環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 研究課題 > 令和3年度研究課題一覧 > R04第1回審査会コメント2/研究課題(水環 R04-R06 埼玉県内水環境における水生動植物相)

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掲載日:2023年1月10日

環境科学国際センター研究課題(水環境担当/R4~R6)

埼玉県内水環境における水生動植物相の高精度網羅的調査手法の開発

(水環境担当:木持、田中、渡邊/R4~R6)

 河川の水質は全国的に改善しており、近年は生物多様性の保全・修復も重要な位置づけにあります。また、希少生物の保護保全や外来生物対策等も重要課題ですが、これらも含めて対応策を実施するためには、対象生物の生息実態の正確な把握が不可欠と考えられます。こうした中、環境DNA分析による魚類等の生息状況調査技術が急速な発展を遂げています。既往手法の採捕による生物調査と環境DNA分析は長所・短所(特徴)がほぼ正反対であることから、両手法を併用することで生物調査の大幅な効率化・高精度化が期待できます。
 本研究ではこの技術を応用し、主に県内水環境に生息する肉眼観察可能なサイズの動植物全般を対象とした網羅的調査手法を開発することを目的とします。具体的には、県内の水生生物のDNAデータベース(DB)の整理と、採捕調査も併用しつつDBにリンクした網羅的調査手法の構築を目指します。

《研究の概要》(PDF:245KB)

 

令和4年度第1回研究審査会コメント

研究課題

埼玉県内水環境における水生動植物相の高精度網羅的調査手法の開発

研究審査会コメント

  •  環境DNAも利用価値は極めて高いにもかかわらず、現時点で抱える精度や誤差に関わる問題の解決、魚以外のマクロな生物への応用等、実用化する上では重要な課題です。民間のコンサルタント等、環境DNAの利用を考えている機関も多く、そうした機関への情報提供ということでも意味があります。そうした中、未解決の技術的な課題も多いです。特に、ここで目標としている、選択的回収方法の構築、主要生物のDNA情報の整理やデータベースの作成は、技術を進めていく上で重要な課題といえます。研究の目標としては妥当です。
     ここでは、主に、外来魚の広域の分布の把握に力が入れられていますが、環境DNAの安定性、検出できる時間の把握、流況との関係の把握等も、まだ十分に解明さてているわけではないので、副次的な課題として同時に進められるとよいです。
     応用としては、比較的狭い場所を対象とした場合、例えば、堰の周辺の環境DNAの分布を測定することで、堰による生物の移動阻害の評価、季節的な差を調べることで、生活パターンとの関係の把握など、環境管理への適用の範囲は広いです。比較的広い領域に対しても、礫河川、泥河床区間や植生の有無等の影響が分布に及ぼす影響の把握等、様々な適用が考えられます。また、実際には、海産や汽水性の魚種も河川域に侵入してきており、その上限の把握、堰の有無の影響把握等にも利用できそうです。いずれにしても、新しい技術として、様々な応用が可能です。こうした、新しい応用法が示されることも重要です。
     環境DNAは、実際には未だ様々な問題が残されているものの、利用が先行して考えられている技術です。学会でもそうした基準の概要は示されてはいるものの、国際的な基準というわけではなく、実際には、様々な問題点に対しては、各調査が個々の判断で行われている場合も多いです。早い段階で、行政としての一定の基準を示す必要があり、そうした基準の作成が求められる課題でもあります。
     環境DNAは、海外では、現状把握よりも別の調査に利用される場合が多いです。わが国の場合、水辺の国勢調査の事業があったことから、現状把握のモニタリング技術としての利用が、特に進んでいる。こうした状況は海外をリードしやすいということでもあります。特に、ヨーロッパでは、河川環境の維持は、洪水対策よりも優先度が高い場合が多く、国内もさることながら、特に応用法という形で海外への発信が行われると、高いインパクトが得られるはずです。
  •  今後の生物多様性保全にむけて有用性のある研究であり、将来性があると考えます。各生物の分布の把握に貢献すると考えますが、eDNAの放出量が魚の種類によって異なるようなので、魚類間の分布の比較は難しいと考えます。Step by Stepで目標を設定して、取り組んでいただきたい。
  •  環境DNAの研究では大規模調査が少ない中で、本研究はサンプリング地点を増やして研究内容の充実を図っている点は大いに評価されるべきポイントです。外来生物のモニタリングとして有用であるとおもったが、希少生物の検出に関しての精度は気になると思いました(地域絶滅を定義する根拠にできるのか等)。
  •  質疑を通じて、並行して行う生物調査との答え合わせについては、eDNA分析の手法(判定基準等含む)の改良に向けた取り組みというよりは、既存のeDNA分析手法に基づく判定結果とともに生物調査結果も使い、複数の観測根拠をふまえて、より有用性の高い精緻な地域DBを作成・発信するために行う、と理解しました。一方で、答え合わせを通じて見いだせる知見は、eDNAの分析手法自体についても、適用可能な諸条件等についても知見を与えうるものかと思いました。
  •  環境DNAを用いることで希少水生生物等への影響を与えずに、生息状況を把握できる可能性があり、期待されます。採水位置と実際の計測できる範囲なども河川状況個別で差が出ることが予想されるため、実際の生息と本調査手法での精度のようなものも検討していただくと良いです。県内の河川の状況が経年的に評価できると県内の生態系状況が明確化できるため、期待したいです。

 

 

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