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掲載日:2023年1月16日

「地中の熱エネルギー」って何?

この記事は平成22年10月に執筆したものです。

Question - 質問します

地中の熱エネルギーを家の冷暖房に使うことができると聞きましたが、これはどんなものですか?

そして埼玉県でも実際に利用できるのでしょうか?

Answer - お答えします

土壌・地下水・地盤担当 濱元 栄起

地中の熱エネルギーを住宅やビルの冷暖房として利用できるということを耳にされた方も多いのではないでしょうか?まず、この原理について簡単にお話しますと、井戸の水に手を浸したとき、夏は井戸水のほうが冷たく感じられ、逆に冬は暖かく感じるといった経験をお持ちではないでしょうか?このような地表と地中との温度差を利用したものが地中熱利用システムと呼ばれるものです。特に地中熱ヒートポンプシステムと呼ばれるものは、その温度差以上の冷たさや暖かさを得ることができ、省エネ効果が高く、環境に優しい技術だと言われています。最近では、技術が進歩し、冷暖房だけではなく、給湯にも利用できるようになってきました。ちなみに現在建設中の新東京タワーの冷暖房システムの一部にも地中の熱エネルギーを利用したものが導入されていますし、県内でも、春日部市の市役所庁舎(別館)にも導入され、稼働しています。地中熱利用システムの普及が進めば、地球の環境問題の解決に貢献できる日も近いかもしれません。

それでは、これからもう少し詳しく説明しましょう。

地中熱ヒートポンプとは?

地中熱ヒートポンプシステムは、地中熱を利用したエネルギーシステムの一種で、自然エネルギーを有効に活用できる技術として注目されています。

まず、「地中の熱エネルギー」について考えてみましょう。地中の熱エネルギーいうと、まず「地熱」という言葉が浮かびます。「地熱」は、地球深部の熱エネルギーを起源として火山地帯などごく限られた場所で得られる熱エネルギーです。一般的に高い温度が得られ、大規模な地熱発電などで利用されています。これに対して、ここでお話しする「地中熱エネルギー」は、太陽が地表を暖め、地中に蓄積された熱エネルギーを指します。したがって太陽が地表面を暖めているところなら基本的にはどこでも利用することができます。さらに、地中の温度は15~20度程度で年間を通じて安定しているという大きな特徴があります。すなわち、夏の場合、地中の温度は、気温よりも低く、冬は地中のほうが高くなります。したがって地中に穴を掘り、U字状のパイプに循環液を流すことで、夏は地中の冷たさを室内に取り込み、逆に、冬は地中の暖かさを室内に取り入れることができます。ただし、この仕組みだけでは、冷房時には室温を地中の温度(15~20度)よりも下げることができず、暖房時には地中の温度よりも上げることができません。そこでヒートポンプと呼ばれるシステムを組み合わせることで、さらに温度を下げたり、温度を上げたりすることができるようになります。ヒートポンプの仕組みは、物質(冷媒)に圧力をかけると温度が上がり、圧力を下げると温度が下がるという性質を利用したものです(通常のエアコンも同じ仕組み)。このような仕組みを利用し、地中と熱交換するものが「地中熱ヒートポンプシステム」です(図1)。このシステムは、次に挙げるように環境に優しいという特徴があります。第一に省エネ効果が高いということ、第二に地球温暖化の原因と考えられる二酸化炭素の排出が少ないということ、そして第三に従来のエアコンのように排熱を大気中に放出しないため、ヒートアイランド現象の緩和に効果があることなどが挙げられます。日本でも少しずつですが、導入が進みつつあります。地中熱利用システムは、地球の環境問題の解決に大きく貢献できる大きな可能性を持っています。

イメージ図

図1 地中熱ヒートポンプシステムの概念図

 

埼玉県でも利用できるのでしょうか?

 実際に設置を考える場合には、個々のケースで異なるため、地中熱利用システムを専門に扱っている業者さんに相談することが必要不可欠ですが、埼玉県でも多くの場所で地中熱利用システムを利用できると考えられます。例えば、春日部市役所の庁舎(別館)でも従来の冷暖房システムと交換する形で導入され、稼働しています。

地中熱が利用できるのかどうかを判断するときに、重要な情報は、地下の温度です。これまで、埼玉県の地下の温度に関する情報は、ほとんどありませんでした。そこで当センターでは、国の研究機関(産業技術総合研究所)や大学(秋田大学・東京大学)と共同で、埼玉県内で地表からおよそ200mまでの深さの温度の調査を進めています(図2)。この結果、地下の温度は15~20℃程度で、安定していることがわかってきました。また地下の温度は図2の右側に示すように、場所によっても少しずつ異なり、地域ごとに調査を行うことも重要であることがわかりました。このような地下の温度情報は、例えば、システムを設置する場合に「十分な冷暖房効果を得るためには、熱交換井の深さをどれくらいにすればよいか?」、あるいは「何本掘ればよいのか?」といったことを調べるときにも活用できると考えられます。今後、調査の結果を整理した上で公開する予定です。また地下の温度と同様に、地質も重要な基礎情報です。これについては、「地図で見る埼玉の環境 Atlas Eco Saitama」で公開しています。興味がある方は是非ご覧ください。

地下温度調査地点とデータの一例のグラフ

図2 埼玉県における地下温度調査地点とデータの一例

おわりに

地中熱システムは、自然エネルギーを活用した技術のひとつで、地球環境の問題の解決に大きく貢献できるものと期待されています。日本国内でも少しずつ導入が進みつつありますが、掘削費用の低下などが進めば、さらに急速に広がると考えられます。我々も地下環境に関する調査や基礎情報の提供などの面から、埼玉県における地中熱利用システムの普及拡大に役立つ研究をしていきたいと考えています。 

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター  

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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