埼玉農産物ポータルサイト SAITAMAわっしょい! > 知る > プロが惚れた 埼玉食材 > Vol.12 深谷ねぎ
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掲載日:2026年1月30日
焦げ焦げの、熱々 じゅわっと甘い一本焼き。品種と産地への愛情たっぷり

直火で真っ黒に焼いたねぎが根を付けたまま丸ごと1本、ドーンと。
「スペイン料理のカルソッツです。3種類のソースでどうぞ」
深谷市にあるイタリア家庭料理「パンチャ・ピエーナ」のオーナーシェフ、栗原統さんが豪快な一品を披露してくれました。

カルソッツは、焦げたねぎの外皮をむいていただきます。
熱々のねぎにかぶりつくと、凝縮されたうまみがじゅわっと溢れ出ます。
甘く、柔らかい。とにかくおいしい。
地元のねぎ農家で昔から食べられている定番の「ねぎ焼き」にそっくりなことから、おしゃれに「深谷カルソッツ」と名付けました。
今では地元で広く知られるようになりましたが、以前は「泥ねぎ一本焼き」と説明を添えていたそうです。
調理方法がシンプルだからこそ、品種ごとの個性が楽しめます。
「〝深谷ねぎ〟は産地のブランド名で、品種は様々あります。それぞれに異なる味わいを、ぜひ体験してほしい」
と栗原さん。
店内には「今日の深谷ねぎ」と書かれた看板があり、品種と産地が表示されています。
この日の産地は人見、岡部、血洗島。かつて市内にあった村の名前です。
品種は「龍翔(りゅうしょう)」「ホワイトスター」「農研2号」。
おすすめを尋ねると
「どれもおいしいけれど、一押しは農研2号。何しろ『幻のねぎ』ですから」
農研2号は、少数の生産者によって代々守り継がれている品種で、繊維が柔らかく甘みの余韻が続くのが特徴です。
しかし、収量が少なく、病気に弱い。また、太さが揃いにくいこともあり、しだいに生産量が減っていきました。
今は、この品種を守り続けるねぎ農家が種の採取から行い、大切に栽培しています。
「市場で好まれるのは、まっすぐで太くて見栄えが良いねぎ。でも、おいしさは見た目だけじゃ分からない。陽が当たらないものを応援したくなるのは、私の性分。地産地消をうたう料理人として、生産者や地元農産物の紹介者でありたいと思っています」
と栗原さんは話します。


農研2号を購入できる場所は、市内にある埼玉産直センターなどに限られ、入手が難しいという意味でも「幻のねぎ」です。
農研2号で作った「ねぎのポタージュ」もいただきました。
ねぎの香りがしっかりあって、特有の甘味が後を引く魅惑の味わいです。
「調理すると手がべとつくほど糖度が高い。口に広がる甘味の余韻を楽しんでください」
「深谷ねぎに幸せにしてもらっている」
という栗原さん。
ねぎ愛を語り始めたら「3時間はいける」とか。
熱い物語をソースに、ねぎの甘味を是非味わってください!

店舗名:イタリア家庭料理 パンチャ・ピエーナ
所在地:深谷市宿根78-1
営業時間:ランチ 11時30分~15時(土日のみ)、ディナー 18時~23時
定休日:月曜日
白さが際立つきめ細かい繊維。強い甘味が生きる、手間をかけたおいしさ

ランチもディナーも、提供するのはコースのみ。
でも、メニューに料理名はなく、食材の記載があるだけです。
「葱(ねぎ)×鴨油(かもあぶら)」。
さて、深谷ねぎはどんな料理になるのでしょう。
さいたま市にあるRESTAURANT SALTのシェフ・井上憲さんは、ジャンルにとらわれず独創的な料理を生み出すことで知られる料理家、成澤由浩氏の下で学びました。
食欲もさることながら、あれこれと料理の想像が膨らみます。

井上さんは深谷ねぎの特徴を
「繊維のきめが細かく、白い部分が多くて、甘みが強い」
と話します。
「葱×鴨油」は、日本人が好むねぎとカモの相性に着想を得た一品。
カモの脂身などで作った自家製の油にショウガを加え、ねぎと一緒に真空パックして蒸します。
蒸しあがったトロトロのねぎから油を落とし、炭火で焼いて仕上げます。
フランスの「コンフィ」(低温加熱)とスペインの「カルソッツ」(直火焼き)を融合した料理です。
目を引くのは、器に散らした漆黒の粉末。
塩水に一晩漬けたねぎをカラカラに炭化させて粉砕し、さらに丁寧にこしたものです。色の対比がねぎの白を際立たせ、繊細な苦味と塩味がねぎの甘味を引き立てます。
店名の「SALT」は塩、世界共通の調味料です。
「世界の料理の要素を集めて、自分の感覚を信じて壊したり、つなぎ合わせたりして料理の新しい形を生み出したいと思っています」。
井上さんの料理は、イノベーティブ・フュージョンといわれることもあります。
また、店名は「Soul And Local Treasure」の頭文字でもあります。
「ローカルトレジャーとは、地元産の食材です。深谷ねぎは、埼玉を代表する食材の一つ。しかも、ねぎを中心にした料理を提供する店は少ない印象があったので、特徴を出せるとも考えました」
2カ月ごとにメニューを見直しますが、この料理は不動の定番です。
「ねぎをくたくたに調理するので、見栄えを考慮してなるべく巻が多く太いものを選びます」
冬は深谷ねぎ、それ以外の季節も県内産の旬のねぎを厳選しています。
こんなに手の込んだ料理を家庭で作るのは、難しい。
そこで手軽にできる料理を恐る恐る尋ねると、笑顔で教えてくれました。
「ぶつ切りにしたねぎをチキンブイヨンなどでくたくたに炊くエチュベ(鍋にフタをして、少量の水分と油で蒸す調理方法)はいかがですか。水分はわずかで大丈夫、ねぎの水分で蒸し煮にするイメージです。酸味のあるヴィネグレット(フレンチドレッシング)で食べるとおいしいです」
なるほど、これなら家庭でも楽しめそうですね!
今回の取材のために、メニューにはない「葱×鶉(うずら)」を特別に試食させてくれました。
香ばしく焼いた深谷ねぎの甘さと、うずらのモモ肉の濃厚な旨味が重なり、ゆずこしょうの香りがふわりと広がる。
思わず「美味しい」と声が出る、それぞれの食材の魅力が際立つ一皿でした。


店舗名:RESTAURANT SALT(レストラン ソルト)
所在地:さいたま市浦和区高砂4-4-19TAC高砂1F
営業時間:ランチ 11時30分~14時30分、ディナー18時~22時
定休日:水曜日
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