トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成16年度情報公開審査会答申 > 答申第39号 「警察職員の対応に関する苦情申立に伴う事実の有無に関する調査記録」の不開示決定(平成17年2月15日)
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掲載日:2024年1月23日
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答申第39号(諮問第39号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成14年7月29日付けで行った「請求者から、平成14年4月20日付けで公安委員会宛てになされた、警察職員の対応に関する苦情申立に伴う事実の有無に関する調査記録」(以下「本件文書」という。)を存否を明らかにしないで不開示とした決定は妥当である。
2 審査請求及び審査の経緯
(1) 本件審査請求人(以下「審査請求人」という。)は、平成14年7月15日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「公開条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、下記の内容で開示請求(以下「本件請求」という。)を行った「平成14年4月20日付けで公安委員会に対し、警察職員の対応に関して苦情申立を実施しました。それにともない事実の有無に関する調査記録」
(2) これに対して、実施機関は、平成14年7月29日付けで公開条例第13条を適用し、「当該公文書の存否を答えること自体が公開条例第10条第1号の不開示情報を開示することになる。」として、存否を明らかにしないで不開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に通知した。
(3) 審査請求人は、平成14年8月5日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消して、公開・非公開の処分に変更することを求める審査請求を行った。
(4) 当審査会は、本件審査請求について平成14年11月6日付けで審査庁から公開条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会の本件審査に際し、審査庁から平成16年7月28日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けたが、審査請求人から当該説明書に対する反論書の提出は受けていない。
(6) 当審査会は、平成16年10月15日に、実施機関の職員から事情聴取を行った。
なお、審査請求人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
(7) 当審査会の本件審査に対し、審査庁から平成16年11月10日付けの「補充意見書」の提出を受けた。
3 審査請求人の主張の要旨
審査請求人が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。
(1) 公安委員会に提出した苦情申立書に記載した事実を県警察本部職員が事実調査をなしたのであろうから警察側職員がどのような主張をなしたかは知る権利の対象である。
(2) 存否応答拒否の処分を取り消して、公開・非公開の処分に変更することを求める。
4 実施機関の主張の要旨
審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
(1) 情報公開制度と個人情報保護制度
(2) 自己の個人情報の開示請求について
(3) 本件審査請求の原処分
5 審査会の判断
(1) 本件請求について
本件請求は、特定期日に行われた「警察職員の対応に関する苦情申立て」に対しての事実調査記録について、苦情申立人本人が開示を求めたものである。
(2) 本人による自己情報の開示について
申立人は、自己情報開示請求として本件請求を行っていることが認められるので、まず公開条例に基づいてかかる請求が認められるか否かについて判断する。埼玉県における情報公開制度は、「県民の知る権利」を保障するとともに、県の諸活動を県民に説明する責務を全うし、地方自治の本旨に即した透明な開かれた県政の推進に寄与することを目的とするいわゆる「一般公開制度」である。公開条例第7条は、公文書の開示を請求できるものについて「次の各号のいずれかに該当するものは、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」とし、第1号から第4号において、県内在住、在勤・在学者を、さらに第5号において、前各号に該当せず公文書の開示を必要とする相当の理由を有する者を請求権者としているが、これら請求権者に当たれば、特に本人の状況、利害内容、請求目的に関わりなく、第10条各号に定める不開示規定に該当しない限り、開示を受けることができるというのが本条例の趣旨である。したがって、逆に、実施機関の開示不開示の判断に当たっては、自己の情報を根拠とした情報の必要性等の請求者の特別の事情は考慮されるものではないことは明らかである。また、公開条例第10条第1号は、開示義務の例外(いわゆる不開示規定)として「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と規定して、特定個人が識別されれば不開示情報に当たるものとし、ほかに当該個人情報が請求者本人のものであるかどうかについて考慮する規定は置かれていない。なお、請求者本人の個人情報の開示(自己情報開示)については、別に個人情報保護制度を通じて行われるべきところ、すでに本県においても、保護条例が定められていることが認められる。今回、申立人が公開条例に基づいて自己情報の開示を請求したのには、公安委員会が、公開条例の実施機関とされているのに対し、保護条例の実施機関とはされていないという事情があると推測されるが、公開条例が、いわゆるプライバシー型として「通常他人に知られたくない個人に関する情報」を不開示規定として定めているのであればともかく、本県公開条例は、いわゆる個人識別型として、上記不開示規定を定めるにとどまっているのであるから、請求者が当該個人情報の本人であるかどうかを考慮しなかった実施機関の判断に誤りはない。
(3) 公開条例第13条該当性について
以上のことをふまえ、次に、申立人は、公開条例第13条による処分ではなく、第10条に基づく処分をすべきであると主張するので、この点について判断をする。公開条例第13条は「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定している。開示請求がなされた場合、通常は、請求にかかる公文書が存在していれば、それを対象公文書として特定し、開示又は不開示の決定が行われ、公文書が存在していなければ、不存在の決定がなされる。このように情報公開制度のもとでは、文書の存否が明らかにされた上で決定がなされるというのが原則である。しかしながら、存在自体を明らかにしがたいようなセンシティブな情報への請求や、情報の探索的な請求など、開示請求に係る公文書が存在することを認めること自体が、不開示規定が保護する利益を損なうような場合があることから、例外的に、公開条例第13条は、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定を認めている。本件請求は、特定個人が行った苦情申立てに関する情報の公開を求めるものであるが、本件文書の存否を明らかにして開示不開示を判断することは、特定個人が苦情申立てを行った事実を明らかにすることとなる。特定の個人が苦情を申し立てをしたという事実はそれ自体個人情報であり、その公開は、個人の情報を公開するものとして、個人の利益を害するものと認められる。したがって、同条に基づき本件請求を拒否した決定には、相当の理由があると認められる。以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(4) 制度的課題について
申立人が、公開条例に基づき自己情報の開示を請求したのは、請求時点において、公安委員会が保護条例の実施機関ではなかったという事情があると推測される。保護条例は、平成16年12月に全部改正されたが、公安委員会及び警察本部長に関する部分の施行は、平成18年4月からとされている。よって、平成18年4月までの間は、依然として本件のような問題が生じる可能性が残されている。経過期間においてはしばしば生じることではあるが、条例の施行の前後において著しい不合理がないよう、支障の生じない限りで、必要な情報提供などに努めることが求められる。
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成14年11月6日 |
諮問を受ける(諮問第39号) |
平成16年7月28日 |
審査庁より開示決定等理由説明書を受理 |
平成16年10月15日(第42回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成16年11月10日 |
審査庁より補充意見書を受理 |
平成16年11月10日(第43回審査会) |
審議 |
平成16年11月24日(第44回審査会) |
審議 |
平成16年12月15日(第45回審査会) |
審議 |
平成16年12月17日(第46回審査会) |
審議 |
平成17年1月24日(第47回審査会) |
審議 |
平成17年2月15日 |
答申 |
氏名 |
現職 |
備考 |
---|---|---|
礒野 弥生 |
東京経済大学教授 |
|
遠藤 順子 |
弁護士 |
会長職務代理者 |
大橋 豊彦 |
尚美学園大学教授 |
会長 |
田村 泰俊 |
明治学院大学教授 |
|
野村 武司 |
獨協大学教授 |
|
馬橋 隆紀 |
弁護士 |
|
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