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掲載日:2025年12月24日
Q 小久保憲一 議員(自民)
本県の分収林事業は1983年度に開始し、公益社団法人埼玉県農林公社が土地所有者に代わり森林を育成、伐採し、その収益を土地所有者と分収する仕組みです。資金は県や株式会社日本政策金融公庫が当公社に貸し付け、県が損失補償義務を負います。
借入金による事業投資額は、1984年度から2023年度までの40年間で累計248億円、さらに2024年度から2067年度までの44年間で39億円と見込まれ、総額287億円に達します。一方、木材販売収入は、2024年度から2067年度までで総額43億円の見込み、投資額287億円のうち85%が回収不能となる見込みです。
2067年度時点の実質借入残高は、県貸付金の無利子化9億円と金融公庫貸付利息の補助金化20億円を差し引いても154億円の見込みです。農林公社が返済不能となれば、県が損失補償義務を負います。
県内森林面積に占める農林公社管理は約1割にすぎず、その中で公社管理の分収林事業のみに県費を投入し続けることが経営面、公平性の観点から妥当と言えるのか。知事は、この回収不能が前提の事業を今後も県民負担で継続されるのか、それとも合理性を踏まえ事業終了も視野に検討されるのか、明確な御決断を伺います。
A 大野元裕 知事
分収林事業は、戦後荒廃した森林を、国や地方公共団体、林業関係者が一体となって整備してきた中で、厳しい地形や労働力の不足により、土地所有者が自ら行うことが困難なエリアでも森林整備が適切に継続されるよう創設された仕組みであります。
農林公社は事業費を借入金により調達し、土地所有者との契約に基づき、植栽、保育、伐採を行い、木材の売却によって得られる収益を農林公社と土地所有者との間で分収し、借入金の返済に充てるとされてまいりました。
農林公社は、昭和58年の設立以来、分収林事業に取り組んでまいりましたが、その後、木材価格の低迷や、シカの食害対策等による経費の増大などにより、当初の想定から分収林事業の経営環境がかい離する状況が生じております。
このため農林公社は、令和5年度に見直しを行った県の「埼玉県農林公社経営改革プラン」に基づき、分収林事業の経営改善の取組を進めております。
具体的には、可能な限りの債務の圧縮を図るため、不採算林の解約・繰上償還による利息削減やJ-クレジットなどの新たな収入確保に取り組んでおります。
令和6年度末までに102ヘクタールの不採算林を解約したことにより、約6千6百万円の利息を軽減するとともに、令和8年度からのJ-クレジット発行に向けた手続を進めております。
改革プランに基づき農林公社を支援するため、県としても、貸付金を無利子化するとともに、公庫借入金の利子償還分を補助しており、これには特別交付税が措置されています。
仮に、分収林事業を終了する場合、約43億円の木材販売収入が見込めないだけではなく、公庫からの借入金約82億円を直ちに償還する必要が生じるとともに、公社への県補助金等についての国の特別交付税も受けられなくなるなどデメリットがございます。
また、分収契約を即座に全面的に解約しなければなりませんが、土地所有者との交渉は難航が予想されるほか、森林の適切な管理に支障を来し、水源のかん養などの公益的機能が損なわれる可能性があります。
このため、県費を支出することは妥当と考えており、今後とも、農林公社が分収林事業を行う仕組みは維持した上で、県として農林公社が行う経営改善あるいは先ほど申し上げましたけれども、早期の解約等を後押しする形で進めてまいります。