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掲載日:2024年4月2日

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答申第141号 「事務引継ぎについて・事務引継書(平成20年4月1日、県土整備総務課主幹」の部分開示決定(平成21年3月10日)

答申第141号(諮問第166号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成20年6月16日付けで行った、「事務引継について・事務引継書(平成20年4月1日、引継者 前県土整備総務課主幹 ○○○○、引受者 県土整備総務課主幹 ○○○○)」(以下「本件対象文書」という。)を部分開示とする決定は、妥当である。

2 異議申立て及び審議の経緯

(1) 異議申立人は、平成20年6月1日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、「訟務担当主幹(事)○○○○が引き受けた事務引継書及び同引継ぎにかかるメモ書き.〈県土整備総務課〉」について開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、本件開示請求のうち「訟務担当主幹(事)○○○○が引き受けた事務引継書」の対象となる公文書として本件対象文書を特定し、平成20年6月16日付け部分開示決定(以下「本件部分開示決定」という。)を行った。

  • ア 開示しない情報
    • (ア) 事務引継書
      事件番号
    • (イ) 別紙 事件の概要
      (1)事件番号 (2)原告の氏名 (3)訴外個人の氏名 (4)訴外個人の属性 (5)原告が係争地を占有するに至った経緯
    • (ウ) 別添 庁内法務相談依頼票
      (1)相手方の負傷等被害の状況 (2)相手方の治療の内容 (3)相手方の関係者の属性 (4)相手方の本件事故処理への姿勢、希望 (5)相手方への補償項目
  • イ 開示しない理由
    個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(3) 異議申立人は、本件部分開示決定を不服として、平成20年7月3日付けで、実施機関に対して以下の趣旨の異議申立てを行った。なお、異議申立人は、異議申立ての趣旨の「四」の「(5)」について、平成20年8月15日付けで異議申立ての趣旨の追加をした。

(異議申立ての趣旨)

  • 一、本件処分を取消せ、又は、変更せよ
  • 二、(義務付け)開示場所を「県政情報センター」とせよ
  • 三、(措置)「情報公開コーナーの利用について」を見直せ
  • 四、(付帯)
    • (1)かつての情報公開監察委員制度を復活せよ
    • (2)情報公開審査会に建議権を与えよ
    • (3)情報公開運営審議会(仮称)を設けよ
    • (4)公文書管理条例(仮称)をつくれ
    • (5)情報公開コーナーを拡充せよ

(4) 実施機関は、当該異議申立てに関して条例第22条に基づき当審査会に諮問した。

(5) 当審査会は、実施機関から平成20年9月1日付けで開示決定等理由説明書の提出を受けた。
また、当審査会は、平成20年10月24日に実施機関から意見聴取を行った。

(6) 当審査会は、平成20年11月26日に異議申立人の口頭意見陳述を行った。

3 異議申立人の主張の要旨

異議申立人の主張は、次のとおりである。
私は開示場所として、利便性が高いことから「県政情報センター」を強く希望した。
貴職は、充分な説明をしないまま一方的に「県土整備総務課会議室」を開示場所と決定した。
この決定は、裁量権の乱用にあたり不当です。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1) 「事務引継書の事件番号」及び「別紙 事件の概要の(1)事件番号、(2)原告の氏名、(3)訴外個人の氏名、(4)訴外個人の属性、(5)原告が係争地を占有するに至った経緯」について

特定の個人が訴訟あるいは調停の当事者になっている記述、また、訴外とはいえ特定の個人が訴訟で取り扱われる事件に関係している記述は、その氏名を含めて全体が条例第10条第1号本文に定める個人に関する情報に該当する。
しかも、当該原告、申立人あるいは訴外個人に関する記述はいずれも、公務員の職務に関するものではない。また、当該訴訟あるいは調停事件は開示請求があった時点で(加えて言えば、本件を貴審査会に諮問した時点でも)係争中であって、その内容は公にされていない。

(2) 「別添 庁内法務相談依頼票の(1)相手方の負傷等被害の状況、(2)相手方の治療の内容、(3)相手方の関係者の属性、(4)相手方の本件事故処理への姿勢、希望、(5)相手方への補償項目」について

当該文書には、特定の個人が埼玉県によって損害を被り、その賠償を求める事件に関する記述がある。特定の個人が埼玉県によって損害を被り賠償を求める記述は、条例第10条第1号本文に定める個人に関する情報に該当する。
ところで、当該損害賠償事件について実施機関は、損害額の確定に先行させて一部の賠償金を支払うための和解を行い、知事が専決処分をして県議会に報告を行っており、被害者の氏名及び損害等の大要を既に公にしている。
そこで、本件文書の記述中、被害者である特定の個人に関する情報であっても、既に公にしている範囲において開示することとし、公にしている範囲を超える詳細な情報である(1)から(5)までを不開示とした。

(3) 異議申立ての趣旨について

「本件処分を取消せ、又は、変更せよ」以外の各趣旨は、いずれも行政不服審査法上、適法な不服申立てとは認められない。
公文書部分開示決定通知書における開示場所は、開示の実施を円滑に行うための通知事項である。
処分その他公権力の行使に当たらない「開示場所を通知したこと」に対する申立ては、行政不服審査法上、不適法な申立てといわざるを得ない。
「「情報公開コーナーの利用について」を見直せ」から「情報公開コーナーを拡充せよ」までの各趣旨は、公文書部分開示決定という本件処分に何らの関わりがない内容であり、行政不服審査法上、不適法な申立てといわざるを得ない。
異議申立人が理由とする各項目は、不服申立てとして不適法な「開示場所を「県政情報センター」とせよ」との趣旨に対する理由にすぎず、本件処分で不開示とした情報の全体あるいは特定の部分を開示することとなる理由には当たらない。
また、「この決定は、裁量権の乱用にあたり不当です。」との理由については、仮にこれが本件処分で不開示とした情報の全体あるいは特定の部分を開示することとなる理由を述べるものであるとした場合には、裁量権がどのように乱用されたと主張するのか不明である。しかも、既に説明したとおり、実施機関は不開示部分について条例に基づき適正に判断し、決定したものであり、その決定に当たって裁量権の乱用はない。
なお、開示場所として県政情報センターと比べると、県土整備総務課会議室は、県庁第二庁舎に隣接しており利便性において遜色はなく、また、県職員及び県民の出入りが少なく開示の実施を受ける者のプライバシーの確保に優れている。

5 審査会の判断

(1) 本件対象文書について

実施機関が特定した本件対象文書は、人事異動に伴って事務引継を行った旨を県土整備総務課長に報告した回議合議書及び引継ぎを行った際の事務引継書である。
本件対象文書中で実施機関が不開示とした情報は、以下の情報である。

  • ア 事務引継書本文中の県が当事者として係属中の訴訟事件及び調停事件の事件番号
  • イ 事務引継書に添付されている別紙の事件の概要の(1)事件番号、(2)原告の氏名、(3)訴外個人の氏名、(4)訴外個人の属性、(5)原告が係争地を占有するに至った経緯
  • ウ 事務引継書に添付されている別添の庁内法務相談依頼票の(1)相手方の負傷等被害の状況、(2)相手方の治療の内容、(3)相手方の関係者の属性、(4)相手方の本件事故処理への姿勢、希望、(5)相手方への補償項目

実施機関は、いずれの情報も個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、条例第10条第1号に該当するとして不開示とした。

(2) 条例第10条第1号該当性について

  • ア 事務引継書本文中の事件番号について
    本件対象文書を見分したところ、事務引継書本文中に訴訟事件の事件番号が2件、調停事件の事件番号が1件記載されている。
    訴訟事件については訴訟記録が一般の閲覧に供されており、事件番号が明らかになれば訴訟記録を閲覧し、原告を特定できることとなる。事務引継書本文を見分したところ、訴訟事件に関する記述は、いずれも簡潔に引き継ぐべき申し送り内容が記されているのみである。事務引継書本文における当該訴訟事件に関する記述には、原告の氏名など特定の個人を直接識別しうる情報は記述されていないが、一つ目の事件番号の訴訟事件は、別紙の事件の概要に当該訴訟事件の詳細がまとめられており、一方、二つ目の事件番号の訴訟事件は、住民訴訟としてマスコミ等でも報道されているかなり有名な訴訟である。したがって、事件番号を開示した場合、いずれも訴訟記録の閲覧等により原告を特定しうることとなることから、条例第10条第1号本文に該当し、同号ただし書イ、ロ及びハに該当しないことも明らかであり、同号の不開示情報に該当するとした実施機関の判断は妥当である。
    調停事件の事件番号については、事務引継書本文の当該調停事件に関する記載の中に申立人氏名等直接特定の個人を識別する情報は記載されておらず、一般に調停事件については手続が公開されているものではないが、調停が不調になれば訴訟事件に移行する可能性があり、また、調停事件の記録については、当事者だけでなく利害関係人も閲覧等を求めることができる(民事調停規則第23条)ことから、特定の個人の権利利益を害するおそれがある。したがって、調停事件の事件番号を不開示とした実施機関の判断は妥当である。
  • イ 別紙の事件の概要の(1)事件番号、(2)原告の氏名、(3)訴外個人の氏名、(4)訴外個人の属性、(5)原告が係争地を占有するに至った経緯について
    本件対象文書を見分したところ、当該事件の概要には、引継者が担当していた訴訟事件の概要が記載されており、特定の個人が県に対して時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求める事件に関するものである。
    実施機関が不開示とした情報のうち(1)事件番号については、アで検討したとおり実施機関が不開示とした判断は妥当である。それ以外の情報については、いずれも個人に関する情報であって特定の個人を識別することができる情報であり、条例第10条第1号本文に該当し、同号ただし書イ、ロ及びハに該当しないことから、同号の不開示情報に該当するとした実施機関の判断は妥当である。
  • ウ 別添の庁内法務相談依頼票の(1)相手方の負傷等被害の状況、(2)相手方の治療の内容、(3)相手方の関係者の属性、(4)相手方の本件事故処理への姿勢、希望、(5)相手方への補償項目について
    本件対象文書を見分したところ、当該依頼票は、引継者が関与していた特定の個人が埼玉県に賠償を求める事案に関して県の顧問弁護士の法務相談を依頼するために作成した資料であって、事件等の概要及び問題点(相談事項)等が記載されているが、個人の氏名の記載は除かれている。当該事案については、従前に賠償金の一部の和解について知事が専決処分を行い県議会に報告をしているが、実施機関が不開示とした情報は、既に県議会への報告で公になっている内容を超えた詳細な被害状況や補償交渉の内容であり、公にした場合、特定の個人の権利利益を害するおそれがあることから、実施機関が不開示とした判断は妥当である。

(3) 「開示場所を「県政情報センター」とせよ」について

実施機関は、開示場所は、開示の実施を円滑に行うための通知事項であり、処分その他公権力の行使に当たらないと主張し、一方、異議申立人は、「私は開示場所として、利便性が高いことから「県政情報センター」を強く希望した。」「貴職は、充分な説明をしないまま一方的に「県土整備総務課会議室」を開示場所と決定した。この決定は、裁量権の乱用にあたり不当です。」と異議申立書の理由で主張しているのでこの点について検討する。
開示決定等における開示の場所の指定については、条例第14条第1項で決定する事項ではなく、通知する事項であることから、行政不服審査法に基づき異議申立てができる処分その他公権力の行使に当たらない。
また、実施機関が県土整備総務課会議室を開示の実施場所に指定したことにより、特段、開示の実施に関して支障が生じるような事実は見当たらず、実施機関が異議申立人に対して不当な行為をしている事実も見当たらない。

(4) その他の異議申立ての趣旨について

その他の異議申立ての趣旨については、本件部分開示決定の妥当性の判断とは直接関係するものではない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、野口貴公美、松村雅生

審議の経過

年月日

内容

平成20年8月1日

諮問を受ける(諮問第166号)

平成20年9月1日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成20年9月24日

審議(第一部会第36回審査会)

平成20年10月24日

実施機関の説明及び審議(第一部会第37回審査会)

平成20年11月26日

異議申立人の口頭意見陳述及び審議(第一部会第38回審査会)

平成20年12月24日

審議(第一部会第39回審査会)

平成21年1月28日

審議(第一部会第40回審査会)

平成21年3月10日

答申(答申第141号)

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