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掲載日:2025年12月18日
Q 田並尚明 議員(民主フォーラム)
近年、SNSや掲示板を通じたネットいじめや差別的書き込みが社会問題化しており、埼玉県においても啓発リーフレットや啓発活動、ネットトラブル注意報など多面的な施策が展開されています。さらに、児童生徒自身が主体的にネット利用ルールを考える活動も進められております。
しかしながら、現状はリーフレットや動画は一過性に終わりがちで、継続的な行動変容につながりにくいなど、啓発効果の持続性の不足、啓発は大人からの注意喚起に偏りがちで、子供自身の主体的な参加が限定的など、子供の主体性の不足、ネットいじめや差別的書き込みは匿名性が高く、学校や地域の監視だけでは把握し切れないなど、匿名性ゆえに発見が困難などの課題が指摘されています。
特に、部落差別に関しては、埼玉県では、埼玉県部落差別の解消の推進に関する条例を制定し、インターネットの利用による情報提供の禁止など様々な取組が行われていますが、インターネット上での差別的な書き込みや誹謗中傷は依然として散見され、被害者の人権を深刻に侵害しています。
匿名性の高いネット空間では、差別的言動が拡散されやすく、被害が長期化、固定化する危険性があります。これは、いじめと同様に隠れた被害として表面化しにくく、啓発活動だけでは十分に防止できないという課題があります。
これらの課題に対して、例えば徳島県では、ネットいじめ・トラブル対応事例集を作成し、教職員研修に組み込むことで、単なる啓発にとどまらず、事例研究を通じて継続的に学べる仕組みを整えています。児童生徒向けには、デジタル教材やワークシートを活用し、繰り返し学習できる環境を提供しています。
また、福岡県では、児童生徒が主体的にネット利用ルールを考える活動を推進するとともに、LINE相談窓口を活用し、子供が自分の言葉で問題を共有できる環境を整えています。差別的な書き込みに関しても、相談対象としています。
さらには三重県では、ネットパトロールを実施し、SNSや掲示板を監視することで、問題のある投稿を早期に把握できる体制を整備しています。差別的書き込みについても監視対象としています。
一方、ネット上の匿名性の高い投稿については、投稿自体を把握できたとしても、対応が難しいという話もあります。
以上を踏まえ、埼玉県においても以下のような施策強化が必要と考えます。
1点目に、ネットいじめや差別的書き込みの防止に関する学習資料やワークシートを活用して、継続的な学習を県内の全公立学校で展開すること。
2点目に、児童生徒がいじめや差別を行わないよう、児童生徒の主体的ルールづくりの取組を県内の全公立学校で展開すること。
3点目に、児童生徒がインターネットを介した見えにくいいじめや差別の被害に遭った際の対応や未然防止のための取組を強化すること。
これらの施策を総合的に進めることで、ネットによるいじめや差別の書き込みの防止に向けた実効性を高め、子供たちが安心して学び生活できる環境を整えることができると考えます。
以上3点について、教育長の御所見をお伺いいたします。
A 日吉亨 教育長
まず、ネットいじめや差別的書き込みの防止に関する学習資料やワークシートを活用して、継続的な学習を県内の全公立学校で展開することが必要についてでございます。
国が令和5年度に実施した調査では、SNSは、高校生の98.8%が利用し、そのうち35.4%が小学生から利用するなど広く普及しており、児童生徒がネットいじめや部落差別を含む差別的書き込みの加害者になる可能性があります。
県では、これまで、教員が児童生徒に対し、このような行為をしてはならないことを適切に指導できるよう、SNSの利用に関する指導のポイントや授業展開例を盛り込んだ、指導資料を作成し、活用を促しております。
他方で、インターネットの適切な利用について、児童生徒が知識として理解するだけでなく、より一層、自らの行動に結び付けていけるよう指導していくことが重要と考えております。
今後は、新たに、発達段階に応じて、被害者の心情を話し合う場面を取り入れた児童生徒向けの学習資料を作成し、全公立学校で継続的に活用することで、ネットいじめや差別的書き込みの防止に取り組んでまいります。
次に、児童生徒がいじめや差別を行わないよう、児童生徒の主体的なルールづくりの取組を県内の全公立学校で展開することが必要についてでございます。
議員がお話しの児童生徒自身が主体的に取り組むことは、インターネット利用への理解を深め、自分事として考える上で有効と考えております。
そのため、県では学校における児童生徒による主体的なネット利用ルールづくりを推進しており、令和7年7月現在、86%の公立小中高等学校で実施されています。
今後は、ルールづくりの参考資料に、学校が活用しやすいよう、誹謗中傷となる書き込みを行わないといった具体的な例を示すなどの工夫をして、ルールづくり活動が、全公立学校で実施されるよう努めてまいります。
次に、児童生徒がインターネットを介した見えにくいいじめや差別の被害に遭った際の対応や未然防止のための取組の強化が必要についてでございます。
本県においても、ネットトラブルにおいて、サイト監視事業を実施し、対策に努めておりますが、SNS上の閉鎖的な空間での書き込みが増えるなど、全てを把握することは難しい状況にあります。
そのため、県のホームページにネット上のいじめや差別など不適切な投稿に関する情報を受け付ける窓口を設置し、情報を受けた際は、学校と連携して投稿の削除や投稿者への指導などの対応を行っております。
今後は、改めてこの窓口を、児童生徒等に広く周知するとともに、情報を受けた際の対応手順を明確にしたマニュアルを作成し、学校と共有するなど、取組を強化してまいります。
また、未然防止に向けて、これまでの講義形式による授業だけではなく、より自分事として考えられるよう他者と協働しながら、児童生徒が主体的に取り組む授業を推進してまいります。
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