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掲載日:2023年12月8日
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答申第93号(諮問第108号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成17年8月12日付けで行った、「平成16年度自閉症・発達障害支援センターに係る国庫補助協議書のうち、別紙7-7「職員に関すること」」(以下「本件対象文書」という。)を部分開示とした決定(以下「本件処分」という。)について、別表に掲げる部分を開示すべきである。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1)本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成17年8月1日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し開示請求を行った。
(2)実施機関は、本件請求に対する公文書を本件対象文書と特定した上で、条例第10条第1号に該当するとして部分開示決定を行い、平成17年8月12日付けで、申立人に対し、公文書部分開示決定通知書を送付した。
(3)申立人は、平成17年8月19日付けの異議申立書により、実施機関に対し、本件処分の取消しを求める趣旨の異議申立て(以下「異議申立て」という。)を行った。
(4)当審査会は、異議申立てについて平成17年8月24日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5)当審査会は、本件審査に際し、実施機関から平成17年9月27日付けの開示決定等理由説明書の提出を受け、また、平成18年4月20日及び同年6月7日に実施機関の職員から意見を聴取した。
(6)当審査会は、申立人から平成17年10月21日に反論書の提出を受けた。
なお、申立人からは、口頭意見陳述の求めはなかった。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1)全国自閉症・発達障害支援センター平成17年度第1回実務者研修会参加者名簿は公開されており、埼玉県自閉症・発達障害支援センターを運営する法人の理事長や参加した職員の氏名が確認できる。
(2)自閉症・発達障害支援センター職員研修会に、埼玉県自閉症・発達障害支援センターを運営する法人の理事長が(社)日本自閉症協会の副会長の立場で参加している。同協会は会員に対して自閉症に関する情報提供を適切に行っている団体である。このような団体の副会長が、副会長として参加した会議の資料は、会員に対して公開されることが予定されている情報であるといえる。
自閉症・発達障害支援センターが実施する啓発活動、講演会活動等の案内に、職員担当者が記載されている。さらに、自閉症・発達障害支援センターの職員が講師となって講演する場合もあり、当然のことながら、講師の氏名は明らかにされている。広く市民を対象にした講演会の講師をしている自閉症・発達障害支援センターの職員の氏名は、慣行として公になっている情報であるといえる。
(3)自閉症・発達障害支援センターの職員の権利利益を考えることも必要であるが、自閉症・発達障害支援センターに関しては、まず自閉症児(者)の権利利益を考えることを最優先とすべきである。埼玉県の情報公開条例も、そのような運用解釈をすることを県に求めている。
自閉症に関する経歴、資格、経験を有しない職員が配置されているとすれば、そのような職員が相談を受けても、成果をあげることはできない。予定されている自閉症・発達障害支援センターとしての事業を展開できないと思われる。職員の権利利益を守るために不開示を維持するなら、自閉症児(者)が不利益を受けないことを証明する責任が県にある。
(4)自閉症児(者)やその家族は、自閉症を理解している職員であることを確認して、相談をしたい、個別支援計画を作成してもらいたい、就労支援をお願いしたいと思っている。自閉症児(者)等が安心して自閉症・発達障害支援センターを利用できるようにするのは、福祉法人や行政の責任である。自閉症・発達障害支援センター職員の自閉症に関係する職歴、資格、療育経験は、職務遂行に関係する情報であり、人に知られたくないと通常思われる情報ではない。自閉症・発達障害支援センターの職員は、自閉症支援に関する専門家との位置付けがなされており、自閉症支援の専門性に関係する部分の情報は、公開が予定されている情報である。
(5)職員の氏名、関係する資格、経歴、経験を公開することにより、自閉症(児)者やその家族が安心して、埼玉県自閉症・発達障害支援センターを信頼し、相談することができる。自閉症児(者)等が安心して相談をすることができる自閉症・発達障害支援センターであることの説明責任は、県にある。
(6)厚生労働省は、自閉症に関係する職歴、取得資格、自閉療育に関する経験を協議書の中で明らかにすることを求めている。また、これらの情報を開示すべきとの見解を示していた時期があったが、この見解は、都道府県等の反対により、撤回されたようである。埼玉県自閉症・発達障害支援センターの職員が、適切な自閉症支援をする能力、意欲があるのか市民に証明するのは、県の責任である。
(7)以上の理由により、不開示とされた情報(年齢、学歴を除く。)は、公開が予定されている、又は自閉症児(者)の健康の推進、安全のために公開することが必要とされる情報であるといえるので、開示すべきである。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1)本件対象文書は、自閉症・発達障害支援センター運営事業の実施に当たり、厚生労働省と県が事務レベルで国庫補助の協議を行うものであり、申立人が主張するような公開が予定されているものではない。また、県が、自閉症・発達障害支援センターに経歴、資格、経験を有する職員が配置されていることを公に証明する文書でない。
(2)本件対象文書には、自閉症・発達障害支援センター職員の氏名、担当業務、関係する資格、経歴、経験等の情報が一覧形式で記載されており、これを公開することにより、容易に個人を特定させることができ、個人の権利利益を害するおそれが十分にある。仮に、氏名のみ伏せ、関係する経歴、資格、経験等を開示しても、職員数が4名であり、担当業務から個人を識別することは容易である。
(3)申立人が提出する、全国自閉症・発達障害支援センター平成17年度第1回実務者研修会名簿は、研修会参加者の名簿であり、一般に公表しているものとは言い難く、各センター間の情報交換、意見交換等のため便宜上作成されているものと思われる。その内容も、参加者の所属センター名、氏名、職名と必要最小限となっている。
5 審査会の判断
(1)自閉症・発達障害支援センター運営事業について
自閉症・発達障害支援センター運営事業は、自閉症児(者)等に対する支援を総合的に行う地域の拠点として、自閉症等に関する各般の問題について自閉症児(者)等及びその家族からの相談に応じ適切な指導・助言を行うこと、関係施設との連携強化等により自閉症児(者)等に対する地域における総合的な支援体制の整備を推進することにより、自閉症児(者)等及びその家族の福祉の向上を図ることを目的としている。
当該事業の実施主体は、都道府県又は指定都市とされているが、その事業の全部又は一部について自閉症児施設等を経営する社会福祉法人等に委託することができるとされており、埼玉県では、その運営を社会福祉法人に委託している。
(2)本件対象文書について
本件対象文書は、実施機関が平成16年度自閉症・発達障害支援センター運営事業に係る国庫補助の協議に当たり厚生労働省あてに提出した協議書のうち別紙7-7「職員に関すること」である。
本件対象文書には、次の各欄が設けられ、本件自閉症・発達障害支援センター(以下「本件支
援センター」という。)の個々の職員ごとに、該当する内容が記載されている。
(3)不開示情報該当性について
実施機関は、本件対象文書には、本件支援センターの職員の氏名、関係する資格、経歴、経験等の情報が一覧形式で記載されており、これらを公開することにより容易に個人を特定させ、又は特定の個人を識別することはできないが公けにすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるため、条例第10条第1号に該当するとして本件処分を行った。それに対し、申立人は、不開示とされた情報(年齢及び学歴を除く。)は、公開が予定されている、又は自閉症児(者)の健康の推進、安全のために公開することが必要とされる情報であり、開示すべきであると主張している。
このことから、ア「氏名等」の欄に記載されている氏名、イ「関係する学歴・職歴等」の欄に記載されている不開示とされた職歴及び従事した期間、ウ「取得資格等(取得年月日)」の欄に記載されている取得資格及び取得年月、並びにエ「自閉症児(者)療育に関する経験(事業名・職種・職務内容)」の欄に記載されている不開示とされた職種等の情報について、以下条例第10条第1号の該当性を検討する。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
城口美恵子、田村泰俊、山口道昭
別表
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開示すべき部分 |
---|---|
関係する学歴・職歴等の欄 |
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自閉症児(者)療育に関する経験(事業名・職種・職務内容)の欄 |
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(注)上記の文字数には、「・」を含み、空欄を含まない。
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成17年8月24日 |
諮問を受ける(諮問第108号) |
平成17年9月27日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成17年10月21日 |
申立人から反論書を受理 |
平成18年4月20日 |
実施機関からの意見聴取及び審議(第三部会第13回審査会) |
平成18年5月10日 |
審議(第三部会第14回審査会) |
平成18年6月7日 |
実施機関からの意見聴取及び審議(第三部会第15回審査会) |
平成18年8月21日 |
審議(第三部会第17回審査会) |
平成18年9月7日 |
答申 |
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