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掲載日:2024年4月2日

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答申第138号 「平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験第1次試験実施事務要領」の部分開示決定(平成21年1月28日)

答申第138号(諮問第154号)

答申

1 審査会の結論

(1) 埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成19年11月16日付けで行った、「平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験第1次試験実施事務要領」(以下「本件対象文書1」という。)を部分開示とした決定で、不開示とした部分のうち、次の部分は開示すべきである。

  • (1) 開示しない情報の「1採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある部分」に該当する部分で、本件対象文書1中の2ページ目の2の(2)のアの(イ)「教室内の机・イスの確認」の3行目の部分。
  • (2) 開示しない情報の「1採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある部分」に該当する部分で、本件対象文書1中の33ページ目の「実施事項等」欄中の14行目から15行目までの部分。
  • (3) 開示しない情報の「2適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」に該当する部分。

(2) 実施機関が平成19年11月16日付けで行った、「平成18年度第2回警察官採用試験の適性検査質問冊子(1類)」(以下「本件対象文書2」という。)を不開示とした決定は、妥当である。

(3) 実施機関が平成19年11月16日付けで行った、「平成19年度第2回警察官採用試験の適性検査質問冊子(1類)」(以下「本件対象文書3」という。)を不開示とした決定は、妥当である。

(4) 「平成18年度第2回警察官採用試験の教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」の開示請求のうち「平成18年度第2回警察官採用試験の適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」に係る部分について、実施機関が平成19年11月16日付けで行った、「警察職員採用試験における適性試験判定基準」(以下「本件対象文書4」という。)を部分開示とした決定で不開示とした部分のうち、表中の項目として記載されている適性検査の検査名称は開示すべきである。

(5) 「平成19年度第2回警察官採用試験の教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」の開示請求のうち「平成19年度第2回警察官採用試験の適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」に係る部分について、実施機関が平成19年11月16日付けで行った、「警察職員採用試験における適性試験判定基準」(以下「本件対象文書5」という。)を部分開示とした決定で不開示とした部分のうち、表中の項目として記載されている適性検査の検査名称は開示すべきである。

2 審査請求及び審議の経緯

(1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成19年9月18日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し次の公文書の開示請求を行った。

  • ア 平成19年度第2回警察官採用試験の実施要領及び試験官等が実際に使用したマニュアル(1類)についての開示請求(以下「本件開示請求1」という。)
  • イ 平成18年度第2回警察官採用試験の教養試験問題、論文試験問題、集団討論題、適性検査質問冊子(1類)についての開示請求(以下「本件開示請求2」という。)
  • ウ 平成19年度第2回警察官採用試験の教養試験問題、論文試験問題、集団討論題、適性検査質問冊子(1類)についての開示請求(以下「本件開示請求3」という。)
  • エ 平成18年度第2回警察官採用試験の教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)(1類)についての開示請求(以下「本件開示請求4」という。)
  • オ 平成19年度第2回警察官採用試験の教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)(1類)についての開示請求(以下「本件開示請求5」という。)

(2) これに対し実施機関は、次のとおり請求人に対し通知した。

  • ア 本件開示請求1については、本件対象文書1を対象となる公文書として特定し、平成19年11月16日付けで公文書部分開示決定(以下「本件処分1」という。)を行い、請求人に通知した。
  • イ 本件開示請求2のうち、「平成18年度第2回警察官採用試験の適性検査質問冊子(1類)」に係る部分については、平成19年11月16日付けで公文書不開示決定(以下「本件処分2」という。)し、請求人に通知した。
  • ウ 本件開示請求3のうち、「平成19年度第2回警察官採用試験の適性検査質問冊子(1類)」に係る部分については、平成19年11月16日付けで公文書不開示決定(以下「本件処分3」という。)し、請求人に通知した。
  • エ 本件開示請求4のうち、「平成18年度第2回警察官採用試験の適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」に係る部分については、本件対象文書4を対象となる公文書として特定し平成19年11月16日付けで公文書部分開示決定(以下「本件処分4」という。)し、請求人に通知した。
  • オ 本件開示請求5のうち、「平成19年度第2回警察官採用試験の適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」に係る部分については、本件対象文書5を対象となる公文書として特定し平成19年11月16日付けで公文書部分開示決定(以下「本件処分5」という。)し、請求人に通知した。

(3) 請求人は、埼玉県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、平成20年1月15日付けの審査請求書により、本件処分1から5までを取り消し、本件対象文書1から5までの全部開示を求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について、平成20年3月26日に諮問庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、本件審査に際し、諮問庁から平成20年5月7日に「開示決定等理由説明書」の提出を受けた。

(6) 当審査会は、本件審査に際し、請求人から平成20年6月6日に反論書の提出を受けた。

(7) 当審査会は、平成20年6月19日に諮問庁から意見聴取を行った。

3 請求人の主張の要旨

請求人が主張している内容は、概ね次のとおりである。

(1) 本件審査請求の趣旨
不開示決定及び部分開示決定を取り消し、全部開示を求める。

(2) 本件審査請求の理由

  • ア 請求人を含めた平成18年度及び平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験を受験した者にとって、適性試験の検査名称等は、既知の情報である。これらの検査は学問的な研究がなされ、民間企業等でも用いられているものであり、その検査内容についても一般的に知り得るものである。即ち、既に公にされていると考えられるため、当該処分はその前提を誤っている。
  • イ 条例は、公文書を公開することを原則とし、「不開示情報」に該当する場合にのみ例外的に開示しないことができるとしているのであって、「適正な採用試験業務の遂行に支障が生じるおそれ」という抽象的な危険性を根拠に「検査名称等」を「不開示情報」とすることは、「不開示情報」の範囲を著しく広げるものであって、知る権利の保障を目的とする条例の趣旨に照らし妥当でない。
  • ウ 請求人は、平成18年度第2回警察官採用試験第1次試験実施事務要領につき埼玉県人事委員会に対して情報公開請求し、それに対する部分開示決定について異議申立てを行い、平成19年度第2回警察官採用試験第1次試験実施事務要領において「採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある部分及び適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」として不開示とされた部分と同内容を記していると思われる部分につき、既に開示を受けている。本来、埼玉県人事委員会が既に同内容と思われる情報を開示している以上、実施機関において不開示としてももはや意味はなく、これらを不開示とする必要は存在しない。

4 諮問庁の主張の要旨

諮問庁が主張している内容は、概ね次のとおりである。

(1) 警察官採用試験について

警察官採用試験について、職員の任用は、地方公共団体の能率性を確保するため、地方公務員法第15条により、成績主義の原則を任用の根本基準としている。成績主義の基本となる能力は、客観的に実証し得るものでなければならず、同条の受験成績とは、職員の採用試験又は昇任試験における受験者の成績である。一方、競争試験については、同法第20条により、職務遂行の能力を有するかどうかを正確に判定することをもってその目的とし、また、筆記試験により、若しくは口頭試問及び身体検査並びに人物性行、教育程度、経歴、適性、知能、技能、一般的知識、専門的知識及び適応性の判定の方法により、又はこれらの方法をあわせ用いることにより行うものとされている。

(2) 採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある情報

試験実施事務要領には、各試験員が適正に採用試験業務を実施するために、任務及び職務内容、試験時の発言要領、進行方法及び注意事項等が記載されている。これらの内容は今後行われる採用試験実施時にも該当する事項である。その内容を大別すると、試験の際に受験者に対し発するものと、受験者に対しては発せず、各試験員に対するものに分けられる。そのうち、各試験員に対する内容には、公にしてしまうと今後同様に行われる採用試験実施時の進行が遅れるおそれが生じるなど、採用試験業務に支障を及ぼすおそれがあるものがある。それらの記載内容については、公にすることにより適正かつ円滑な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号に該当する。

(3) 適性検査の検査名称等が明らかとなる情報

  • ア 質問紙法及び作業検査法による適性検査の特徴と短所
    適性検査は、職員の任用に関する規則第6条の規定により実施されている。人柄、性行等についての質問紙法及び作業検査法による2種類の筆記試験を第1次試験種目として実施し、職務遂行上必要な素質及び適性を有しているかの判定を行っている。質問紙法による適性検査の短所として「回答を意識的・無意識的に歪める可能性があること。」といわれ、作業検査法による適性検査の短所のひとつとして「作業課題に対する意欲(慣れ)の有無が検査の結果に影響する」といわれている。
  • イ 採用試験業務の遂行への支障
    適性検査名称等が明らかとなる情報が公にされることとなれば、受験者は、あらかじめ、自らが受検する適性検査の検査用紙を購入し、事前準備を行うなど、適性検査の判定を意識した受検準備をとることが十分に予想され、その結果、受験者は意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、受験者の警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなるおそれがある。したがって、適性検査の検査名称等が明らかとなる情報を開示した場合、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当する。

(4) 適性検査質問冊子について

当該質問紙法の適性検査は、適性検査を受ける者が検査の質問について事前準備をすることなく検査を受けることを前提としており、事前準備をして検査を受けた場合としないで受けた場合とでは検査結果が違ってしまう。当該検査の質問冊子が公になると事前準備をして検査を受ける者がでてくる可能性があり、その場合、当該適性検査の適正な判断が行えなくなる。当然、実施機関の検査も事前準備して受験すると本来と異なった検査結果がでてしまい、適性試験として正確な判断ができなくなる。
当該適性検査取扱業者は、適性検査を実施し判定することを目的とした団体のみに当該検査質問冊子を販売しており、一般の個人には販売しないことによって質問冊子が公になることを防いでいる。実施機関と当該適正検査取扱業者の契約においても本件対象文書は公にしないことが前提となっており、当該検査の質問冊子を公にすることになれば、適性検査取扱業者との信頼関係が壊れ、今後、適性検査取扱業者に委託することができず、適性検査を実施することができなくなることから、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当する。

(5) 適性試験判定基準について

適性試験の判定は、適性検査取扱業者が受験者の検査結果を判定し、その判定結果を、実施機関が作成した判定基準に当てはめ、受験者が警察官としての適性を有しているか否かについて実施機関が最終的に判定している。本来、適性検査は、事前準備などをせず、受験者のありのままの姿を検査結果に反映させて、その潜在する警察官としての適性を持つ者と持たない者を選別するために実施する試験である。
不開示としている検査別判定基準及び総合判定基準の中の質問紙法に係る部分については、適性検査取扱業者の判定方法が記載されており、この判定基準を基に実施機関の判定基準を作成している。当該適性試験の判定基準は、当該適性検査取扱業者の適性検査の判定に係るノウハウに関する事項であるため、一般に公にされておらず、実施機関も当該判定にかかる部分について公にしないことを前提に当該適性検査取扱業者と契約をしている。このため、検査別判定基準及び総合判定基準の中の質問紙法に係る部分は、当該適性検査取扱業者の適性検査の判定に係るノウハウに関する事項が記載されていることから、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、条例第10条第2号に該当する。
また、検査別判定基準及び総合判定基準の中の他の適性検査に係る不開示部分については、当該部分を公にすることにより、受験者は、あらかじめ適性検査の検査用紙を購入し適性検査の判定を意識した受検準備をとることが十分に予想され、当該適性試験実施目的そのものが大きく損なわれることとなることから、開示することにより適性の有無を判定することを著しく困難にし、適正な試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当する。

5 審査会の判断

(1) 本件審査請求について

実施機関は、本件開示請求1から5までに対し、それぞれ、本件対象文書1から5までを公文書として特定し、本件処分1から5までを行った。
これに対し、請求人は、本件処分1から5までについて、不開示決定又は部分開示決定を取り消し、全部開示を求める審査請求を行った。
以下、当審査会は本件処分1から5までの妥当性について検討する。

(2) 本件対象文書1について

  • ア 本件対象文書1について
    本件対象文書1は、実施機関が平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験の第1次試験を実施した際に、試験係員が使用した事務要領である。
    当審査会が本件対象文書1を見分したところ、本件対象文書1は、「1試験実施時刻及び順序」、「2任務及び職務内容」、「3試験問題等」、「4試験時の発言要領等」、「5試験室配置図等」及び「6試験実施報告書(記入例)」等の項目で構成されており、各試験係員が適正に採用試験業務を実施するための注意事項や、試験で行われる適性検査の検査名称等が記載されている。
  • イ 本件処分1について
    実施機関は、本件処分1において、本件対象文書1のうち「採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある部分」について、公にすることにより、適正かつ円滑な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして不開示とした。また、「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」について、公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
  • ウ 条例第10条第5号該当性について
    条例第10条第5号は、県の機関等が行う事務又は事業の適正な遂行を確保するために不開示とする情報について次のように定める。
    「県、国若しくは他の地方公共団体(以下この号において「県等」という。)の機関、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの。」
    上記引用中の「次に掲げるおそれ」として同号イからホまでに掲げられた「おそれ」は、いずれも例示とされている。
    • (ア) 「採用試験業務に支障を及ぼすおそれがある部分」について
      • a 本件対象文書1中の1ページ目の「実施事項等」欄中の「受付終了」に続く括弧内に記載されている部分及び5ページ目の5の(4)の1行目の18文字目から2行目の31文字目までの部分について
        当該部分を見分したところ、受付時の試験係員の対応方法について記載されている。これらの部分を開示した場合、今後の採用試験実施時の進行が遅れるなど、採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
      • b 本件対象文書1中の2ページ目の2の(2)のアの(イ)「教室内の机・イスの確認」の3行目の部分について
        当該部分を見分したところ、試験係員が試験実施前に行う教室内の机・イスの確認事項について記載されている。この部分を開示した場合、試験係員が試験実施前に行う確認事項が明らかになるが、このことによって、今後行われる採用試験実施時に試験事務の進行が遅れるなど、採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないことから、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
      • c 本件対象文書1中の33ページ目の「実施事項等」欄中の14行目から15行目までの部分について
        当該部分を見分したところ、試験係員が試験終了後に試験実施教室内で行う事項について記載されている。この部分を開示した場合、試験係員が試験終了後に行う事項が明らかになるが、このことによって、今後行われる採用試験実施時に試験事務の進行が遅れるなど、採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないことから、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
    • (イ) 「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」について
      当該部分を見分したところ、適性試験1及び適性試験2の検査名称並びに適性検査1及び適性検査2の試験時の発言要領等が記載されている。なお、発言要領等の部分は検査の内容自体に関わるところはなく、検査名称を類推させるものとして不開示としている。
      諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」を開示した場合、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとのことである。
      しかし、「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」を開示したとしても、当該年度に実施された適性試験の検査名称等は公にはなるが、翌年度以降実施する適性試験の検査名称が公になる訳ではなく、このことをもって、受験者が今後行われる適性検査を意識した受検準備をすることができる訳ではない。したがって、受験者が意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、受験者の警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなることにより、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないことから、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。

(3) 本件対象文書2について

  • ア 本件対象文書2について
    本件対象文書2は、実施機関が平成18年度第2回埼玉県警察官採用試験の第1次試験の適性試験の際に使用した適性検査質問冊子である。
    諮問庁の説明によると、当該適性試験は、質問紙法及び作業検査法による2種類の適性検査を実施している。質問紙法による検査は、査定すべき内容に関する多数の質問項目を設定し、受験者が回答する検査であり、作業検査法による検査は、特定の作業課題を行わせ、その結果から個人の特性を知ろうとする検査である。請求者は、本件開示請求2により適性検査の質問冊子の開示を請求している。実施機関は当該適性試験において質問冊子がある適性検査は、質問紙法による適性試験が該当するため、本件対象文書2を特定したとのことである。
  • イ 本件処分2について
    実施機関は、本件処分2において、本件対象文書2を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして不開示としている。
    また、諮問庁は、諮問庁説明において、本件処分2の決定通知書の開示しない理由に加えて、前記4の(4)の理由からも条例第10条第5号の不開示情報に該当する旨を主張している。
  • ウ 条例第10条第5号該当性について
    条例第10条第5号は、前記5の(2)のウに記載したとおりである。
    • (ア) 諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から本件対象文書2を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとのことである。しかし、前記5の(2)のウの(イ)のとおり、検査名称や検査種類等が明らかになったとしても、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
    • (イ) 次に、諮問庁が加えて主張している点について検討すると、諮問庁は、諮問庁説明において、前記4の(4)の理由からも条例第10条第5号の不開示情報に該当すると主張している。
      当該適性検査は、適性検査を受ける者が検査の質問について練習するなどして事前にどのように回答するか準備をすることなく検査を受けることを前提とした検査であり、そのため当該適性検査取扱業者は、適性検査を実施し判定することを目的とした団体のみに当該検査質問冊子を販売し、一般の個人には販売しないことによって質問冊子が公になることを防いでいる。実施機関との契約においても本件対象文書2は公にしないこととしていることからすれば、検査の質問冊子を公にすることにより、適性検査取扱業者との信頼関係が壊れ、今後、適性検査について適性検査取扱業者に委託することができなくなるとの諮問庁の説明は是認できる。
      これらのことからすれば、本件対象文書2を公にすることにより適性検査を実施することができなくなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第10条第5号に該当する。

(4) 本件対象文書3について

  • ア 本件対象文書3について
    本件対象文書3は、実施機関が平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験の第1次試験の適性試験の際に使用した適性検査質問冊子である。
    諮問庁の説明によると、当該適性試験は、質問紙法及び作業検査法による2種類の適性検査を実施している。質問紙法による検査は、査定すべき内容に関する多数の質問項目を設定し、受験者が回答する検査であり、作業検査法による検査は、特定の作業課題を行わせ、その結果から個人の特性を知ろうとする検査である。請求者は、本件開示請求3により適性検査の質問冊子の開示を請求している。実施機関は当該適性試験において質問冊子がある適性検査は、質問紙法による適性試験が該当するため、本件対象文書3を特定したとのことである。
  • イ 本件処分3について
    実施機関は、本件処分3において、本件対象文書3を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして不開示としている。
    また、諮問庁は、諮問庁説明において、本件処分3の決定通知書の開示しない理由に加えて、前記4の(4)の理由からも条例第10条第5号の不開示情報に該当する旨を主張している。
  • ウ 条例第10条第5号該当性について
    条例第10条第5号は、前記5の(2)のウに記載したとおりである。
    • (ア) 諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から本件対象文書3を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとのことである。しかし、前記5の(2)のウの(イ)のとおり、検査名称や検査種類等が明らかになったとしても、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
    • (イ) 次に、諮問庁が加えて主張している点について検討すると、諮問庁は、諮問庁説明において、前記4の(4)の理由からも条例第10条第5号の不開示情報に該当すると主張している。
      当該適性検査は、適性検査を受ける者が検査の質問について練習するなどして事前にどのように回答するか準備をすることなく検査を受けることを前提とした検査であり、そのため当該適性検査取扱業者は、適性検査を実施し判定することを目的とした団体のみに当該検査質問冊子を販売し、一般の個人には販売しないことによって質問冊子が公になることを防いでいる。実施機関との契約においても本件対象文書3は公にしないこととしていることからすれば、検査の質問冊子を公にすることにより、適性検査取扱業者との信頼関係が壊れ、今後、適性検査について適性検査取扱業者に委託することができなくなるとの諮問庁の説明は是認できる。
      これらのことからすれば、本件対象文書3を公にすることにより適性検査を実施することができなくなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第10条第5号に該当する。

(5) 本件対象文書4について

  • ア 本件対象文書4について
    本件対象文書4は、実施機関が平成18年度第2回埼玉県警察官採用試験の適性試験を最終的に判定する際に使用した判定基準である。
    諮問庁の説明によると、当該適性試験は、質問紙法及び作業検査法による2種類の筆記試験を試験種目として実施しており、検査の判定を適性検査取扱業者に委託し、その結果を実施機関が作成した判定基準に当てはめ、最終的に判定を行っている。
    本件対象文書4は、この最終的な判定をするために実施機関が作成している判定基準である。
    本件対象文書4を見分したところ、「1検査別判定基準」及び「2総合判定基準(原則)」の項目で構成されており、2種類の適性検査の判定基準と、その判定基準を基に総合的に判定するための基準が記載されている。
  • イ 本件処分4について
    実施機関は、本件処分4において、本件対象文書4中に記載されている文書名、検査別判定基準及び総合判定基準の項目名を開示し、検査別判定基準及び総合判定基準の内容に係る部分については、これらを公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして部分開示決定としている。
    また、諮問庁は、諮問庁説明において、当該不開示情報について、本件処分4の決定通知書の開示しない理由に加えて、前記4の(5)の理由からも条例第10条第2号及び第5号の不開示情報に該当する旨を主張している。
  • ウ 条例第10条第2号及び第5号該当性について
    条例第10条第2号は、不開示とする情報として次のように定める。
    「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」
    条例第10条第5号は、前記5の(2)のウのとおりである。
    • (ア) 諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から当該不開示情報を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とのことである。諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から当該不開示情報を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とのことである。
      しかし、前記5の(2)のウの(イ)のとおり、検査名称や検査種類等が明らかとなったとしても、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれは認められない。
    • (イ) 次に、諮問庁が加えて主張している点について検討すると、諮問庁は、諮問庁説明において、前記4の(5)の理由からも、条例第10条第2号及び第5号の不開示情報に該当すると主張している。
      • a 条例第10条第2号該当性
        諮問庁の説明では、検査別判定基準及び総合判定基準のうち質問紙法に係る不開示情報には、当該適性検査取扱業者の当該適性検査を判定する上でのノウハウに関する事項が記載され、一般に公にされておらず、実施機関も当該判定にかかる部分について公にしないことを前提に判定結果を受けているとのことである。
        当審査会が本件対象文書4を見分したところ、当該不開示情報にはその判定方法が記載されており、当該不開示情報を公にした場合、当該適性検査取扱業者のノウハウを公にすることになり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、条例第10条第2号に該当する。
      • b 条例第10条第5号該当性
        検査別判定基準及び総合判定基準のうち作業検査法に係る不開示情報を公にした場合、当該適性検査が出題されることを想定した受験者が、あらかじめ適性検査の検査用紙を購入し、適性検査の判定を意識した練習などを行い、その結果、受験者が判定基準に沿った検査結果を作成することが可能となり、当該適性試験の実施目的そのものが大きく損なわれることが認められることから、当該不開示情報は、開示することにより適性試験における適性の有無を判定することを著しく困難にし、適正な試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第10条第5号の不開示情報に該当する。
  • エ  部分開示について
    実施機関は、本件処分4において、本件対象文書4中に記載されている表題、検査別判定基準及び総合判定基準の項目の見出し部分を開示し、検査別判定基準及び総合判定基準の内容に係る部分について不開示としている。
    当該不開示とされた部分の部分開示について検討すると、表中の項目として記載されている適性検査の検査名称については、上記ウの(ア)のとおり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれは認められないため、開示すべきである。

(6) 本件対象文書5について

  • ア 本件対象文書5について
    本件対象文書5は、実施機関が平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験の適性試験を最終的に判定する際に使用した判定基準である。
    諮問庁の説明によると、当該適性試験は、質問紙法及び作業検査法による2種類の筆記試験を試験種目として実施しており、検査の判定を適性検査取扱業者に委託し、その結果を実施機関が作成した判定基準に当てはめ、最終的に判定を行っている。
    本件対象文書5は、この最終的な判定をするために実施機関が作成している判定基準である。
    本件対象文書5を見分したところ、「1検査別判定基準」及び「2総合判定基準(原則)」の項目で構成されており、2種類の適性検査の判定基準と、その判定基準を基に総合的に判定するための基準が記載されている。
  • イ 本件処分5について
    実施機関は、本件処分5において、本件対象文書5中に記載されている文書名、検査別判定基準及び総合判定基準の項目名を開示し、検査別判定基準及び総合判定基準の内容に係る部分については、これらを公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして部分開示決定としている。
    また、諮問庁は、諮問庁説明において、当該不開示情報について、本件処分5の決定通知書の開示しない理由に加えて、前記4の(5)の理由からも条例第10条第2号及び第5号の不開示情報に該当する旨を主張している。
  • ウ 条例第10条第2号及び第5号該当性について
    条例第10条第2号は、不開示とする情報として次のように定める。
    「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」
    条例第10条第5号は、前記5の(2)のウのとおりである。
    • (ア)諮問庁の説明では、前記4の(3)のイの理由から当該不開示情報を公にすることにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とのことである。
      しかし、前記5の(2)のウの(イ)のとおり、検査名称や検査種類等が明らかとなったとしても、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれは認められない。
    • (イ)次に、諮問庁が加えて主張している点について検討すると、諮問庁は、諮問庁説明において、前記4の(5)の理由からも、条例第10条第2号及び第5号の不開示情報に該当すると主張している。
      • a 条例第10条第2号該当性
        諮問庁の説明では、検査別判定基準及び総合判定基準のうち質問紙法に係る不開示情報には、当該適性検査取扱業者の当該適性検査を判定する上でのノウハウに関する事項が記載され、一般に公にされておらず、実施機関も当該判定にかかる部分について公にしないことを前提に判定結果を受けているとのことである。
        当審査会が本件対象文書5を見分したところ、当該不開示情報にはその判定方法が記載されており、当該不開示情報を公にした場合、当該適性検査取扱業者のノウハウを公にすることになり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、条例第10条第2号に該当する。
      • b 条例第10条第5号該当性
        検査別判定基準及び総合判定基準のうち作業検査法に係る不開示情報を公にした場合、当該適性検査が出題されることを想定した受験者が、あらかじめ適性検査の検査用紙を購入し、適性検査の判定を意識した練習などを行い、その結果、受験者が判定基準に沿った検査結果を作成することが可能となり、当該適性試験の実施目的そのものが大きく損なわれることが認められることから、当該不開示情報は、開示することにより適性試験における適性の有無を判定することを著しく困難にし、適正な試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第10条第5号の不開示情報に該当する。
  • エ 部分開示について
    実施機関は、本件処分5において、本件対象文書5中に記載されている表題、検査別判定基準及び総合判定基準の項目の見出し部分を開示し、検査別判定基準及び総合判定基準の内容に係る部分について不開示としている。
    当該不開示とされた部分の部分開示について検討すると、表中の項目として記載されている適性検査の検査名称については、上記ウの(ア)のとおり、警察官採用試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれは認められないため、開示すべきである。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、白鳥 敏男、渡辺 咲子

審議の経過

年月日

内容

平成20年3月26日

諮問を受ける(諮問第154号)

平成20年4月17日

審議(第二部会第34回審査会)

平成20年5月7日

諮問庁から開示決定等理由説明書を受理

平成20年5月22日

審議(第二部会第35回審査会)

平成20年6月6日

審査請求人から反論書を受理

平成20年6月19日

諮問庁からの意見聴取及び審議(第二部会第36回審査会)

平成20年7月23日

審議(第二部会第37回審査会)

平成20年9月18日

審議(第二部会第38回審査会)

平成20年10月21日

審議(第二部会第39回審査会)

平成20年11月25日

審議(第二部会第40回審査会)

平成20年12月16日

審議(第二部会第41回審査会)

平成21年1月20日

審議(第二部会第42回審査会)

平成21年1月28日

答申(答申第138号)

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