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掲載日:2024年3月26日

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答申第36号 「(株)○○が提出した産業廃棄物の運搬実績報告書(平成12年度、平成13年度)及び特別管理産業廃棄物の運搬実績報告書(平成12年度、平成13年度)」の部分開示決定(平成16年10月15日)

答申第36号(諮問第47号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年5月2日付けで行った、「(株) ○○が提出した産業廃棄物の運搬実績報告書(平成12年度、平成13年度)及び特別管理産業廃棄物の運搬実績報告書(平成12年度、平成13年度)」(以下「本件文書」という。)の部分開示決定のうち、本件異議申立てに係る排出事業者並びに受託者の名称及び住所について、開示と判断したことは妥当である。

2 異議申立て及び審査の経緯

(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成15年3月20日に埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づいて開示請求のあった本件文書を実施機関に提出した者である。

(2) 実施機関は、本件文書の開示請求について、開示決定を行うのが適当であると判断し、条例第17条第1項の規定に基づき、申立人に対し、平成15年3月28日付けの公文書開示決定等に係る意見照会書により意見書提出の機会を与えたところ、平成15年4月8日付けで申立人から開示に反対する旨の「公文書開示決定等に係る意見書」(以下「反対意見書」という。)が提出された。

(3) 実施機関は、申立人から反対意見書の提出を受けてもなお開示が適当と判断し、平成15年5月2日付けで、申立人に公文書開示決定に係る通知書を送付した。

(4) 申立人は、平成15年5月12日付けの異議申立書により、実施機関に対し、開示決定された部分のうち排出事業者並びに受託者の名称及び住所について開示すべきではないとして異議申立てを行った。

(5) 当審査会は、本件異議申立てについて平成15年5月21日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(6) 当審査会の本件審査に対し、実施機関から平成16年3月25日付けの「開示決定等理由説明書」の提出を、申立人から同年5月14日付けの「反論書」の提出を受けた。

3 申立人の主張の要旨

申立人は、本件文書の記載内容のうち、排出事業者並びに受託者の名称及び住所を不開示とするよう求め、その主な理由として以下の点をあげている。

  • ア 当社の取引先である排出事業者等の顧客が全て明らかになり、競合競争関係にある事業者がその顧客を知ることになり、当社の競争上の地位が損なわれるおそれが極めて大きい。
  • イ 顧客部分については、条例第10条第2号ただし書に必ずしも該当するとは言えない。
  • ウ 開示請求をした者の名前又は法人名及び住所が開示されていないため、損害を被った場合の責任の所在が確認できず、条例に開示を請求したもの及びその関係者にたいして行う損害賠償手続きが整備されていないので、損害賠償請求ができない。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関の主たる開示理由は以下の点にある。

  • ア 産業廃棄物の不適正な処理による社会的影響は大きく、産業廃棄物の処理に係る排出事業者、収集運搬業者及び処分業者の責任を明確にし、適正処理を推進するためにも産業廃棄物処理に係る情報公開が求められている。
  • イ 事業者情報の開示により、排出事業者の名称及び取引情報が明らかになり、同業者との競争上不利な立場にたたされ事業活動が害されるおそれがある情報であるが、産業廃棄物処理業の性質や当該業種を取りまく現在の社会状況、廃棄物処理法の規定から判断すると、事業者情報は一般的な企業の取引情報先情報とは異なり、条例第10条第2号本文に規定する「正当な利益」を害するとは言えない。

5 審査会の判断

(1) 本件文書は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行細則」第14条の規定により、実施機関に提出された文書である。本件文書には、報告者である(株)○○の代表者の印影のほか、(株)○○が収集運搬した産業廃棄物の種類、(株)○○の取引先に当たる排出事業者の名称、住所及び受託量並びに運搬先の受託者の名称、住所等(以下「事業者情報」という。)が記載されている。

(2) 申立人の主張の主旨は、取引先である排出事業者等の顧客情報が明らかになると、競合する同業者との競争上の利益を害する(条例第10条第2号本文)というところにあると認められる。そこで、以下この点について検討する。なお、実施機関は、平成15年3月28日付の「公文書開示決定等に係る意見照会書」において、条例第17条第1項に基づく照会としながら、適用理由を条例第10条第2号ただし書き該当としており、適用条文間に齟齬が認められるが、その後の理由説明書等において、条例第10条第2号本文不該当を適用理由として一貫して主張しており、また、異議申立人も平成15年4月8日付の「公文書開示決定等に係る意見書」で、第10条第2号本文該当性を理由に反論をおこなっていることが認められる。さらに、ただし書き該当性を判断するためには、まずは本文該当性を判断しなければならないことも考慮し、実施機関の適用理由は条例第10条第2号本文にあるものとして判断する。

(3) 条例第10条第2号は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」については、原則として開示しないと規定している。

本号は、法人その他の団体又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する趣旨から、これら事業活動に関する情報であって、公にすることにより当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを情報公開の例外とするものである。

なお、ここでいう「正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、法人等の生産技術、営業、販売上のノウハウ、経営方針、経理、人事等の情報で、公にすることにより、法人等の事業活動等が損なわれると認められるもの及び公にすることにより法人等の名誉が侵害され、又は社会的信用若しくは社会的評価が低下するものを広く含むものと解される。

また、「正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するか否かの具体的な判断については、当該法人等の営む事業の性質や社会的影響、当該事業を規律する関係法令の規定等により総合的に判断すべきであると考える。

(4) そこで、本件文書に記載されている情報が、条例第10条第2号に該当するか否かを検討すると、一般には、法人等の事業に係る情報及び取引先に係る情報は、これが同業者に明らかとなった場合、同業者との競争上不利な立場にたたされることが想定されることから、事業活動が害されるおそれがある情報であるといえる。

しかしながら、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)」は、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(廃棄物処理法第3条第1項)と規定し、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、知事の許可を受けた収集運搬業者や処分業者に委託しなければならない(同法第12条第3項)と定めている。さらに、同法は、産業廃棄物の収集運搬業者及び処分業者について、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行わなければならない(同法第14条第12項)と規定し、委託産業廃棄物について、排出事業者の責任とともに、産業廃棄物の収集運搬業者及び処分業者に対しても適正処理の義務及び責任を定めている。

さらに、産業廃棄物の不適正な処理による社会的影響は大きく、産業廃棄物の処理に係る排出事業者、収集運搬業者及び処分業者の責任を明確にし、適正処理を推進するためにも産業廃棄物処理に係る情報公開が求められているという事実を看過することはできない。産業廃棄物処理業は、事業の性質上、事業運営方法の如何によっては周辺住民の生活環境や自然環境に悪影響を与えるおそれがある事業であり、その事業に係る情報には強い透明性が求められる。

この点、特に埼玉県においては、産業廃棄物処理に係る情報の公開を積極的に進めている。産業廃棄物の適正処理のためには、排出事業者の責任はもとより、廃棄物の収集運搬業者及び処分業者の責任も重要であり、事業者情報を開示することにより関係当事者の責任を明確にするとともに、処理過程の透明性を確保する必要があるというのがその理由である。この県の方針は社会的要請に合致するものと考えられ、収集運搬業者及び処分業者で構成されている県産業廃棄物協会に対しても事業者情報を公開することへの理解を求めている。

上記のような産業廃棄物処理業の性質や廃棄物処理法の規定、当該業種をとりまく現在の社会状況、また、県の事業者情報に対する考え方等から総合的に判断すると、事業者情報は一般的な企業の取引先の情報とは異なるものであると考えられる。

(5) したがって、事業者情報を開示することにより、条例第10条第2号本文に規定する申立人の権利、競争上の地位にとって不利益が生ずるおそれがあるとしても、それは産業廃棄物処理事業者として受忍すべきものであり、また、これら不利益は、同号本文が規定する「正当な利益」を害するとまでは言えない。

(6) なお、申立人は、条例の規定により開示請求者の氏名又は名称が開示されないので、損害を被った場合の責任の所在が確認できない旨主張している。しかし、開示請求者の氏名については、個人情報であり、条例第10条第1号に該当し不開示となるものである。
また、申立人は、開示を請求した者及びその関係者に対して行う損害賠償手続が整備されていないので、損害賠償請求ができない旨についても主張しているが、損害賠償手続は民事訴訟法において不備はなく、また、本件文書の開示によって不利益が生じるおそれがあるとしてもその性質上受忍すべきものであり、正当な利益を害するものとまではいえないことは、すでに述べたとおりであり、申立人の主張には理由がない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

審議の経過

年月日

内容

平成15年5月21日

諮問を受ける(諮問第47号)

平成16年3月25日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成16年5月14日

異議申立人より反論書を受理

平成16年7月14日(第38回審査会)

審議

平成16年8月6日(第39回審査会)

審議

平成16年8月20日(第40回審査会)

審議

平成16年10月1日(第41回審査会)

審議

平成16年10月15日

実施機関に答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成16年10月15日現在)

氏名

現職

備考

礒野 弥生

東京経済大学教授

 

遠藤 順子

弁護士

会長職務代理者

大橋 豊彦

尚美学園大学教授

会長

田村 泰俊

明治学院大学教授

 

野村 武司

獨協大学教授

 

馬橋 隆紀

弁護士

 

(五十音順)

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