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掲載日:2024年3月26日

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答申第125号 「医師賠償責任保険事故・紛争通知書(平成18年3月24日起案)」の部分開示決定(平成20年3月7日)

答申第125号(諮問第146号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県病院事業管理者(以下「実施機関」という。)が、平成19年5月31日付けで行った部分開示決定のうち、異議申立人が開示すべきと主張する部分を不開示としたことは、妥当である。

2 異議申立て及び審査の経過

(1)異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成19年5月1日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「過去2年間(平成16年から17年度)における、病院局管轄病院における、「医師賠償責任保険事故・紛争報告書について」」の開示請求を行った。

(2)これに対して、実施機関は、本件開示請求に対する公文書として「医師賠償責任保険事故・紛争通知書について(平成18年3月24日起案)」(以下「本件対象文書」という。)を特定した上で、平成19年5月31日付けで公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、申立人に通知した。

(3)申立人は、実施機関に対し、平成19年7月30日付けの異議申立書により、部分開示決定を不服とする異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

(4)当審査会は、本件異議申立てについて、平成19年9月7日付けで、実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5)当審査会は、本件審査に際し、実施機関から平成19年10月1日に「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を受けた。

(6)当審査会は、平成19年10月23日に申立人から「反論書」の提出を受けた。

(7)当審査会は、平成19年11月13日に実施機関から意見聴取を行った。

3 申立人の主張の要旨

申立人が主張している内容は、概ね次のとおりである。
本件処分のうち、公文書部分開示決定通知書の「開示しない情報及びその理由」の「別紙」に関する部分を一部取消す、との決定を求める。
県の運営する医療機関が健全で透明性の高い経営、運営が行われるような責務を果たしているかどうかを確認することは、条例第10条第1号ただし書ロに言うような「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため」に必要なことであり、よって、これら別紙で「開示しない情報」とされたうちの少なからざる部分が「公にすることが必要であると認められる情報」である。
患者の年齢は不要だが、少なくとも年齢層(例:30代、等)にとどめる開示を行った上で、紛争に関する医療行為がどのようなものであったか、その結果、事故の状況はどのようなものであったか、それについて患者はどう認識し、医療機関側とどのような折衝を行った結果、本件紛争報告書のような結果になったのか、については、個人の特定もなく、また個人の権利利益も何ら侵害することなく開示が可能なはずである。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が主張している内容は、概ね次のとおりである。
医師賠償責任保険事故・紛争通知書の中には、医師賠償責任保険で個々の事案に適切に対応するため、事案の発生日や傷病名、症状と処置、経過など、診療内容の具体的な内容が詳細に記載されている。本件情報が一部でも公開されれば、情報公開制度が公開の利用目的が特定されないものである以上、情報が社会を伝播し、様々な人に伝わる可能性がある。また、患者本人の事情を知りうる人物が本件情報に接すれば、特定の個人の情報であると推認でき、個人が特定できる可能性は否定できない。患者本人としては、自分が病院で経験した診療中の事実関係等が第三者に公開されるなど全く予想していない。患者本人のあずかり知らないところで、みだりに診療情報が第三者に公開されることとなれば、患者本人は著しい精神的苦痛を受け、権利利益を侵害されることは容易に予想されるものであり、開示しない情報については、条例第10条第1号に該当する。
なお、本件事例においては、情報公開条例第10条第1号ただし書ロに該当するような特定の個人の権利利益を犠牲にしてまでも人の生命、健康、生活又は財産を保護するために開示すべき事実は見当たらない。

5 審査会の判断

(1)本件対象文書について

本件対象文書は、埼玉県立循環器・呼吸器病センターから損害保険会社に通知した医師賠償責任保険事故・紛争通知書の起案文書である。
埼玉県病院局の各病院は、病院内における医療活動の中で、患者に関する不測の事故や紛争が発生した場合のために、損害保険会社の病院賠償責任保険に加入している。この保険契約では、病院は個々の事案が発生したときには、遅滞なく書面で保険会社に通知することとなっており、この通知に使用されるものが医師賠償責任保険事故・紛争通知書である。
本件対象文書には、病院名、患者の住所・氏名、事故発生の日時・場所、事故の状況等が記載されている。

(2)本件処分について

実施機関は、本件対象文書の中の「医師賠償責任保険事故・紛争通知書1ページ目のうち、患者の住所・氏名・性別・生年月日・年齢・職業・医療費支払いの種類、紛争に関する医療行為をした日、紛争になることを認識した日およびその理由、事故に関与した医療従事者の氏名・診療科・職種コード」及び「医師賠償責任保険事故・紛争通知書の2ページ目から6ページ目」については条例第10条第1号に該当し「回議・合議書のうち、不服の想定内容」については条例第10条第5号に該当するとして、それぞれ不開示とし、病院名、病院長名及び報告日等その余の部分を開示とする本件処分を行った。

(3)本件異議申立について

これに対し、本件処分について申立人は異議申立書において、患者の年齢層、紛争に関する医療行為の内容及び折衝の結果等を個人の特定や個人の権利利益を侵害することなく開示が可能である旨主張し、開示しない情報及びその理由の別紙に関する部分を一部取消す、との決定を求めている。このことから、申立人は本件処分の開示しない情報のうち、条例第10条第1号に該当することを理由として不開示としている情報について異議を申し立てていると判断されるため、当審査会では条例第10条第5号該当部分を除き以下検討する。

(4)条例第10条第1号の該当性について

  • ア 条例第10条第1号本文の該当性について
    • (ア)条例第10条第1号本文は「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」を不開示情報としている。
    • (イ)実施機関が不開示とした医師賠償責任保険事故・紛争通知書1ページ目のうち「患者の住所・氏名・性別・生年月日・年齢・職業・医療費支払いの種類」は、患者の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり条例第10条第1号本文に該当することが認められる。
    • (ウ)実施機関が不開示とした医師賠償責任保険事故・紛争通知書1ページ目のうち「紛争に関する医療行為をした日」及び「紛争になることを認識した日およびその理由」欄には、当該病院が当該医療行為を行った日時、当該病院が当該事案発生後の事実関係の経過の状況から紛争になる可能性があると認識した日及びそのように認識した理由を記載している。これらは、患者が医療行為を受けた日時、患者の症状等とその行為があった年月日の情報であり、いずれも患者の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり条例第10条第1号本文に該当することが認められる。
    • (エ)実施機関が不開示とした医師賠償責任保険事故・紛争通知書1ページ目のうち「(事故に関与した医療従事者の)氏名・診療科・職種コード」は、医療従事者の個人に関する情報であり、医療従事者個人を識別することができる情報である。また、これら医療従事者の氏名、診療科等の情報を公にすると、患者を担当している医療従事者が特定され、患者の受診科が特定されることとなる。本件対象文書の事案は埼玉県立の特定の診療科目に特化した病院という限られた範囲の患者の事案であり、すでに病院名や保険会社への報告日等を開示していることから、これらの医療従事者に関する情報と、他の情報とを照合することにより、患者個人を識別することができる情報でもある。これらのことから、当該医療従事者に関する情報は、患者個人に関する情報でもあり、特定の個人を識別することができる情報であることから、条例第10条第1号本文に該当することが認められる。
    • (オ)実施機関が不開示とした医師賠償責任保険事故・紛争通知書の「2ページ目から6ページ目」には、患者の初診時の状況、初診時より身体障害発生までの経過、身体障害発生の状況とその原因、身体障害発生後の医療上の処置、患者の転帰、解剖、患者側のクレーム内容及び患者のクレームに対する反論・見解が記載されている。これらの情報は患者個人を識別することができる情報が含まれており、特定の個人を識別することができる情報であることから、条例第10条第1号本文に該当することが認められる。
      なお、識別することができる情報とそれ以外の情報を除くことは容易ではなく、たとえ除いたとしても、患者個人の生命、身体、健康に直接関わる患者個人に関する機微な情報であり、これを公にすることは患者の権利利益を害するおそれがあると認められる。
  • イ 条例第10条第1号ただし書の該当性について
    • (ア)条例第10条第1号は、個人に関する情報を不開示情報としているが、「ただし、次に掲げる情報は除く」としている。
      同号ただし書イについては、「法令若しくは他の条例により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」である。
      同号ただし書ロについては、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」である。
      同号ただし書ハについては、「当該個人が公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」である。
    • (イ)条例第10条第1号ただし書イの該当性について検討すると、本件対象文書の不開示部分は、上記(4)エのとおり、医療従事者に係る情報を含めて患者の個人に関する情報であり、法令若しくは他の条例により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。
    • (ウ)条例第10条第1号ただし書ロの該当性について検討すると、実施機関の説明によると、医師賠償責任保険事故・紛争通知書は、被保険者である病院が病院側の過失による事故と認定した場合だけではなく、患者側から苦情があり紛争となることが予測される場合にも速やかに作成し通知しているとのことである。このような文書の性質にかんがみれば、本件対象文書の不開示となっている患者の個人に関する情報は、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であるとは認められないことから、ただし書ロに該当しない。
    • (エ)条例第10条第1号ただし書ハの該当性について検討すると、本件対象文書の不開示部分は、上記(4)エのとおり、医療従事者に係る情報を含めて患者の個人に関する情報であることから、その該当性は認められない。

上記のとおり、本件対象文書の不開示部分は、条例第10条第1号に該当することが認められる。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、白鳥敏男、渡辺咲子

審議の経過

年月日

内容

平成19年9月7日

諮問を受ける(諮問第146号)

平成19年9月13日

審議(第二部会第28回審査会)

平成19年10月1日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成19年10月23日

申立人から反論書を受理

平成19年11月13日

実施機関から意見聴取及び審議(第二部会第30回審査会)

平成19年12月11日

審議(第二部会第31回審査会)

平成20年1月22日

審議(第二部会第32回審査会)

平成20年2月19日

審議(第二部会第33回審査会)

平成20年3月7日

答申(答申第125号)

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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