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掲載日:2018年4月18日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その13

微生物は縁の下の力持ち

工業用洗剤も栄養源

工業化が進む前の河川では、家庭排水、魚など動物の死骸、あるいは落葉や藻類等の植物に由来する汚染が主であった。この種の汚染はわずかなものであれば、川が持つ天然の自浄作用により短期間のうちに回復したのではなかろうか。この浄化作用の中心的な役割を演じているのが微生物である。ここでは、微生物が合成有機化合物を分解する例を取り上げて、その働きを説明しよう。

環境科学国際センターでは、川越市内の入間川において、外部からの流入水のない5km区間でノニルフェノールポリエトキシレート(以下、“NPEO”と略す)の濃度変化を調査した。NPEOは、利用範囲の広い有用な工業用洗剤であり、私たちは様々な面でその恩恵を受けている。反面、この物質は排出規制こそないが、最終分解されると内分泌かく乱化学物質(環境ホルモンとも言う)であるノニルフェノールが生成される。

さて、棒グラフを見てみよう。グラフの横軸に2~16と表示されているが、この数字は親水基の数を表している。洗剤は親水基と疎水基からできている物質で、親水基は水と仲がよく、疎水基は油と仲がよい。したがって、水、油どちらにも溶けるのである(模式図を参照)。河川底の状態や動植物相が健全なら、川の浄化作用が働き、上流地点Aで濃度34.6mg/Lだったが、下流に向かうにつれて分解が進み、1.7km下流の橋Bで11.1mg/Lとなり、さらに3.3km下流の橋Cでは0.7mg/Lまで低下した。この川の地点Aでの濃度レベルは、全国的にみて高レベルにあり、何らかの汚染源が存在したと思われる。

また、流下とともに長い親水基を持ったNPEOが分解され、代わって低分子量物質が増えてくる。しかし、大半の物質は中途半端な分解過程でとどまり、有機酸などの低分子量物質や完全な分解と言われる二酸化炭素の生成までには到達しないのが現実である。こうして入間川の微生物は、NPEOを栄養源として摂取・分解し、その過程で酸素を消費(通常、川の水には20℃で約8mg/Lの酸素が溶けている)している。ただし、NPEOを完全分解まで進める能力はない。

そこで、例えば最終的に生成されるノニルフェノールに対して卓越した分解能力を発揮する微生物を探し出して増殖させ、水温、溶存酸素等を最適化させた装置で活躍させることができれば、効率的に完全分解を実現させることができる。しかし、ここに至るまでには砂浜でダイヤモンドを探すような大変な努力が求められる。生活排水のような「易分解性物質」の処理装置は数多く市販されているが、「難生分解性物質」を処理する微生物処理装置は希有である。これまでに発見された有用な微生物は全体から見ればほんの一部に過ぎず、環境浄化ビジネスの高まりとともに、今後活発な探査が続くことを期待したい。

流下に伴うノニフェノールポリエトキシレートの濃度変化 ノニルフェノールポリエトキシレートの模式図

水環境担当 斉藤 茂雄

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