トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成15年度情報公開審査会答申 > 答申第20号 「旅行命令簿(県費)(平成13年1月分 所沢警察署)」外3件の部分開示決定(平成15年8月19日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第20号(諮問第28号)
答申
1 審査会の結論
次の文書について、埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成14年1月4日付けで行った部分開示決定のうち、警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名を不開示とした決定は不当であるとまではいえない。
(1) 旅行命令簿(県費)(平成13年1月分 所沢警察署の警務、地域、刑事第一、刑事第二、交通第一及び交通第二各課員に係る分)(以下「本件対象文書1」という。)
(2) 旅行命令簿(県費)(平成13年1月分 狭山警察署の警務、地域、刑事第一、刑事第二、交通第一及び交通第二各課員に係る分)(以下「本件対象文書2」という。)
(3) 普通旅費請求書(県費)(平成13年1月分 所沢警察署の警務、刑事第一及び刑事第二各課員に係る分)(以下「本件対象文書3」という。)
(4) 普通旅費請求書(県費)(平成13年1月分 狭山警察署の地域、交通第一及び交通第二各課員に係る分)(以下「本件対象文書4」という。)
2 審査請求及び審査の経緯
(1) 本件審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成13年11月2日から同月30日にかけて、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し本件対象文書1ないし4の開示請求を行った。
(2) 実施機関は、本件対象文書1ないし4について、警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名及び全職員の職員番号を、条例第10条第1号に該当するため不開示とするのが適当であると判断し、平成14年1月4日付けの公文書部分開示決定通知書により、請求人にその旨を通知した。
(3) 請求人は、平成14年1月21日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、部分開示決定により不開示とされた部分のうち、職員の氏名を開示すべきであるとして審査請求を行った。
(4) 当審査会は、本件審査請求について平成14年3月27日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、審査庁から平成15年4月16日付けの「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を、請求人から平成15年5月1日付けの「理由説明書に対する反論書」の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成15年6月19日に、実施機関の職員から事情聴取を行った。
なお、請求人は、当審査会に対する口頭による意見陳述を求めていない。
3 請求人の主張の要旨
請求人は、本件対象文書1ないし4のうち不開示とされた「氏名」(警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名)を開示するよう求めるものであるが、その理由は、おおむね次のとおりである。
(1) 公務員の公務出張中は、プライバシーは存在しないとするのが通説である。旅行命令簿及び普通旅費請求書の中の職員の氏名については、公務に関する情報であり開示を求める。
(2) 警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名については、行政機関が作成した公開名簿に記載されておらず、それゆえ不開示とする主張は納得しがたい。
(3) 本開示請求の文書は経理文書である。警察には、旅費の消費について説明責任が存する。
(4) 氏名を公開することによって警察職員に危険が及ぶという理由は納得しがたい。他の行政職員とどれだけの相違があるといえるか。
4 実施機関の主張の要旨
審査請求に対する実施機関の主張の要旨は、以下のとおりである。
公務員の氏名については、一般私人の場合と公務員の場合とを区別することなく、個人に関する情報として保護に値すると位置づけた上で、条例第10条第1号ただし書イ(法令若しくは他の条例により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報)に該当する場合には、例外的に開示するものである。
ところで、埼玉県職員録に掲載されているのは、警察本部の次席(警視級又は警部級。一般職員にあっては同相当職)以上及び警察署の副署長(警視級)以上の職員の氏名である。また、人事異動情報として報道機関に提供されているのは、警部級(一般職員にあっては同相当職)以上の職員の氏名である。
すなわち、「慣行として公にされている」のは警部級以上の職員の氏名であり、今回争点となっている警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名については、埼玉県職員録でも、人事異動情報においても公表されていない。
したがって、公にされていない警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名については、条例第10条第1号の規定により不開示とするものである。
なお、請求人は上記3(4)において、氏名を公開することによって警察職員に危険が及ぶという理由は納得しがたい旨述べているが、実施機関はそのような主張をしていない。
5 審査会の判断
(1) 本件対象文書について
本件対象文書1及び2は、それぞれ所沢警察署、狭山警察署が作成した旅行命令簿であり、旅行命令権者、発令年月日、出張した職員の職名・職員番号、氏名、用務、用務先、旅行年月日、精算月日、金額及び備考の各欄から成っている。
本件対象文書3及び4は、それぞれ所沢警察署、狭山警察署が作成した普通旅費請求書であり、出張した職員の職名・職員番号、氏名、出発地、用務、用務先、旅行月日、早見表番号・金額及び備考の各欄から成っている。
本件対象文書1ないし4について、実施機関が不開示としたのは「職名・職員番号」欄に記載された職員番号並びに「氏名」欄に記載された警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名である。
(2) 条例第10条第1号について
請求人が開示を求めているのは、上記の不開示情報のうち「氏名」欄に記載された警部補級(一般職員にあっては同相当職)以下の職員の氏名である。
埼玉県職員録ないし新聞の人事異動情報で氏名が公表されているのは、警部級(一般職員にあっては同相当職)以上の職員であり、「警部補級以下の職員の氏名」は公にされていない。これをもって実施機関は、「警部補級以下の職員の氏名」は個人情報であり、それは一般私人の場合と同様保護に値するものとして、条例第10条第1号により不開示とする旨主張する。よって、以下この点について検討する。
(1) 条例第10条は、同条各号に掲げる情報のいずれかが記載されている場合を除き、公文書を開示しなければならないと規定し、このうち第1号は、個人に関する情報を原則として不開示とすることを定めている。個人の氏名は、まさに同号の定める個人情報に当たるが、同号は、さらに、ただし書イ、ロ、ハを設け、これらいずれかに該当する場合には、開示する旨を規定している(このうち、ただし書ハは、当該個人が公務員である場合、公務員の職務遂行に係る情報については、当該公務員の「職」及び「職務遂行の内容に係る部分」を開示すると規定しているところ、公務員の「氏名」がこれに当たらないことは明らかである。)。
(2) 本件の公務員の「氏名」の開示・不開示については、条例第10条第1号ただし書イ該当性が問題となる。ただし書イは、「法令若しくは他の条例により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」については、これを開示すると定めている。「公にされ」とは、当該情報が現に何人も知り得る状態に置かれていることをいう。例えば、埼玉県の知事部局の職員の場合、埼玉県職員録に、全職員の職及び氏名が掲載され、一般に頒布されていることから、職員の氏名が職務遂行に係る情報に含まれる場合には、「慣行として公にされ」ているとして、それを開示している。また、「公にすることが予定されている情報」とは、請求時点においては公にされていないが、将来、公にすることが予定されている情報をいい、情報を保有する実施機関が具体的に公表を予定しているもののほか、当該情報の性質や置かれている状況等から客観的に判断して、通例公にされるものを含むと解される。
(3) これに対して、本件審査請求の対象となっている「警部補級以下の職員の氏名」については、現在のところ、埼玉県職員録においても、新聞の人事異動情報でも公表されていないとの事実が認められる。これを踏まえれば、当該情報が「慣行として公にされ」ていると評価することはできない。また、公にすることが予定されているものでもないとした実施機関の判断に特段の不合理があるとまではいえない。
(4) したがって、「警部補級以下の職員の氏名」はただし書イに該当しないとして、これを不開示とした実施機関の決定は不当であるとまではいえない。
なお、当審査会は、先の答申第17号(平成15年4月24日)において実施機関に対し、警察職員の氏名の開示について、警察改革の一環として積極的に取り組まれるよう意見を附したところであり、実施機関における今後の検討の経過を注視していきたいと考える。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成14年3月28日 |
諮問を受ける(諮問第28号) |
平成15年4月16日 |
審査庁より開示決定等理由説明書を受理 |
平成15年5月9日 |
不服申立人より反論書を受理 |
平成15年5月19日(第24回審査会) |
審議 |
平成15年6月19日(第25回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成15年7月25日(第26回審査会) |
審議 |
平成15年8月19日 |
答申 |
氏名 |
現職 |
備考 |
---|---|---|
礒野 弥生 |
東京経済大学教授 |
|
遠藤 順子 |
弁護士 |
会長職務代理者 |
大森 彌 |
千葉大学教授 |
会長 |
田村 泰俊 |
明治学院大学教授 |
|
野村 武司 |
獨協大学助教授 |
|
馬橋 隆紀 |
弁護士 |
|
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