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掲載日:2024年4月2日

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答申第89号 「平成14、15年度議員調査依頼整理簿(調査課)及びレファレンス業務日誌(図書室)」の非公開決定(平成18年6月19日)

答申第89号(諮問第90号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県議会議長(以下「諮問庁」という。)が、平成16年7月14日付けで行った「平成14、15年度議員調査依頼整理簿(調査課)」及び「レファレンス業務日誌(図書室)」(これら2文書を併せて、以下「本件文書」という。)の非公開決定は、妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件不服申立人(以下「不服申立人」という。)は、平成16年7月1日付けで、埼玉県議会情報公開条例(以下「議会条例」という。)第6条の規定に基づき、諮問庁に対し、「県議が議会事務局を通じて県議個人の活動として調査を命じた案件の件名及び議員名(平成14、15年度分)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

(2) これに対して諮問庁は、公開請求された公文書については、会派活動に関する情報であり、議会条例第7条第1項第5号に該当するとして、平成16年7月14日付けで非公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、不服申立人に通知した。

(3) 不服申立人は、平成16年9月12日付けの異議申立書により、諮問庁に対し、本件処分を取り消して、本件文書を公開するべきであるとして不服申立てを行った。

(4) 当審査会は、本件不服申立てについて諮問庁から平成16年10月12日付けで、議会条例第13条に基づき諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件に係る審査に際し、平成17年6月24日付けで諮問庁から開示決定等理由説明書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成17年7月22日及び平成18年1月27日に諮問庁の職員から意見聴取を行った。

(7) 当審査会は、平成17年9月29日付けで不服申立人から反論書の提出を受けた。
なお、不服申立人は、当審査会に対する口頭による意見陳述を求めていない。

3 不服申立人の主張の要旨

不服申立人の主張は概ね次のとおりである。

(1) 本件請求は、会派活動としてではなく「県議個人の活動として調査を命じた案件」に限定して公開を求めたものである。これに対し、諮問庁が本件請求を「会派活動に関する情報であり、議会条例第7条第1項第5号に該当する」という主張は根拠がなく、本件処分は違法である。

(2) 「議員調査はすべて会派活動に当たる」とする根拠は、「埼玉県議会情報公開条例の解釈と運用」であると諮問庁は主張しているが、「解釈と運用」は単なる内部文書にすぎず、対外的に法的強制力を持たないことは明白である。情報公開の是非はもっぱら議会条例に基づいて判断されるべきである。「会派活動」の範囲は、個々の案件に即して慎重かつ限定的に判断されなければならない。

(3) 本件請求は、議員が公務として行い、議会職員や県職員が公費を費やし公務として作成した議員調査活動に関するものであり、その成果は広く公開し県民の利用に供すべきものである。本件処分のごとく、調査案件の件名さえ公開されなければ、県民が調査結果にアクセスすることは不可能になる。県の公費を費消して作成された調査報告が一般県民には存在さえ知らされないなどという事態は、県民として到底許すことができず、情報公開条例の趣旨に反することは明白である。仮に公開が不適切と考えられる部分があったとしても、その部分を除いて公開されるべきである。

(4) 理由説明書は、「仮に一部でも本件調査が公開されるということになれば、議員は調査依頼を躊躇することになり、会派の自由な活動に支障を来すことになる」と抽象的危惧の存在を挙げているが、衆議院と参議院はともに、議員による質問主意書の提出者、本文及び答弁書をインターネットで公開している。

4 諮問庁の主張の要旨

不服申立に対する諮問庁の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 不服申立人は、本件請求は会派活動としてではなく、県議個人の活動として調査を命じた案件に限定して開示を求めたものであると主張するが、議会条例では、議員調査についてはすべて会派活動に当たり、非公開とすることができるものとして、議会条例第7条第1項第5号の規定を設けたものである。

(2) 不服申立人は、本件請求の公文書が会派活動に当たるかどうかを個別的に判断する必要性を訴えているが、(1)で述べたとおり、議会条例第7条第1項第5号は、議員調査はすべて会派活動に当たるものとして規定したものであり、個別に判断することはできない。また、同号の規定は会派の集会
・結社の自由や政治活
動の自由に関する活動の保護を図る趣旨から設けたものであり、仮に一部でも本件調査が公開されるということになれば、議員は調査依頼を躊躇することになり、会派の自由な活動に支障を来すことになる。

(3) 不服申立人は、仮に公開が不適切と考えられる部分があったとしても、その部分を除き公開するべきであると主張するが、(2)でも述べたとおり、議員調査はすべて会派活動に当たるものとして規定したものであり、個別に判断することはできない。よって、一律に非公開としたものである。

5 審査会の判断

(1) 議会条例について

  • ア 目的
    議会条例は、県民の知る権利を保障するため、公文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、埼玉県議会に対する県民の理解と信頼を深め、もって開かれた県議会の実現を図り、県政の発展に寄与することを目的としている。
    議会条例では、公開請求に係る公文書に第7条第1項第1号ないし第6号のいずれかの号に該当する情報が記録されているときは、議長は、当該公文書を公開しないことができるとされている。
  • イ 諮問規定
    議会条例第13条は、公開決定等について行政不服審査法による不服申立てがあったときは、議長は、不服申立てが不適法であり、却下するときなど一定の場合を除き、当審査会に諮問しなければならないと定めている。
  • ウ 議会条例第7条第1項第5号に定める会派活動に関する情報の意義
    本号は、議長が公開しないことができる情報の一つとして「会派活動に関する情報(法令等の規定により、何人でも閲覧することができる情報及び公表することを目的として作成し、又は入手した情報を除く。)」を定めるものである。
    本号は、会派の「集会結社の自由や政治活動の自由に関する活動」の保護を図る趣旨から設けられたものと認められる。また他県等の議会情報公開条例を見ると、たとえば東京都議会情報公開条例では、不開示対象情報としては、会派の活動に関する情報に限った上で、「会派の活動に関する情報であって、公にすることにより、会派の活動に著しい支障が生ずると認められるもの」といった事項的要素と定性的要素を組み合わせた規定により不開示情報を定めている(この種の規定は、東京都のほかに岩手県、鳥取県の議会情報公開条例に存在する。)。
    しかし、埼玉県議会情報公開条例第7条第1項第5号の規定はそのような定めをしていない。
    このようなことに鑑みると、本号は、会派活動に該当する情報であれば、その情報を公にした場合の支障の有無のいかんを問わず、公開しないことができる趣旨と解される。ただし、会派活動に関する情報であっても、法令等の規定により、何人でも閲覧できる情報及び公表することを目的として作成し、又は入手した情報については公開しないことができる情報から除外されている。
    本号に定める会派活動に関する情報の範囲に関しては、会派が主体となって行う会議や研修はもとより、会派に関する会計などはその範囲に含まれるとされるが、更に、会派に属する議員が行う調査活動のすべてをその範囲に含むかという問題がある。
    また、会派を構成しない議員(いわゆる一人会派の議員)の調査活動に関する情報は、仮に会派に関する情報に含まれないとするならば、公開しなければならない情報となるが、情報公開条例上特段の保護を必要としないのかという問題がある。
    他県等の議会情報公開条例をみると、大きくいって2つのタイプがある。会派活動に関する情報と議員の活動に関する情報とを条文に列記して明示し、これら情報を公にすることにより会派の活動または議員の活動に支障を及ぼすおそれのあるものを不開示とする定め方をするもの(たとえば千葉県議会情報公開条例、茨城県議会情報公開条例等)がある一方、議員の活動に関する情報を不開示対象情報とは明示せず、会派活動に関する情報のみを不開示対象情報とするものとに分かれている。
    埼玉県議会情報公開条例は、千葉県等の条例とは異なり、会派活動に関する情報を公開しないことができる情報とし、議員の活動に関する情報を不開示情報とする規定は置かれていない。
    したがってここでは、埼玉県議会情報公開条例第7条第1項5号に定める「会派活動に関する情報」には、議員の活動を含む意と解してよいかについて検討する。
    調査活動を含む議員の活動に関する自由は、会派の集会や結成の自由及び会派の活動の自由と同様に保護されなければならない価値・利益である。
    また、もともと会派活動と議員の活動とは、会派活動が議員の活動からなることから見ても(議員はいわば会派を代表して活動を行っているとも言える。)、両者はいわば不可分の関係にあるものである。仮に議会条例第7条第1項第5号の「会派活動」の中に議員の調査活動を含まないとすれば、議員の調査活動に関する情報はすべて一律に公開を求められることになり、そうなれば議員は調査依頼を躊躇するなどの事態を招来するおそれがあり、議員の自由な活動を妨げるおそれがある。
    よって、本号に定める会派活動の中に議員の調査活動を含むと解することが著しく不合理であるともいえない。
    さらにいえば、会派活動に関する情報の中に議員活動に関する情報を含まないということであれば、いわゆる一人会派の議員の活動はすべて非公開情報には該当しないこととなる。それでは自由な議員の活動の保障に反するおそれがあり、適当とは認められない。

(2) 本件文書

  • ア 諮問庁の説明によると、本件文書のうち、平成14、15年度議員調査依頼整理簿は議員調査依頼処理表であり、依頼議員の氏名、依頼の日時、依頼された調査の件名及び要旨など議員調査依頼の内容を整理するために諮問庁の事務局職員が作成するものであり、また、レファレンス業務日誌は主に文献や新聞等に基づく調査依頼が議員からあった場合に諮問庁の事務局職員が依頼の日時、依頼の内容などについて作成するものであるとのことであった。
    当審査会が本件文書を見分したところ、本件文書は、以下の各欄で構成されていた。
    • (ア) 議員調査依頼処理表
      「整理番号」、「受付月日」、「回答期限」、「回答月日」、「依頼者」、「担当者」、「件名及び要旨」、「所管部局」、「文書、その他の区分」及び「備考」
    • (イ) レファレンス業務日誌
      • (1) レファレンス業務日誌
        「日付」、「決裁欄」、「記録者氏名」、「依頼者(所属)」、「依頼の内容とその回答」及び「特記事項」
      • (2) レファレンス記録索引
        「依頼年月日」、「依頼者」、「所属」及び「件名」
  • イ 不服申立人の主張は、本号に定める「会派活動」の中に議員の調査活動が含まれるとしても、その調査活動には、会派活動に当たる議員の調査活動と会派活動から離れて議員個人として行う調査活動があり、それらは分離できるのではないかとする主張かと想定される。このような主張の前提には、後者の活動は会派から離れた活動であり、かつ個人としての活動であり本号にいう「会派活動」に当たらないので開示が求められる情報であるとの認識がある。
    しかし、会派活動は、個々の議員の活動からなるものであることから、議員調査を会派活動によるものと会派活動から離れて議員個人として行うものとに分離することができないのが現実である。
  • ウ 本件文書を実際に見分したところ、そこには会派活動による調査であるか、議員個人としての
    調査であるかについて記載の区分は設けられておらず、また、そこに記録されている「件名及び要旨」、「依頼の内容とその回答」などからも、会派活動としての議員による調査活動なのかそれとも会派活動から離れて議員個人として行われた調査活動なのかを、そのすべてについて明確に区分して公開請求のあった部分を特定することは事実上困難であり、非公開情報を記録した部分を容易には分離できないと認められた。
    このことから、諮問庁が本件文書のすべての情報について、これを会派活動に当たる議員の調査
    活動として非公開と判断することはやむを得ないと認められる。
  • エ よって、本件文書については、議会条例第7条第1項第5号の規定により非公開とする情報に該当する。

以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、岩渕美智子、大橋豊彦

審議の経過

年月日

内容

平成16年10月12日

諮問を受ける(諮問第90号)

平成17年6月24日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成17年7月8日

調査(第一部会調査)

平成17年7月22日

実施機関から意見聴取及び審議(第一部会第4回審査会)

平成17年9月30日

不服申立人から反論書(平成17年9月29日付け)を収受

平成17年11月17日

審議(第一部会第7回審査会)

平成18年1月27日

実施機関から意見聴取及び審議(第一部会第9回審査会)

平成18年2月16日

審議(第一部会第10回審査会)

平成18年4月24日

審議(第一部会第12回審査会)

平成18年5月30日

審議(第一部会第13回審査会)

平成18年6月19日

答申(答申第89号)

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総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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