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掲載日:2018年4月18日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その18

安心・安全な「ごみ埋立地」をつくる

化学物質浄化する火山灰土壌

廃棄物問題を語るとき、一九九四年に国連大学で提唱された「ゼロエミッション研究構想」を思い浮かべる人が多い。ゼロエミッションとは、ある産業で発生する廃棄物を別の産業で再利用するなどして、全体としてごみゼロを目指した構想で、資源や環境を守るために重要な理念であるが、人間が生命活動を営む上では資源を消費し、必ず不要物であるごみが排出される。このため、3R(リデュース・リユース・リサイクル)運動が進み、ごみの排出量が少なくなってきたとは言え、ごみの埋立地は無くならない。無くならないのなら、社会に受入れられるような安全かつ安心なごみの埋立地をどのように作ったらよいのだろうか?

環境科学国際センターでは、自然のサイクルに同化できるごみ埋立地を構築することが重要であると考え、前身の公害センターから三十年にわたり自然土壌のなかでごみを安定化させる研究を行ってきた。埼玉県内の土壌では、富士火山帯の影響力が大きい洪積台地土壌(関東ローム層である火山灰土壌)、特に県南部の火山灰土壌がほとんどの化学物質を保持し固定化できる能力をもっていることを証明してきた。一方、米国環境保護庁(USEPA)では、一九八〇年代頃から、浸透性反応壁(Permeable Reactive Barrier: PRB)に関する研究が行われており、土壌に鉄粉を混ぜた浸透性反応壁に汚染水を流し、浄化させる工法が確立されてきた(図)。環境科学国際センターでも、浄化能力の高いこの火山灰土壌にUSEPAで実績のある鉄粉を混ぜたPRBを応用して、埋立工法を確立してきた。

平成十六年度から十八年度にかけて実施してきた文部科学省・科学技術振興調整費による火山灰土壌と鉄粉を利用した中間覆土の研究では、直径5m、深さ7mの模擬埋立地(図)を作成した。ここでは、一般廃棄物の焼却灰や粗大ごみ、さらには産業廃棄物(自販機などの破砕物)を混合した廃棄物層(一層当たり六十トン)の下に、中間覆土層として県内で最も浄化能力の高い鶴ヶ島市の火山灰土壌に鉄鋼業から産業廃棄物として排出される鉄の研磨粉(錆びた鉄の粉)を混ぜたPRBの層(中間覆土層)を設けた。雨水により廃棄物層から流出してくる各種の化学物質を含む汚水をこの層に通過させ、化学物質の浄化実験をその後1年間にわたり行ってきた。その結果、対照区(PRB処理を施していない実験区)とPRB処理区とを比較すると、1年間に流出してくる化学物質の総量は、対照区で廃棄物百二十トン当たり2.4kgであるのに対し、PRB処理を行うと廃棄物百二十トン当たり0.63kgと極端に流出量が低く、約七十四%がPRB処理により削減できることが分かった(表)。

火山灰土壌に鉄の研磨粉を混合するだけで多くの化学物質が浄化できるのは、火山灰土壌に多く含まれる錆びた鉄が溶けて、鉄化合物や鉄が再鉱物化するときに化学物質が不溶化していくものと推察されたが、まだまだ反応については不明な点が多い。しかし、実務段階ではこのPRB処理技術により、低コストで省エネルギー型の最終処分場の場内浄化システムが確立されつつある。

汚染水を浄化するための「浸透性反応壁」と自然土壌を用いた「埋立構造」の説明図

PRB処理における浸出水中の化学物質量(1年間)の表

廃棄物管理担当 小野 雄策

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 資源循環・廃棄物担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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