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掲載日:2026年7月10日
Q 保谷武 議員(自民)
私は、これまで多くの公立図書館の在り方について強い違和感を持ってきました。それは、図書館のKPIが貸出し冊数や来館者数といった量的指標に偏りがちであることです。その結果として、貸出し冊数を手っ取り早く増やすために、直木賞受賞作や人気作家の小説など売れ筋の本ばかりを大量にそろえる、あるいは売れ筋の雑誌を並べ、居心地の良い席を多数用意して来館者数を稼ぐ、そのような方向に流れがちです。
しかし、公立図書館は民間書店やカフェの代替施設ではありません。その本質的な存在意義は、単なる本、雑誌のアーカイブやエンタメ空間、勉強場所、スタバのようなサードプレイスの提供によるにぎわい創出、まちおこしではなかったはずです。やってはいけないとは言いませんが、補完的な役割にとどめるべきです。
また、売れ筋の本を大量にそろえることは、出版業界や書籍小売業界の事業を不当に圧迫し、出版文化を損なうことにもつながります。公立図書館は、むしろ出版文化を支え、後押しする存在であるべきです。
人類が積み重ねてきた知的資産を検索可能、閲覧可能、機械可読、そして二次利用可能な形で提供し、県民の学び、研究、創造を支える知の土台であるべきです。生成AI、AIエージェントの社会実装が進む中で、紙ベースの資料を保管し貸し出すだけではなく、資料をデジタルデータとして整備し、機械可読な形で提供することの重要性が増してまいりました。これにより利用者は、AIを通じた調査研究に活用できるようになります。もちろん、著作権の保護期間が満了していない資料については、著作権が守られるべきであることは言うまでもありません。
私は、新県立図書館が取り組むべき課題は、県内に蓄積されてきた幅広い古文書、郷土資料、地域資料といった知的資産を県民共有の財産としてデジタル化し、検索可能にし、機械可読にし、AIを通じて利用可能にし、次世代へ引き継ぐことだと考えます。
具体的には、著作権の保護期間が満了した資料や権利関係が整理された資料から、順次画像データ化を進めます。次に、OCRや翻刻によるテキストデータ化、資料名、年代、地域、作成者、内容分類などのメタデータ付与を行います。また、デジタル化した資料を図書館業界内部の検索システムだけに閉じ込めるのではなく、一般の検索エンジンやAIから検索、参照して機械処理が可能な形で公開していくべきです。
もちろん、古文書や郷土資料のOCR、翻刻、現代語訳には、現時点では御認識や誤訳もあります。しかし、完全な精度が確保されるまで公開しないという無謬主義では、知的資産の活用は進みません。誰もが誤りがあり得ることを明示し、原資料画像を正本として示した上で、積極的に公開していくべきです。その上で、利用者や研究者の知見も取り入れながら精度を高めていく発想が必要です。
さらに、県内には埼玉県立文書館、市町村立図書館、郷土資料館、公民館など、それぞれの地域に眠る貴重な紙ベースの古い資料が数多くあります。新県立図書館は、県立図書館自身の資料をデジタル化するだけではなく、県内に所蔵された紙ベースの知的資産全体を視野に入れ、デジタル化の標準仕様、メタデータの付け方、著作権確認、公開方法、AI活用などのルール、手順づくり、作業方法について技術的、制度的に支援し、県内全体の知的資産DXをリードすべきです。
そこで、教育長に伺います。
新県立図書館において、以上述べたような県内知的資産DXの推進を行う考えはありますでしょうか。
A 石川薫 教育長
県では、令和8年5月に新埼玉県立図書館基本計画を策定し、来館しなくても県民誰もがサービスを享受できる県立図書館の実現に向けて、埼玉ゆかりの地域資料のデジタル化等に取り組んでおります。
具体的には、地域資料を順次画像データ化するとともに、資料名や作成者などのデータを追加して、県立図書館のホームページで公開しております。
議員御提案の、資料をテキストデータ化し、生成AIを活用した検索などに対応することは、県民の利便性向上に有効であると考えますので、まずはその前提となる地域資料の画像データ化を進めてまいります。
また、資料のテキストデータ化などに当たっては、県立図書館が公開する情報としてどの程度の精度であれば適切か、研究してまいります。
県としましては、デジタル技術の進歩や著作権に留意しつつ、県立図書館が所蔵する資料のデジタルデータ化を推進するとともに、蓄積したノウハウを市町村等に普及させ、県内の地域資料等の知的資産を利用しやすい環境の整備に努めてまいります。