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掲載日:2024年3月26日
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答申第30号(諮問第58号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年7月23日付けで行った、「財務会計システム中の平成14年度工事請負費に関する全データ」についての不開示決定は妥当である。
2 異議申立て及び審査の経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成15年7月9日、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「財務会計システム中の平成14年度工事請負費に関する全データ」(以下「本件情報」という。)の開示請求を行った。
なお、申立人は、本件開示請求を行うに当たり、求める開示の実施の方法として「電磁的記録の電磁的記録媒体に複写したものの交付」を希望した。
(2) 実施機関は、平成15年7月23日付けで不開示決定を行い、開示しない理由として、「対象データを保存するファイルには、特定の法人の取引内容に関する事項であって、開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する情報(債権者の振込先金融機関名、預金種別及び口座番号)が含まれており、これを分離して開示するためには新たなプログラムの作成またはファイル形式の変換が必要になるため。」と記載し、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成15年9月18日付けの異議申立書により、実施機関に対し、処分の取消を求め、異議申立てを行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成15年9月29日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、本件審査に際し、平成15年11月18日に実施機関から「開示決定等理由説明書」の提出を受け、申立人から平成15年12月20日付けの反論書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成16年2月16日に、実施機関の出納局財務管理課の職員から事情聴取を行った。
なお、申立人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 財務会計システム・データの公開は、県民が県の歳出状況の全貌を詳細に知るために不可欠である。また、その膨大なデータ量と分析上の必要性を考慮すれば、財務会計システム・データは電磁的記録媒体により開示される必要がある。
(2) 技術的な理由で公開が不可能な公文書があれば、実施機関は、その問題の克服のために全力を尽くす義務がある。埼玉県行政情報公開条例(以下「旧条例」という。)が施行された時点では、財務会計システム・データの記録形式はエクセル等の市販パソコン用応用ソフトと互換性を持たなかったため、事実上、電磁的記録媒体による情報公開は実施不可能な状態にあった。しかし、実施機関には、旧条例の施行時から、遅くとも新条例(埼玉県情報公開条例)の施行時までに、同システムのデータ記録形式を市販パソコン用ソフトと互換性のある形式に変換するための変換プログラムを作成するなどして、電磁的記録媒体による情報公開を可能にすべく努める責務があった。
(3) しかしながら、実施機関は旧条例施行以来20年以上にわたりそれを怠ってきたのであり、本件決定は不作為に基づく違法状態に依拠して導かれたものなので、違法であり取り消されるべきである。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張する、本件情報の不開示理由はおおむね以下のとおりである。
(1) 電磁的記録の開示方法は、条例第18条及び知事が行う公文書の開示等に関する規則(以下「規則」という。)第5条の規定により、印刷物として出力したものの閲覧又は交付が原則であり、電磁的記録媒体に複写したものの交付は、これが容易である場合にのみ応じる義務がある。
(2) 申立人が開示請求の対象とした電磁的記録には、支出命令額や債権者等の開示できる情報のほかに、特定の法人の取引内容に関する事項であって、開示することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な権利を害するおそれのある情報(債権者の振込先金融機関名、預金種別及び口座番号)が含まれており、これは条例第10条第2号に該当する不開示情報である。
(3) 当該電磁的記録は大型汎用コンピュータ用のものであり、これらの不開示情報を分離して部分開示するには、新たなプログラムを作成する必要があり、これは、規則第5条第2号に規定する「電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易であるとき」には該当しない。よって不開示とした。
(4) 開示決定等の判断は、公文書開示請求時に効力を有する条例・規則等に基づき行われるものである。実施機関は、規則第5条第2号に定める範囲を超えて開示請求に応じることまで求められてはいない。
5 審査会の判断
申立人は、本件情報の開示の実施の方法として、電磁的記録媒体に複写したものの交付を求め、これを不可能として不開示決定を行った実施機関に対し、技術的な問題の解決を怠ってきた不作為という違法状態のもとで行われた決定は取り消されるべきであると主張している。よって、以下この点について検討する。
(1) 電磁的記録の開示方法について、条例第18条第1項は、「公文書の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電磁的記録については視聴、閲覧、写しの交付等その種別、情報化の進展状況等を勘案して実施機関の定める方法により行う。」と規定している。これを受けて、電磁的記録の開示方法として、規則第5条第1号では、「電磁的記録(ビデオテープ、録音テープ及びこれらに類するものを除く。)を印刷物として出力したものの閲覧又は交付」、同条第2号では、「電磁的記録を専用機器により再生したものの閲覧、聴取若しくは視聴又は電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易であるときは、当該電磁的記録の閲覧、聴取若しくは視聴又は複写したものの交付」と規定している。以上のとおり、電磁的記録の開示方法としては種々の形態が考えられるところであるが、規則においては、原則として印刷物として出力したものの閲覧又は交付によることとし、フロッピーディスクや光ディスク等の電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易であるときは、その方法によることができるとするものである。
(2) 実施機関の説明によれば、本件情報には、支出命令額や債権者名等の開示できる情報のほかに、特定の法人の取引内容に関する事項であって、開示することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な権利を害するおそれのある情報(債権者の振込先金融機関名、預金種別及び口座番号)が含まれており、これは条例第10条第2号に該当する。本件情報については、通常各担当課所において、用紙に出力したものを紙文書として保有しており、かかる紙文書においては、通常、上記不開示部分を分離して開示することは可能である。これに対して、申立人が開示の実施の方法として求めているのは、本件情報の電磁的記録媒体に複写したものの交付である。この点について、実施機関は、当該電磁的記録は大型汎用コンピュータ用のものであり、市販のパーソナルコンピュータで読み取り可能な形でデータ自体を他の媒体へ出力することが想定されていないことから、上記の不開示情報を分離して部分開示をするには、新たなプログラムを作成する必要があり、これは規則第5条第2号に規定する「電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易であるとき」には該当しないと主張しているが、この実施機関の説明に、特段不合理な点は認められない。したがって、本件情報の開示を実施するに当たり、電磁的記録の開示については、規則第5条第2号で規定する「電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易であるとき」に該当するものと認めることはできず、また汎用コンピュータのデータの部分開示のために新たなプログラムを作成することまで条例が求めているものと解することはできない。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成15年9月29日 |
諮問を受ける(諮問第58号) |
平成15年11月18日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成15年12月22日 |
異議申立人より反論書を受理 |
平成16年2月16日(第32回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成16年3月25日(第34回審査会) |
審議 |
平成16年4月21日(第35回審査会) |
審議 |
平成16年5月24日 |
答申 |
氏名 |
現職 |
備考 |
---|---|---|
礒野 弥生 |
東京経済大学教授 |
|
遠藤 順子 |
弁護士 |
会長職務代理者 |
大橋 豊彦 |
尚美学園大学教授 |
会長 |
田村 泰俊 |
明治学院大学教授 |
|
野村 武司 |
獨協大学教授 |
|
馬橋 隆紀 |
弁護士 |
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