私たち人間を含めた生物どうしが複雑に絡み合い、微妙なバランスを取って成り立っている。そのため、突然、ある種が絶滅してしまうと、自然界のバランスが崩れてしまう可能性がある。すなわち、絶滅危惧種を保全することは、この自然界のバランスを維持するためにも必要不可欠なことなのだ。

このことからすると、絶滅から種を守ることは、私たち人間を含めた全ての生物にとって、極めて重要な意味を持っているといえる。今後は、ミヤマスカシユリなどの保全研究を通して、絶滅危惧種の大切さを伝えていきたい。

秩父地方にある武甲山の写真

秩父地方にある武甲山

ミヤマスカシユリの写真

ミヤマスカシユリ

自然環境担当 三輪 誠

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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