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掲載日:2024年3月26日

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答申第105号 「平成17年度第4回南部教育長会議埼玉県南部教育長協議会次第及び第4回南部教育長会議資料」の部分開示決定(平成19年2月21日)

答申第105号(諮問第124号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成18年3月9日付けで行った部分開示決定のうち試験員の「職名」は開示すべきである。

2 異議申立て及び審議の経緯

(1) 異議申立人は、平成18年2月28日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「南部教育事務所 平成17年7月1日開催に係る平成17年度第4回南部教育長会議埼玉県南部教育長協議会における配布文書一切」について開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、「平成17年度第4回南部教育長会議埼玉県南部教育長協議会次第」及び「第4回南部教育長会議資料」を対象文書として特定し、異議申立人に対し平成18年3月9日付けで以下の部分を条例第10条第5号に該当する不開示情報として公文書部分開示決定(以下「本件部分開示決定」という。)を行った。
平成18年度教員採用試験第一次〔小学校男子〕第1日、第2日、〔中学校保体〕第1日、第2日の会場毎の筆答・適性試験員及び採点員欄中の試験員欄に掲げる氏名、所属所名、職名

(3) 異議申立人は、本件部分開示決定を不服として、平成18年3月20日付けで実施機関に異議申立て
(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件異議申立てについて平成18年5月15日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、本件審査に際し、実施機関から平成18年6月30日付けで開示決定等理由説明書(以下「理由説明書」という。)の提出を受け、また、平成18年9月27日及び11月28日に実施機関の意見を聴取した。

(6) 当審査会は、平成18年7月24日付けで異議申立人から反論書の提出を受け、また、平成18年10月26日に異議申立人の口頭意見陳述を聴取した。

3 異議申立人の主張の要旨

異議申立人の主張はおおむね次のとおりである。

(1) 埼玉県情報公開条例第10条第5号の「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」は、
「行政機関の長に広範な裁量権を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要があり、また、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での『適正な遂行』と言えるものであることが求められる。『支障』の程度は名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、『おそれ』の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される」(詳解情報公開法(財務省印刷局))ものであるが、実施機関の理由説明書では事実に基づく利益衡量は何らなされていない。事前に開示すれば事務事業に支障があることは納得できるが、本件採用選考は、開示請求時点ですでに終了し、合格者も確定している。

(2) (一)本件試験は本件開示請求時点ですでに平成18年度の採用選考は終了している、(二)南部教育事務所管轄下の市町教育委員会教育長に対して、小・中学校の管理職の委嘱依頼をしている、(三)第一次試験に関するものである、(四)小学校男子、中学校保健体育の筆答試験監督、適性検査監督、面接試験員である、(五)筆答試験は、問題、解答、配点が公開されている、(六)適性検査の出題・採点は業者委託である、(七)面接試験は集団討論であるが、内容は市販本により公知である、といったことから、一次試験の試験員は試験の一般論以上の情報は知り得ないため、採用に有利になるような働きかけは想定しがたい。また、「不当な行為」をするのは受験者ではなく、試験員である。

(3) 図画工作のような科目は試験員が限られると実施機関はいうが、そのような状況であれば学校関係者にとっては公知ということになり、臨時的任用教員も知り得ることになる。

(4) 教職員人事評価制度が施行されている現在において、「臨時的任用教員の・・・働きかけが過度」だから辞退する校長等はあり得ない。管理能力・対応能力の欠如を自白しているようなものである。

(5) 公務員の氏名については、「個人に関する情報」に含まれるとした上で「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」(条例第10条第1号ただし書ハ)を不開示情報の範囲から除外している。また、当該公務員の氏名については、公務員以外の者と同様に、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(同条同号ただし書イ)に該当する場合に開示することとされている。同様の規定である情報公開法第5条第1号について「行政文書の開示・不開示の決定基準について」(人事院)によれば、人事異動の官報掲載(教職員に異動については新聞に掲載されている)、職員録に職と氏名が掲載されている場合は、「慣行として公にされている」としている。さらに、平成17年8月4日総務省「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立事案の事務処理に関する取扱方針(各府省申合せ等)」で職務遂行に係る公務員の氏名について、特段の支障のおそれ(個人の権利利益を害することとなる場合等)がある場合を除き、公にすることとされた。なお、「公にする」とは情報提供の一環として、求めがあれば応じるとの趣旨である。

(6) 問題作成委員は、問題を見ただけでは誰か分からないが、本件試験員等について、受験者は試験監督であれ、面接官であれ、実際の受験者はその人を認知している。どこの所属で何という名とは分からずとも個人は識別できる。それ故、その秘匿は公正を害する。

(7) 平成17年12月21日規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申(内閣府)(教員免許・採用関係部分)の「エ 教員採用における公正性の確保」において「受験者の関係者の中に、教育委員会関係者、学校関係者、自治体関係者などがいることが、採用に有利に働いているのではないかという懸念が一部にあることも念頭に置きつつ、「教員の採用については透明性・客観性確保」をされた採用選考とすることが必要である。」とされており、埼玉県においては、そのような懸念が些かもないことを立証するために秘匿は好ましくない。

(8) 平成11年12月10日教育職員養成審議会第3次答申には「教員採用が競争試験ではなく選考であることにかんがみ、学力試験問題、論文課題のみを公表するのではなく、実技試験及び面接試験等の他の試験・課題のおおよその内容、各試験の比重や配点の目安を公表して、採用試験全体の情報公開を進め、これらにより教育委員会が求める教員像の全体を明確に示すよう工夫を講じることが望まれる。」とし、採用選考の透明性を高めて公教育への信頼性が確保されるとしている。したがって、実施機関の秘匿行為はこの信頼を裏切るものである。

4 実施機関の主張の要旨

本件異議申立てに対して、実施機関の主張はおおむね次のとおりである。

(1) 試験員は、南部教育事務所管内の校長、教頭及び教頭候補者名簿登載者等の中から委嘱されており、教員採用選考試験の実施には、多くの試験員を要し、なおかつ、図画工作のような技能・技術面を採点するには、特定の技量が求められるため、試験員は特定の者に限られる。そのため、同一の者に複数年にわたって委嘱する場合が多い。
このような状況においては、試験員の氏名、所属所名及び職名を開示すれば、受験者その他の関係者が、受験する年度において試験員であろうと推測される者や試験員であった者に対して採用に有利になるような働きかけを行い、また、元試験員がそれに応じるなど、不当な行為を容易にするおそれがある。
また、臨時的任用教員が教員採用選考試験を受験する場合が多い状況においては、受験を予定している、あるいは、受験した者が試験員であった校長等に対して、当該試験に係る情報収集や採用に有利になるような働きかけを行うことを容易にし、さらに、このような働きかけが過度に行われれば、試験員であった校長等は、学校運営に支障が生じることを懸念し、再び試験員になることを辞退するおそれがある。

(2) 異議申立人は、条例第10条第5号について、事前に公開すれば事務事業に支障を及ぼすもの、との解釈を主張しているが、教員採用選考は毎年実施されている事業であり、将来の教員採用選考の適正な執行に支障が生じるおそれがありうることから、不開示としたものである。公正・公平な教員採用選考を実施するためには、不当な行為が生じるおそれを可能な限り低くする必要がある。

(3) 公務員の氏名が、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」であると異議申立人は主張するが、本件不開示決定は、条例第10条第1号ではなく、同条第5号で規定する不開示情報としたものである。

(4) 本件試験員のうち受験生が知りうる試験員は、試験会場で直接接触した試験員に限られ、かつ、氏名等は示さない。したがって、氏名等を公開しないことが公正を害することにはならない。

(5) 平成17年12月21日規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申(内閣府)(教員免許・採用関係部分)の「エ 教員採用における公正性の確保」に関して、試験員の氏名等を開示したとしても、異議申立人が述べているような懸念がないことの立証にはならない。翌年の教員採用選考においても再び試験員となることが多いという状況を考えると、試験員の氏名等を開示すれば、試験員に対して採用に有利になるような働きかけを容易にするおそれが生ずる。

(6) 異議申立人が述べている「平成11年12月10日教育職員養成審議会第3次答申」には、教員採用選考に係る試験員の公表については述べられていない。試験員の氏名等を開示すれば、その試験員に当該試験の受験者等が採用に有利になるような働きかけを行ったり、元試験員がそれに応じるなどの不当な行為を容易にするおそれが生じ、ひいては、公正・公平な教員採用選考の実施に対する県民の信頼を裏切る結果につながるおそれがある。

5 審査会の判断

(1) 対象文書について

対象文書は、平成17年7月1日に行われた平成17年度第4回南部教育長会議埼玉県南部教育長協議会における資料である。本件部分開示決定により不開示とした情報が記載されている部分は、「第4回南部教育長会議資料」のうち、平成18年度の埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第一次試験に関して会議で配布されたものであり、埼玉県南部の各試験会場の埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第一次試験の第1日及び第2日の実施計画である。各実施計画には試験の日時、試験会場、試験日程、並びに各試験会場における係分担及び試験員名簿が記載されている。

(2) 氏名について

  • ア 実施機関が不開示とした氏名は、平成18年度の埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第一次試験の試験員の氏名である。実施機関は、当該情報を条例第10条第5号に該当するとして不開示にしたものであるので、この判断の適否について検討する。
  • イ 条例第10条第5号は、「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」と規定し、例示として「イ・・・試験・・に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」と規定している。
    対象文書のうち当該情報が記載されている部分は、平成18年度の埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第一次試験の実施に関する第1日及び第2日の実施計画であり、実施機関の「事務又は事業」に関する情報である。
  • ウ 異議申立人は、「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するかどうかについて、「支障」の程度は名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求されるが、試験はすでに終了しており、法的保護に値する蓋然性は認められない、と主張している。
    一方、実施機関は、校長、教頭及び教頭候補者名簿登載者(以下「校長等」という。)等に試験員を委嘱しており、同一の者に複数年にわたって委嘱する場合が多い。このため、試験員の氏名を開示すれば、受験者その他の関係者が試験員であろうと推測される者や過去に試験員であった者に対して、採用に有利になるような働きかけを行い、また、元試験員がそれに応じるなど不当な行為を容易にするおそれがある、とする。
    この点について、一般に、試験員の氏名が開示になれば、試験員であった者に対して働きかけや不当な行為を行うことが容易になることを否定することはできない。
  • エ 実施機関は、試験員の氏名が開示されれば、臨時的任用教員や受験を予定している者等が試験員であった者に対し、当該試験に係る情報収集や採用に有利になるような働きかけを行うことを容易にする、と主張している。一方、異議申立人は、一次試験の試験員は試験の一般論以上の情報は知り得ず、また、「不当な行為」をするのは受験者ではなく、試験員の方である、と主張している。
    実施機関の説明によれば、現在、埼玉県の公立小・中学校において、変動があるものの概ね臨時的任用教員は約2000人在職しており、全教員数の1割を超えている。このような状況で、具体的な個々の試験員の氏名が開示になった場合は、当然、臨時的任用教員は自分の勤務する学校の校長等が試験員であったことを知りうることとなる。試験員の氏名が開示されていない現状においても、校長及び教頭は臨時的任用教員から一般的な教員採用選考に関する質問や問い合わせを受けることが多いとのことである。受験者の立場からすれば試験員であった可能性のある者に対して教員採用選考に関して聞いてみようとすることは当然あり得ることである。すると、試験員の氏名を開示すれば、受験者は、実際に試験員であった校長等に直接接触することが容易になるだけではなく、個々の校長等が教員採用選考のどの試験の試験員であったかを知ることになるから、質問や問い合わせの内容も個別具体的なものになることは容易に想像される。
    さらに、学校現場において、試験員であった校長及び教頭は、当然受験者となる可能性が高い臨時的任用教員に対する日常の対応において、教員採用選考に関して何らかの疑惑が生じないように、今まで以上に注意を払わなければならないことになる。したがって、学校の管理職である校長及び教頭と部下である臨時的任用教員の関係に、教員採用選考の試験員と受験者という関係も持ち込まれることになることから、日常の学校の管理運営においても支障が生じることは否定できないと思われる。
    また、試験員であったことが開示されれば、学校関係者以外の者から個別的に試験員であったことを前提に接触が行われる可能性が高くなることも否定できない。
  • オ 異議申立人は、試験員のうち、校長等以外の学校に在職していない教育局(本庁)や教育事務所の指導主事は、受験者からの接触のおそれはないのではないか、と指摘する。しかし、実施機関の説明によると、指導主事と学校の校長又は教頭は数年のサイクルでお互いの間を異動しており、教育局(本庁)や教育事務所の指導主事であっても、数年の内には、学校現場の校長又は教頭として赴任しているとのことである。そうであれば、指導主事は、学校現場にいる校長等とその状況においてそれほど変わりがないことは是認できる。
  • カ 異議申立人が、規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申を引用して主張するように、教員採用選考については情報公開等を進め、教員採用選考の透明性・客観性の確保を図っていかなければならないこと自体は、確かに重要なことである。実施機関は、できるだけ透明性・客観性の確保を図った教員採用選考に向けて毎年改善していかなければならない。しかし、限られた人員の中で教員採用選考を行わなければならない現状においては、教員採用選考の適正な実施及び学校の管理運営を犠牲にしてまでも試験員の氏名を開示する必要性は認められない。

(3) 所属所名及び職名について

  • ア 試験員の欄には、試験員の氏名のほかに併せて当該試験員の所属所名及び職名が記載されており、試験員の氏名とともに条例第10条第5号に該当するとして不開示とされている。実施機関の説明によると、氏名と一体に試験員の欄に記載されており、かつ、所属所名及び職名は試験員が特定される情報であるから、併せて不開示にしたとのことである。
  • イ まず、対象文書を見分したところ、所属所名及び職名は、開示・不開示の判断において氏名と容易に区分することができるものであり、氏名と一体に記載されているとの実施機関の判断は妥当ではない。
  • ウ 次に、所属所名については、これを開示した場合、試験員となる者は校長等に限られているので、職名が不開示であったとしても、試験員は数名に絞られることになり、さらに、職名が開示になれば、ほぼ試験員は特定されてしまい、氏名と同様に実施機関の事務又は事業上の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
  • エ また、職名については、職名を項目名としている場合においては開示しているところであり、このこととの整合性がなく、また、職名を開示したとしても、所属所名が不開示であれば試験員を特定することはできない。したがって、事務又は事業上の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとはいえないことから、条例第10条第5号により不開示としたことは妥当ではなく、職名については開示すべきである。

以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、大橋豊彦、野口貴公美

審議の経過

年月日

内容

平成18年5月15日

諮問を受ける(諮問第124号)

平成18年7月3日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成18年7月24日

異議申立人より反論書を受理

平成18年9月27日

実施機関より意見聴取及び審議(第一部会第17回審査会)

平成18年10月26日

口頭意見陳述及び審議(第一部会第18回審査会)

平成18年11月28日

実施機関より意見聴取及び審議(第一部会第19回審査会)

平成18年12月20日

審議(第一部会第20回審査会)

平成19年1月23日

審議(第一部会第21回審査会)

平成18年2月21日

答申(答申第105号)

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総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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