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掲載日:2024年3月25日

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答申第127号 「交通切符」の不開示決定(平成20年3月21日)

答申第127号(諮問第142号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成19年6月4日付けで行った、特定日付け・番号の交通切符を埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)の規定は適用されないとして不開示とした決定のうち、「交通切符用行政処分原票」と印字されている面は、「取締り原票」と印字された面とは別に条例の規定が適用されるか否かの判断をすべきであるが、その余の部分の決定は妥当である。

2 審査請求及び審査の経過

(1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成19年5月24日付けで条例第7条の規定に基づき、特定日付け・番号の交通切符の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) これに対して、実施機関は、平成19年6月4日付けで、交通切符中の取締り原票(以下「本件対象文書」という。)を特定し、「開示請求された公文書については、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2に規定する訴訟に関する書類に該当することから、埼玉県情報公開条例第34条により、この条例の規定は適用されないため」という理由を付して、不開示決定を行い、請求人に対し通知した。

(3) 請求人は、埼玉県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、平成19年6月9日付けの審査請求書により、本件対象文書の開示を求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について、平成19年8月8日付けで、諮問庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、本件審査に際し、諮問庁から平成19年9月19日付けで「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成19年10月5日に諮問庁から意見聴取を行った。

(7) 当審査会は、請求人から平成19年10月15日付けの反論書の提出を受けた。

3 請求人の主張の要旨

請求人が主張している内容は、概ね次のとおりである。
今回開示請求を行った公文書は、特定警察署交通課員が公文書たる交通切符に不実記載を行った疑いがあり、また、記載が事実と一致していた場合は特定警察署交通課長代理の職にある警察官が記載内容と異なる発言をした決定的な証拠となりうるものである。
上記の警察官2名が行った行為は、国家公務員であれば国家公務員法第99条違反、地方公務員であれば地方公務員法第29条、30条、33条違反、及び警察職員服務規程違反、刑法第156条違反の疑いがあり、被った損害について国家賠償法による損害賠償請求訴訟を起こすことが可能かどうか、事実の確認を行うために必要な証拠物件であるため、開示を強く求める。
住所と同一都道府県内では控えを受け取ることができ、その記載内容を確認でき、複写も可能な公文書が、住所と異なる都道府県で交通切符を切られたことにより非開示であり、控えを受け取るどころかその記載内容を確認することもできない、という差別を受けている。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 交通切符は、無免許運転、酒気帯び運転、最高速度超過(30km/h以上(高速自動車国道を除く。))等、悪質性又は危険性の高い違反行為を犯した者に対する道路交通法違反事件を迅速に処理するために、地方検察庁検事正からの指示によって定められた共用書式であり、告知票、交通事件原票、取締り原票等の複数枚綴りの複写式で構成される。
本件開示請求に対し、他の都道府県で違反行為が発生し、作成された交通切符の一部であり、運転者の住所地が埼玉県内であるため埼玉県警察に送付された、交通切符中の取締り原票を特定した。道路交通法違反事件で、違反行為の発生場所が当該違反行為発生時における運転者の住所地以外の都道府県である場合、免許の効力の停止及び取消し等行政処分事務については、当該運転者の住所地の都道府県警察に対して当該処分の事案の移送が行われる。その際に送付されるものが交通切符中の取締り原票である。
なお、開示請求を受けた交通切符のうち取締り原票以外の告知票、交通事件原票等は埼玉県警察には送付されていないため保有していない。

(2) 本件対象文書の片面には被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係るものが記載され、別の片面には、免許種別、行政処分に係る項目名等が記載されている。
交通切符を構成するそれぞれの用紙は複写式になっており、共通の記載事項として、交付日時、交付者の所属階級及び氏名、違反者の氏名、生年月日、本籍、住所、免許証番号等並びに違反車両、違反日時、違反場所及び違反事項・罰条等の欄が複写され、記載される。これらの記載事項は被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係るものであり、交通切符の作成は、違反行為の証拠を収集保全する警察活動であり、刑事訴訟法に基づく犯罪捜査活動にほかならない。
刑事事件として作成される交通切符中の交通事件原票は、被疑事件の捜査書類で検察庁に送致されるものであり、刑事訴訟法に規定する訴訟に関する書類に該当するものである。交通切符中の取締り原票は、行政処分・統計資料その他取締り上の参考資料として活用保管するものであるが、その記載内容の主要部分は、交通事件原票と同一の被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係る内容が複写されており、これも訴訟に関する書類に該当するものである。

(3) 刑事訴訟法第53条の2は、訴訟に関する書類及び押収物については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)の規定は適用しないとされている。同条の趣旨は、(1)刑事司法手続きの一環である捜査・公判の過程において作成・取得されるものであるが、捜査・公判に関する国の活動の適正確保は、司法機関である裁判所により図られるべきであること、(2)刑事訴訟法第47条により、公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方、被告事件終結後においては、同法第53条及び刑事確定訴訟記録法により一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど、その取扱い、開示・不開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められていること、(3)これらの書類等は、類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公訴の維持その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることによるものであると解される。情報公開法上の適用除外とされる「訴訟に関する書類」とは、刑事訴訟法第47条の訴訟に関する書類と同一であり、一般に、被疑事件又は被告事件に関して作成された書類であると解されている。手続関係書類であると証拠書類であるとを問わないし、意思表示的文書と報告文書いずれも含まれる。
条例においては、第34条の規定により、「この条例の規定は、刑事訴訟法第53条の2に規定する訴訟に関する書類及び押収物については、適用しない。」こととし、情報公開法と同趣旨に解釈しているところであり、交通切符中の取締り原票は、刑事訴訟法に規定する訴訟に関する書類に該当するものである。

5 審査会の判断

(1)本件対象文書について

  • ア 対象文書特定の適否について
    実施機関は、請求人からの「特定日付け・番号の交通切符」の開示請求に対し、特定日付け・番号の交通切符中の取締り原票を特定している。このため、当審査会はこの対象文書の特定の適否について検討する。
    交通切符とは、警察官が、無免許運転、酒気帯び運転、最高速度超過(30km/h以上(高速自動車国道を除く。))等、悪質性又は危険性の高い道路交通法違反を現認し、又は認知した場合、当該違反事件を処理するために作成する書類である。その書式は、各都道府県の地方検察庁検事正によって定められた複写式の共用書式であり、告知票、交通事件原票、取締り原票等から構成されている。
    道路交通法違反事件においては、道路交通法第103条により、違反行為発生場所が当該違反行為発生時における運転者の住所地以外の都道府県である場合、免許の効力の停止及び取消し等行政処分事務については、当該運転者の住所地の都道府県公安委員会に対して当該処分の事案の移送が行われ、交通切符中の取締り原票が送られる。
    諮問庁の説明によると、本件対象文書の違反行為の発生場所は他の都道府県内であり、運転者の住所地が埼玉県内であるため、他の都道府県において作成された交通切符中の取締り原票のみが埼玉県公安委員会に送付され、交通切符中の取締り原票以外の告知票、交通事件原票等は埼玉県公安委員会には送付されていないため、実施機関はこれを保有していないとのことである。
    審査会が本件対象文書を見分したところ、本件対象文書に記載された違反場所及び違反者の住所は諮問庁の説明のとおりであり、上記の取締り原票の取扱い方を踏まえて検討すると、本件対象文書を特定したことは適当である。
    なお、免許の効力の停止に関する事務については、埼玉県公安委員会から埼玉県警察本部長に委任されている。
  • イ 記載内容について
    本件対象文書を見分したところ、本件対象文書は、両面に記載があり、「取締り原票」と印字されている面と「交通切符用行政処分原票」と印字されている面からなる。「取締り原票」と印字されている面には、交付日時、交付者の所属、階級、氏名、違反者の氏名、性別、生年月日、職業、本籍、住所、免許証番号等並びに違反車両、違反日時、違反場所、違反事項・罰条、違反制度、被疑者の署名等が記載されており複写によるものと認められ、捜査報告日、取締りに当たった警察官の所属、階級、氏名、印影、決裁者の印影が直接記入、押印されている。また、「交通切符用行政処分原票」と印字されている面には、免許種別及び行政処分に係る項目名が印刷されており、取締り現場の状況及び被疑者の弁明が直接記入されている。
    諮問庁の説明によると、「取締り原票」と記載された面の複写による記載については、被疑事件の捜査書類として検察庁に送致された交通切符中の交通事件原票と同一の記載内容であるとのことである。

(2)本件処分について

実施機関は、本件対象文書について、刑事訴訟法第53条の2に規定する訴訟に関する書類に該当することから、条例第34条により、条例の規定は適用されないものであるとして不開示決定しているため、この点について以下検討する。

  • ア 条例第34条(適用除外)の趣旨について
    本条は、刑事訴訟法第53条の2に規定する訴訟に関する書類及び押収物については、公文書の開示とは別の制度にゆだねることが適当であることから、この条例の適用除外としたものである。
    刑事訴訟法の訴訟に関する書類とは、一般的に被疑事件・被告事件に関して作成され、又は取得された書類とされており、刑事訴訟法では原則として、訴訟に関する書類を公判の開廷前には公にしないこと(第47条)、訴訟関係人に対する公判開始前後の訴訟関係書類及び押収物を含む証拠物の閲覧等(第40条、第53条、第180条)が規定され、訴訟終結後の訴訟記録の閲覧についても、刑事確定訴訟記録法(昭和62年法律第64号)により規定されており、その取扱い、開示・不開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められている。
  • イ 本件対象文書の条例第34条該当性について
    実施機関は、本件開示請求に対し、交通切符中の取締り原票を両面一体の一文書として特定し、取締り原票の複写による記載部分が被疑事件の捜査書類として検察庁に送致される交通切符中の交通事件原票とまったく同一の記載内容であることを根拠とし、本件対象文書全体が刑事訴訟法第53条の2に規定する訴訟に関する書類に該当するとし、条例第34条によりこの条例の規定は適用されないとして不開示決定をしている。
    当審査会が本件対象文書の記載内容を確認すると、本件対象文書の表題として一つの面には「取締り原票」と、もう一つの面には「交通切符用行政処分原票」と印字されている。「取締り原票」と印字されている面には、道路交通法違反事件の被疑者の特定、犯罪事実の認定に係る内容及び取締りを行った警察官の氏名等が記載されている。「交通切符用行政処分原票」と印字されている面には、免許種別、行政処分に係る項目名、取締り現場の状況及び被疑者の弁明が記入されている。このように、両面に別々の表題が付けられ、記載内容も異なることから、「取締り原票」と印字された面と「交通切符用行政処分原票」と印字されている面とは別の性質の文書であるといえ、実施機関が本件開示請求に対し特定した本件対象文書の両面は、当審査会は異なる2つの文書と判断する。
    「取締り原票」と印字されている面は、道路交通法違反事件の被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係る内容が複写により記載され、取締りを行った警察官の氏名等については直接記入されている。諮問庁の説明によると、道路交通法違反事件の被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係る記載は複写されているため、被疑事件の捜査書類として検察庁に送致される交通切符中の交通事件原票の記載とまったく同一であるとのことである。これらのことから考えれば、本件対象文書の中の「取締り原票」と印字されている面については、行政処分・統計資料その他取締り上の参考資料として警察で活用保管されるものではあるが、検察庁に送致される書類と密接不可分な記載内容であると認められることから、刑事訴訟法第53条の2に規定する訴訟に関する書類に該当するものであり、条例第34条に基づき、条例の規定が適用されないものに該当する。
    「交通切符用行政処分原票」と印字されている面は、免許種別や行政処分に係る項目名が印刷されており、取締り現場の状況及び被疑者の弁明が直接記入されているものの、実施機関が訴訟に関する書類に該当すると判断した根拠である交通事件原票と同一の被疑者の特定及び犯罪事実の認定に係る内容が複写された記載はないため、検察庁に送致する書類である交通事件原票と密接不可分な記載内容とはいえない。しかし、実施機関は、この面が「取締り原票」と印字されている面と一体の文書であることを前提として、条例第34条に基づき条例が適用されないものに該当すると判断しており、この面を単独の文書として条例の適用の可否については判断しているとは認められない。このため、この面については、あらためて、条例の規定が適用されないものか否か判断すべきである。
    なお、請求人は、「住所と同一都道府県内では控えを受け取ることができ、その記載内容を確認でき、複写も可能な公文書が、住所と異なる都道府県で交通切符を切られたことにより非開示であり、控えを受け取るどころかその記載内容を確認することもできない、という差別を受けている。」と主張するが、これは免許証交付手続が都道府県ごとに行われることから、免許証返還手続きの運用に差異が生じているに過ぎないのであり、このことをもって条例第34条の解釈に影響を与えるものではない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)

飯塚英明、加々美光子、松村雅生

審議の経過

年月日

内容

平成19年8月8日

諮問を受ける(諮問第142号)

平成19年9月19日

諮問庁から開示決定等理由説明書を受理

平成19年10月5日

諮問庁から意見聴取及び審議(第一部会第26回審査会)

平成19年10月16日

審査請求人から反論書を受理

平成19年11月5日

審議(第一部会第27回審査会)

平成19年11月26日

審議(第一部会第28回審査会)

平成20年1月8日

審議(第一部会第29回審査会)

平成20年2月8日

審議(第一部会第30回審査会)

平成20年3月7日

審議(第一部会第31回審査会)

平成20年3月21日

答申(答申第127号)

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