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掲載日:2026年1月14日
この記事はニュースレター第70号(令和8年1月発行)に掲載したものです。
断水時の水の備え、飲料水7日分で大丈夫でしょうか?
土壌・地下水・地盤担当 柿本 貴志
断水への備えとして、飲料水は最低でも1人1日3リットル、できれば7日分(計21リットル)を確保しておくことが推奨されています。ただ実際の災害では、飲料水よりも飲料水以外の「生活用水」(トイレの流し水、手洗い、洗顔、食器洗いなど)に困っている事例が多くあります。飲料水は注目されがちですが、生活用水の備えも忘れてはいけません。
災害により断水した地域では、河川水や湧水・井戸水などの地域の水資源が重要な役割を果たしてきました。令和6年能登半島地震でも、浄水場や水道管の損壊により長期断水が発生しましたが、水道関係者の給水車による給水活動に加えて、地域に残る井戸などの水資源が住民の生活を支えました。七尾市中心部では一部の家庭の井戸が開放され、住民は口コミなどでその情報を得て日常的に水を汲みに行っていました。飲料水は市から配布されたものや購入で何とか確保できた一方で、生活用水の不足は深刻でした。筆者らが実施したアンケートでは、井戸が被災地の安定に寄与したことが分かります(図1)。


図1 井戸利用者を対象としたアンケート調査結果(七尾市)
(左図)災害時の生活を成り立たせるのに井戸は役に立ちましたか?への回答
(右図)近くに井戸がなかった場合、断水時に自宅で生活できましたか?への回答
令和6年能登半島地震では、地域にある湧水や井戸水が、長期の断水に苦しむ住民の生活を大きく支えました。こうした実態を受け、国は2025年3月に「災害時地下水利用ガイドライン」を策定し、湧水や井戸水を断水時の生活用水として活用できるようにする制度(災害時協力井戸など)の導入を市町村が進めやすくする支援を始めました。この制度が導入されている市町村では、「断水時に生活用水として使える井戸」の情報が市町村から住民へ提供されます。
埼玉県内でも、いくつかの市町で災害時協力井戸の登録制度が運用されています。しかし、登録されている井戸の数は十分とは言えず、登録数を増やそうにも、市内のどこに井戸があるのか、市町村の担当課でも把握しきれていない場合があります。三重県鳥羽市では、能登地域で生活用水の確保に苦労していた状況を受けて、災害時協力井戸制度を新たに始めました。地域の有志が自ら地域を回って井戸の有無を調べ、制度への登録を呼びかけたという報道もあります。このように、自治体がつくった制度に井戸を登録してもらうには、地元の協力や工夫が欠かせません。こうした取り組みが広がることで、断水時に必要となる生活用水を、地域でしっかり確保できるようになっていきます。
石川県七尾市でお会いした方は、「井戸があって本当に助かった」と話す一方で、「井戸水をくむ容器や、それを運ぶ台車がなくて苦労した」とも仰っています。水はとても重く、長い距離を運ぶのは簡単ではありません。生活用水の備えとしては、身近な水源を知っておくだけでなく、そこから自宅まで水を運ぶための手段を整えておくなど、いくつかの段階があります。水の運搬方法として、軽トラックの所有者に協力してもらった例もあります。地域にある水資源を上手に使い、地域の人と協力しながら対応することが大切です。
自治会の弱体化が進んでいると聞きますが、これまで述べてきたように、多くの人にとって自分や家族の生活用水を確保するには、地域の協力が欠かせない状況があります。災害時にどう対応するかという視点も持ち、地域との関係づくりを改めて考えてみることが、生活用水の備えを進める重要な一歩になるのではないでしょうか。
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