埼玉県四半期経営動向調査(令和7年7~9月期)
埼玉県では、県内中小企業2,200社を対象に四半期ごとに経営動向調査を実施しています。このほど、令和7年7~9月期(調査日:令和7年9月1日時点)の調査結果を取りまとめました。
今回は、景況感等に関する定例の調査に加えて、「価格転嫁」、「賃上げの実施状況」及び「米国における関税措置の影響」についても調査しました。
調査結果のポイント
県内中小企業の景況感
県内中小企業の景況感は、持ち直しの動きに足踏み感がみられる。
先行きについては、改善の動きがみられる。
アンケート結果
- 景況感DI*は、▲42.5と、前期比で2.2ポイント増加し、3期ぶりに改善した。
*調査対象企業に自社が属する業界の景況感を調査し、「好況である」と回答した企業割合から「不況である」と回答した企業割合を差し引いた指数。
- 業種別では、製造業、非製造業ともに3期ぶりに改善した。
- 製造業では「印刷業」「プラスチック製品」等の7業種が改善し、「輸送用機械器具」「鉄鋼業・非鉄金属」等の4業種が悪化し、「家具・装備品」は横ばいであった。
非製造業では建設業」「卸売・小売業」等の3業種が改善し、「運輸業」「情報サービス業」等の4業種は悪化した。
- 売上げDIは2期ぶりに悪化、採算DIは2期連続改善し、資金繰りDIは2期連続悪化した。また、設備投資実施率は2期連続増加した。
- 来期(10~12月期)の先行きDIは、▲18.6と、前期比で6.1ポイント増加し、2期ぶりに改善した。
景況感DIの推移
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当期DI
(R7.7-9)
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前期比
(R7.4-6)
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前年同期比
(R6.7-9)
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来期見通しDI
(R7.10-12の見通し)
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前期比
(R7.7-9の見通し)
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| 全体 |
-42.5 |
+2.2 |
-2.5 |
-18.6 |
+6.1 |
| 製造業 |
-48.4 |
+1.5
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-2.0 |
-19.5 |
+7.8 |
| 非製造業 |
-38.2 |
+2.6 |
-2.6 |
-17.8 |
+4.9 |
ヒアリング企業の声
- 業界の景気について、企業からは、「DX推進の機運が業界を問わず高まっており、好況である。」(情報サービス業)、「米国の関税政策の影響により、自動車関連の受注が減少しており、不況である。」(輸送用機械器具)、「客単価は上がっているものの、来店客数は減少しており、厳しい状況にある。」(百貨店)などの声が聞かれた。
- 先行きについては、「業界全体で技術者が不足しており、人手不足による廃業が増えていくとみている。」(建設業)、「米国関税政策の方向性が明らかになったことで、企業の設備投資が活発化すると見込まれており、受注は徐々に回復すると考えている。」(金属製品)などの声が聞かれた。
特別調査結果
価格転嫁について
- 発注側企業と十分に価格交渉(相談)ができていると回答した企業の割合は54.6%で、前回調査(令和7年1~3月期)から2.2ポイント増加した。一方、十分にできていないと回答した企業の割合は28.7%で、前回調査から1.8ポイント減少した。
- コスト高騰に対して6割以上転嫁できていると回答した企業の割合は56.9%で、前回調査から2.9ポイント増加した。一方、価格転嫁が全くできていないと回答した企業の割合は12.4%で、前回調査から1.2ポイント増加した。
- 「パートナーシップ構築宣言」の登録については、「既に登録している」、「今後登録する予定」、「登録しようか検討している」を合わせた回答割合は32.7%で、前回調査から1.0ポイント増加した。
賃上げの実施状況について
- 直近1年間の賃上げの実施状況については、「実施した」が63.5%、「今後実施する予定又は検討中」が8.0%、「実施していない(今後も予定はない)」が28.5%だった。
- 賃上げの内容については、「定期昇給」(58.4%)と「ベースアップ」(43.4%)の回答割合が高かった。
- 賃上げを行った理由については、「社員のモチベーション向上、離職防止のため」(77.9%)が最も多く、次いで「人材確保のため」(47.3%)、「業績、財務状況が良好であったため」(16.9%)の順となった。
米国における関税措置の影響について
- 経営に与える影響について聞いたところ、全体では「分からない・どちらとも言えない」(53.5%)が最も多く、次いで「様子を見守っている段階である」(25.5%)、「今後悪い影響が出る見込みである」(11.4%)の順となった。
- 悪い影響(見込み含む)の具体的な内容について聞いたところ、全体では「受注先の競争力低下による自社の受注量減少」(45.5%)が最も多く、次いで「受注先からの値下げ要請等による利益率の低下」(22.6%)、「海外における自社の販売不振や売上低迷」(8.5%)の順となった。
- 影響が出た場合にどのような対策を取るか聞いたところ、全体では「経費削減(広告宣伝費など人件費以外)」(31.1%)が最も多く、次いで「生産性の向上」(26.8%)、「新たな販路開拓」(26.6%)、「値上げ・価格転嫁の促進」(26.5%)の順となった。
- 県に期待する支援について聞いたところ、全体では「資金繰り支援」(45.0%)が最も多く、次いで「雇用確保支援」(31.6%)、「販路開拓・多角化支援」(21.5%)の順となった。
報告書
アンケート調査集計表(Excel形式)
時系列データ(Excel形式)