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掲載日:2024年3月26日

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答申第28号 「刑事部による事案の発生について(埼玉県)」の部分開示決定(平成16年5月24日)

答申第28号(諮問第33号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成14年3月4日付けで行った「刑事部による事案の発生について(埼玉県)(平成13年3月6日付け)」(以下「本件文書」という。)で行った部分開示決定のうち、関係職員の行為時の所属、職名、分掌及び担当事務については、開示すべきである。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成14年1月4日、埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「被処分者ファイル17/11、18/11で表示されている氏の警察庁、公安委員会、広報に提出された報告書」の開示請求を行った。

(2) 実施機関は、本件開示請求に対する公文書を本件文書と特定した上で、平成14年3月4日付けで部分開示決定を行い、請求人に通知した。開示しない情報及びその理由は、別紙のとおりである。

(3) 請求人は、平成14年4月9日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、不開示とされた関係職員の所属、氏名及び事案の概要における事実関係(以下「本件不開示情報」という。)を開示すべきであるとして審査請求を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について平成14年7月24日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に対し、審査庁から平成15年9月3日付けの開示決定等理由説明書(以下「説明書」という。)の提出を受けた。説明書の中で、実施機関は、原処分において不開示とした部分について一部判断を変更し、「関係職員の行為時の所属、職名、分掌及び担当事務」を開示することとした。

(6) 当審査会は、平成15年11月4日に実施機関の職員から意見聴取を行った。なお、請求人から反論書の提出はなく、当審査会に対する口頭による意見陳述も求めていない。

3 請求人の主張の要旨

請求人は、実施機関が本件不開示情報を開示するよう主張しているが、その理由は、おおむね次のとおりである。

(1) 付添人の高等裁判所に対する抗告認定があるまで誤認逮捕を発見できなかった責任は警察側職員にある。

(2) 被逮捕者側から県を被告とし、損害賠償請求訴訟が提起され、和解金が支払われている。

以上により、関係職員の所属、氏名及び事案の概要欄における事実関係を明らかにすべきである。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が、説明書及び当審査会における意見陳述等で主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 条例第10条第1号本文の該当性について

関係職員の所属は当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものであり、関係職員の氏名は特定の個人を識別することができるものであり、いずれも条例第10条第1号本文の「個人に関する情報」に該当する。
また、事案の概要欄における事件の発生場所や詳細な情報を開示することは個別の事件が特定され、当該事件の被疑者又は被害者が識別されることとなり、また個人の権利利益を害することにもなり、条例第10条第1号本文の「個人に関する情報」に該当する。

(2) 条例第10条第1号ただし書ハの該当性について

関係職員の職務執行中になされた非違行為についての懲戒処分等の必要性や当該職員の量刑をはかるものとして作成された本件文書に記載された情報は、公務に関する情報ではあるが、職員の身分取扱い上の処遇に関する情報であり、個人の資質、名誉にかかわる当該職員固有の情報であって、本人としては一般にこれを他人に知られたくないと望み、そう望むことが正当であると認められるものである。したがって、職務に関連する情報ではあるが、当該職員に分任された職務の遂行にかかる情報とはいえず、条例第10条第1号ただし書ハには該当しないものと認められる。

5 審査会の判断

(1) 本件文書について

本件文書は、埼玉県警察本部職員の非違行為が原因となり、警察庁に提出された「事案の発生について」の報告書であり、次の情報が記載されている。

  • ア 誤認逮捕の日時・場所欄
    日時と時刻、警察署名
  • イ 鑑定した関係職員欄
    所属、職名、氏名、生年月日、年齢、採用年月日、現所属、賞罰、家族
  • ウ 関係職員の情報欄
    所属、職名、氏名、年齢
  • エ 関係者(被逮捕者)欄
    住所、職業、氏名、生年月日、年齢
  • オ 事案の概要欄
    • 上記1~4の情報
    • 事件発生場所
    • 地方検察庁と処分内容
    • 関係都道府県警察鑑識課名
  • カ 広報対応その他参考事項欄
    • 広報実施月日
    • 誤認逮捕後の経過

(2) 条例第10条第1号本文該当性について

条例第10条第1号本文は、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を不開示情報とし、これらの情報が記載されている公文書については、公文書開示原則の例外とする旨を規定している。
これは、公文書は開示しなければならないという原則を明らかにする一方、個人の尊厳という憲法原理に立脚し、いわゆるプライバシーを中心とする個人に関する情報を原則として不開示として扱うことを定めたものであり、その趣旨は、個人情報がみだりに公開されることを防ぎ、個人の権利利益を保護することにある。
関係職員の所属については、それ自体では個人が識別されうる情報ではないが、新聞報道等と照らし合わせることにより、特定の個人が識別される可能性が高いことから、条例第10条第1号本文に該当するものとして、不開示とするのが適当と認められる。関係職員の氏名が「特定の個人が識別される情報」に該当することはいうまでもない。
また、事案の概要欄に記載された事件の発生場所や経過等の事実関係については、これを開示することにより、個別の事件が特定され、当該事件の被害者等が識別されることともなるものと認められる。
したがって、本件文書で不開示とされた情報は、条例第10条第1号本文の「個人に関する情報」に該当するものである。

(3) 条例第10条第1号ただし書該当性について

請求人は事案の重大性から事実関係を明確にすべきであると主張しているが、実施機関は、本件文書に記載された関係職員の処分に関する情報は、処分を受けた者にとっては、処分に関する必要事項が記載されているものにほかならず、個人の資質、名誉にかかわる当該被処分者固有の情報というべきものであって、条例第10条第1号ただし書ハで規定する「職務の遂行に係る情報」には該当しないと主張しているので、まず、この点について検討する。

ア 本件文書は、全体としてみれば職員の身分取扱い上の処遇に関する情報であり、公務に関連する情報ではあるが、関係職員の職務執行中になされた非違行為について、懲戒処分等の必要性や当該職員の量刑を判断するための資料として作成されたものであり、個人の資質、名誉にかかわる当該公務員固有の情報であって、本人としては一般的にこれを他人に知られたくないと望み、そう望むことが正当であると認められるものである。
したがって、本件文書に記載されている情報は、関係職員にとっては職務に関連する情報ではあるが、当該職員に分任された職務の遂行に係る情報であるということはできず、同号ただし書ハには該当しないものと認められる。

イ 次に、実施機関が本事案について報道機関に対し広報を行った事実が認められるので、同号ただし書イの該当性について検討する。
実施機関では、懲戒処分実施の広報については、平成13年1月以降、警察庁が定めた「懲戒処分の発表の指針」に基づき行っているが、この指針の目的は、同種事案の再発防止その他職務執行の適正及び職務倫理の保持を図り、警察に対する国民の信頼の確保に資することにある。
一般に、このような基準に基づき懲戒処分が公表された場合、処分を受けた個人が識別され当該個人のプライバシーが侵害されるおそれがないとはいえないが、当該指針の趣旨に鑑み、受忍すべき範囲内にとどまるものであるとの考えのもとに、広報を行っているものと解される。
本事案は、窃盗被疑事件に係わる職務執行中の非違行為により、罪もない一般市民を誤認逮捕し、不当に身柄を拘束し続けるなど、一般市民の人権を侵害する要因を作ったという結果において極めて重大なものであり、社会に与える影響も大きいといえる。
実施機関から意見を聴取した結果、本事案は懲戒処分に至らない監督上の措置ではあるが、事案の重大性、公務内外に及ぼした影響等特別な事情が認められるので、懲戒処分時と同様に広報を行ったと認められる。
上記事実に照らしてみた場合、関係職員の行為時の所属、職名、分掌及び担当事務部分は、公にされている情報であることから開示されるべきものであり、これを不開示とした原処分は誤りである。
一方、前記部分を除く各部分はいずれも公にされたり公にすることが予定されている情報ではなく、条例第10条第1号ただし書イに該当せず、いずれも職員個人のプライバシーに関するものであって、これを不開示とした原処分は妥当である。
なお、実施機関は説明書において、すでに本件文書の不開示部分の一部について原処分の判断を変更し当審査会が開示するべきとする部分につき、開示する旨の意思を表明している。
今後、原処分を取り消し、その全部又は一部を開示すると判断したときは、請求人の権利保護及び情報公開制度への信頼性を高めるためにも、当審査会の答申を待つまでもなく、速やかに処分を行うよう切に求めるものである。

よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

別紙

開示しない情報及びその理由

(1) 決裁欄の職員の印影

理由

慣行として公にされていない職員の印影は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(2) 事案の発生場所および所属がわかる部分

理由

関係職員及び関係者個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(3) 関係職員の所属、職名、分掌(担当事務)、氏名、生年月日、年齢、採用、現所属、賞罰及び家族がわかる部分
理由
個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができ、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(4) 関係者の住所、職業、氏名、生年月日及び年齢がわかる部分

理由

個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができ、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(5) 関係者の処分に関する状況がわかる部分

理由

個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができ、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(6) 訴訟に関する部分

理由

個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができ、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのある情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

(7) 欄外の職員の氏名

理由

慣行として公にされていない職員の氏名は、個人に関する条例であって、特定の個人を識別することができる情報であり、埼玉県情報公開条例第10条第1号に該当するため。

審議の経過

平成14年7月24日

諮問を受ける(諮問第34号)

平成15年9月3日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成15年11月4日
(第29回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成15年12月4日
(第30回審査会)

審議

平成16年1月27日
(第31回審査会)

審議

平成16年3月1日
(第33回審査会)

審議

平成16年3月25日
(第34回審査会)

審議

平成16年4月21日
(第35回審査会)

審議

平成16年5月24日

答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成16年5月24日現在)

氏名

現職

備考

礒野弥生

東京経済大学教授

 

遠藤順子

弁護士

会長職務代理

大橋豊彦

尚美学園大学教授

会長

田村泰俊

明治学院大学教授

 

野村武司

獨協大学教授

 

馬橋隆紀

弁護士

 

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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