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掲載日:2023年1月24日

2050年温室効果ガス排出ゼロはどうやって達成する?

この記事はニュースレター第50号(令和3年1月発行)に掲載したものです。

Question - 質問します

2050年温室効果ガス排出ゼロはどうやって達成する?

Answer - お答えします

温暖化対策担当 本城 慶多

温室効果ガスの排出をゼロにするには、化石燃料の消費を限界まで減らすと同時に、再生可能エネルギーのように温室効果ガスを排出しないエネルギーから作られた電気に切り替える必要があります。排出ゼロの達成が難しい分野では、温室効果ガスを余分に削減している企業や自治体から排出枠を取得するなど、カーボン・オフセットの仕組みを検討する必要があります。

日本の排出削減目標の推移

地球温暖化を食い止めるため、人間活動に由来する温室効果ガスの大幅削減が求められています。日本は国際社会と連携しながら排出削減に取り組んできました。1997年にCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)で採択された京都議定書では、2008~2012年の排出量を1990年比で6%削減する目標を設定しました。2009年には、G8ラクイラ・サミットの成果を受けて2050年80%削減という長期目標を表明しました。2015年にCOP21で採択されたパリ協定では、2030年の排出量を2013年比で26%削減する目標を設定し、長期目標を達成するための通過点として位置づけました。そして、2020年10月、従来の長期目標を上方修正する形で「2050年排出ゼロ」という方針が政府によって示されました。残り30年で脱炭素社会を実現するという政府方針は、究極の排出削減目標と言えるでしょう。

2050年排出ゼロへの道のり

2050年排出ゼロを達成するには、化石燃料の消費を限界まで減らすことが前提となります。現在、日本は化石燃料のエネルギー利用によっておよそ5億トンの二酸化炭素(CO2)を排出しています(図1、燃料由来)。化石燃料の消費を抑制するには、石油ストーブの代わりにエアコンを使う、ガス調理器の代わりにIHを使う、ガソリン車の代わりに電気自動車を使うなど、私たちの生活を徹底的に「電化」する必要があります。しかし、単純に電化しただけではCO2排出量の削減にはつながりません。なぜなら、電力の大部分(2018年度は77%)が化石燃料を燃焼させる火力発電で作られているからです。電力の利用に伴うCO2排出量は4億トンを超えています(図1、電力由来)。電化の推進は「電力の脱炭素化」と組み合わせて初めて有効な温暖化対策となります。今後、日本は温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの主力電源化に取り組まなければいけません。


脱炭素社会の実現に向けて検討すべき課題は山積しています。電化の推進は国内の電力需要を増大させるため、冷暖房の需要が高まる夏期と冬期にも電力を安定供給できるような体制を整える必要があります。再生可能エネルギーによる発電は天候の影響を受けやすいため、蓄電池の併用が不可欠です。「電気をためて使う」という発想は、台風や地震など自然災害による停電への備えとしても重要です。ガソリン車を電気自動車に切り替える場合は、充電スタンドを各地に設置するなど、インフラの整備も必要となります。最大の課題は、先端技術をどのように普及させるのかという点です。社会で利用されている機器、自動車、住宅、発送電システムを更新するには、長い時間とばくだいな費用がかかります。また、消費者の経済的負担や生活の利便性への配慮も求められます。

カーボン・オフセットの役割

非エネルギー起源の温室効果ガスについては、排出ゼロの達成が難しいもの(農業由来のメタンや廃棄物由来の一酸化二窒素)があるため、カーボン・オフセットが有力な選択肢となります。たとえば、植林や大気中CO2の回収貯留によって「負の排出量」を計上している企業や自治体から排出枠を取得し、温室効果ガスの排出を相殺するという方法が考えられます。2050年排出ゼロを達成するには、ハード(技術)とソフト(政策)の両面において取組を進める必要があります。

 

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室  温暖化対策担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2055

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