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掲載日:2024年3月26日

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答申第18号 「平成13年被処分者ファイル(1月から9月)」の部分開示決定(平成15年5月19日)

答申第18号(諮問第20号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長が、平成13年12月14日付けで行った「平成13年被処分者ファイル(1月から9月)」(以下「本件文書」という。)の部分開示決定のうち、被処分者番号15/11、16/11、17/11及び18/11の4件の「事案の概要」欄で不開示とした部分については、開示すべきである。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成13年11月30日、埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し「平成13年10月19日頃新聞紙上にあった共同通信社が取得した警察職員に関する事故報告書」の開示請求を行った。

(2) 実施機関は、本件開示請求に対する公文書を本件文書と特定した上で、平成13年12月14日付けで部分開示決定を行い、請求人に通知した。

なお、開示しない情報及びその理由は、別紙1-1のとおりである。

(3) 請求人は、平成13年12月25日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、部分開示決定により不開示とした部分のうち、被処分者番号17/11及び18/11の2件について、「事案の概要」欄で不開示とした部分を開示すべきであるとして審査請求を行った。

また、平成14年1月4日付けの審査請求書により、被処分者番号15/11及び16/11の2件についても、同様に、「事案の概要」欄で不開示とした部分を開示すべきであるとして請求の追加を行った。

なお、本件審査請求の対象となったこれら4件(以下「本事案」という。)の「事案の概要」欄で不開示とした情報は、別紙1-2のとおりである。

(4) 当審査会は、本件審査請求について平成14年1月30日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に対し、審査庁から平成14年7月3日付けの「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を受け、請求人から平成14年7月15日付けの反論書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成14年8月2日に実施機関の職員から事情聴取を行った。

なお、請求人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

(7) 当審査会の本件審査に対し、審査庁から平成14年8月26日付けの「補足説明書」の提出を受けた。

また、平成15年2月13日付けで追加資料の提出を受けた。

3 請求人の主張の要旨

請求人は、実施機関が不開示とした部分のうち、本事案の「事案の概要」欄で不開示とした部分を開示するよう主張しているが、その理由は、おおむね次のとおりである。

(1) 「事案の概要」欄に記載された情報は、処分に至る事実経過を知るための重要な部分であり、事実は公開すべきものである。

(2) 本事案に係る処分は、被処分者の職務怠慢により、第三者が誤認逮捕されるという人権侵害が発生した事案に基づきなされたものである。

したがって、本事案の「事案の概要」欄に記載された情報は、職務遂行中の行為であり、条例第10条第1号ただし書ハに該当し開示すべきである。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が、説明書及び審査会における意見陳述等で主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 条例第10条第1号本文の該当性について

  • ア 条例第10条第1号本文の規定の趣旨は、個人情報がみだりに公開されることを防ぎ、プライバシーを保護することにある。
    そして、私人のみならず公務員も個人として保護されるべきプライバシーを有することは言うをまたず、当該公務員の公務と直接関係のない情報がみだりに公開されるべきでないことは当然である。
    本件文書に記載された内容は、いずれも処分の内容やその理由など、個人の名誉にかかわる当該職員固有の情報であり、当該職員本人としては、一般にこれを他人に知られたくない、又は他人に公開されたくないと望み、一般人の感受性を基準として考えたとき、そのように望むことが妥当であると認められるプライバシーに関する情報であり、条例第10条第1号本文にいう「個人に関する情報」に該当する。
  • イ 本件審査請求の対象となった本事案の「事案の概要」欄で不開示とした部分は、当該被処分者の所属、分掌、担当事務及び職名に関する情報である。
    加えて、本事案は、処分に係る事案の発生当時同じ所属に勤務し、同一事案によって処分されたものである。
    したがって、当該情報を開示した場合、当該被処分者である特定の個人が識別され得る場合のほか、同一事案で処分された同じく特定の個人である他の被処分者それぞれが識別され得ることともなり、この場合、当該被処分者個人が識別され得ないものであったとしても、他の被処分者個人が識別され得る限りにおいては、その部分を不開示にすべきであるといえる。

以上から、当該情報は、そのいずれもが「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるもの」であり、条例第10条第1号本文に該当する。

(2) 条例第10条第1号ただし書ハの該当性について

本件審査請求の対象となった本事案の「事案の概要」欄に記載された内容だけをとらえると、当該職員の職務の遂行に関連する情報ともいえるが、これは、処分に至る調査結果を要約したものにほかならない。

そもそも、被処分者ファイルは、被処分者の人定事項、処分内容、調査結果(事案の概要)等、職員の処分に関する必要事項のみが記載されているもので、職務に関連する情報ではあるが、個人の資質、名誉にかかわる当該被処分者固有の情報というべきものであって、条例第10条第1号ただし書ハで規定する「職務の遂行」には該当しない。

(3) 広報(公表)した処分事案にかかる情報公開の取扱い(開示請求への対応等)について

  • ア 非違行為が発生した時点又は処分が行われた時点において、公益的な観点から、被処分者の所属、階級、氏名、年齢等特定の個人を識別することができる情報を公表したとしても、懲戒処分等を受けた警察職員の身分取扱い上の処遇に関する情報は、個人の資質、名誉にかかわる当該職員固有の情報というべきであって、被処分者本人としては一般にこれを他人に知られたくないと望み、そう望むことが正当であると認められるものである。
  • イ 職員の処分事案に限らず、一般私人が関係する事件、事故等であって、個人に関する情報を含む情報を過去に広報(公表)した事案であっても、開示請求時において頻繁に報道が行われているなど特別の事情がない限り、時間の経過とともに個人情報の要保護性は回復するものであり、一時的な公表をもって、慣行として公にされているとは認められず、特定の個人を識別することができる部分については、個人に関する情報として不開示にしている。

5 審査会の判断

(1) 本件文書について

本件文書は、埼玉県警察本部職員の非違行為が原因となり、平成13年1月から同年9月の間に行われた懲戒処分等の内容が記載された被処分者ファイルであり、次の情報が記載されている。

  1. 被処分者番号(通年の通し番号)
  2. 処分年月日等欄に関する情報
    処分年月日、処分内容、事案名、処分書番号、警察庁報告、公安委報告、知事部報告及び広報
  3. 当該職員(被処分者)欄に関する情報
    所属、職名、分掌(担当事務)、氏名、生年月日、年齢、職員番号、採用年月日(勤続年数)、現階級年月、現所属年月及び現分掌年月
  4. 事案の概要
  5. 当該職員の学歴等欄に関する情報
    学歴、職歴、出身県、結婚、居住地、発生時の勤務及び備考

請求人は、本事案について、上記のうち4「事案の概要」欄の全面開示を求めるものであるので、その不開示情報該当性について、以下検討する。

(2) 条例第10条第1号本文該当性について

実施機関は、本事案の「事案の概要」欄で不開示とした部分は、条例第10条第1号本文の「個人に関する情報であって、他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるもの」に該当するとしているので、まずこの点について検討する。

  1. 条例第10条第1号本文は、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人が識別できるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を不開示情報とし、これらの情報が記載されている公文書については、公文書開示原則の例外とする旨を規定している。
    これは、公文書を開示しなければならないという原則を明らかにする一方、個人の尊厳という憲法原理に立脚し、いわゆるプライバシーを中心とする個人に関する情報を原則として不開示として扱うことを定めたものであり、その趣旨は、個人情報がみだりに公開されることを防ぎ、個人の権利利益を保護することにある。
  2. 一般にプライバシーとは、他人に知られたくない、他人に誤解されたくない、又は他人に公開されたくないという、一般人の感受性を基準として、本人がそう望むであろうと考えられるものをいうが、その保護に関しては、一般私人のみならず、公務員も個人として保護されるべきプライバシーを有していることは当然である。
  3. 本件文書に記載されているような懲戒処分等の職員の身分取扱い上の処遇に関する情報は、個人の資質、名誉にかかわる当該公務員固有の情報であって、処分を受けた本人としては一般的にこれを他人に知られたくないと望み、そう望むことが正当であると認められる。
    したがって、本件文書の「事案の概要」欄に記載された情報は、条例第10条第1号本文の「個人に関する情報」に該当するものである。
  4. 次に、本事案の「事案の概要」欄で不開示とした部分が、条例第10条第1号本文の「特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」に該当するか否かについてであるが、当該欄で不開示とした部分は、当該被処分者の所属、分掌、担当事務及び職名に関する情報であり、また、被処分者番号、処分年月日及び当該欄で既に開示されている情報などから、本事案が同一事案によって処分されたものであることが認められる。

以上のことから判断すると、当該情報のいずれかを開示した場合、当該情報そのものあるいは他の情報と照合することにより、当該被処分者4名のうちいずれかの者を識別することができる情報であると認められる。

(3) 条例第10条第1号ただし書該当性について

  1. 実施機関は、本件文書に記載された情報は、処分を受けた者にとっては、処分に関する必要事項が記載されているものにほかならず、個人の資質、名誉にかかわる当該被処分者固有の情報というべきものであって、条例第10条第1号ただし書ハで規定する「職務の遂行に係る情報」には該当しないと主張しているので、まず、この点について検討する。
    同号ただし書ハは、「当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」が記載されている公文書については、県の諸活動を説明する責務が全うされるよう、同号本文に該当する場合であっても、開示しなければならないと規定している。
    ここでいう「職務の遂行に係る情報」とは、当該公務員がその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するのであって、担任する職務と関係のない活動に関する情報は含まれない。
    本件文書のうち、本事案についてみれば、処分の原因となった非違行為自体は、確かに当該職員の職務の遂行中になされたものである。
    しかし、その行為が懲戒処分等の原因として記載されている本件文書は、全体としてみれば職員の身分取扱い上の処遇に関する情報であり、公務に関連する情報ではあるが、個人の資質、名誉にかかわる当該公務員固有の情報であって、本人としては一般的にこれを他人に知られたくないと望み、そう望むことが正当であると認められるものである。
    したがって、本事案についてみれば、本件文書に記載されている情報は、処分を受けた職員にとっては職務に関連する情報ではあるが、当該職員に分任された職務の遂行に係る情報であるということはできず、同号ただし書ハには該当しないものと認められる。
  2. 次に、実施機関が本事案について報道機関に対し広報を行った事実が認められるので、同号ただし書イの該当性について検討する。
    実施機関では、懲戒処分実施の広報については、平成13年1月以降、警察庁が定めた「懲戒処分の発表の指針」に基づき行っているが、この指針の目的は、同種事案の再発防止その他職務執行の適正及び職務倫理の保持を図り、警察に対する国民の信頼の確保に資することにある。
    一般に、このような基準に基づき懲戒処分が公表された場合、処分を受けた個人が識別され当該個人のプライバシーが侵害されるおそれがないとはいえないが、当該指針の趣旨に鑑み、受忍すべき範囲内にとどまるものであるとの考えのもとに、広報を行っているものと解される。
    本事案は、窃盗被疑事件に係わる職務執行中の非違行為により、罪もない一般市民を誤認逮捕し、不当に身柄を拘束し続けるなど、一般市民の人権を侵害する要因を作ったという結果において極めて重大なものであり、社会に与える影響も大きいといえる。
    実施機関から意見を聴取した結果、本事案は懲戒処分に至らない監督上の措置ではあるが、事案の重大性、公務内外に及ぼした影響等特別な事情が認められるので、懲戒処分時と同様に広報を行ったと認められる。
    上記事実に照らしてみた場合、本事案の「事案の概要」欄に記載された情報は、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報であり、これを否定する特別な事情があるとは認められないので、条例第10条第1号ただし書イに該当するものと認めるのが相当である。

3 なお、上記より、同号ただし書ロについては判断するまでもない。

よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

別紙1-1

(1)当該職員欄

  1. 開示しない情報
    所属、職名、分掌(担当事務)、氏名、生年月日、年齢、職員番号、採用年月日、現階級年月、現所属年月及び現分掌年月
  2. その理由
    特定の個人を識別することができる情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(2)事案の概要欄

  1. 開示しない情報
  • ア 事案の発生場所、駅名、交番名、店舗名、関係者の氏名、年齢、所属、分掌、自動車登録番号及び警察署の名称
  • イ 公用車の登録番号及び呼称名
  • ウ 関係者の前歴、傷病及び債権
  • エ 職員が行った行為の詳細な状況が記録された部分
  • オ 留置室の部屋番号及び構造が分かる部分

2 その理由

  • ア 特定の個人を識別することができる情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。
  • イ 公にすることにより捜査に支障を及ぼすおそれがある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第3号に該当し、また、特定の個人を識別することができる情報であり、同条第1号に該当するため。
  • ウ 公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。
  • エ 公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。
  • オ 公にすることにより、被留置者の逃亡等留置・勾留業務に支障を及ぼすおそれがある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第3号に該当するため。

(3)職員の学歴等欄

  1. 開示しない情報
    学歴、職歴、出身県、結婚、居住地及び備考欄
  2. その理由
    公にすることにより、特定の個人を識別することができ、個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

別紙1-2

(1)被処分者番号15/11

不開示とした情報

職名、分掌及び担当事務

(2)被処分者番号16/11

不開示とした情報

職名、分掌及び担当事務

(3)被処分者番号17/11

不開示とした情報

所属及び担当事務

(4)被処分者番号18/11

不開示とした情報

所属及び担当事務

審議の経過

年月日

内容

平成14年1月30日

諮問を受ける(諮問第20号)

平成14年7月3日

諮問庁より開示決定等理由説明書を受理

平成14年7月7日

審査請求人より反論書を受理

平成14年8月2日(第15回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成14年8月26日

諮問庁より補足説明書を受理

平成14年9月2日(第16回審査会)

審議

平成14年10月4日(第17回審査会)

審議

平成14年11月11日(第18回審査会)

審議

平成14年12月19日(第19回審査会)

審議

平成15年1月30日(第20回審査会)

審議

平成15年2月13日

諮問庁より資料を受理

平成15年2月17日(第21回審査会)

審議

平成15年4月24日(第23回審査会)

審議

平成15年5月19日

諮問庁に答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成15年5月19日現在)

氏名

現職

備考

礒野 弥生

東京経済大学教授

 

遠藤 順子

弁護士

会長職務代理者

大森 彌

千葉大学教授

会長

田村 泰俊

明治学院大学教授

 

野村 武司

獨協大学助教授

 

馬橋 隆紀

弁護士

 

(五十音順)

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総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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