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掲載日:2024年3月26日

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答申第100号 「くぬぎ山地区の自然再生に向けて(素案)」等の部分開示決定(平成18年10月26日)

答申第100号(諮問第122号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年2月27日付けで「くぬぎ山地区の自然再生に関する知事要望について(平成18年1月30日)」等の文書のうち、「くぬぎ山地区の自然再生に向けて(素案)」(以下「本件対象文書1」という。)を部分開示とした決定(以下「本件処分1」という。)は妥当である。
また、実施機関が同日付けで「想定事業費 根拠」(以下「本件対象文書2」という。)を部分開示とした決定(以下「本件処分2」という。)のうち、表の頭注にある単位、区分の項目中「計」及び「計」の面積の欄は開示すべきである。

2 異議申立て及び審査の経緯

(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成18年2月13日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、2件の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、本件請求に対してそれぞれ公文書を特定した上で、本件対象文書1及び本件対象文書2はいずれも条例第10条第4号に該当するとして、本件処分1及び本件処分2の部分開示決定を行い、平成18年2月27日付けで申立人に対し、公文書部分開示決定通知書を送付した。

(3) 申立人は、平成18年4月5日付けの異議申立書により、実施機関に対し、本件処分1及び本件処分2の不開示部分を開示することを求める趣旨の異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件異議申立てについて平成18年4月14日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、審査に際し、実施機関から平成18年5月12日付けの開示決定等理由説明書、平成18年8月16日付けの開示決定等の補充理由説明書、及び平成18年9月21日付けの開示決定等の補充理由説明書(その2)の提出を受け、また、平成18年7月25日に実施機関の職員から意見を聴取した。
なお、申立人からは反論書の提出及び口頭意見陳述の求めはなかった。

3 申立人の主張の要旨

申立人の主張は概ね次のとおりである。

(1) 本件対象文書1のうち、特別緑地保全地区の指定範囲が示されているとされる不開示部分の図については、すでに特別緑地保全地区の指定範囲(案)として、地権者説明会等で示されており、「当該図を公にすれば、正式な指定範囲と誤解され、県民の間に混乱を生じさせるおそれがあり、埼玉県情報公開条例第10条第4号に該当するため」の不開示理由の正当性はない。

(2) 本件対象文書2は、あくまでも想定と記された上で、しかも具体的にどの土地の場所や範囲を特定したものかは全く不明な状態での算定であり、公表により特定個人が不利益を被ったり、混乱を生じさせたりする要因とはなり得ない。従って、条例第10条第4号の不開示情報に該当しない。

4 実施機関の主張の要旨
本件異議申立に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 本件対象文書について

  • ア 本件対象文書1は、平成18年1月30日に、「くぬぎ山地区自然再生協議会有志」が知事に要望書を提出した際、知事が所持していた資料の一部である。本件対象文書1には、くぬぎ山地区の自然再生に関する基本的な方針が示されており、要望に関する知事への事前説明の際に使用するために作成したものである。
  • イ 本件対象文書2は、くぬぎ山地区における自然再生事業の想定事業費を算定するために作成したもので、想定事業費算定表には、面積、用地(費)、補償(費)などの詳細な情報が記されている。

(2) 不開示理由について

  • ア 本件対象文書1のうち、特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図については、これまで地権者説明会等で公表してきた特別緑地保全地区の指定範囲(案)とは異なり、土地の分類に基づき、便宜的に色分けし、特別緑地保全地区の指定範囲をより具体的に示したものである。特別緑地保全地区の指定範囲については、県内部で検討し、地元市町と調整を図っているところであり、まだ決定していない。
    特別緑地保全地区の指定は、厳しい行為制限を課すものであることから、当該地区の指定に関する情報の提供は、特別緑地保全地区の指定手続を円滑に進めるためにも、まず当事者である地権者に対して行うべきものである。
    地権者説明会等で示した図と異なる当該図が公になると、地権者の関知しないところで正式な指定範囲が公にされたと誤解され、地権者軽視を理由に特別緑地保全地区指定への反対の機運が高まるなど、地権者を中心とする県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。
    さらに、くぬぎ山地区の自然再生事業に導入しようとしている特別緑地保全地区制度は、指定された土地の所有者に対し行為制限を付すと同時に、土地の所有者は県に対し土地を買い入れる旨申し出ることができるものとする内容である。また、この土地の譲渡所得には税の特別控除も設けられている。
    特別緑地保全地区の指定範囲はまだ決定しておらず、不確定な情報であるにもかかわらず、当該図を、正式な指定範囲を示すもの、あるいはその可能性が高いものであるとの誤解に基づき、当該区域内で土地取引が行われた場合には、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。
    このため、本件対象文書1のうち、特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図については、条例第10条第4号に該当する。
  • イ 本件対象文書2は、想定事業費を算定するために、便宜的に緑地部分と改変地を分類しているが、どのような分類の土地を特別緑地保全地区の指定範囲とするかについては、現在、県内部で検討し、地元市町と調整を図っているところであり、まだ決定していない。
    特別緑地保全地区の指定は、厳しい行為制限を課すものであることから、当該地区の指定に関する情報の提供は、特別緑地保全地区の指定手続を円滑に進めるためにも、まず当事者である地権者に対して行うべきものである。
    現段階で当該算定表を公にすれば、正式な特別緑地保全地区の指定範囲に基づくものと誤解され、また、面積、用地(費)、補償(費)などの詳細な情報が地権者の関知しないところで公にされたと誤解され、地権者軽視を理由に特別緑地保全地区指定への反対機運が高まるなど、地権者を中心とする県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。
    さらに、くぬぎ山地区の自然再生事業に導入しようとしている特別緑地保全地区制度は、指定された土地の所有者に対し行為制限を付すと同時に、土地の所有者は県に対し土地を買い入れる旨申し出ることができるものとする内容である。また、この土地の譲渡所得には税の特別控除も設けられている。
    想定事業費算定表では、便宜的に緑地部分と改変部分を分類しているが、どのような分類の土地を特別緑地保全地区の指定対象とするかについては、まだ決定していない。
    現段階で当該算定表が公になり、不確定な情報にもかかわらず、指定対象となる土地利用形態に応じた面積が明らかになると、当該面積は正式なものあるいはその可能性が高いものであるとの誤解に基づき、当該区域内で土地取引が行われれた場合には、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。
    このため、本件対象文書2のうち、想定事業費算定表の不開示部分については、条例第10条第4号に該当する。
    ただし、想定事業費の表の単位及び計欄に記された面積の情報については、既に公表されている情報であることから、上記のような混乱を生じさせるものではないと判断されるので、新たに開示することができるものと考えられる。

(3) 申立人の主張について

  • ア 申立人は、「くぬぎ山地区の自然再生に向けて(素案)」のうち、不開示部分である「特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図」については、すでに特別緑地保全地区の指定範囲(案)として、地権者説明会等で示されており、不開示理由の正当性はないと主張している。
    しかし、不開示とした図は、これまで地権者説明会等で公表してきた特別緑地保全地区の指定範囲(案)とは異なり、土地の分類に基づき、便宜的に色分けし、特別緑地保全地区の指定範囲をより具体的に示したものである。
    便宜的に色分けしたものであるとはいえ、地権者説明会等で示した図と異なる当該図が現段階で公になると、正式な指定範囲が示されたものであると誤解され、県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。
    以上の理由から当該図を不開示としたものであり、申立人の主張は事実誤認に基づくものである。
  • イ 申立人は、「想定事業費 根拠」のうち、不開示部分である「想定事業費算定表」は、あくまでも想定と記された上で、しかも具体的にどの土地の場所や範囲を特定したものかは全く不明な状態での算定であり、公表により特定個人が不利益を被ったり、混乱を生じさせたりする要因とはなり得ないと主張している。
    しかし、想定事業費算定表では、想定事業費を算定するために、便宜的に緑地部分と改変地を分類しているが、どのような分類の土地を特別緑地保全地区の指定対象とするかについては、現在、地元市町と調整を進めている段階である。
    現段階で当該算定表を公にすれば、面積、用地(費)、補償(費)などの詳細な情報が記されていることから、正式な特別緑地保全地区の指定範囲が既に決定されているものと誤解され、県民の間に混乱を生じさせるおそれがある。

以上の理由から当該算定表を不開示としたものであり、公表により特定個人が不利益を被ったり、混乱を生じさせたりする要因とはなり得ないとする申立人の主張は誤りである。

5 審査会の判断

(1) くぬぎ山地区自然再生事業について

本件対象文書1及び本件対象文書2に記録されている「くぬぎ山地区自然再生事業」は、産業廃棄物関連施設や資材・残土置場、倉庫などが建設され平地林の荒廃が問題となっていることから、平地林を保全し、その歴史的・文化的・環境的価値を継承することを目的に自然再生の取り組みを開始したものである。緑地保全手法導入に向けた取り組みとして、都市緑地法に基づく特別緑地保全地区の指定に向け、地元市町と調整を進めている段階である。
なお、特別緑地保全地区の決定権者は、対象地域が10ヘクタールを超える場合、県であり、この決定がなされると当該土地には建築・土地の形状の変更・木竹の伐採等について行為制限が課される。土地所有者が行為制限を受けることにより、土地の利用に著しい支障をきたす場合、県に対し、その土地を買入れる旨申し出ることができるものである。

(2) 本件対象文書について

  • ア 実施機関の説明によると、本件対象文書1は、平成18年1月30日に、「くぬぎ山地区自然再生協議会有志」が知事に要望書を提出した際、知事が所持していた資料の一部である。本件対象文書1には、くぬぎ山地区の自然再生に関する基本的な方針が示されており、要望に関する知事への事前説明の際に使用するために作成したものであるとのことである。
    当審査会が本件対象文書1の不開示部分である「特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図」の「第1段階」及び「第2段階」を見分したところ、実施機関がこれまでに公表してきたとする特別緑地保全地区の指定範囲(案)とは異なる部分のあることを確認した。
  • イ 実施機関の説明によると、本件対象文書2は、くぬぎ山地区における自然再生事業の想定事業費を算定するために作成したものであるとのことである。
    当審査会が本件対象文書2を見分したところ、想定事業費算定表の不開示部分には、土地の利用形態に応じ面積、用地(費)、補償(費)などの情報が記されていることを確認した。

(3) 条例第10条第4号について

条例第10条は、同条各号のいずれかに該当する情報が記録されている場合を除き、公文書を開示しなければならないとしている。同条第4号では、いわゆる審議、検討等情報として、「県、国及び他の地方公共団体の機関、独立行政法人等並びに地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」を不開示としている。
本件対象文書1については本件処分1において、本件対象文書2については本件処分2において、実施機関はいずれも条例第10条第4号に該当するとしてその一部を開示しないとしたので、その妥当性について以下に検討する。

(4) 本件対象文書1の条例第10条第4号該当性について

本件対象文書1のうち、特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図について当審査会で見分したところ、これまで地権者説明会等で公表してきた特別緑地保全地区の指定範囲(案)とは異なるものであることが認められた。
上記(1)のとおり、くぬぎ山地区の自然再生事業は実施機関が特別緑地保全地区の指定範囲を地元市町と調整を進めている段階であり、このような段階で地権者説明会等で示した図と異なる特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図が公になると、当該図は正式な指定範囲を示すものあるいはその可能性が高いものであると誤解されるおそれがある。
地権者説明会等で示した図と異なる当該図を開示すれば、地権者の関知しないところで正式な指定範囲が公にされたと誤解され、地権者軽視を理由に特別緑地保全地区指定への反対の機運が高まるなど、地権者を中心とする県民の間に混乱を生じさせるおそれがあると認められる。
また、くぬぎ山地区の自然再生事業に導入しようとしている特別緑地保全地区制度は、指定された土地に対し行為制限を付すと同時に、土地の所有者は県に対し土地を買い入れる旨申し出ることができるものとする内容(この土地の譲渡所得には税の特別控除も設けられている。)であることからして、正式な指定範囲を示すもの、あるいはその可能性が高いものであるとの誤解を基に当該区域内で土地取引が行われれた場合には、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがあり、特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図を開示しないことによる県民全体の利益を斟酌しても、なお、これを開示することによってもたらされる支障は重大であると認められる。
よって、本件対象文書1のうち、特別緑地保全地区の指定範囲が示されている図の部分を条例第10条第4号に該当するとして開示しないとした本件処分1は妥当である。

(5) 本件対象文書2の条例第10条第4号該当性について

本件対象文書2の不開示部分を当審査会で見分したところ、想定事業費算定表の不開示部分には、土地の利用形態に応じ面積、用地(費)、補償(費)などの情報が記されていることが認められた。
上記(1)のとおり、くぬぎ山地区の自然再生事業は実施機関が特別緑地保全地区の指定範囲を地元市町と調整を進めている段階であり、このような段階で「想定事業費 根拠」が公になると、用地(費)及び補償(費)はともかく、土地利用形態に応じた面積は正式なものあるいはその可能性が高いものであると誤解されるおそれがある。
特別緑地保全地区の指定範囲を地元市町と調整を進めている段階で、想定事業費算定表の不開示部分を開示すれば、面積をはじめとする各情報が、地権者の関知しないところで公にされたと誤解され、地権者軽視を理由に特別緑地保全地区指定への反対の機運が高まるなど、地権者を中心とする県民の間に混乱を生じさせるおそれがあると認められる。
また、くぬぎ山地区の自然再生事業に導入しようとしている特別緑地保全地区制度は、指定された土地に対し行為制限を付すと同時に、土地の所有者は県に対し土地を買い入れる旨を申し出ることができるものとする内容(この土地の譲渡所得には税の特別控除も設けられている。)であることからして、土地利用形態に応じた面積は正式なもの、あるいはその可能性が高いものであるとの誤解を基に当該区域内で土地取引が行われた場合には、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがあり、想定事業費算定表を開示しないことによる県民全体の利益を斟酌しても、なお、これを開示することによってもたらされる支障は重大であると認められる。
ただし、「くぬぎ山地区全体」、「特別緑地保全地区指定予定地」及び「地区外」の各面積は、その概数が既に開示され、あるいは既に開示された情報から容易に推測できる情報であり、これらを不開示とするのは適当ではない。
また、用地(費)、補償(費)の金額の単位を公にしても、この情報だけでは県民の間に混乱を生じさせるとは認められず、これを不開示とするのは適当ではない。
よって本件処分2のうち、「くぬぎ山地区全体」、「特別緑地保全地区指定予定地」及び「地区外」の各面積並びに用地(費)及び補償(費)の金額の単位を不開示とした部分は妥当ではないが、その他の情報を不開示とした部分は妥当である。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)

城口美恵子、田村泰俊、山口道昭

審議の経過

年月日

内容

平成18年4月14日

実施機関から諮問を受ける
(諮問第122号)

平成18年5月12日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成18年7月25日

実施機関から意見聴取及び審議
(第三部会第16回審査会)

平成18年8月21日

審議
(第三部会第17回審査会)

平成18年9月14日

審議
(第三部会第18回審査会)

平成18年10月13日

審議
(第三部会第19回審査会)

平成18年10月26日

答申
(答申第100号)

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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