トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成19年度情報公開審査会答申 > 答申第114号 「埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第1次試験実施要項(課題討論の部)」の不開示決定(平成19年6月20日)
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掲載日:2024年3月26日
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答申第114号(諮問第126号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成18年8月31日付けで不開示決定した「埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第1次試験実施要項(課題討論の部)」については、次の部分を除き開示すべきである。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 異議申立人は、平成18年8月18日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「2006年6月28日(水曜日)に行われた「教員採用選考事前研修会」の会議録ならびに資料全部」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。
(2) 実施機関は、本件開示請求に対し、「埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第1次試験実施要項(課題討論の部)」(以下「本件文書」という。)についての不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、平成18年8月31日付けでその旨を異議申立人に通知した。
(3) 異議申立人は、平成18年9月21日付けで、実施機関に対し本件処分の処分理由が納得できない、情報公開の適正な取扱いを求めるとして、本件文書の開示を求める異議申立てを行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成18年10月20日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、実施機関から平成18年11月10日付けで開示決定等理由説明書の提出及び平成19年3月12日付けで補充の理由説明書の提出を、並びに異議申立人から平成18年12月8日付けで反論書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成18年12月15日及び平成19年2月20日に、実施機関からの説明を聴取した。
(7) 当審査会は、平成19年1月19日に、異議申立人からの口頭による意見陳述を聴取し、同日異議申立人から資料の提供を受けた。
3 異議申立人の主張の要旨
異議申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 「開示しない理由」の「・・・この資料を公にすることで、受験者の人間性をありのままに見取り、教員にふさわしい人物かどうかを見極めようとする面接試験(課題討論)のねらいや意図が果たせなくなる。また、この試験方法は今後も同様の方法が実施されることから、適正で公正・公平な採用事務の執行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するため。」とする理由は、納得できない。開示を求める。
(2) 理由1:この「開示しない理由」の「おそれ」は、きわめて一般的で抽象的な説明である。
上記(1)のような一般的な理由のみで不開示決定が出されるとするならば、県民の情報開示権はなきに等しいものとなる。当該情報が公開されることによって、どのような支障がきたすのか、具体的かつ明白な説明でなければ「不開示」の根拠にならない。
既に「平成19年度教員採用選考第1次試験 課題討論」のテーマは開示されている。受験者は通常この「テーマ」に対してどのように解答すべきか腐心するのであって、このための対策を考える。これはもう既に実施機関の情報公開によって実施機関自らが試験対策をできるようにしている。したがって、このテーマに基づきより良く答えることは、試験員の側にたって自分を表現しようとするのは当然であり、実施機関も対策が講じることも含めてこのテーマを公開したものであると考えられる。
さらに平成18年度の「実施要項」によれば「3観察の方法」で「(1)課題に正対しているか。(2)他の人の考えに左右されず、自分の考えを述べることができるか。(3)論理が明確で、整合性がとれているか。(4)教育観、教育に対する姿勢に見るべきものはあるか。」というものであり、一般的に課題討論を提起する際に押さえられるべき項目ばかりである。このことが公開されたからといって単純に「真に知りたい受験者の姿が見えず、適正な評価をすることができなくなる。」とは言えない。何故ならば、この程度の項目であるならば市販の問題集等でも明らかになっているからである。したがって、この理由は、とても納得できるものではない。
また、理由説明書では、「当該実施要項を開示した場合、当該実施要項を手に入れた者とそうでない者とが存在し、不公平感を抱かせるとともに、不信感を持たせる原因となり、」と述べているが、これは残念ながら、情報公開の基本的な知識が欠落しているとしか考えられない。もし文書公開をして実施機関が不公平感、不信感を持たせると感じるならば、そのようにならないように、現在情報開示している試験問題と同様に情報センター等で常時公開すればよいのである。
このような理由でもって文書公開をしない理由にしているところに教員採用選考事業が、真に「県民の信頼に足る公正・公平な試験の実施」がされているだろうかという疑義を感じざるを得ない。
(3) 理由2:文書開示の整合性がない。
実施機関は、今まで教員採用試験に関して「平成18年度埼玉県公立小・中学校等教員採用選考試験第1次方針」等を全面的に公開してきた。本件文書のみ「不開示」にまったく整合性が見られない。また、平成17年1月には「公立小・中学校等教員採用選考試験第2次試験実施要項(論文試験、面接試験、実技試験)」が開示決定している。何故に本件文書のみが不開示なのか理解に苦しむ。
理由説明書では、「平成19年度教員採用試験(18年度実施)実施にあたり、要項を新たに作成したものである。」と述べている。しかし、異議申立人が手に入れた「平成18年度第1次試験実施要項(課題討論の部)」も平成18年度に「新たに作成したもの」であり、毎年この要項は新たに作成されているのであるから、今年、開示しない整合性がないことは明らかである。
(4) 理由3:他県の動向
近年、全国的に情報公開・開示が進んでいる。教員採用試験の内容、手順、方針等にかかわる資料については、基本的にすべて開示しているのが愛知県であり、その他の県でも情報公開が進んでいる。本県においても同様な対応がされていたので、今後も他県の動向と足並みを揃えるべきである。
理由説明書では、「当該実施要項は、・・・受験者等へ公開することを想定して作成したものではない。」と述べている。また「愛知県に確認したところ、現時点では、面接試験員研修会の資料として活用するような実施要項は開示していないとのことである。」と述べている。
この理由は、意味不明である。異議申立人が求めているのは、所謂「公開用」のものではなく、真に「県民の信頼に足る公正・公平な試験の実施」の実際の実施要項を知りたいのである。「公開用」の新たな実施要項の作成を求めているのではない。
また、愛知県で異議申立人が調べたところによると「面接試験員研修会の資料として活用するような実施要項は開示していない。」のではなく、「ない(不存在)」ということであり、「試験に関するすべての実施要項は開示している。」とのことであった。したがって、実施機関の理由説明書は、事実誤認か、意図的に「文書不存在」を「開示していない。」と記述したものと考えられる。
(5) 理由4:採用選考試験受験者の開示請求権に背くものである。
異議申立人は、埼玉県の教育がより民主的に行われ、健全で健やかな子どもたちの成長を願う県民の一人である。そして、そのより良い教育が行われるためには、教員採用選考試験というのは極めて大切な事業と考える。その教員採用選考試験が県民に開かれたものとして公開されることが、埼玉県が目指すべき教育を多くの県民、採用試験受験者が理解をし、推進していく土台となるものと考える。
しかし、こうした思いで行った開示請求に対して、実施機関は上記のように「不開示」とした。その処分は、本県教員採用選考試験の「選考」に関する情報を正確に知りたいという県民の開示請求権に背くものであり、また、その情報によって、本県の学校教育に寄与できる教員になりたいと思っている受験者の願い(県民参加)に背くものである。
この実施要項が公開されたからといって、「人物を見極め、選考するという機能を低下させる」とは考えられない。なぜなら多くの面接等の試験においてその方法なり観点が明らかにされて行われていたり、他の県においてもなんら問題なく採用選考が行われている実態を鑑みれば、基本的にその根拠となりえない。
さらに県民の立場からすれば、現在のような教師の不祥事が続発し、さらにいじめ自殺などに見られる昨今の状況は、まさにどういう教師を埼玉県が採用するのかが鋭く問われる時代と思われる。それゆえに実施機関は、県民誰もが納得できるような採用選考を実施する責任を有している。その前提になるのが教員採用試験を開かれたものにすることである。したがって実施機関のいう「教員採用試験を開かれたものにする」ため、従前どおり、この「実施要項」の開示を求める。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 教員採用選考試験は、教員としての職務遂行能力を総合的に判断するために多様な種類の試験等を実施するものである。また、公教育に携わる公務員としての教員を採用するための教員採用選考試験は、あらゆる試験内容や場面において県民の信頼に足る公正・公平な試験の実施が前提となる。
(2) 面接試験は、試験員と受験者がお互いに直接的に触れ合うことを通して、教員としてふさわしい優れた人物を総合的に評価し、選考することをねらいとしている。
本件文書は、試験員が面接試験(課題討論)を実施するための要項である。これを公開することは、面接試験(課題討論)の実施方法、観察の方法、評定及び判定等が明らかになり、受験者がその情報を得て面接試験(課題討論)に臨むことで、受験者が教員としてふさわしい優れた人物かどうかを試験員が観察・判定することが困難になる。
そこで、試験事務の執行に支障を及ぼすおそれがあるため、本件文書を不開示としたものである。
(3) 異議申立人の主張「この「開示しない理由」の「おそれ」は、きわめて一般的で抽象的な説明である。」について
採用事務は、人事管理の根本である。一旦採用されれば、埼玉県教員(教育公務員)として身分が保障される。試験員研修会の資料である面接試験(課題討論)の実施方法、観察の方法、評定及び判定等が記載されている本件文書を公開すれば、受験者は「自分を表現すること」より、試験員の側に立ち、自分をつくって表現することに力を注ぐことになる。教員採用選考試験要項に「選考の基本方針」として示している豊かな人間性、教員としての使命感等を、面接試験(課題討論)のやり取りの機微の中で見取りにくくしてしまう。選考する側にとっては、真に知りたい受験者の姿が見えず、適正な評価をすることができなくなる。
また、本件文書を開示した場合、本件文書を手に入れた者とそうでない者とが存在し、不公平感を抱かせるとともに、不信感を持たせる原因となり、適正で公正・公平な採用事務が保障されなくなる。
以上の理由は、「知る権利」に一定の制限を加えている条例第10条第5号ニに該当するものと考える。
(4) 異議申立人の主張「文書開示の整合性がない。」について
本件文書は、平成19年度教員採用試験(18年度実施)実施に当たり、要項を新たに作成したものである。それをそのまま試験員研修会の資料として使用したものである。
従って、異議申立人の「文書開示の整合性がない」との主張は、その前提を欠くものであって、理由がない。
(5) 異議申立人の主張「他県の動向」について
本件文書は、試験員が面接試験(課題討論)を実施する上で必要な内容を記載したものであり、受験者等へ公開することを想定して作成したものではない。上記(3)で記載した理由から条例第10条第5号ニに該当するものと考える。
なお、愛知県に確認したところ、現時点では、面接試験員研修会の資料として活用するような実施要項は開示していないとのことである。
(6) 異議申立人の主張「採用選考試験受験者の開示請求権に背くものである。」について
教員採用試験において、選考に当たって重視する視点を公表し、「求める教師像」を明確にすることは重要であると考えている。そこで、教員採用選考試験要項に求める教師像や選考の基本方針を掲載するとともに、教員募集パンフレット「埼玉県公立学校教員採用案内」を作成し、求める教師像をより具体的に示している。また、教員採用試験説明会を開催して、直接、受験者に説明している。これらは、教員採用試験を開かれたものにすると共に、本県の学校教育に寄与したいと願い教員採用試験を志願する者への情報提供である。
しかし、試験員研修会の資料である本件文書を開示し、面接試験(課題討論)の手順や観察の方法、評定及び判定等を公開することは、面接試験(課題討論)によって人物を見極め、選考するという機能を低下させ、結果として、面接試験(課題討論)の目的が果たせなくなる。選考試験である以上、受験者に公開できるものとできないものとが存在するのは、採用事務を遂行する上で当然である。これは、県民の付託に応え、教員としての資質のより高い人材を確保しようとする教員採用選考試験を適性に運営しようとするものであり、受験者の開示請求権に背くものではなく、また県民の願いに反するものではない。
5 審査会の判断
(1) 本件文書について
本件文書は、実施機関が平成18年度に作成し、埼玉県公立小・中学校等教員採用選考第1次試験のうち面接試験である「課題討論の部」の試験員に対する研修会で配布した資料である。
当審査会で見分したところ本件文書は、「1 面接試験のねらい」及び「2 課題討論」の2部で構成され、更に「2 課題討論」は、ねらい、実施方法、観察の方法、評定及び判定、課題討論試験員行動表、評定票及び判定表の各項目で構成されている。表紙には「部外秘」、「試験員用」、「試験終了後必ずお返しください」等の記載のあることが認められる。
なお、本件文書と同じ名称で平成17年度に実施機関が作成した公文書(以下「同種文書」という。)には本件文書と同じ種類の情報が記載されているが、「部外秘」、「試験員用」、「試験終了後必ずお返しください」等の記載がなく、また、当該公文書の開示請求に対しその全部を開示し、不開示とした情報はない事実が認められる。
(2) 条例第10条第5号該当性について
条例第10条第5号は、県の機関等が行う事務又は事業の適正な遂行を確保するために不開示とする情報について次のように定める。
「県、国若しくは他の地方公共団体(以下この号において「県等」という。)の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの。」
上記引用中の「次に掲げるおそれ」としてイからホまでに掲げられた「おそれ」は、いずれも典型的な例示とされている。
実施機関が条例第10条第5号に該当するとして本件文書を不開示とする本件処分を行ったことから、当審査会は本件文書について条例第10条第5号該当性を検討する。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
加々美光子、城口美恵子、山口道昭
年月日 |
内容 |
---|---|
平成18年10月20日 |
諮問を受ける(諮問第126号) |
平成18年11月10日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成18年11月14日 |
審議(第三部会第20回審査会) |
平成18年12月8日 |
異議申立人から反論書を受理 |
平成18年12月15日 |
実施機関からの説明及び審議(第三部会第21回審査会) |
平成19年1月19日 |
異議申立人の口頭意見陳述及び審議(第三部会第22回審査会) |
平成19年2月20日 |
実施機関からの説明及び審議(第三部会第23回審査会) |
平成19年3月12日 |
実施機関から補充の理由説明書を受理 |
平成19年3月20日 |
審議(第三部会第24回審査会) |
平成19年4月20日 |
審議(第三部会第25回審査会) |
平成19年5月17日 |
審議(第三部会第26回審査会) |
平成19年6月20日 |
答申(答申第114号) |
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