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掲載日:2024年4月2日

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答申第133号 「平成18年度警察官採用試験「論文」」の部分開示決定(平成20年11月26日)

答申第133号(諮問第153号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県人事委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年11月15日付けで行った、「平成18年度警察官採用試験「論文」について」の部分開示決定で不開示とした部分のうち、次の部分は開示すべきであるが、その余の部分を不開示としたことは妥当である。

(1) 「2 評定」の「(2)評定項目」中の「国語力・表現力」に係る着眼点(ただし、当該着眼点中4行目から7行目までの括弧内に記載されている部分を除く。)

(2) 「2 評定」の「(2)評定項目」中の「思考力」に係る着眼点

2 異議申立て及び審議の経緯

(1) 異議申立人は、平成19年9月18日に埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「平成18年度第2回警察官採用試験の実施要領及びそれに類するもの、同試験において実際に試験官等が使用したマニュアル及びそれに類するもの、同試験における教養試験問題、論文試験問題、集団討論題、適性検査質問冊子、教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)」についての公文書の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、本件開示請求のうち「論文試験の採点基準」に係る部分の公文書として「平成18年度警察官採用試験「論文」について」(以下「本件対象文書」という。)を特定し、平成19年11月15日付けで、「2 評定」中の評点及び着眼点を条例第10条第5号に該当するため不開示とする公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、異議申立人に通知した。

(3) 異議申立人は、平成20年1月15日付けで、実施機関に対し、本件処分を取り消し全部開示を求めるとの異議申立てを行った。

(4) 当審査会は、当該異議申立てについて、平成20年3月25日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、本件審査に際し、平成20年5月1日に実施機関から開示決定等理由説明書の提出を受けた。また、同月22日に実施機関の職員から意見聴取を行った。

(6) 当審査会は、本件審査に際し、平成20年6月6日に異議申立人から反論書の提出を受けた。

3 異議申立人の主張の要旨

異議申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 受験者が文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を有しているかを評価する場合の基準は、民間企業等の採用試験や大学等の入学試験において課される作文、小論文試験等における評価基準と大差ないはずであり、書籍や予備校等を通じて誰でも容易に知りうるものである。本件処分により不開示とされた公文書に記載されているはずの情報は、既に公にされている情報と考えられ、あえて不開示とする理由はない。

(2) 埼玉県が警察官として採用する者に対し、文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を求めるなら、その能力が具体的にどのようなものかを公開し、受験者の自己研鑽を促すべきである。評価基準の公開は、埼玉県職員(警察官)を志す受験者が自己研鑽に励むことを可能とし、埼玉県がより多くの熱意ある有為な人材を確保することに繋がるものであり、採用試験の趣旨・目的に照らしてむしろ望ましい。実施機関は、基準の公開により過度に偏った受験対策が講じられると主張するが、基準を公開することにより、受験者は、埼玉県警察官を志望する者に対して埼玉県が真にどのような能力を求めているのかを知ることができ、これにより独自の誤った受験対策に走ることなく、正しく自己研鑽に励むことができる。

(3) 公正に行われるべき公務員の採用試験において、合否決定過程の透明性を確保するためにも、評価基準は可能な限り公開されるべきである。警察官はもちろん、すべて公務員は「全体の奉仕者」であり、公務員の選任罷免の権限は、究極的には国民(県民)に存する。公務員の採用の基準も、本来的には国民(県民)が決めるべきものである。職員の採用につき、行政に一定限度の裁量が認められるとしても、採用の基準は、客観的かつ合理的なものでなければならず、国民(県民)の同意が得られるものでなければならない。基準が公開されず、行政内部において一方的に決められるとすれば、その試験により国民(県民)にとって真に有為な人材が採用されているか確認できない。このような状態は、行政の恣意を容易にするものあり、妥当でない。

(4) 「試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれ」という抽象的な危険性を根拠に「不開示情報」とすることは、「不開示情報」の範囲を著しく広げるものであり、知る権利の保障を目的とする条例の趣旨に照らして妥当でない。

(5) 以上から、本件対象文書の「『2評定』中の評点及び着眼点」を不開示とした本件処分は妥当ではなく、取り消されるべきである。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 本件対象文書は、平成18年度警察官採用試験に係る論文試験の答案を評定するための着眼点や評点、評価のポイント等について記載された文書である。

(2) 本件対象文書のうち開示しないこととした評点と着眼点は、論文試験を評定する際の評定項目ごとの重み付けと評定基準である。これを公にすることにより、過度に偏った受験対策が講じられ、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号の不開示情報に該当する。

5 審査会の判断

(1)本件対象文書について

本件対象文書は、実施機関が実施した平成18年度第2回埼玉県警察官採用試験の第1次試験で行われた論文試験において、評定委員が受験者が記述した論文を評定する際の基準として使用されている文書である。
本件対象文書を見分したところ、本件対象文書は、「1 出題の意図」及び「2 評定」という項目並びに「評価のポイント等」と題する書面から構成されている。このうち、「2 評定」については、「(1)総合評定」に係る評点、「(2)評定項目」として「国語力・表現力」及び「思考力」の各評定項目に係る評点及び着眼点、並びに「(3)」として「(2)評定項目」における評定にかかわらず総合評価を0~1とするものの着眼点が記載されている。また、「評価のポイント等」と題する書面には、問題文のほか、「1 設問の概要」、「2 論文のポイント・論点」として「(1)背景」及び「(2)考え方」並びに「3 評価のポイント」が記載されている。
なお、実施機関の説明によれば、平成18年度埼玉県警察官採用試験の論文試験においては、受験者1人の論文につき2名の評定委員が「国語力・表現力」及び「思考力」の評定項目について評定し、その上で各評定委員が付けた総合評定の評点を標準偏差を用いて一定の計算式により標準点に換算するなどして、各受験者の論文試験の得点としているとのことである。

(2)本件処分について

実施機関は、本件処分において、本件対象文書のうち、「2 評定」の「(2)評定項目」中の各評定項目に係る評点及び着眼点、並びに「(3)」中の総合評価を0~1とするものの着眼点について、これらを公にすることにより、過度に偏った受験対策が講じられ、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、警察官採用試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして不開示とした。
これに対し、異議申立人は、これら情報を不開示とした本件処分は妥当でなく、全部開示することを求めていることから、以下、実施機関が不開示としたこれら情報の条例第10条第5号の該当性について検討する。

(3)条例第10条第5号の該当性について

  • ア 「2 評定」の「(2)評定項目」中の評点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定項目とされている「国語力・表現力」及び「思考力」のそれぞれの評点が記載されている。当該評点を開示した場合、評定項目の重み付けが明らかになり、受験者が当該情報を意識した対応策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
  • イ 「2 評定」の「(2)評定項目」中の着眼点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定委員が受験者が記述した論文について「国語力・表現力」及び「思考力」の各評定項目を評定する際の着眼点がそれぞれ記載されている。
    このうち、「国語力・表現力」に係る着眼点中4行目から7行目までにかけての括弧内に記載されている情報は、当該評定項目に関する評定の方法についての具体的な内容を示すものであり、これを開示した場合、受験者が当該情報を意識した対応策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
    しかしながら、この部分以外の「国語力・表現力」に係る着眼点及び「思考力」に係る着眼点については、「国語力・表現力」及び「思考力」という評定項目が明らかである上、その内容は評定項目から通常想定しうる一般的な内容のものであり、これらを開示したとしても、受験者の能力を正確に把握することが困難となるなど警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
  • ウ 「2 評定」の「(3)」の総合評価を0~1とする場合の着眼点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定委員が受験者が記述した論文を評定するに際し、基本的な水準に達していないものとして総合評価を0又は1とすることとなる論文の内容等を具体的に示す情報が記載されている。これを開示した場合、受験者が当該情報を意識した対応策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、白鳥 敏男、渡辺 咲子

審議の経過

年月日

内容

平成20年3月25日

諮問を受ける(諮問第153号)

平成20年4月17日

審議(第二部会第34回審査会)

平成20年5月1日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成20年5月22日

実施機関から意見聴取及び審議(第二部会第35回審査会)

平成20年6月6日

異議申立人から反論書を受理

平成20年6月19日

審議(第二部会第36回審査会)

平成20年7月23日

審議(第二部会第37回審査会)

平成20年9月18日

審議(第二部会第38回審査会)

平成20年10月21日

審議(第二部会第39回審査会)

平成20年11月26日

答申(答申第133号)

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総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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