トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成15年度情報公開審査会答申 > 答申第24号 「1月分捜査費総括表(県費)(平成13年 所沢警察署)」外31件の部分開示決定(平成15年10月16日)

ページ番号:14425

掲載日:2024年3月26日

ここから本文です。

答申第24号 「1月分捜査費総括表(県費)(平成13年 所沢警察署)」外31件の部分開示決定(平成15年10月16日)

答申第24号(諮問第23号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、本件審査請求の対象となった次の公文書について部分開示とした決定は、妥当である。

(1) 「1月分捜査費総括表(県費)(平成13年 狭山警察署)外15件(別紙のとおり)」(以下「本件対象文書1」という。)

(2) 「1月分捜査費総括表(県費)(平成13年 所沢警察署)外15件(別紙のとおり)」(以下「本件対象文書2」という。)

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成13年10月1日及び2日、埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し次の内容に関する公文書の開示請求を行った。

  • ア 平成13年1月から8月分の狭山警察署の捜査費の支出証拠書(国費及び県費)
  • イ 平成13年1月から8月分の狭山警察署の支出負担行為兼支出命令書、領収書(食糧費、交際費、負担金)
  • ウ 平成13年1月から8月分の所沢警察署の捜査費の支出証拠書(国費及び県費)

(2) 実施機関は、本件開示請求の対象となった公文書が大量であり、条例第15条第1項に定める期間内に開示・不開示の決定を行うことが事務処理上困難であるとして、本件対象文書1については平成13年11月29日、本件対象文書2については同月30日まで、開示決定等の期間を延長する旨、平成13年10月15日付け「公文書開示決定等期間延長通知書」により、請求人あて通知した。

(3) 実施機関は、上記(1)のア及びウの開示請求に対応する公文書として特定した本件対象文書1及び2に記載された情報のうち、「前月より繰越額」、「本月受入額」、「本月支払額」、「残額」、「前月末未精算額を本月精算した結果の返納額又は追給額(△)」及び「本月概算交付し翌月に精算した結果の返納額(△)又は追給額」の6項目に記載された金額(以下「本件情報」という。)については、条例第10条第3号(公共の安全等に関する情報)に該当し不開示とするのが適当であると判断し、本件対象文書1については平成13年11月29日、2については同月30日付けで部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、請求人に通知した。

(4) 請求人は、平成13年12月25日及び平成14年1月4日付けの審査請求書により、本件処分において不開示とした部分は開示すべきである等を理由として、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、審査請求を行った。

(5) 当審査会は、本件審査請求について平成14年2月13日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(6) 当審査会は、本件審査に際し、審査庁から平成14年8月28日付けの「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を受け、請求人から平成14年9月9日付けの「非公開等理由説明書に対する審査請求人の反論書」(以下「反論書」という。)の提出を受けた。

(7) 当審査会は、平成14年12月19日に実施機関の職員から事情聴取を行った。

なお、請求人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

3 請求人の主張の要旨

請求人は、実施機関が本件処分で不開示とした「前月より繰越額」等6項目に記載された金額を開示するよう主張しているが、その理由は、おおむね次のとおりである。

(1) 実施機関が、「前月より繰越額」等6項目に記載された金額を不開示としたことと条例との関連を具体的に証明しないのは、違法である。

(2) 不開示とした6項目の金額は、いわゆる公費であって、この数字にプライバシーは存在しない。

また、当該情報は、捜査という名のもとに支出されたものであって、捜査機関のみに使途を明確にしない支出は許されない。

(3) 各月ごとの捜査費用の数字を開示したとしても、条例第10条第3号との具体的関連性の証明は困難であると推定する。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関は、説明書及び審査会における意見陳述で、本件情報が条例第10条第3号に該当する旨主張しているが、その内容はおおむね次のとおりである。

(1)「本月支払額」及び「本月受入額」

  • ア 捜査費の交付・支払は、捜査等の活動に密接に関連したものであり、当該項目に記載された金額は、当該月の捜査活動等の実態を反映しているものである。
    これらの情報を公にすることにより、被疑者等の事件関係者が、これらの額の変動状況と事件発生や事件が伏在している可能性のある事案の報道等の情報及び自らが知り得る情報と照合・分析することにより、捜査等の進展状況を推察して、逃走や証拠隠滅を図るおそれや、犯罪を企図する者が犯罪捜査の網をかいくぐって犯罪を敢行するおそれがあり、犯罪捜査に支障を及ぼすおそれがある。
  • イ 埼玉県警察の犯罪捜査は警察本部単独で行うことは少なく、警察署と一体となって犯罪捜査を行うことが通常であることから、警察本部の事件主管課と各警察署、それぞれの捜査費の変動状況を照合・分析することにより、どのような犯罪をどの警察署において捜査中なのかということまで推察可能となるおそれがある。
  • ウ 過去において、暴力団等の犯罪組織の者が巧みに警察職員に接近して捜査情報の入手を図ろうとした事例や、捜査等の動きを把握しようとして警察職員への尾行・張込みなどの調査を行っていた事例があり、犯罪者等においては、開示された捜査費に関する情報により、これらの調査により得た情報の確度を高めることが可能となることを考慮すると、当該項目に記載された金額を公にすれば、捜査等の進展状況が推察される可能性は十分認められる。

(2)「前月より繰越額」及び「残額」

これらの情報は、それぞれ、前月又は本月に執行されなかった捜査費の金額を示しており、これらの情報を公にすることにより、捜査活動が当初の思惑どおりに進展し、又は進展しなかった事実が明らかとなるため、前記(1)と同様のおそれがある。

(3)「前月末未精算額を本月精算した結果の返納額又は追給額(△)」及び「本月概算交付し翌月に精算した結果の返納額(△)又は追給額」

当該欄に記載された金額は、いずれも捜査活動が深夜に及んだときや遠方で行われたときなど、当該月に精算できず帰署が翌月になってしまったときに精算する情報である。

このため、これらの情報を公にすることにより、月末から翌月当初にわたる捜査員の活動状況が明らかとなるため、前記(1)と同様のおそれがある。

(4) その他

各警察署や警察本部の各課所室ごと、また、当該警察署等の月別の捜査費総額が公にされると、当該情報を比較検討することにより、どこの警察署でどのような関係の事件を捜査しているか推測される可能性があり、捜査に重大な影響を及ぼすおそれがある。

5 審査会の判断

(1) 本件対象文書について

本件対象文書1及び2は、それぞれ狭山警察署、所沢警察署において、平成13年1月から同年8月までの間に執行された捜査費の月ごとの繰越額、受入額、支払額及び残額等の総額が記載された捜査費総括表であり、「前月より繰越額」、「本月受入額」、「本月支払額」、「残額」、「前月末未精算額を本月精算した結果の返納額又は追給額(△)」及び「本月概算交付し翌月に精算した結果の返納額(△)又は追給額」の各欄並びに取扱者(課(署)長)の氏名及び印影からなっている。

なお、捜査費総括表は、各月分の捜査費の支払終了後、取扱者(警察本部においては担当課長等、警察署においては警察署長)が、補助者(警察署においては副署長)に当該月の受入額、支払額等を記載させ、現金出納簿と照合した上で、確認、認印することにより作成される。

(2) 捜査費について

捜査費は、経費の性質上、特に緊急を要し、正規の支出手続を経ては事務に支障を来し、又は秘密を要するため、通常の支出手続きを経ることができない場合に使用できる経費であり、現金で管理することが認められている。

また、その使途は、聞き込み、張込み、追尾等に際し必要となる交通費、飲食費、物品費などの犯罪の捜査等に従事する職員の活動のための経費及び捜査等に関する情報提供者等との接触や謝礼に要する経費であり、その執行手続の概要は、次のとおりである。

  • ア 取扱者が、継続中の捜査の進展状況や今後予想される事案等を踏まえて、翌月の所要額を取扱責任者である警察本部長に申請する。
  • イ 取扱責任者である警察本部長は、県下の犯罪情勢等を総合的に勘案して交付額を決定し、各取扱者に交付する。
  • ウ その後、取扱者は、捜査費の執行の必要が生じた場合に、捜査員に対し捜査費を交付し、捜査員は債主(情報提供者等)に対して所要の支払をした後、取扱者に支払精算書、領収書等を提出して精算を行う。

(3) 条例第10条第3号(公共の安全等に関する情報)該当性について

実施機関は、本件対象文書1及び2で不開示とした本件情報は、条例第10条第3号で規定する不開示情報に該当する旨主張しているので、以下この点について検討する。

  • ア 条例第10条第3号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報とし、これらの情報が記載されている公文書については、公文書開示原則の例外とする旨を規定している。
    本号の趣旨は、地方公共団体の責務として、社会生活の基盤となる公共の安全と秩序を維持し、県民全体の利益を擁護するという観点から、公文書の開示による犯罪の誘発その他の社会的障害の発生を防止することにある。
    本号に該当する情報については、その性質上、開示又は不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるか否か、すなわち相当な理由があるか否かについて審理・判断するのが適当であるとしたものである。
    なお、当該判断については、実施機関の裁量を無制限に認めるものではなく、合理性を持つものとして許容される限度内のものでなければならないのは当然である。
  • イ 実施機関が本件対象文書1及び2で不開示とした本件情報は、当該部署における捜査費の月ごとの繰越額、受入額、支払額及び残額並びに返納または追給が生じた場合にはその総額である。
    不開示とされた本件情報、すなわち、月分捜査費総括表の各欄に記載された金額の推移を見ると、当該部署の実際の捜査活動等の進展状況を反映しており、総体的な捜査状況の活発さをある程度推測することは可能といえる。
    また、仮に被疑者等の事件関係者や犯罪を企図する者が本件情報を入手した場合、報道等により既に公にされている情報やその他の情報と当該情報とを照合・分析することにより、捜査活動の状況が推察される可能性が格段に高まることが考えられる。
    さらに、事件関係者等のみが知り得る特殊な情報等と照合・分析することにより、より正確かつ具体的に捜査等の進展状況を推察することが可能となり、逃走や証拠隠滅等を図るおそれや、犯罪捜査の網をかいくぐって犯罪を敢行するおそれがあるなど、犯罪の予防、捜査に支障を及ぼすおそれが生じることは否定できない。
    万が一にも、このような事態が発生すれば、警察に対する県民の信頼は揺るぎ、結果として県民の生命、身体、財産等の安全に対する脅威が増大し、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすこととなるとする実施機関の主張は、合理性を有するものと認めることができる。
  • ウ 以上のことから、本件情報は、条例第10条第3号で規定する「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」に該当するとして不開示とした実施機関の判断は、妥当である。

よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

審議の経過

年月日

内容

平成14年2月13日

諮問を受ける(諮問第23号)

平成14年8月28日

諮問庁より開示決定等理由説明書を受理

平成14年9月10日

審査請求人より反論書を受理

平成14年12月19日(第19回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成15年6月19日(第25回審査会)

審議

平成15年7月25日(第26回審査会)

審議

平成15年8月26日(第27回審査会)

審議

平成15年10月2日(第28回審査会)

審議

平成15年10月16日

諮問庁に答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成15年10月16日現在)

氏名

現職

備考

礒野 弥生

東京経済大学教授

 

遠藤 順子

弁護士

会長職務代理者

田村 泰俊

明治学院大学教授

 

野村 武司

獨協大学助教授

 

馬橋 隆紀

弁護士

 

(五十音順)

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?