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掲載日:2024年4月2日

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答申第134号 「平成19年度第2回警察官採用試験「論文」」の部分開示決定(平成20年11月26日)

答申第134号(諮問第157号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成19年11月16日付けで行った、「平成19年度第2回警察官採用試験「論文」について」の部分開示決定で不開示とした部分のうち、次の部分は開示すべきであるが、その余の部分を不開示としたことは妥当である。

(1) 「2 評定」の「(1)総合評定」中の評点

(2) 「2 評定」の「(2)評定項目」中の「国語力・表現力」に係る着眼点(ただし、当該着眼点中4行目から6行目までの括弧内に記載されている部分を除く。)

(3) 「2 評定」の「(2)評定項目」中の「思考力」に係る着眼点

(4) 「評価のポイント等」と題する書面中の「2 論文のポイント・論点」の「(1)背景」及び「(2)考え方」の記述

2 審査請求及び審議の経緯

(1) 審査請求人は、平成19年9月18日に埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「平成19年度第2回警察官採用試験の教養試験の正答番号が記載された文書、論文試験の採点基準、人物試験の採点基準、体力検査の合格基準、適性検査の合格基準(評価基準)(1類)」についての公文書の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) 実施機関は、本件開示請求のうち「論文試験の採点基準」に係る部分の公文書として「平成19年度第2回警察官採用試験「論文」について」(以下「本件対象文書」という。)を特定し、平成19年11月16日付けで、評点、評定の着眼点、論文のポイント及び論点を条例第10条第5号に該当するため不開示とする公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。

(3) 審査請求人は、平成20年1月15日付けで、埼玉県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、本件処分を取り消し全部開示を求めるとの審査請求を行った。

(4) 当審査会は、当該審査請求について、平成20年3月26日に諮問庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、本件審査に際し、平成20年5月7日に諮問庁から開示決定等理由説明書の提出を受けた。また、同年6月19日に諮問庁の職員から意見聴取を行った。

(6) 当審査会は、本件審査に際し、平成20年6月6日に審査請求人から反論書の提出を受けた。

3 審査請求人の主張の要旨

審査請求人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 受験者が文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を有しているかを評価する場合の基準は、民間企業等の採用試験や大学等の入学試験において課される作文、小論文試験等における評価基準と大差ないはずであり、書籍や予備校等を通じて誰でも容易に知りうるものである。本件処分により不開示とされた公文書に記載されているはずの情報は、既に公にされている情報と考えられ、あえて不開示とする理由はない。

(2) 埼玉県が警察官として採用する者に対し、文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を求めるなら、その能力が具体的にどのようなものかを公開し、受験者の自己研鑽を促すべきである。評価基準の公開は、埼玉県職員(警察官)を志す受験者が自己研鑽に励むことを可能とし、埼玉県がより多くの熱意ある有為な人材を確保することに繋がるものであり、採用試験の趣旨・目的に照らしてむしろ望ましい。実施機関は、基準の公開により過度に偏った受験対策が講じられると主張するが、基準を公開することにより、受験者は、埼玉県警察官を志望する者に対して埼玉県が真にどのような能力を求めているのかを知ることができ、これにより独自の誤った受験対策に走ることなく、正しく自己研鑽に励むことができる。

(3) 埼玉県人事委員会は、平成18年度の論文試験の評価基準について、「論文のポイント及び論点」は不開示としなかった。18年度と19年度では論文題は異なるが、試験の目的は異なるものではなく、「論文のポイント及び論点」の内容は、両年度で事実上同様の性質(意義)を有するものと考えられ、19年度についてのみ、不開示とすべき特段の理由は見当たらない。

(4) 公正に行われるべき公務員の採用試験において、合否決定過程の透明性を確保するためにも、評価基準は可能な限り公開されるべきである。警察官はもちろん、すべて公務員は「全体の奉仕者」であり、公務員の選任罷免の権限は、究極的には国民(県民)に存する。公務員の採用の基準も、本来的には国民(県民)が決めるべきものである。職員の採用につき、行政に一定限度の裁量が認められるとしても、採用の基準は、客観的かつ合理的なものでなければならず、国民(県民)の同意が得られるものでなければならない。基準が公開されず、行政内部において一方的に決められるとすれば、その試験により国民(県民)にとって真に有為な人材が採用されているか確認できない。このような状態は、行政の恣意を容易にするものあり、妥当でない。

(5) 「試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれ」という抽象的な危険性を根拠に「不開示情報」とすることは、「不開示情報」の範囲を著しく広げるものであり、知る権利の保障を目的とする条例の趣旨に照らして妥当でない。

(6) 諮問庁は、論文試験の採点基準を開示した場合、試験委員が、受験者からの評価の内容について説明を求められることを意識して、否定的な評価を記載することを差し控えるなどといった弊害が生じると主張する。しかし、本件につき問題となっているのは、あくまで採点基準であり、個々の受験者の論文の評価とは全く別のものである。採点基準が開示される場合、評価と採点基準の間に矛盾が生じ、適切でない評価をしたことが明らかとなりうるのであるから、試験委員が、否定的な評価の記載を差し控えるというようなことは起こり得ない。むしろ、通常の試験委員は、定められた採点基準に基づいて客観的かつ公平な評価をしなければならないと意識するはずであり、試験がより適正に実施されることになる。

(7) 以上から、本件対象文書の「評点、評定の着眼点、論文のポイント及び論点」を不開示とした本件処分は妥当でなく、取り消されるべきである。

4 諮問庁の主張の要旨

諮問庁が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 警察官採用試験について、職員の任用は、地方公共団体の能率性を確保するため、地方公務員法第15条により、成績主義の原則を任用の根本基準としている。成績主義の基本となる能力は、客観的に実証しうるものでなければならず、同条の受験成績とは、職員の採用試験又は昇任試験における受験者の成績である。一方、競争試験については、同法第20条により、職務遂行の能力を有するかどうかを正確に判定することをもって目的とし、また、筆記試験により、若しくは口頭試問及び身体検査並びに人物性行、教育程度、経歴、適性、知能、技能、一般的知識、専門的知識及び適応性の判定の方法により、又はこれらの方法をあわせ用いることにより行うものとされている。

(2) 評点、評定の着眼点、論文のポイント及び論点を開示した場合、受験者は、当該評価方法等について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、受験者が文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を有しているかについて、正確に評価することが困難になるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号に該当する。

(3) 評定委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、また、受験者との間に後日生じるかもしれない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な評価、記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記録がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号に該当する。

5 審査会の判断

(1)本件対象文書について

本件対象文書は、実施機関が実施した平成19年度第2回埼玉県警察官採用試験の第1次試験で行われた論文試験において、評定委員が受験者が記述した論文を評定する際の基準として使用されている文書である。
本件対象文書を見分したところ、本件対象文書は、「1 出題の意図」及び「2 評定」という項目並びに「評価のポイント等」と題する書面から構成されている。このうち、「2 評定」については、「(1)総合評定」に係る評点、「(2)評定項目」として「国語力・表現力」及び「思考力」の各評定項目に係る評点及び着眼点、並びに「(3)」として「(2)評定項目」における評定にかかわらず総合評価を0~1とするものの着眼点が記載されている。また、「評価のポイント等」と題する書面には、問題文のほか、「1 出題のねらい」、「2 論文のポイント・論点」として「(1)背景」及び「(2)考え方」並びに「3 評価のポイント」が記載されている。
なお、諮問庁の説明によれば、平成19年度埼玉県警察官採用試験の論文試験においては、受験者1人の論文につき2名の評定委員が「国語力・表現力」及び「思考力」の評定項目について評定し、その上で各評定委員が付けた総合評定の評点を標準偏差を用いて一定の計算式により標準点に換算するなどして、各受験者の論文試験の得点としているとのことである。

(2)本件処分について

実施機関は、本件処分において、本件対象文書のうち、「2 評定」の「(1)総合評定」中の評点、「(2)評定項目」中の各評定項目に係る評点及び着眼点、「(3)」中の総合評価を0~1とするものの着眼点、並びに「評価のポイント等」と題する書面中の「2 論文のポイント・論点」及び「3 評価のポイント」について、これらを公にすることにより、受験者が過度に偏った受験対策を講じ、文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を有するか正確に評価することが困難になるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第10条第5号の不開示情報に該当するとして不開示とした。
これに対し、審査請求人は、これら情報を不開示とした本件処分は妥当でなく、全部開示することを求めていることから、以下、実施機関が不開示としたこれら情報の条例第10条第5号の該当性について検討する。

(3)条例第10条第5号の該当性について

  • ア 「2 評定」の「(1)総合評定」中の評点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の総合評定の評点が、「優れている」、「やや優れている」、「普通」、「やや劣る」及び「劣る」に区分されている。当該評点を開示した場合、総合評定が何点満点に設定されたのか、また、各評点が「優れている」等のいずれに該当するのかが明らかになるが、このことによって、受験者の能力を正確に把握することが困難となるなど警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
  • イ 「2 評定」の「(2)評定項目」中の評点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定項目とされている「国語力・表現力」及び「思考力」のそれぞれの評点が記載されている。当該評点を開示した場合、評定項目の重み付けが明らかになり、受験者が当該情報を意識した対応策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
  • ウ 「2 評定」の「(2)評定項目」中の着眼点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定委員が受験者が記述した論文について「国語力・表現力」及び「思考力」の各評定項目を評定する際の着眼点がそれぞれ記載されている。
    このうち、「国語力・表現力」に係る着眼点中4行目から6行目までにかけての括弧内に記載されている情報は、当該評定項目に関する評定の方法についての具体的な内容を示すものであり、これを開示した場合、受験者が当該情報を意識した対策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
    しかしながら、この部分以外の「国語力・表現力」に係る着眼点及び「思考力」に係る着眼点については、「国語力・表現力」及び「思考力」という評定項目が明らかである上、その内容は評定項目から通常想定しうる一般的な内容のものであり、これらを開示したとしても、受験者の能力を正確に把握することが困難となるなど警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
  • エ 「2 評定」の「(3)」の総合評定を0~1とする場合の着眼点について
    当該部分を見分したところ、当該論文試験の評定委員が受験者が記述した論文を評定するに際し、基本的な水準に達していないとして総合評価を0又は1とすることとなる論文の内容等を具体的に示す情報が記載されている。これを開示した場合、受験者が当該情報を意識した対応策を講ずることによりその能力を正確に把握することが困難となるなど、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
  • オ 「評価のポイント等」と題する書面中の「2 論文のポイント・論点」及び「3 評価のポイント」について
    当該書面を見分したところ、平成19年度第2回警察官採用試験の論文試験の問題に即した内容により、評定委員が受験者の記述した論文を評定する際のポイントなどが具体的に記載されている。
    このうち、「2 論文のポイント・論点」については、当該論文試験の問題に取り上げられた公費懸賞金制度の導入された背景や制度の課題が記載されている。これは、評定委員が受験者が記述した論文を評定する際の手がかりとなるものであり、その内容は、その問題から一般的に想定しうる常識的な範囲のものと認められる。これを開示したとしても、受験者の能力を正確に把握することが困難となるなど警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第10条第5号の不開示情報に該当せず、開示すべきである。
    また、「3 評価のポイント」については、評定委員が受験者の論文を評定するに当たってポイントとなる事項が当該論文試験の問題に即して具体的に記載されている。諮問庁の説明では、これを開示すれば、論文試験の問題は異なるものの今後実施する警察官採用試験の論文試験における評価のポイントについての具体的な情報が推測され、受験者が対策を講じることによりその能力を正確に評価することが困難になるおそれがあるとのことである。この諮問庁の説明は首肯でき、当該部分を開示することにより警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、実施機関が条例第10条第5号に該当するとして不開示としたことは妥当である。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、白鳥 敏男、渡辺 咲子

審議の経過

年月日

内容

平成20年3月26日

諮問を受ける(諮問第157号)

平成20年4月17日

審議(第二部会第34回審査会)

平成20年5月7日

諮問庁から開示決定等理由説明書を受理

平成20年5月22日

審議(第二部会第35回審査会)

平成20年6月6日

審査請求人から反論書を受理

平成20年6月19日

諮問庁から意見聴取及び審議(第二部会第36回審査会)

平成20年7月23日

審議(第二部会第37回審査会)

平成20年9月18日

審議(第二部会第38回審査会)

平成20年10月21日

審議(第二部会第39回審査会)

平成20年11月26日

答申(答申第134号)

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